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5巻
5-2
世界を渡る際、肉体から精神と魂が一旦離れてしまうらしいが、そのままバラバラになってしまわないように保護出来るなら、朔耶の協力で沙耶華と京矢を元の世界に戻す事が出来るという。
またぞろレイオスが微妙な表情を浮かべるが、沙耶華を故郷に還してやる事自体には理解を示しているようだ。コウがナッハトームの帝都エッリアへ戻る前に朔耶が訪ねてくれば、その辺りの話も進めやすくなるだろう。
複合体のメンテナンスと〝ボーの素〟を注入した際の超回復能力の副産物である活性効果などを報告する為、コウはもうしばらく博士の研究所に留まる予定である。
夕刻。王宮群の上層にある秘密の憩い場でロゼス王子と再会したコウは、王都を出発してからの事などを話題に雑談を交わしていた。レイオス王子とスアロ王子には先に話をしていたので、ロゼス王子にはその後の事も含めてスィルアッカ皇女が目指している帝国の在り方などを説明しておく。
「なるほどね。その場合、帝国と真に友好を結ぶには現皇帝の崩御が前提になるね」
「たぶん、スィルは躊躇しないと思うよ」
温厚そうな第三王子と人畜無害に見える少年の、色々と含みのある会話は、二人の和やかな見掛けとは裏腹に、帝国皇帝の暗殺を匂わせる危険な内容を孕んでいる。この秘密の憩い場を囲う背の高い草壁に身を潜めて王子を警護している騎士は、思わず周囲への警戒を深めた。
「先の侵攻で被った被害もばかにならないし、それが妥当なのかもしれないね」
「かんたんに仲良くなれるといいのにねー」
今は休戦という形をとっているグランダールとナッハトーム。スィルアッカ皇女の政策で今後本格的にグランダールとの友好を結ぼうとしても、現皇帝のガスクラッテ帝が納得しないのは目に見えている。
スィルアッカの帝国内での影響力は、ルッカブルク卿を味方につけてからは対抗する勢力もなくなった為、国の全権を掌握出来るほどと言って良い。
後はスィルアッカが皇帝に即位すれば、現皇帝派も帝国内の安定を優先して無理にグランダールとの敵対を推す事はないだろうと推測された。
従って現状、ガスクラッテ帝さえどうにかなれば、両国間の大きな問題は一つ片付く。
「穏便に済むといいねぇ」
「そうだねー」
『マーハティーニの件があるからなぁ』と、実はこの対話に半分参加していた京矢が、コウの心の奥から呟く。
スィルアッカは、帝国内の覇権を狙うマーハティーニの陰謀を阻止し、従順な支分国に仕立て上げる目的で、前国王レイバドリエードを、実の息子であるディードルバード王子に謀殺させた。彼女がその事を意識するあまり、今更自分が父帝を手に掛けるのを躊躇するのは卑怯であると考えないとも限らない。穏便に済ませられるなら、その方がいいと京矢も思うのだった。
翌日。朝から王宮群の上層区に出掛けたコウが、エルローゼ第一王女とお茶の席で再会を果たしていた頃。王都の下街を走る路地に一人の少女が出現した。
黒髪を靡かせ、赤いコートの裾を翻して颯爽と大通りに出た少女――朔耶は、王宮群のある方向を目指して歩き出す。
「うーん、改めて見るとやっぱり進んでる感じがするなぁ」
街の空を見上げれば、様々な用途に使われる魔導船とその魔導船に乗る為の小型艇が飛び交っている。時折り飛竜の姿も見える。トルトリュスは、東方オルドリア大陸にあるどの国よりも進んでいるという印象を彼女に与えた。
アンダギー博士を訪ねるに当たって、朔耶はとりあえず王宮の見える方へと歩いて行く。やがて城壁のような高い壁が続く道を進むうち、いかにも城門っぽい鉄柵風の大きな門の前で、そこを守る陽気そうな兵士に声をかけられた。
「失礼、貴女はもしや精霊術士のサクヤ殿ではありませんか?」
「あ、はい。そうです」
「え! 本物……あ、博士から話は伺っております。で、ではこちらへ――あ、いや少々お待ちを」
実は黒っぽい髪の少女が通りかかる度に冗談半分で声をかけていた兵士は、朔耶が本人だと分かると、慌てて門の詰所っぽい小部屋から伝送具らしき道具に向かってヒソヒソ声で連絡を送った。
「例の博士の、ああ、そうだ、本人らしい、案内の騎士を頼む。いや、普通の少女だよ――え? どうやって? ……無茶言うなよっ」
どうやら朔耶が来訪すれば案内するよう手配されていたらしく、アンダギー博士のところまで連れて行って貰えるようなのだが、何やら揉めている様子。やがて通信を終えた門番の兵士は、気が進まなそうな様子で振り返った。
