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カルパディア編
第十七章:深夜の救出劇?
しおりを挟むフォンクランクの首都、サンクアディエット。特殊な苔と鉱石の組み合わせで水を燃料に明かりを得られるリーンランプの普及により、街灯で彩られた夜景は昔に比べて随分賑やかになった。
深夜に走る動力車の前照灯が、街灯の明かりに沿って街中を移動して行く光景は、悠介に地球世界の町を思い出させて感傷を呼び起こす。
(この街の夜も明るくなったな)
半身を起こして窓から夜景を眺めていると、隣で寝ていたスンがモゾリと寝返りを打つ。
「んー……ユウスケさん……?」
「悪い、起こしちゃったか?」
少しカスタマイズ画面を出して屋敷と周辺をチェックしていた悠介は、横になったまま顔を上げるスンの髪を撫でる。気持ちよさそうに目を閉じたスンは、ごろんと身を寄せて来た。
「お仕事ですか?」
「んにゃ、ちょっと確認してただけ」
スンの体温を感じながら、屋敷周辺に異常が無いのを確認してカスタマイズ画面を閉じた悠介は、よっこらしょと横になる。
すると、右半身を温めていたスンがのしっと身体を預けて来る。温かく柔らかい感触に安らぎを覚えながらも、鼓動は早まるという矛盾した感覚。その滑からな表面をなぞっていくと、ある部分でガサリとした硬い感触を拾う。スンの脇腹に今も残る、変色した古い傷痕だ。
「この傷、消してやれたら良かったんだけどな」
スンが幼少の頃に付けられたこの傷は、幼い身体には致命傷だったが、駆け付けたゼシャールドの水技の治癒でどうにか一命を取り留めた。
この傷を付けた暴漢の男は十数年後、狂言でヴォレットに取り入ろうとして再びスンを傷付けようとするも、悠介の奮闘と糾弾でお縄になっている。
傷痕をそっと撫でつける悠介の手に、スンの手が重なる。
「この傷は、ユウスケさんと先生との、大切な記念になりましたから」
父親を殺され、自身も死にかけるという忌々しい記憶と共に刻まれた傷だが、今は育ての親であるゼシャールドとの思いでとなり、過去のトラウマから身も心も救ってくれた悠介との絆の証だと、スンは優しく微笑む。
そんな健気な想い人を愛しさで抱き寄せた悠介に、求める様なキスで応えるスン。ほんの一年くらい前の頃からは考えられないほど男女の関係を深めた二人が、深夜の私室で乳繰り合っていた頃――
ブルガーデンの第二首都、要塞都市パウラの北部にある中心街。裕福層の屋敷が連なる居住区画の一角にて。特殊任務で潜入活動中であるレイフョルドは、ブルガーデン側の協力者達から情報の提供を受けつつ、作戦の打ち合わせを行っていた。
「ふむ……それじゃあ例の家族は議会堂の官僚区画に軟禁されてるって事で間違いないね?」
「ああ、同じ階の精鋭団幹部区画に出入りする仲間の話だと、ポルヴァーティア人組織の連中も別の個室を使っているらしい」
レイフョルドと情報の共有をするブルガーデン側の協力者達は、女王派として活動する密偵集団である。ブルガーデン国内で今も燻るイザップナー派の特定と洗い出しを行い、秘密裏に処分する等して、国内に蔓延る問題を未然に防ぐ役割を果たしていた。
今回、彼等はイザップナー派の動きを追って行く内に、ポルヴァーティア人組織である栄耀同盟の工作員が、国内に入り込んで暗躍している事を突き止めた。
イザップナー元最高指導官と頻繁に接触している事も掴んでおり、栄耀同盟とイザップナー派が何かを企んでいる事は明白。この機会に国内の不穏分子を一掃するべく、イザップナー派と目される人物の身辺調査を行っていたらしい。
その過程で、中枢施設である議会堂に食糧や備品を納入する業者の品目に、不自然な点を見つけて調べてみたところ、上流階級の婦人二人が軟禁状態にある事が分かったのだ。
