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前編
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一か八か俺は賭けた。自分でもどうかとは思うが、他に方法が思いつかなかった。
「……ずっと。苦労してきたんだな…」
「……!!」
「正直、お前がそんな辛い目に遭ってきたとは思わなかった。いつも笑顔でいたから。」
クロは化け猫で俺とは違う。そうじゃなくともクロは俗に言う陽キャで、俺とは真逆に位置する存在だと思ってた。
「けど、違った。俺へのアドバイスも、あれはクロが努力して得たものだったんだよな。」
思い返せば、クロは時々ネガティブな発言をしていた。あれは、クロの本音だったんだ。
「俺さ、クロのおかげで灰島さんや銀原君と仲良くなれたと思ってる。クロがアドバイスしてくれたのはもちろんだけど、クロの存在そのものが俺にとってありがたかったんだ。」
「えっ……?」
「思えば、クロを拾ってから良いことばかり続いてた気がする。」
そうだ、クロを拾ったあの日から俺は徐々に変わっていた気がする。クロが家にいるだけで笑顔が増えた、心が満ちていた。正体が判明した後も、振り回されてはいたが、嫌ではなかったと思う。
「家に帰ればクロが出迎えてくれる、一緒にご飯を食べてくれる。気づけば、俺にとってクロは特別になっていた。」
「………シロウ…」
「クロが居てくれたから、俺は変わろうと思えたんだ。だから……変わらなくて良いってクロから言われてショックだった。」
俺はギュッと腕に力を入れてクロの身体をより自分に密着させる。
「お前にとって、俺はただの都合のいい人間だったかもしれない。けど、俺は……俺は…違う、から…」
ようやく俺にとってクロは特別な存在だって気付けた。けど、気付くのが遅かったかもしれない。クロを疎かにしてしまったのだから。
「…………シロウって本当に、変わってるよね。」
「えっ?」
クロは俺の腕に手と尻尾を添えてきた。
「こんな僕のこと特別だとか言っちゃってさ。……そうだよ、嫉妬だよ。」
そう言いながら添えていた手と尻尾で俺の腕をギュッと握り締めた。
「ずっと僕だけ見て欲しかったけど、シロウはそうじゃないんだなって思って。シロウだけが僕のこと対等に接してくれてたんだもん。それだけじゃない、シロウは僕と同じ、みんなから嫌われてると思ってたから。だから仲良く出来る人が出来て、羨ましかった。」
雨音に負けてしまいそうなほど小さな声。けどクロは必死に言葉にする。
「そして怖かった、いつかそのまま僕を捨てるんじゃないかって。だから繋ぎ止めようとした。僕には身体しかなかったから…他に方法なんて思いつかなかった。ま、結果シロウを怒らせるだけだったけどね。」
「…………そうだったのか…」
「……シロウは僕のこと嫌いになったでしょ。無理ないよね。大丈夫、慣れてるから。」
グスッ、とクロは鼻を啜っていた。
それに気づいた俺は、一旦自分の腕をクロから離した後、クロの身体を対面になるようにぐるりと回した。
「俺はクロを嫌いになってない!」
クロの目を真っ直ぐ見て、はっきりと答えた。
「そもそも俺がお前を蔑ろにしたから…怒らせるようなこと言ったから。本当に悪かった。もし、クロが嫌なら2人と仲良くなるの控える。」
「えっ!??」
せっかく2人とは仲良くなれたが、クロを蔑ろにしてしまうならば距離を置いた方がいいのかもしれない。
「……いや、それは良いよ。せっかく仲良くなれたのに。」
「けど…」
「だって、シロウは僕に否定されたから嫌だったんでしょ。だったらもっと人と仲良くなるべきだよ。むしろシロウは本当なら沢山の人に囲まれてもおかしくないしね。ていうか僕はもうどっか行くよ。もうシロウと一緒にいる気はない。」
そう言ってクロは立ち上がろうとした瞬間だった。
ゴロゴロッ!!!