「? どうかしましたか?」
「えーと、その……大変不躾で申し訳ないのですが――」
兵士はおずおずと、アンダギー博士からの要望を伝えた。
王宮群魔術研究棟区画、研究施設群の外れにあるアンダギー博士の研究所前広場にて、複合ゴーレムの研究成果を元に改修された魔導兵が数体、臨戦態勢で並んでいる。
広場の外周には博士の実験によく付き合わされる騎士団の部隊が陣取り、こちらは警戒態勢で待機中。今日この両者に激突する予定はなく、騎士団部隊は万が一に備えての出動である。魔導兵はこれからやって来る対戦相手を待っている状態だ。
その時、上空に黒い翼が現れた。
「来たか! 魔導兵よ、戦闘行動じゃ」
博士が命令を出すと、魔導兵は少しぎこちないながらも中々に素早い動作で散開し、迎撃態勢を取った。しかし魔導兵による包囲網の中央に舞い降りた漆黒の翼が仄かに紫色の輝きを纏って帯電したかと思うと、放射状に放たれた雷撃が魔導兵を直撃する。
カカカカアアンという乾いた轟音が鳴り響き、魔導兵の全機が煙を吹きながら倒れ伏した。
静まり返った研究所前広場に、一陣の風が吹き抜ける。
「なんじゃ、あっという間に終わってしもうたわ」
「これで良かったのかな?」
漆黒の翼を収めながら振り返って問う朔耶に、新型魔導兵のデータがこれっぽっちも取れなんだと頭を掻くアンダギー博士。サータ助手は唖然とした表情で目をぱちくりさせている。広場外周で待機していた騎士団部隊の間にも『……え?』というような雰囲気が流れていた。
「コウから聞いてはおったが、大したものじゃな! よくぞ来た、サクヤ嬢や」
クワッカカカカと笑って歓迎の意を示すアンダギー博士。サータ助手の指揮で片付けが進められている広場を後に、博士は朔耶を研究所の内部に案内した。
研究所内の広間へと通された朔耶は、テーブルの上に置かれていた見覚えのある物体に気付く。それは彼女がフレグンス王国で街灯事業をやっていた頃に作った、今では少し型落ちになってしまった『サクヤ式ランプ』だった。
「わお」
「そのランプはお主が作ったモノだそうじゃな、凶星騒ぎの時は重宝したぞい」
実は凶星の影響による魔力の乱れに対応した新型魔導器は、これを参考にしていたのだという博士の話を聞いて二度びっくりする朔耶。
「初めてこの街に来た時に魔導器の中身を覗いたんだけど、何か構造が似てるなーと思ったら……そういう事だったのね」
朔耶が『あたしスゲー』などと呟きながら懐かしい初期型サクヤ式ランプを観察していると、トレーにお茶を載せた沙耶華が広間に現れた。はたと目が合い、しばし硬直した後、おもむろに頭を下げる。
「えーと、こんにちは。もしかして沙耶華さん?」
「は、はい、そうです。朔耶さん、ですか?」
と、そこへ、研究所前広場の騒ぎと朔耶来訪の報を聞きつけたらしいレイオス王子が駆け込んで来た。
「サヤカ――!」
「あ……レイオス……?」
振り返った二人の少女に一瞬動きが止まるレイオス。沙耶華をしばし凝視し、間違いないと確信してから彼女の傍へと歩み寄る。『今の一瞬の間は何?』とでも言いたげにレイオスへとジト目を向ける沙耶華。
「あっはっはっ、一瞬見分けつかなかったのね」
そんな二人のやり取りを見て、朔耶は『あるある』と手を叩いて笑っていた。
2
王都トルトリュスの活気溢れる昼下がり。王宮群魔術研究棟区画にあるアンダギー博士の研究所の広間では、集まった魔術研究棟の代表魔導技士達や博士を前に、来訪した都築朔耶による異世界の存在と世界渡りについての簡単な講義が行われていた。
講義といっても、朔耶は魔術の専門家達に教授出来るほど魔法について詳しいわけではない。もっぱら以前に人から聞いた精霊との繋がりについてを、自分と共にある精霊からリアルタイムでアドバイスを受けながらの説明になる。
朔耶は強力な二体の精霊と契約していて、一体は〝黒の精霊〟と呼んでいるこちらの世界の精霊で、もう一体は地球世界から一緒にこちらへ渡って来ている〝神社の精霊〟というらしい。色々とアドバイスをしてくれるのは、〝神社の精霊〟の方なのだそうだ。
ちなみに、レイオス王子は政務で王城に戻っており、沙耶華はコウを呼びに行く名目で王子に同行している。
「ふむ、なるほど。概ねコウから聞いておった内容通りじゃな」
朔耶のたどたどしい説明で精霊と世界渡りの概念を理解した博士は、世界渡りに関する要点をまとめた。要は世界を渡る際に分離する精神と肉体と魂が、離れてもひとまとめになっていれば問題ない。