フォンクランク側から提供された『近衛兵の家族周りに栄耀同盟の影あり』の情報と照らし合わせて、その貴婦人が人質である可能性が高いと判断された。
現在、イザップナー派と栄耀同盟の工作員を一網打尽にする作戦が進められており、議会堂はその作戦の主戦場となる。戦闘が始まれば、人質の二人は証拠隠滅に消されるかもしれない。
問題の近衛兵とその家族が人質にされている件に関しては、既に女王リシャレウスの知るところであり、寧ろ女王からの救出命令がフォンクランクを経由してもたらされた形になっていた。
そのおかげで、ブルガーデン内に蔓延るイザップナー派や栄耀同盟にも、こちらが人質の存在に気付いている事を気取られなかった。
「我々の作戦は既に動いている。救出するチャンスは、今夜から明け方にかけてだ」
「ふむふむ、施設の構造は特に変わってないんだね」
一網打尽作戦が遂行されている裏で、人質の救出は迅速に進めなければならない。本来であれば、他国の密偵がここまでブルガーデンの中枢に触れるような作戦に関わる事は有り得なかった。
だが、特殊な風技の使い手として潜入工作の腕が飛び抜けて高く、実質『女王からの救出命令』を持って来た事になるレイフョルドが、人質の救出を受け持つ事になった。
「抜け道の出口に我々の案内を配置しておく。上手く救出したなら、後は彼等に従ってくれ」
「了解だよ。それじゃあ行って来るねー」
女王派の密偵集団との打ち合わせを終えたレイフョルドは、気負う様子もなく中枢施設への潜入を開始した。既に施設の構造に関する詳細は頭の中に入っている。
イザップナー体制の時代には実際に何度か潜り込んだ経験もあるので、その足運びに迷いは無い。
作業用の通路や塞ぎ忘れの点検口。手抜き工事による壁石の未接合部に細工して作った隙間などを駆使して、中枢施設の内へと入り込む。
最も監視の厳しい出入り口さえ抜けてしまえば、後は普通の軍事施設よりも手薄で動き易かった。時折、通路を行く施設職員や精鋭団員をやり過ごす。
(さて、この先が官僚向けの個室が並ぶ区画だね)
石造りの重厚さが目立つ基本階や一般兵舎区画と比べて、精鋭団幹部や官僚向けの宿舎区画に入ると、艶やかに磨き上げられた床に壁の装飾も豪華になって、急に高級感が増す。
広い廊下の両側には、鍵型に張り出した短い塀が一定の間隔で設けられており、塀の向こうにはそれぞれ個室の扉が並ぶ。
大きな貴族の屋敷にみるような、そこそこ広い間取りの部屋部屋を一つの個室として官僚達の宿舎にしているのがこの区画である。
人質が軟禁されているとされる個室の扉前に屈み、鍵穴から『索敵の風』を送り込んで中の様子を探った。
通常、風技の民が使う『索敵の風』は、波のように風の波動を広げて、その波動に干渉する他の神技の波動を感じ取る事で、対象を捕捉する。
その性質上、屋内では扉が閉じるなどしていると風が届かない為、索敵範囲が極端に狭くなる。しかし、風技を極めているレイフョルドは、特殊な風の使い方で扉の向こうの様子まで探り出せる。レイフョルドの索敵は、風の波動を空気に溶け込むように浸透させるので、小さな隙間でもあれば容易に扉の向こうまで入り込む。
しかも、触れた相手にはそれを神技の波動だと感じさせない。自分の存在を隠したまま、一方的に相手を索敵で捕捉し続けられるのだ。
そんな特殊な索敵の風で調べた結果、正面の大広間に精鋭団員らしき存在を二人ほど確認出来た。左側の廊下に並ぶ部屋の中に女性が二人。右側の廊下は厨房や湯浴み場に繋がっていて、こちら側の小部屋にも女性一人を確認出来た。
(ふむ、正面の精鋭団員はイザップナー派かな? 人質の見張り役ってところだね)
救出対象は、左側の部屋にいる女性二人だ。まずは見張りの気を逸らして、気付かれないよう中に潜り込まなければならない。
