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よろずの冒険者編
第三十話:コウの帰還2
狭間世界の魔導技術製品を、邪神・悠介がカスタマイズ加工して組み上げた、小型汎用戦闘機がフラキウル大陸の空を行く。
コウを乗せたエアバイクのような外観をした『ミニミニ魔導船(コウ命名)』は、砂漠地帯を抜けてグランダール領の草原地帯に差し掛かった。
前方に国境を護る砦が見えて来る。悠介が『不死なる存在であるコウに合わせて調整した』と言っていただけあって、安全性より性能寄りで造られたミニミニ魔導船の足は、かなり速い。
エッリアの離宮から国境の砦まで、伝書鳥ぴぃちゃんの翼で約一日は掛かる距離があるのだが、出発して一時間も経たない内にグランダール領まで到達した。
このペースなら、王都トルトリュスには午前中にも到着しそうであった。
――マジで速いなそれ、そのまま王都に乗り付けたら騒ぎにならないか?――
『どうだろう? 博士が昔から似たようなの作ってるみたいだから、それほどでもないかも』
邪神さん半端ねーなと感心している京矢は、魔導船が飛び交うトルトリュスの上空に、これだけ小さな乗り物で飛び込むと悪目立ちしないかと危惧するが、コウは多分大丈夫と楽観的だ。
機体の性能面は兎も角として、一人乗り用の小型魔導船なら、アンダギー博士が魔導船技術の開発実験で何度か制作して、王都の空を試験飛行したという記憶がある事を挙げる。
大体は飛行中に暴走したり爆発したりしていたようだが。
――まあそりゃそうか――
あの大きな魔導船や、ボートサイズの魔導艇に落ち着くまで、色々試行錯誤があったんだろうなと京矢は納得している。
『博士は派手で目立つこととか好きだから、王都に下りる時はちょっと工夫するよ』
――工夫って……ああ、なるほどな。それは目立ちそうだ――
交信を通じてコウの『工夫』内容を読み取った京矢が、その演出は中々面白そうだと、楽しみに期待する感情を抱いたのが伝わって来た。
そんなこんなと飛び続ける事しばらく。
フラキウル大陸の南東部に栄えるグランダール王国。岩山を繋ぐように連なる三重の防壁に囲まれた堅牢な魔導文明都市。王都トルトリュスが見えて来た。
王都周辺の上空には、浮遊陣地の発着場に接舷したり、これから何処かへ飛び立つ魔導船や飛竜の姿も見える。
魔導船は一応全て軍属だが、民間船扱いで運航している遠方の街との定期便もある。
『この辺で乗り換えよう』
――あんまり近付くと気付かれるもんな――
ミニミニ魔導船の速度を緩めたコウは、そのまま岩山の麓まで高度を下げる。
適当に開けた場所に着陸しようとしたが、ごつごつと複雑に隆起した岩ばかりの地面には降ろせそうになかったので、宙に浮かせたまま異次元倉庫に仕舞う。
そして複合体を取り出し、少年型から乗り換えた。
複合体に追加された邪神製『浮遊装置・改』を起動させて浮き上がり、風の魔術も使って姿勢を安定させると、再び王都に向かって飛び立つ。
複合体コウの姿は、王都トルトリュスではアンダギー博士絡みの冒険者ゴーレムとして、割と良く知られている。
そんな複合体が空を飛んで来れば大層目立つであろうが、魔導船を発明したアンダギー博士の作品でもある冒険者ゴーレムが空を飛んでも、多くの人は驚きよりも納得する方に傾くだろう。
――つまり、騒ぎは直ぐ収まる、と?――
『ボクのかんぺきなけいかく!』
――そぉかぁ~?――
今回コウは、博士に複合体のメンテナンスを優先してもらいたいので、小型汎用戦闘機や携帯拠点の所持情報は伏せておくつもりでいた。
なので複合体により注目してもらう為にも、新機能である飛行能力を前面に推しながらの帰還を演出するのだ。
今日も飛竜と魔導船で賑わう王都の空。運搬用の魔導艇で魔導船に積み込む荷物を運んでいた作業員達が、西北方向から飛んで来たそれに気付いて声を上げる。