ひとまとめにするには、その三つを同じ精霊という袋の中に入れて移動すれば良い。
「この認識で良いな?」
「うん、それであってるみたい」
博士の問いに、肯定で答える朔耶。
「つまり、精霊との契約がなければ難しい、という事ですか」
サータ助手が世界渡りの条件を確認すると、博士は少し考えながら一つの可能性を挙げる。
「精霊で包む事が出来ればいいのであれば、人工の精霊でも良いのではないか?」
「人工の精霊って、何?」
小首を傾げる朔耶。博士は居並ぶ魔術研究棟の代表達に『よいな?』と目配せをすると、朔耶を特別な研究施設へと案内した。
「やほーコウ君」
「やほー朔耶」
魔術研究棟区画の廊下でハイタッチして挨拶を交わす朔耶とコウ。沙耶華と共に王城から下りて来たコウは、特別研究施設へと向かう博士達一行と合流した。これから一緒にボーの研究をしている施設に赴く。
ただのモンスターかと思いきや、実は強力な治癒装置であったボーは、グランダールでもかなり重要性の高いモノとして機密扱いにされており、一部の高位な魔導技士達しか研究に携われない。
治癒に関する技術は、戦時平時問わず、いつでもどこでも誰にでも需要のある貴重な産業だ。
厳重な警備が敷かれた入り口を通って研究室に入ると、広い部屋の中には地下の遺跡にあるボーの製造工場にも似た雰囲気の装置が並べられている。ここで〝ボーの素〟を生成する為の解析と実験、作られたボーの研究と管理などが行われていた。
〝ボーの素〟はある程度まで解析が進んでいるが、ボー本体の製造は地下遺跡にあった装置をそのまま持って来ており、同じく遺跡から回収した〝ボーの素〟を使って作られている。まだ完全なグランダール製ボーを作り出す段階には至っていない。
「これが所謂、人工精霊を使った古代文明の治癒装置、ボーじゃ」
博士はそう言って、朔耶に研究室で作られたボーを披露した。地下遺跡の製造工場で作られていた形の崩れたモノではなく、本来の丸い形をしたボーが数体、観察用の小部屋にふわふわと浮かんでいる。
コウが朔耶を見る。彼女はボーを観察しながら、自身に重なる精霊と何やら対話をしているようだった。
朔耶から発散されている魔力の光が、その意思を表すように瞬く。
「ふむふむ……」
「どうじゃ? 精霊の契約代わりに使えそうかの?」
「結論から言えば、『カノウダ』だって」
「おおうっ、可能か!」
自身に重なる精霊に聞いたという朔耶の話によると、ボーを形成する人工精霊は明確な自己意識など持っておらず、自律的に行動したりは出来ないが、精霊体としての安定度は十分。魔法生物に近いが生命体とも言えない、精霊石などに宿る精霊に近い存在に分類されるらしい。
「なんと、ちょっと見ただけでそこまで解析出来るのか……」
通常、精霊石に宿る程度の精霊のささやかな力では、人の精神と肉体と魂の分離を保護しきれない。が、これほどの力を持っているボーならば、十分に保護の役割を果たせるとの事だった。
ボーに包まれて世界を渡れば、魂と精神が迷子になる事故を防げる。たとえ保護対象者の精神に人工精霊が混ざったとしても、確固たる自己意識を持たないボーが対象者の意識に干渉する事はない。
「問題は、どうやって自己意識のないこのボーちゃんに、人の精神と魂と肉体の保護をさせるか、ってとこかな?」
「ふむ、ボーへの動作命令法を確立させれば良いのじゃな」
提示された問題点に対して直ちに解決案を導き出すアンダギー博士。あれよあれよという間に安全な世界渡りに必要な条件がまとめられていく。
この場に立ち会っている他の魔導技士達はあまり精霊術に詳しくない為、朔耶と博士の対話速度に理解が追い付かず、隣の同僚と意見交換をして内容把握に努めている。
――よく分からんが、安全に世界を渡る方法に目処がついたって事だよな? やっぱ博士すげーな――
『そうだねー。でもキョウヤが元の世界に帰れたら、ボク達はどんな風になるんだろうね?』
――それもそうだな、一緒に向こうへ行くわけにもいかないし――
その辺りについて、京矢は朔耶に後で色々と相談してみる事にした。
夕刻。アンダギー博士の研究所に家事をしに戻った沙耶華と共に、コウは広間で朔耶から世界渡りについて話を聞いていた。博士とサータは特別研究施設に残り、ボーの研究に取り組んでいる。
「なるほどー、じゃあキョウヤにも同じ事がおきるんだね」
「多分ね。ただし、コウ君の視点にしか合わせられないと思うけど――って言ってるわ」