扉は既に開錠済みであるが、見張り役は大広間の奥のソファーに並んで座り、出入り口の方を向いている。正面のローテーブルには酒瓶とグラス。ささやかな酒盛りをしながら寝ずの番をしているようだ。
片方がトイレ休憩にでも席を外すのを待って、その間に残った一人が出入り口から意識を外すほど大きく余所見をする――という状況にでもならない限り、正面から入るのは無謀な配置。
だが、レイフョルドは二人同時に扉から目を放す隙を作って潜入する方法を取った。見張り役の二人に風技の波動を気取られないよう、糸の様に絞った風を伸ばしていく。そうして彼等の片方が酒瓶に手を伸ばすのを見計らい、酒瓶に風を繋いでかるく引っ張る。僅かに位置をずらした結果、手にぶつかって弾き飛ばされた酒瓶がローテーブルから転がり落ちた。
「あっ」
「何やってんだ、もう酔っぱらってんのか?」
と、呆れたように指摘する相方が手にしたグラスに、風の糸を繋いで下に引っ張る。滑り落ちたグラスがローテーブルの上でゴトンッと跳ねて、アルコールの水溜まりを作った。
「うわわっ」
「お前こそ何やってんだ」
見張り役二人の視線が転がった酒瓶とグラスに向いた瞬間、レイフョルドは扉を風の膜で包み込みながら素早く開いて潜り抜ける。
開閉音も風圧も一切起こさず、正面の大広間からは僅かに死角となる壁の影に隠れた。そこから壁を伝って天井に張り付き、大広間の様子を窺う。
見張り役は酒瓶とグラスを拾いつつ、酒を零したローテーブルをどうにかしようと右往左往している。彼等の意識を更に下に向けるべく、ローテーブル上の酒溜まりに風の糸を繋いで彼等の足元へ流れるよう誘導する。
「あーもう、何か拭くものないか拭くもの」
ブーツの隙間に入り込んだらしく、しきりに足元を気にしている見張り役を尻目に、レイフョルドは天井を這って移動する。この移動法も、風の膜を使った特殊な風技だ。
天井に張り付くだけなら、真似出来る風の使い手はいるが、神技の波動が広がらないよう、自身の周囲にまで凝縮して行使出来る者は、現在のところレイフョルドくらいしかいない。
もっとも、ここまで実用性を高められたのは、悠介に貰った『風技の指輪』による神技力の底上げ込みの結果ではあるが。
(事前に調べた通り、他に見張りは居ないみたいだね)
玄関の扉の外から探った時と同じように、念の為もう一度屋内に『索敵の風』を放ってみたが、特に索敵漏れは無いようだった。ここまでくればもう、救出任務の八割は成功したと言える。
音も無く天井から下りて部屋の一つに滑り込んだレイフョルドは、この部屋のベッド脇に素早く近付くと、眠っている人物を確認した。どうやら救出対象の一人で間違いないようだ。
周囲に浸透させた風に防音効果を持たせつつ、片膝をついてその令嬢に声を掛ける。
「女王派の代理で救出に来ました。直ぐ準備してください」
「っ! ……分かりました」
令嬢は目を覚ました瞬間こそ驚いた表情を浮かべたが、大声を出す事もなく直ぐに状況を理解してベッドから起き出した。手早く上着と外套を羽織って外に出る準備を済ませる。
「まずは隣の部屋に移るから、慌てず静かにねー」
「はい」
隣の部屋には彼女の母親が軟禁されている。こちら側の廊下は大広間の奥からは死角になっているので、音や神技の波動にさえ気を付けていれば、見張りに気付かれる事は無い。
令嬢を連れて速やかに部屋を移動したレイフョルドは、同じように母親を起こしてこれから脱出する旨を告げた。
実は、こちらの部屋には緊急用の脱出路に繋がる隠し扉がある。家具の一部を動かしてその隠し扉を開く。この仕掛けは部屋側からしか開けられないようになっているので、わざわざ玄関からの潜入になったのだ。
「それじゃあ行きますよ、しっかり付いて来てくださいね~」
