目付きの悪い俺が黒猫に振り回されてます。

海野(サブ)

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前編

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「ゲホッゲホッ…」

 あれから数時間後、クロは思いっきり風邪を引いていた。そらぁ雨の中、雨宿りしていたとはいえ外にいたのだから当たり前である。

「大丈夫か?」

 俺は風邪で赤くなり汗ばんでいるクロのおでこに冷えピタを貼ってそう聞いた。

「……つらい…」

「だろうな。わかるぞ、その気持ち。」

 この前、風邪を引いてたから余計にその辛さが痛いほど分かる。

「何か食べられそうなのあるか?買い物行ってくるけど。」

「……今は、何も、食べたくない…」

「そうか、ならゆっくり寝てれば良い。」

 俺はとりあえず前、風邪を引いた時の薬が余ってないか確認した。妖怪も人間と同じ薬飲んで大丈夫だろうか?漢方にした方がいいのだろうか。というか病院行くことになった場合、保険証ないから全額負担になるよな…?

「……ゲホッ、ゲホッ、シロウ、今日買い物行くんでしょ?早く行かないと遅刻するよ?」

「いや、行けないって連絡したから大丈夫だ。」

「えっ……?」

 クロの風邪が発覚した直後に、灰島さんにドタキャンしてしまった。もちろんちゃんと行けなくなった理由を伝えてある。むしろ灰島さんの方から看病した方がいいと言われたぐらいだ。

「病人をほっといてまでは行かないさ。だから安心しろ。」

「…………うん。……ありがとう。シロウ。そしてごめん…」

「えっ…?」

 突然、お礼と謝罪を言われて俺は軽く驚いた。

「僕、シロウに酷いことしたのに…許せないよね……」

咳き込みながら必死に口に出すクロ。さっきよりも辛いのか掠れ声になってきている。
 
「俺はもう怒ってないから。謝ってくれたし、許す。それに、それはお互い悪かったってことで仲直りすれば良い。いいだろ?」

 そう言って俺はクロに小指を差し出す。クロは不思議そうな顔をした。

「指切りげんまん、仲直りの合図だ。」

「…それは、約束する時の合図なんじゃないの…?」

 そう指摘されて俺はハッと勘違いしていたことに気づき、恥ずかしくなった。

「あ、いや、た、たしかに…ごっちゃになってたみたいだ…」

 ずっと怖がられて喧嘩らしいことすらしてこなかったから、仲直りのやり方も知らなかった。

「くすっ、いや、いいと思うよ…僕も、仲直りしたい…」

 クロも小指を差し出してきた。それを見て、俺は嬉しくなり思わずふっ、と声が出てしまった。

「あぁ、そうだな。これで仲直りだ。」

 お互いの小指を絡めて、そしてそのまま上下に軽く揺らした。
 指切りしている時、クロが今まで見たことがない、優しく柔らかな笑みを浮かべていた。

「……シロウ…嫌じゃなければ、頭、撫でて欲しい…」

「え、急になんだよ……わかった。」

 俺は指切りしていない方の手でクロの柔らかい黒髪を撫でた。耳を垂らし、そのままクロは目を閉じた。
 そして安心したように、そのまま眠りについた。

「クロ…」

 クロが寝た後でも、俺はどちらの手を離せなかった。少しでもクロに触れていたかったからだ。

 あたたかいな。出会ったあの時から変わらず、俺の身体も、心も温めてくれる。
 寝ている黒猫クロを見ながらそう思う、俺だった。
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