朔耶が世界を跨いで契約している〝黒の精霊〟との繋がりによって起きるらしい現象――地球世界で眠っている時に、こちらの世界で精霊の視点に立って自由に行動出来る〝夢内異世界旅行〟について、朔耶の口から語られる。
コウがこちらに残って京矢が元の世界に帰った場合、コウとの繋がりは維持されたままなので、朔耶が便利に使っている〝夢内異世界旅行〟と似た現象が起きるであろうと推測される。
――まあ、害がないなら別に困らないな――
『だねー』
「ただ問題は、別のところにあるのよねー……」
腕組みをしてうむむと唸る朔耶。ともかく、世界渡りによる健康への影響などについては、今のところ心配しなくとも良い。
とりあえずは帰還の目処が立った事で、二人の家族にいつどのように連絡を入れるかなど、世界渡り後の振る舞いについて考えておかなければならない。面倒が起こりそうなら、飛行機事故で死んだと見なされている状態のままの方が良いという場合もある。
「二人はその辺り、どう?」
「家は、大丈夫だと思います……生命保険とか色々大変そうだけど」
「キョウヤも問題ないって言ってるよー」
更に、二人がこちらに来てから一年以上経っているという部分が、また色々と厄介であった。
朔耶も約二ヶ月の失踪後、血塗れの姿で捜査員に発見されるという経験をしているが、その時は学校も夏休み期間に入っていた為、後の生活にもスムーズに復帰出来た。
しかし、結局あの大量の返り血は何だったのか、失踪中はどこで何をしていたのか、という警察の疑問には納得させられるだけの答えを提示出来ず、だが調べたところで何も分かるはずもなく――
結局、『都築朔耶失踪事件』は色々な謎を残す未解決状態のまま、現在も捜査中という形で一応の終結を迎えている。
京矢と沙耶華は飛行機事故という社会的に目立つ大きな要素に加え、行方不明期間がおよそ一年。家族には真実を明かすとして、周囲にはどのように繕うべきか。
「事故のショックで記憶喪失になってた事にしようかって、キョウヤが提案してるよ」
「どこか近くの島に流れ着いて、そこで暮らす老夫婦のお世話になってたとか……」
「うーん、案外そういう感じでいいのかも」
「実穂に力を借りればどうにか出来るかな……?」
朔耶がぼそりと呟く。彼女はお金持ち家のお嬢様な友人に頼ろうと画策しているようだ。元の世界への帰還に向けて色々動いてくれる朔耶には、京矢も沙耶華も感謝しきりであった。
「それはそうと、二人とも向こうに帰った後で、またこっちに来る予定は?」
「わたしは……その、レイオスが……」
沙耶華はレイオスとの関係の為、一度家に帰って落ち着き、またこちらに来られるなら来たいという。京矢にも色々とこっちに居る理由が出来ていると、コウが説明した。
「今は帰りたいって、そこまで強く思ってないみたい」
「……」
「そかそか」
京矢の心情を明かすコウのひと言に、自身にも覚えのある沙耶華は複雑な表情を浮かべ、朔耶はそんな二人に頷いて理解を示す。
元の世界に恋人が居るなどの事情でもあればまた違うのだろうが、現代日本での一年と比べて、こちらの世界での一年は人間関係一つとっても中々に濃い。隣人や仲間との繋がりがなければ、生きていけない世界だからだ。
一人でも安全で快適に暮らしていけるという環境は、煩わしいモノと共に他者を遠ざけ、縁を希薄にし、意外にも人を孤独へと誘う危うさを内在しているのだ。
二人の意思を確認した朔耶は、まずはご両親への連絡とその内容、段取りなどを話し合った。
世界渡り用人工精霊の製造やコントロール法の確立については、アンダギー博士を信頼して全て任せる。丸投げとも言うが。
「やっぱり証拠として持って行くのは、本人確認用のビデオメールとかがいいかな?」
「そう、ですね。持ち物とか殆どないですし」
「キョウヤもいい考えだって言ってるよ」
となれば、近いうちに京矢君の居る帝都エッリアにも顔を出さねばなるまいと、朔耶は簡単な日程を組んでいく。京矢と沙耶華の家の様子も確かめておかなくてはならない。
「引越ししてたり――って心配はないかな」
「どうでしょう。うちは持ち家なので大丈夫だと思いますけど」
「キョウヤは場合によってはあるかもって言ってるよ」
そうして二人の住所を書き取った朔耶は、またこっちに来た時に連絡すると言って唐突に消えた。
「帰っちゃったね」
「……いきなりふっと消えちゃうのねー」
ちょっとびっくりしたと言って目を丸くしている沙耶華であった。
それから三日おきくらいの間隔で博士の研究所を訪ねて来るようになった朔耶は、その都度、京矢と沙耶華の実家の様子を報告してくれた。友人の伝手で専属の探偵を雇ったらしく、かなり詳細な情報が伝えられた。