淡い光を放つ小型のリーンランプを翳したレイフョルドは、母娘を先導して秘密の抜け道を進んで行く。狭い脱出路の階段を上り続ける事しばらく、三人は中枢施設の出入り口から離れた場所にある路地の一角に出た。脱出路の出口には、女王派の協力者が待機していた。
彼等に母娘を引き渡して、今回のレイフョルドの任務はほぼ完遂となった。
「あ、あの、実はお願いが……」
後は安全な場所に引き揚げるだけという段階で、令嬢が自分達の使用人も助けてほしいと願い出た。高貴な身分の女性二人を軟禁するに当たって身の回りの世話をさせる為に、彼女達の屋敷から一緒に連れて来られたらしい。
「あんな場所に一人で置いて行くなんて出来ないわ。お願い、彼女も助けてあげて」
令嬢にとってその使用人は、小さい頃からの友人のような親しい仲なのだという。その気持ちは分かるとしながらも、レイフョルドは首を振る。
「ごめんねぇ、それはちょっと無理なんだ」
使用人が居る小部屋は、大広間を横切った反対側の廊下の先になる。向こう側には脱出路に繋がる隠し扉も無く、流石にリスクが高過ぎる。
今回の作戦は、イザップナー派と栄耀同盟を一網打尽にする事が本命である。一応、人質の救出も実質的に『女王の命令』という形になってはいるが、公式なものでは無い上に、人命を重視した女王の慈悲によって急遽組み込まれたものだ。
本命の作戦が大詰めを迎える予定である明け方までは、栄耀同盟側に異変を悟られてはならない。冷たい様だが、あまり重要でない使用人一人の為に、進行中の作戦を見直すリスクは負えない。
「そういう訳なんで、申し訳ないけど諦めて貰えないかな」
レイフョルドは、出来るだけ優しい口調を心掛けながらも、お嬢様の世間知らずな我が侭に付き合う事は出来ないという、重い響きを含ませて懇願を断った。
高貴な者の嗜みで言外の意図を感じ取った令嬢は、そのままうつむいて黙り込んでしまった。
(これは嫌われちゃうかな~)
密偵などという仕事柄、人に疎まれる事には慣れている。まあ仕方ないねと、特に気にする事も無く女王派の一行と共に母娘を護衛しながら、彼女らを匿う屋敷へと移動を始めた。
――それは唐突に現れた。
「こんばんは」
「っ!?」
一行の前方に、紅いコートを羽織った黒髪の少女が降り立つ。フォンクランクでは『黒翼の乙女』と呼称される異世界からの来訪者。都築朔耶。英雄・田神悠介と同郷の存在だ。
「大丈夫、彼女は味方ですよ」
突然現れた彼女に、思わず警戒する女王派の協力者達を、レイフョルドが軽く説明して宥める。周囲の動揺など何処吹く風といった様子の朔耶は、レイフョルドを含む一行を見渡しながら言った。
「使用人さんの救出に協力するから、誰か付いて来て?」
その言葉から、彼女は一連の救出劇を見ていたと思われる。レイフョルドの背中に、嫌な汗が流れた。
「いや~話には聞いてたけど、僕以上に唐突だねぇ」
どこに潜んでいたのか全く分からなかったと、レイフョルドは自分が捕捉出来なかった事を認めつつ、答えてくれるかどうかは分からないが種明かしを求める。
「あん、精霊の視点で見てたのよ」
朔耶は『世界の壁越しに見ていた』と軽く答えた。彼女の掻い摘んだ説明によれば、眠った状態で精霊と意識を繋いで、世界の何処にでも視点を運ぶ事が出来るという。
また一つ、こちらでは対処不能な彼女の能力が明らかになった。その朔耶が、先程脱出して来た地下施設に繋がる抜け道のある路地へと足を向けたので、レイフョルドは一言忠告する。
「残念だけど、隠し扉は閉じて来たから、脱出路側から部屋に入り込むのは無理だよ?」
「それは大丈夫。ちゃんと気付かれないようにもするし」
