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事故でロバートくんかとキスしてしまったあの日以降、彼とは会っていない。いや正確にはアデリーナとしてだが。
だがそれは気まずくて会えていないとかではなく。
「さすがにギリギリ過ぎた!締め切りが!!」
締め切りが追われていたからだ。いつもは余裕持って依頼された絵を描いていたのだが、今回はロバートくんとのお出かけに夢中になってこっちをほったらかしにしてしまった。
私は慌ててキャンパスの前で絵を描いていた。もう朝からずっとその場から動いていない。
今回依頼された絵は神話エピソードの一つである[ロファートノの恋]のとあるワンシーンだ。このエピソードは神が美しく青年に恋をしてしまい、苦しく悶える。そしてそのワンシーンに命を落とした美しい青年に神が哀しみの祝福を送るエピソードがある。このエピソードは悲恋物語として人気である。
正直最初依頼してきた時は断ろうかと思っていた。だって恋をしたことないし、結婚して上手くいっていない私にそんな絵を描けるのか分からなかった。結局画家のプライドで引き受けたが。締め切り間に合わなかったら本末転倒なのだが。
「……アルロ様。」
すると背後から予想外の声の持ち主に名を呼ばれて私は驚いて後ろを振り返った。そこにはロバートくんがいつのまにか部屋に入っていた。
「勝手に入って申し訳ございません。夕飯の時間になってもいらっしゃらなかったので。」
「へ?あ、もうこんな時間?!!」
時間を見たら確かに夕飯の時間になっていた。もう夕方になっていたのか。いつもはロバートくんとの夕飯を優先していたからこんなことは起きなかったのに。
「ご、ごめん!締め切りに間に合わなそうだから先食べててくれるかな?!」
「…わかりました。」
「本当にごめんね!!」
そもそも夕飯一緒に取るようにしたのは私のわがままだ。そんな私が破るとは実に情け無い。
「……あの、アルロ様。絵を描いている所を見ても良いですか。」
「へ?」
突然何を言っているんだ?ロバートくんが私の作業風景を見たいと言うのか?
「ダメですか?」
「い、いや全然良いよ!構わないよ!!」
「ありがとうございます。」
ロバートくんは後ろで椅子に座ってこちらを見ている。め、めちゃくちゃ緊張する。こんな風に誰かに見られながら絵を描くの慣れてないからめちゃくちゃ緊張するんだけど!締切ギリギリなのにぃ……
……
と、思いきや絵の方に集中したらいつのまにか気見られていることに対して気にならなくなっていた。むしろ、いつも以上に集中することが出来た。
大きいキャンパスに筆を乗せる。神と、そして肉体だけになってしまった青年を描く。
神は青年とただ仲良くなりたかったのだろう。一緒におしゃべりが出来たらどんなに良かったか、笑顔を見せてくれるだけでも充分だった。けど青年は死んだ。自分には手に届かない遠く透明な場所に行ってしまった。
神がようやく青年に触れたのは、冷たくなった肉体だった。
ふと、自分の唇に手を添えた。正直まだあのキスの感覚が忘れられない。どうしてこんなにも印象深いのだろうか。
そういえば、キスには不思議な力があると聞いたことがある。
…もし、自分が神だったらどんな風に祝福を送るのか、相手がもう何も反応しない肉体だったら。
最後の最後に欲をかいてしまうかもしれない。もちろん祝福を贈りたい気持ちが本当だとしてもだ。
そうなると筆が進んだ。もう止まらない。誰にも止めさせない。
だがそれは気まずくて会えていないとかではなく。
「さすがにギリギリ過ぎた!締め切りが!!」
締め切りが追われていたからだ。いつもは余裕持って依頼された絵を描いていたのだが、今回はロバートくんとのお出かけに夢中になってこっちをほったらかしにしてしまった。
私は慌ててキャンパスの前で絵を描いていた。もう朝からずっとその場から動いていない。
今回依頼された絵は神話エピソードの一つである[ロファートノの恋]のとあるワンシーンだ。このエピソードは神が美しく青年に恋をしてしまい、苦しく悶える。そしてそのワンシーンに命を落とした美しい青年に神が哀しみの祝福を送るエピソードがある。このエピソードは悲恋物語として人気である。
正直最初依頼してきた時は断ろうかと思っていた。だって恋をしたことないし、結婚して上手くいっていない私にそんな絵を描けるのか分からなかった。結局画家のプライドで引き受けたが。締め切り間に合わなかったら本末転倒なのだが。
「……アルロ様。」
すると背後から予想外の声の持ち主に名を呼ばれて私は驚いて後ろを振り返った。そこにはロバートくんがいつのまにか部屋に入っていた。
「勝手に入って申し訳ございません。夕飯の時間になってもいらっしゃらなかったので。」
「へ?あ、もうこんな時間?!!」
時間を見たら確かに夕飯の時間になっていた。もう夕方になっていたのか。いつもはロバートくんとの夕飯を優先していたからこんなことは起きなかったのに。
「ご、ごめん!締め切りに間に合わなそうだから先食べててくれるかな?!」
「…わかりました。」
「本当にごめんね!!」
そもそも夕飯一緒に取るようにしたのは私のわがままだ。そんな私が破るとは実に情け無い。
「……あの、アルロ様。絵を描いている所を見ても良いですか。」
「へ?」
突然何を言っているんだ?ロバートくんが私の作業風景を見たいと言うのか?
「ダメですか?」
「い、いや全然良いよ!構わないよ!!」
「ありがとうございます。」
ロバートくんは後ろで椅子に座ってこちらを見ている。め、めちゃくちゃ緊張する。こんな風に誰かに見られながら絵を描くの慣れてないからめちゃくちゃ緊張するんだけど!締切ギリギリなのにぃ……
……
と、思いきや絵の方に集中したらいつのまにか気見られていることに対して気にならなくなっていた。むしろ、いつも以上に集中することが出来た。
大きいキャンパスに筆を乗せる。神と、そして肉体だけになってしまった青年を描く。
神は青年とただ仲良くなりたかったのだろう。一緒におしゃべりが出来たらどんなに良かったか、笑顔を見せてくれるだけでも充分だった。けど青年は死んだ。自分には手に届かない遠く透明な場所に行ってしまった。
神がようやく青年に触れたのは、冷たくなった肉体だった。
ふと、自分の唇に手を添えた。正直まだあのキスの感覚が忘れられない。どうしてこんなにも印象深いのだろうか。
そういえば、キスには不思議な力があると聞いたことがある。
…もし、自分が神だったらどんな風に祝福を送るのか、相手がもう何も反応しない肉体だったら。
最後の最後に欲をかいてしまうかもしれない。もちろん祝福を贈りたい気持ちが本当だとしてもだ。
そうなると筆が進んだ。もう止まらない。誰にも止めさせない。
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