またぞろレイオスが微妙な表情を浮かべるが、沙耶華を故郷に還してやる事自体には理解を示しているようだ。コウがナッハトームの帝都エッリアへ戻る前に朔耶が訪ねてくれば、その辺りの話も進めやすくなるだろう。
複合体のメンテナンスと〝ボーの素〟を注入した際の超回復能力の副産物である活性効果などを報告する為、コウはもうしばらく博士の研究所に留まる予定である。
夕刻。王宮群の上層にある秘密の憩い場でロゼス王子と再会したコウは、王都を出発してからの事などを話題に雑談を交わしていた。レイオス王子とスアロ王子には先に話をしていたので、ロゼス王子にはその後の事も含めてスィルアッカ皇女が目指している帝国の在り方などを説明しておく。
「なるほどね。その場合、帝国と真に友好を結ぶには現皇帝の崩御が前提になるね」
「たぶん、スィルは躊躇しないと思うよ」
温厚そうな第三王子と人畜無害に見える少年の、色々と含みのある会話は、二人の和やかな見掛けとは裏腹に、帝国皇帝の暗殺を匂わせる危険な内容を孕んでいる。この秘密の憩い場を囲う背の高い草壁に身を潜めて王子を警護している騎士は、思わず周囲への警戒を深めた。
「先の侵攻で被った被害もばかにならないし、それが妥当なのかもしれないね」
「かんたんに仲良くなれるといいのにねー」
今は休戦という形をとっているグランダールとナッハトーム。スィルアッカ皇女の政策で今後本格的にグランダールとの友好を結ぼうとしても、現皇帝のガスクラッテ帝が納得しないのは目に見えている。
スィルアッカの帝国内での影響力は、ルッカブルク卿を味方につけてからは対抗する勢力もなくなった為、国の全権を掌握出来るほどと言って良い。
後はスィルアッカが皇帝に即位すれば、現皇帝派も帝国内の安定を優先して無理にグランダールとの敵対を推す事はないだろうと推測された。
従って現状、ガスクラッテ帝さえどうにかなれば、両国間の大きな問題は一つ片付く。
「穏便に済むといいねぇ」
「そうだねー」
『マーハティーニの件があるからなぁ』と、実はこの対話に半分参加していた京矢が、コウの心の奥から呟く。
スィルアッカは、帝国内の覇権を狙うマーハティーニの陰謀を阻止し、従順な支分国に仕立て上げる目的で、前国王レイバドリエードを、実の息子であるディードルバード王子に謀殺させた。彼女がその事を意識するあまり、今更自分が父帝を手に掛けるのを躊躇するのは卑怯であると考えないとも限らない。穏便に済ませられるなら、その方がいいと京矢も思うのだった。
翌日。朝から王宮群の上層区に出掛けたコウが、エルローゼ第一王女とお茶の席で再会を果たしていた頃。王都の下街を走る路地に一人の少女が出現した。
黒髪を靡かせ、赤いコートの裾を翻して颯爽と大通りに出た少女――朔耶は、王宮群のある方向を目指して歩き出す。
「うーん、改めて見るとやっぱり進んでる感じがするなぁ」
街の空を見上げれば、様々な用途に使われる魔導船とその魔導船に乗る為の小型艇が飛び交っている。時折り飛竜の姿も見える。トルトリュスは、東方オルドリア大陸にあるどの国よりも進んでいるという印象を彼女に与えた。
アンダギー博士を訪ねるに当たって、朔耶はとりあえず王宮の見える方へと歩いて行く。やがて城壁のような高い壁が続く道を進むうち、いかにも城門っぽい鉄柵風の大きな門の前で、そこを守る陽気そうな兵士に声をかけられた。
「失礼、貴女はもしや精霊術士のサクヤ殿ではありませんか?」
「あ、はい。そうです」
「え! 本物……あ、博士から話は伺っております。で、ではこちらへ――あ、いや少々お待ちを」
実は黒っぽい髪の少女が通りかかる度に冗談半分で声をかけていた兵士は、朔耶が本人だと分かると、慌てて門の詰所っぽい小部屋から伝送具らしき道具に向かってヒソヒソ声で連絡を送った。
「例の博士の、ああ、そうだ、本人らしい、案内の騎士を頼む。いや、普通の少女だよ――え? どうやって? ……無茶言うなよっ」
どうやら朔耶が来訪すれば案内するよう手配されていたらしく、アンダギー博士のところまで連れて行って貰えるようなのだが、何やら揉めている様子。やがて通信を終えた門番の兵士は、気が進まなそうな様子で振り返った。
「? どうかしましたか?」
「えーと、その……大変不躾で申し訳ないのですが――」
兵士はおずおずと、アンダギー博士からの要望を伝えた。
王宮群魔術研究棟区画、研究施設群の外れにあるアンダギー博士の研究所前広場にて、複合ゴーレムの研究成果を元に改修された魔導兵が数体、臨戦態勢で並んでいる。