問題無いから任せてという彼女の自信満々な様子からして、恐らく可能なのだろう。軽く息を吐いてお手上げポーズを見せたレイフョルドは、女王派の協力者達と母娘を先に行かせて、使用人の救出には自分が同行する事にした。
「じゃあ行こっか」
「貴女の腕前を楽しみにしてますよ」
路地に向かう朔耶と、その後ろに続くレイフョルドに、令嬢から声が掛けられる。
「あ、あのっ、彼女の事、よろしくお願いします!」
令嬢に頭を下げられた朔耶は、それに頷いて応えた。
路地の脇道の壁に隠された脱出路から地下へと下りる。朔耶が光の玉を浮かべて明かりを確保したので、リーンランプを再び出す必要は無かった。細長い階段を下り、幾つかの角を曲がって平坦な床が伸びる場所、隠し扉の裏側に辿り着く。
この隠し扉は、部屋側にしか開く為の取っ手や開錠の仕掛けが付いていないので、こちら側から開ける事は出来ないようになっている。
「さて、この通りここは塞がってるんだけど――」
どうやって開くのか訊ねるレイフョルドが言葉を終える前に、隠し扉の壁が静かに開いた。
「……!」
「あたしの精霊って便利でしょ」
朔耶が使役している精霊の力を振るえば、どんな鍵や仕掛けも行く手を阻む事は出来ない。
この隠し扉を隠す為の家具が部屋の中では脇に除けられたままだが、例え扉の前に置いてあっても浮かせて移動出来るという。
朔耶という人一人を浮かせて空を飛ばせている時点で、その程度は可能かとレイフョルドは納得する。
「ステルスモードで行くから、あたしから離れないでね」
部屋に入った朔耶は、そう言ってレイフョルドごと球状に何かを纏った。レイフョルドが普段から気配を消す際に使っている、音や神技の波動を凝縮して拡散させない風の膜に似ていた。
(これは……光の屈折も利用している? 風技だけで再現するのは無理そうだなぁ)
炎技や水技と併用すれば、何とか視覚的に姿を隠す事までは模倣出来そうだが、二つ以上の神技を精細な制御で維持し続けるのは至難の業。
もし実用レベルで使うとするなら、異なる神技を極めたそれぞれの神技の使い手が、二人以上で協力して同時展開する事でやっと、というところだろう。
レイフョルドが朔耶の力を間近に感じ、その解析と考察に頭を抱えそうになっている間も、救出活動は粛々と進められる。
廊下に出て堂々と大広間を横切って行く。奥のソファーでは、見張り役のブルガーデン精鋭団員が相変わらず控えめな酒盛りをやっていた。彼等がこちらに気付く様子は無い。
そのまま使用人の小部屋に入ると、休んでいた使用人を朔耶曰く『ステルスモード』の範囲内に取り込みつつ起こして事情を話し、元来た道を戻って行く。
そうして脱出路に入ると、隠し扉を閉じて鍵を掛け、ついでに扉前の家具も元の位置へと戻しておいたそうな。偽装も後始末も完璧だ。
「サクッと救出成功」
「……おみごと」
路地に出て作戦終了を告げる朔耶に、レイフョルドは若干脱力しながら苦笑気味に一言称えた。何せ、リシャレウス女王から人質救出に関する話をフォンクランクに持って来たのは、朔耶だ。
初めから朔耶が救出に動いていれば、恐らく自分よりも安全確実に、女王派の作戦との兼ね合いを考える必要もないほど迅速に救出を終えていただろう。
一番難題な部分だけ手伝いに来た事から考えるに、フォンクランクとブルガーデンの関係をより強固にする為に、わざわざ闇神隊長を経由させたのだろうと当たりを付ける。
「じゃああたしはこれで帰るから、後はよろしくね」
「ええ、お疲れさまでした。――色々参考になりましたよ」
ひらひらと手を振った朔耶は、現れた時と同じく唐突に消えた。それに驚いている使用人を連れて、レイフョルドは令嬢とその母親を匿う女王派の協力者達の屋敷へと急ぐのだった。
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