近くに落ちたのだろうか、稲妻の光と大きな雷の音が響いたのだ。
「にゃっ!!」
そしてクロは身体を丸くした。尻尾は下がり、ビクビクと自分の身体を守るかのように縮こまっていた。
「く、クロ大丈夫か!?」
俺はクロを呼びかけるが、返事はない。
「もしかして、雷苦手なのか?」
クロはコクンと頭を揺らした。
雷に怯えるクロの姿はとても、弱々しく、小さく見えた。
「……もう、いいから…早く帰りなよ…僕はもう、気にしてないから…」
クロはもう、俺と関わる気はないらしい。クロがそう思ったのならば、クロの気持ちを尊重しないといけないだろう。
けど、こんな状態のクロを置いて帰れるはずがない。
俺は、そっとクロの背中を撫でた。
「っ!な、なに…?」
「雨が止むまでここに居る。」
「…………シロウがそうしたいなら。そうしてあげる。」
そしてしばらく真夜中、遊具の中で、男2人で雨宿りをしていた。ようやく雨が止んで晴れてきた時には、朝日が登ろうとしていた。
いつのまにかクロは俺にくっついていたまま眠りについていた。
このまま置いていくわけにはいかないので、羽織っていた上着をクロの頭に被せて背負って家まで連れて行った。道中、犬の散歩やジョギングなど朝早く活動していた人達に怪しい目で見られたが、気にならなかった。
「……ずっと。苦労してきたんだな…」
「……!!」
「正直、お前がそんな辛い目に遭ってきたとは思わなかった。いつも笑顔でいたから。」
クロは化け猫で俺とは違う。そうじゃなくともクロは俗に言う陽キャで、俺とは真逆に位置する存在だと思ってた。
「けど、違った。俺へのアドバイスも、あれはクロが努力して得たものだったんだよな。」
思い返せば、クロは時々ネガティブな発言をしていた。あれは、クロの本音だったんだ。
「俺さ、クロのおかげで灰島さんや銀原君と仲良くなれたと思ってる。クロがアドバイスしてくれたのはもちろんだけど、クロの存在そのものが俺にとってありがたかったんだ。」
「えっ……?」
「思えば、クロを拾ってから良いことばかり続いてた気がする。」
そうだ、クロを拾ったあの日から俺は徐々に変わっていた気がする。クロが家にいるだけで笑顔が増えた、心が満ちていた。正体が判明した後も、振り回されてはいたが、嫌ではなかったと思う。
「家に帰ればクロが出迎えてくれる、一緒にご飯を食べてくれる。気づけば、俺にとってクロは特別になっていた。」
「………シロウ…」
「クロが居てくれたから、俺は変わろうと思えたんだ。だから……変わらなくて良いってクロから言われてショックだった。」
俺はギュッと腕に力を入れてクロの身体をより自分に密着させる。
「お前にとって、俺はただの都合のいい人間だったかもしれない。けど、俺は……俺は…違う、から…」
ようやく俺にとってクロは特別な存在だって気付けた。けど、気付くのが遅かったかもしれない。クロを疎かにしてしまったのだから。
「…………シロウって本当に、変わってるよね。」
「えっ?」
クロは俺の腕に手と尻尾を添えてきた。
「こんな僕のこと特別だとか言っちゃってさ。……そうだよ、嫉妬だよ。」
そう言いながら添えていた手と尻尾で俺の腕をギュッと握り締めた。
「ずっと僕だけ見て欲しかったけど、シロウはそうじゃないんだなって思って。シロウだけが僕のこと対等に接してくれてたんだもん。それだけじゃない、シロウは僕と同じ、みんなから嫌われてると思ってたから。だから仲良く出来る人が出来て、羨ましかった。」
雨音に負けてしまいそうなほど小さな声。けどクロは必死に言葉にする。
「そして怖かった、いつかそのまま僕を捨てるんじゃないかって。だから繋ぎ止めようとした。僕には身体しかなかったから…他に方法なんて思いつかなかった。ま、結果シロウを怒らせるだけだったけどね。」
「…………そうだったのか…」
「……シロウは僕のこと嫌いになったでしょ。無理ないよね。大丈夫、慣れてるから。」
グスッ、とクロは鼻を啜っていた。
それに気づいた俺は、一旦自分の腕をクロから離した後、クロの身体を対面になるようにぐるりと回した。
「俺はクロを嫌いになってない!」
クロの目を真っ直ぐ見て、はっきりと答えた。
「そもそも俺がお前を蔑ろにしたから…怒らせるようなこと言ったから。本当に悪かった。もし、クロが嫌なら2人と仲良くなるの控える。」
「えっ!??」
せっかく2人とは仲良くなれたが、クロを蔑ろにしてしまうならば距離を置いた方がいいのかもしれない。
「……いや、それは良いよ。せっかく仲良くなれたのに。」
「けど…」
「だって、シロウは僕に否定されたから嫌だったんでしょ。だったらもっと人と仲良くなるべきだよ。むしろシロウは本当なら沢山の人に囲まれてもおかしくないしね。ていうか僕はもうどっか行くよ。もうシロウと一緒にいる気はない。」
そう言ってクロは立ち上がろうとした瞬間だった。
ゴロゴロッ!!!
近くに落ちたのだろうか、稲妻の光と大きな雷の音が響いたのだ。
「にゃっ!!」
そしてクロは身体を丸くした。尻尾は下がり、ビクビクと自分の身体を守るかのように縮こまっていた。
「く、クロ大丈夫か!?」
俺はクロを呼びかけるが、返事はない。
「もしかして、雷苦手なのか?」
クロはコクンと頭を揺らした。
雷に怯えるクロの姿はとても、弱々しく、小さく見えた。
「……もう、いいから…早く帰りなよ…僕はもう、気にしてないから…」
クロはもう、俺と関わる気はないらしい。クロがそう思ったのならば、クロの気持ちを尊重しないといけないだろう。
けど、こんな状態のクロを置いて帰れるはずがない。
俺は、そっとクロの背中を撫でた。
「っ!な、なに…?」
「雨が止むまでここに居る。」
「…………シロウがそうしたいなら。そうしてあげる。」
そしてしばらく真夜中、遊具の中で、男2人で雨宿りをしていた。ようやく雨が止んで晴れてきた時には、朝日が登ろうとしていた。
いつのまにかクロは俺にくっついていたまま眠りについていた。
このまま置いていくわけにはいかないので、羽織っていた上着をクロの頭に被せて背負って家まで連れて行った。道中、犬の散歩やジョギングなど朝早く活動していた人達に怪しい目で見られたが、気にならなかった。
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