広場の外周には博士の実験によく付き合わされる騎士団の部隊が陣取り、こちらは警戒態勢で待機中。今日この両者に激突する予定はなく、騎士団部隊は万が一に備えての出動である。魔導兵はこれからやって来る対戦相手を待っている状態だ。
その時、上空に黒い翼が現れた。
「来たか! 魔導兵よ、戦闘行動じゃ」
博士が命令を出すと、魔導兵は少しぎこちないながらも中々に素早い動作で散開し、迎撃態勢を取った。しかし魔導兵による包囲網の中央に舞い降りた漆黒の翼が仄かに紫色の輝きを纏って帯電したかと思うと、放射状に放たれた雷撃が魔導兵を直撃する。
カカカカアアンという乾いた轟音が鳴り響き、魔導兵の全機が煙を吹きながら倒れ伏した。
静まり返った研究所前広場に、一陣の風が吹き抜ける。
「なんじゃ、あっという間に終わってしもうたわ」
「これで良かったのかな?」
漆黒の翼を収めながら振り返って問う朔耶に、新型魔導兵のデータがこれっぽっちも取れなんだと頭を掻くアンダギー博士。サータ助手は唖然とした表情で目をぱちくりさせている。広場外周で待機していた騎士団部隊の間にも『……え?』というような雰囲気が流れていた。
「コウから聞いてはおったが、大したものじゃな! よくぞ来た、サクヤ嬢や」
クワッカカカカと笑って歓迎の意を示すアンダギー博士。サータ助手の指揮で片付けが進められている広場を後に、博士は朔耶を研究所の内部に案内した。
研究所内の広間へと通された朔耶は、テーブルの上に置かれていた見覚えのある物体に気付く。それは彼女がフレグンス王国で街灯事業をやっていた頃に作った、今では少し型落ちになってしまった『サクヤ式ランプ』だった。
「わお」
「そのランプはお主が作ったモノだそうじゃな、凶星騒ぎの時は重宝したぞい」
実は凶星の影響による魔力の乱れに対応した新型魔導器は、これを参考にしていたのだという博士の話を聞いて二度びっくりする朔耶。
「初めてこの街に来た時に魔導器の中身を覗いたんだけど、何か構造が似てるなーと思ったら……そういう事だったのね」
朔耶が『あたしスゲー』などと呟きながら懐かしい初期型サクヤ式ランプを観察していると、トレーにお茶を載せた沙耶華が広間に現れた。はたと目が合い、しばし硬直した後、おもむろに頭を下げる。
「えーと、こんにちは。もしかして沙耶華さん?」
「は、はい、そうです。朔耶さん、ですか?」
と、そこへ、研究所前広場の騒ぎと朔耶来訪の報を聞きつけたらしいレイオス王子が駆け込んで来た。
「サヤカ――!」
「あ……レイオス……?」
振り返った二人の少女に一瞬動きが止まるレイオス。沙耶華をしばし凝視し、間違いないと確信してから彼女の傍へと歩み寄る。『今の一瞬の間は何?』とでも言いたげにレイオスへとジト目を向ける沙耶華。
「あっはっはっ、一瞬見分けつかなかったのね」
そんな二人のやり取りを見て、朔耶は『あるある』と手を叩いて笑っていた。
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王都トルトリュスの活気溢れる昼下がり。王宮群魔術研究棟区画にあるアンダギー博士の研究所の広間では、集まった魔術研究棟の代表魔導技士達や博士を前に、来訪した都築朔耶による異世界の存在と世界渡りについての簡単な講義が行われていた。
講義といっても、朔耶は魔術の専門家達に教授出来るほど魔法について詳しいわけではない。もっぱら以前に人から聞いた精霊との繋がりについてを、自分と共にある精霊からリアルタイムでアドバイスを受けながらの説明になる。
朔耶は強力な二体の精霊と契約していて、一体は〝黒の精霊〟と呼んでいるこちらの世界の精霊で、もう一体は地球世界から一緒にこちらへ渡って来ている〝神社の精霊〟というらしい。色々とアドバイスをしてくれるのは、〝神社の精霊〟の方なのだそうだ。
ちなみに、レイオス王子は政務で王城に戻っており、沙耶華はコウを呼びに行く名目で王子に同行している。
「ふむ、なるほど。概ねコウから聞いておった内容通りじゃな」
朔耶のたどたどしい説明で精霊と世界渡りの概念を理解した博士は、世界渡りに関する要点をまとめた。要は世界を渡る際に分離する精神と肉体と魂が、離れてもひとまとめになっていれば問題ない。
ひとまとめにするには、その三つを同じ精霊という袋の中に入れて移動すれば良い。
「この認識で良いな?」
「うん、それであってるみたい」
博士の問いに、肯定で答える朔耶。