「おい、見ろよあれ!」
「何だありゃ、甲冑が飛んでる?」
「鎧の魔物?」
見慣れた日常の風景に交ざる異物感。突然現れた空飛ぶ甲冑に、皆が騒ぎだす。
そんな中、浮遊陣地に詰めている監視員や警備兵、魔導船の定期便を利用している冒険者達がその正体に気付く。
「あれは……冒険者ゴーレムのコウだな」
「ああ、あのガウィーク隊の」
「あのゴーレム、空まで飛べるのかよ」
「しばらく見なかったが、またグランダールで活動するのかな」
「そういや、レイオス王子の冒険飛行に同行したって聞いたぞ? 王子も帰国してるのか?」
やいのやいのと注目を浴びつつ、複合体コウはトルトリュス王宮群の魔術研究棟区画にある研究施設群の外れ、アンダギー博士の研究所前広場へと降下していく。
広場を囲むように立ち並ぶ研究施設からは、そこに所属する魔導技士や魔術士達が、窓越しに様子を窺っている。
「実験か?」
「いや、鐘は鳴ってないし、大丈夫だろう」
この広場に面する研究施設は、アンダギー博士が魔導兵器実験を行う際には一斉に防御魔術を発動する。過去の教訓から得た自衛手段。
昔は博士の実験の度に周辺の施設が被害を被っていたのだ。
広場にふわりと下りて来て、ズシンと着地する複合体コウ。着地した反動で再び浮き上がらないよう、足が着く瞬間に浮遊装置の出力を絞った。
コウは、広場の真ん中でぐるりと周囲を見渡して、『帰って来たなぁ』と懐かしく感じる。
そうして歩き出そうとしたところで、研究所の大型搬入口が開いて、アンダギー博士が複合体の検査用観測装置付き台座を乗せた台車を引きながら飛び出して来た。
「うひょふはぁ! なんじゃそれはっ! なんじゃそれはああああ! はよっ! はよ乗せい! サータ! 魔力計測機と精霊因子測定機の準備じゃ! 王宮の魔導技士共にも声を掛けい!」
某釣りキ〇な少年っぽい走り方で台車を引いて来た博士は、台座に乗るようコウに急かしながら助手のサータに指示を出す。
『博士バグりそう』
――テンション振り切れてんな――
複合体を専用の台座に納めて少年型になったコウは、研究所に戻りながらアンダギー博士達に『狭間世界』に行って来た事を話した。
以前の凶星騒ぎの時に空に見えていた、巨大な大地が漂う世界での冒険譚。
複合体が飛べるようになったのは、狭間世界のとある国が作った魔導技術製品を『邪神・悠介』に埋め込んで貰った事などを説明する。
「それからこれ、博士におみやげ。朔耶からの差し入れだよ」
研究所内に着いてから、コウは異次元倉庫より『船舶用魔導動力装置』と『小型魔導動力装置』を取り出した。
アンダギー博士は、レイオス王子達が持ち帰る古代文明の遺産を研究する為に、高出力で安定した魔力の供給が可能な装置の開発を進めている。
しかし、思うように成果は上がらず手古摺っていた。その様子を、異世界越しに精霊の視点で確認した朔耶が、コウや悠介に相談。
狭間世界で現役の魔導技術から、大小の動力装置を見繕って譲渡する事になったのだ。
「うほーーっ! 異世界――狭間世界の魔導具じゃとぅ!?」
「邪神って……その、大丈夫なの?」
狂喜乱舞している博士の隣で、サータは異界の邪神が関わっているという装置に危険性は無いのかと心配している。
凶星騒動の時の魔王トゥラサリーニのような、危険な存在を生み出したりはしないかと。
「邪神って事になってるだけで、ほぼ精霊体のふつーの人だから危なくないよ」
「コウ君、普通の人に精霊体なんていないわ」
サータの静かなツッコミなど受けつつ、コウは喜びの舞を踊っている博士や、研究所に集まった魔導技士達に、狭間世界産・魔導動力装置の使い方を説明するのだった。
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