アホホスト借金地獄の末に漁船か臓器か性奴隷か、もちろん性奴隷です

犬っころ

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二章

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真城の腕に抱かれたまま、
蓮は縁側からそっと夜の庭へと運ばれていった。

月明かりは雲に薄く覆われていて、
庭の輪郭は柔らかくぼやけて見える。
それでも、夜露に濡れた芝生が微かに光を反射し、
風に揺れる竹垣や植木の影が、白い敷石にかすかな模様を落としていた。

虫の声は少し静まり、風の音だけが耳に心地よい。

真城の足取りはゆっくりだった。
蓮の身体を胸のあたりにしっかりと抱きかかえながら、
ときおり腕を少し持ち替えるようにして重みを調整している。

蓮は肩口から覗く真城の首筋に頬を預けていた。

ぬるくなった体温と、微かに香る整髪料。
真城の心音が近くで響いていて、
その音に耳をすませることで、
今この瞬間だけは──“死にたい”という衝動を押し返すことができている気がした。

蓮の視線は、ふと庭の奥へと向けられた。

ラーメンが芝の間をぴょんぴょんと走り回り、
時折立ち止まっては、地面に鼻を押しつけて何かの匂いを必死に嗅いでいる。

一方、うどんはというと、
いつものようにマイペースな足取りで、
あっちにちょろちょろ、こっちにふらふら、
ついには石灯籠の脇にしゃがみ込み、でっぷりとした尻をぷりっと持ち上げた。

「……あ、うどん……してる」

蓮がぼそりと呟いた、その数秒後──

「おい、まじか。さっきラーメンがしたばっかなのに」

後方から低く響いたのは、柴の声だった。

蓮と真城の穏やかな散歩とは裏腹に、
柴は一人、ビニール袋片手に動物たちの排泄物を追いかけ回していた。

手にはしっかりとトングとスコップ。
いかにも「慣れてます」感を漂わせながら、無言でうんこを拾い、袋へ収める。

「ラーメンはさっき庭の端っこで2本、今うどんが1本……
 あと1匹いたら野外排泄リレー完成だったな」

誰に言うでもない独り言を呟きながら、
柴は慎重に足元を確認し、草をかき分けながら移動していく。

そんな姿に、蓮は思わず、
くすっと小さく笑った。

喉の奥で息が弾けるような、
ほんの一瞬の笑いだったが──
それは明らかに、自分から自然にこぼれたものだった。

ずっと塞がっていた胸の奥から、
わずかな温度が溶け出すような感覚。

笑ってしまったことに自分で少し驚きながらも、
それ以上のことは何も考えず、蓮はただ静かに息をついた。

真城はその音にすぐ気づいた。

歩みをほんの少し緩めながら、
蓮の表情をそっと覗き込む。

その顔は、いつもの虚ろなそれではなかった。
少しだけ目元がゆるみ、口元には確かに──
淡く、けれど確かな笑みが宿っていた。

真城の胸の奥が、ふっとほどけるようにあたたかくなる。

「……笑ったね」

囁くような声でそう言った。

その一言には驚きでもなく、確認でもなく──
まるで、“ありがとう”に近い気持ちが込められていた。

けれど、その直後。

「笑いましたね……」

と、やや間を置いて返してきたのは、
庭の少し後ろでうんこの処理に追われていたはずの、柴だった。

顔は見えない。
けれど、その声はどこかくぐもっていて──
たぶんうんこ袋を手にしているにも関わらず、
心の中ではしっかりと“蓮の笑顔”を受け取っているのが分かる声だった。

さっきよりも、少しだけ明るい響きがあった。

感情を込めているつもりはなかったのだろう。
けれどその一言は、蓮が笑ったことが、
“ちゃんと嬉しい”という気持ちを素直に滲ませていた。

蓮はその言葉に何も返さなかった。
けれど、真城の胸に寄りかかったまま、
目を細めるようにして、もう一度小さく息を笑う。

それが誰かのためではなく、
ただの“反射”のような感情だとしても──
今の蓮にとっては、それがすべてだった。

そして、そのすべてを、
真城も、柴も、何も言わず、ただそっと受け止めていた。

夜の空気はまだ少し冷たく、
芝の香りと土の匂いが混ざりあって漂っている。

その中で、ささやかな会話と沈黙が、
まるで音楽のように優しく流れていた。

夜風がまたそっと吹き抜ける。
蓮はその風に身を任せながら、
真城の腕の中でまどろむように目を細めた。

“まだ少しだけなら、生きててもいいかもしれない”

そんな気持ちが、今だけは許される気がしていた。
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