「つまり、精霊との契約がなければ難しい、という事ですか」
サータ助手が世界渡りの条件を確認すると、博士は少し考えながら一つの可能性を挙げる。
「精霊で包む事が出来ればいいのであれば、人工の精霊でも良いのではないか?」
「人工の精霊って、何?」
小首を傾げる朔耶。博士は居並ぶ魔術研究棟の代表達に『よいな?』と目配せをすると、朔耶を特別な研究施設へと案内した。
「やほーコウ君」
「やほー朔耶」
魔術研究棟区画の廊下でハイタッチして挨拶を交わす朔耶とコウ。沙耶華と共に王城から下りて来たコウは、特別研究施設へと向かう博士達一行と合流した。これから一緒にボーの研究をしている施設に赴く。
ただのモンスターかと思いきや、実は強力な治癒装置であったボーは、グランダールでもかなり重要性の高いモノとして機密扱いにされており、一部の高位な魔導技士達しか研究に携われない。
治癒に関する技術は、戦時平時問わず、いつでもどこでも誰にでも需要のある貴重な産業だ。
厳重な警備が敷かれた入り口を通って研究室に入ると、広い部屋の中には地下の遺跡にあるボーの製造工場にも似た雰囲気の装置が並べられている。ここで〝ボーの素〟を生成する為の解析と実験、作られたボーの研究と管理などが行われていた。
〝ボーの素〟はある程度まで解析が進んでいるが、ボー本体の製造は地下遺跡にあった装置をそのまま持って来ており、同じく遺跡から回収した〝ボーの素〟を使って作られている。まだ完全なグランダール製ボーを作り出す段階には至っていない。
「これが所謂、人工精霊を使った古代文明の治癒装置、ボーじゃ」
博士はそう言って、朔耶に研究室で作られたボーを披露した。地下遺跡の製造工場で作られていた形の崩れたモノではなく、本来の丸い形をしたボーが数体、観察用の小部屋にふわふわと浮かんでいる。
コウが朔耶を見る。彼女はボーを観察しながら、自身に重なる精霊と何やら対話をしているようだった。
朔耶から発散されている魔力の光が、その意思を表すように瞬く。
「ふむふむ……」
「どうじゃ? 精霊の契約代わりに使えそうかの?」
「結論から言えば、『カノウダ』だって」
「おおうっ、可能か!」
自身に重なる精霊に聞いたという朔耶の話によると、ボーを形成する人工精霊は明確な自己意識など持っておらず、自律的に行動したりは出来ないが、精霊体としての安定度は十分。魔法生物に近いが生命体とも言えない、精霊石などに宿る精霊に近い存在に分類されるらしい。
「なんと、ちょっと見ただけでそこまで解析出来るのか……」
通常、精霊石に宿る程度の精霊のささやかな力では、人の精神と肉体と魂の分離を保護しきれない。が、これほどの力を持っているボーならば、十分に保護の役割を果たせるとの事だった。
ボーに包まれて世界を渡れば、魂と精神が迷子になる事故を防げる。たとえ保護対象者の精神に人工精霊が混ざったとしても、確固たる自己意識を持たないボーが対象者の意識に干渉する事はない。
「問題は、どうやって自己意識のないこのボーちゃんに、人の精神と魂と肉体の保護をさせるか、ってとこかな?」
「ふむ、ボーへの動作命令法を確立させれば良いのじゃな」
提示された問題点に対して直ちに解決案を導き出すアンダギー博士。あれよあれよという間に安全な世界渡りに必要な条件がまとめられていく。
この場に立ち会っている他の魔導技士達はあまり精霊術に詳しくない為、朔耶と博士の対話速度に理解が追い付かず、隣の同僚と意見交換をして内容把握に努めている。
――よく分からんが、安全に世界を渡る方法に目処がついたって事だよな? やっぱ博士すげーな――
『そうだねー。でもキョウヤが元の世界に帰れたら、ボク達はどんな風になるんだろうね?』
――それもそうだな、一緒に向こうへ行くわけにもいかないし――
その辺りについて、京矢は朔耶に後で色々と相談してみる事にした。
夕刻。アンダギー博士の研究所に家事をしに戻った沙耶華と共に、コウは広間で朔耶から世界渡りについて話を聞いていた。博士とサータは特別研究施設に残り、ボーの研究に取り組んでいる。
「なるほどー、じゃあキョウヤにも同じ事がおきるんだね」
「多分ね。ただし、コウ君の視点にしか合わせられないと思うけど――って言ってるわ」
朔耶が世界を跨いで契約している〝黒の精霊〟との繋がりによって起きるらしい現象――地球世界で眠っている時に、こちらの世界で精霊の視点に立って自由に行動出来る〝夢内異世界旅行〟について、朔耶の口から語られる。
