目付きの悪い俺が黒猫に振り回されてます。

海野(サブ)

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前編

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「はぁ…課題は多いな…」

 帰宅後、夕飯を終えて先にシャワーを浴びていた。
 結局あれから灰島さんとはほとんど関わらなかった。と言っても灰島さんはホール担当でそもそも接することなかったし、休憩中とかは奥さんと話していた。退勤の時ちょっとだけ話したけども、そこでも相変わらず緊張して上手く接していけたか不安だ。

「……顔だけの問題じゃないんだよな。」

 鏡の前に映る奴は相変わらず目付きが悪い。そのくせ愛想笑いが下手くそである。
 むしろクロは何故あんなに惹かれる笑顔を人に向けられるのか。化け猫よりも恐れられる俺って…
 俺はニコッと口元を歪めたが、案の定堅苦しく不気味であった。練習すれば自然と出来るのだろうか。次に指先を使って口元を歪めてみる。

 ガラッ!!!

「ねーシロウ。テレビのリモコン見当たらないんだけどー。」

 すると突然お風呂のドアが勢いよく開いて、クロがリモコンの所在を聞いてきた。
 
「いやおま、何も言わずに開けるやつが居るか!?親しい奴でも一言声をかけてから開けるだろ!?」

 時々あるコイツの常識の無さはなんなんだ。

「だってシャワーの音消えてたから湯船入ってるかなーって。つか何してんの?」

「なんだって良いだろうが!!探してやるから一旦出て行ってくれ!」

 俺はクロの身体を反転させてお風呂場から追い出そうと肩を掴んだ。

「……えいっ」
 
 その次の瞬間、何故かクロは俺の脇腹を触ってきた。そして次にこちょこちょと脇腹をくすぐってきた。

「あっ、!?おま、なにしてっ!ちょ、ひひっ、ま、まてっ、くすぐった…い!あはは!」

 くすぐったくてその感覚から逃れようと身体を捻ったりして抵抗するが、クロの手は止まることがない。
 最初は困惑はあったもののくすぐったくて思わず笑い声が出ていた。しかしだんだんゾクゾクしてきて、気持ちよさに近い感覚が身体に現れ始めた。
 あ、やばい。このまま続けられたら何かが終わる気がする。

「あ、あっ、クロっ、も、もうやめっ、いや、まじでやめろって……!」

 だがクロはやめる気無し。次第に脚に力が入らなくなって思わずしゃがみ込んでしまった。

「ふぅ…ふぅ…」

 ようやくくすぐりから解放されて、俺は息を乱していた。
 クロもしゃがみ込んで、俺の顔を覗き込んできた。

「これで少しは緊張ほぐれた?」

「は?」

 何を言ってるんだコイツは。何に対して俺が緊張していたというのか。

「いやだって、今日帰ってからなんか微妙に悩んでたし、んで今さっき笑う練習してたっぽいし。んで上手く笑えないなー、どうしたら自然な笑みを浮かべるのかなーって思ってたでしょ。」

「」

 全て見透かされていたようだ。クロはニタァーと口元を歪めて俺を見ていた。

「……あ、あぁそうだよ!笑顔の練習してたわ!!つかだからって、急にくすぐってくるのはなんなんだよ!?」

「あーすれば少しは緊張ほぐれて笑えるでしょ?実際笑ってたし。」

「いやあれは違うだろ!!毎回くすぐられてろってか!?だ、だいたいお、俺は自然に…上手く人と話せるようになりたいだけで…」

「ふーん?なら僕が教えてあげよっか?」
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