コウがこちらに残って京矢が元の世界に帰った場合、コウとの繋がりは維持されたままなので、朔耶が便利に使っている〝夢内異世界旅行〟と似た現象が起きるであろうと推測される。
――まあ、害がないなら別に困らないな――
『だねー』
「ただ問題は、別のところにあるのよねー……」
腕組みをしてうむむと唸る朔耶。ともかく、世界渡りによる健康への影響などについては、今のところ心配しなくとも良い。
とりあえずは帰還の目処が立った事で、二人の家族にいつどのように連絡を入れるかなど、世界渡り後の振る舞いについて考えておかなければならない。面倒が起こりそうなら、飛行機事故で死んだと見なされている状態のままの方が良いという場合もある。
「二人はその辺り、どう?」
「家は、大丈夫だと思います……生命保険とか色々大変そうだけど」
「キョウヤも問題ないって言ってるよー」
更に、二人がこちらに来てから一年以上経っているという部分が、また色々と厄介であった。
朔耶も約二ヶ月の失踪後、血塗れの姿で捜査員に発見されるという経験をしているが、その時は学校も夏休み期間に入っていた為、後の生活にもスムーズに復帰出来た。
しかし、結局あの大量の返り血は何だったのか、失踪中はどこで何をしていたのか、という警察の疑問には納得させられるだけの答えを提示出来ず、だが調べたところで何も分かるはずもなく――
結局、『都築朔耶失踪事件』は色々な謎を残す未解決状態のまま、現在も捜査中という形で一応の終結を迎えている。
京矢と沙耶華は飛行機事故という社会的に目立つ大きな要素に加え、行方不明期間がおよそ一年。家族には真実を明かすとして、周囲にはどのように繕うべきか。
「事故のショックで記憶喪失になってた事にしようかって、キョウヤが提案してるよ」
「どこか近くの島に流れ着いて、そこで暮らす老夫婦のお世話になってたとか……」
「うーん、案外そういう感じでいいのかも」
「実穂に力を借りればどうにか出来るかな……?」
朔耶がぼそりと呟く。彼女はお金持ち家のお嬢様な友人に頼ろうと画策しているようだ。元の世界への帰還に向けて色々動いてくれる朔耶には、京矢も沙耶華も感謝しきりであった。
「それはそうと、二人とも向こうに帰った後で、またこっちに来る予定は?」
「わたしは……その、レイオスが……」
沙耶華はレイオスとの関係の為、一度家に帰って落ち着き、またこちらに来られるなら来たいという。京矢にも色々とこっちに居る理由が出来ていると、コウが説明した。
「今は帰りたいって、そこまで強く思ってないみたい」
「……」
「そかそか」
京矢の心情を明かすコウのひと言に、自身にも覚えのある沙耶華は複雑な表情を浮かべ、朔耶はそんな二人に頷いて理解を示す。
元の世界に恋人が居るなどの事情でもあればまた違うのだろうが、現代日本での一年と比べて、こちらの世界での一年は人間関係一つとっても中々に濃い。隣人や仲間との繋がりがなければ、生きていけない世界だからだ。
一人でも安全で快適に暮らしていけるという環境は、煩わしいモノと共に他者を遠ざけ、縁を希薄にし、意外にも人を孤独へと誘う危うさを内在しているのだ。
二人の意思を確認した朔耶は、まずはご両親への連絡とその内容、段取りなどを話し合った。
世界渡り用人工精霊の製造やコントロール法の確立については、アンダギー博士を信頼して全て任せる。丸投げとも言うが。
「やっぱり証拠として持って行くのは、本人確認用のビデオメールとかがいいかな?」
「そう、ですね。持ち物とか殆どないですし」
「キョウヤもいい考えだって言ってるよ」
となれば、近いうちに京矢君の居る帝都エッリアにも顔を出さねばなるまいと、朔耶は簡単な日程を組んでいく。京矢と沙耶華の家の様子も確かめておかなくてはならない。
「引越ししてたり――って心配はないかな」
「どうでしょう。うちは持ち家なので大丈夫だと思いますけど」
「キョウヤは場合によってはあるかもって言ってるよ」
そうして二人の住所を書き取った朔耶は、またこっちに来た時に連絡すると言って唐突に消えた。
「帰っちゃったね」
「……いきなりふっと消えちゃうのねー」
ちょっとびっくりしたと言って目を丸くしている沙耶華であった。
それから三日おきくらいの間隔で博士の研究所を訪ねて来るようになった朔耶は、その都度、京矢と沙耶華の実家の様子を報告してくれた。友人の伝手で専属の探偵を雇ったらしく、かなり詳細な情報が伝えられた。
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