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第6話 リルの過去と猫の願い
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今日一緒に水遊びをしている内に、不格好ながら泳げるようになった。完全に『猫かき』で、はたから見たら溺れてるようにしか見えないと思うけど……
かたやリルなんて、泳いでいる魚をさも簡単なようにシュパッと手で捕まえたりしていた。
そんなリルがカッコ良かった……俺も早く一人前にならなくては……
ちなみに川原で食べた焼き魚はとても美味しかった……
◇◇◇
夜寝る前に、リルが自身の過去を語ってくれた。
強がるように明るい調子で話してくれたが、内容は酷く胸が締め付けられるようなものだった。
銀狼族の村に産まれ、そこで育ったこと。左右の目の色が違うオッドアイのせいで、両親以外の村人からは不吉な者として、村八分のような目にあっていたこと。
特に子供達は残酷で、友達は一人もできないばかりか、近づくと呪いが伝染るとばかりに避けられていたということ。
『綺麗で素敵な瞳なのに……』
「今思うと、パパは私の将来のことを考えていてくれたのかもしれない」とリルは語った。
独りでも生きていけるようにと、狩りや野営の仕方を教わったとのことだ。それに、トラップ設置の仕方等のサバイバルの方法を叩き込まれたという。
ちなみに今の寝床の周囲には、いたる所にトラップが設置されているとのことだ。魔物が近づくとトラップに捕まったり、近づいてきたことが分かるようになっているらしい。
リルには「危ないから勝手に出歩いちゃダメだよ」って言われた。怖くてトイレも行けないのですが……
十歳まで村で過ごしてたとの話で、友達は居なかったけど両親は優しくそれなりに楽しく過ごしていたという。
両親のことを話す時に遠い目をするリルを見て、なぜか涙が出そうになった。
ちなみにリルは今十二歳とのことだ。
数日歩いたところには街があって、村にはたまに他種族の行商人が来たりしていたとのことだ。
リルは父親に「獣人には少し厳しいけど、街はこの村よりは過ごしやすいかもしれない。街では冒険者としての力があれば獣人でも生活していける」と言われ、将来は街に出てみたいと考えていたとのことだ。
父親からサバイバル技術を教わり、母親からは読み書きや世の中の常識等を教わり、村からは除け者にされていても、それでも両親の愛情に包まれた穏やかな日々だったという。
ところがある日、当時十歳のリルにとって、今までの十年間の理不尽を更なる理不尽で塗りつぶすような出来事が起きたことを淡々と語ってくれた。
________________________________________________________________________________________
わたしリル! 今日も朝からパパと一緒に山に狩りに来てるの!
パパが得意の弓で仕留めた鳥さんを三羽も籠の中に入れて担いでいるの。
お家に帰ったらママにキノコや野草と一緒に料理してもらうんだぁー。
野宿する時のパパの焼いただけの料理もそれはそれで好きだけど、ママの料理は同じものから作ってるとは思えない程美味しいんだよぉ。ムフフフ…………
そんなことを考えてたらヨダレが出てたらしくて、パパに注意されちゃった……
いけない、いけない。
パパは昔冒険者だった時のことをよく話してくれるんだ。ダンジョンで宝物を見つけた時のことや強い魔物を倒した話を聞いてると、リルも自分が強くなった気がしてくるの。でも次の日に強くなってなかったことに気づいて少し落ち込むんだよぉ。
リルも大きくなったら冒険者になるんだよ! って言うと、パパは嬉しそうにニコニコしながら頭を撫でてくれるんだー。エヘヘヘヘ……。
夕方、お家に向かって歩いていると、村の方から煙が上がっているのが見えた。
今日はお祭りだったかなと思ったんだ。お祭りの時は村の真ん中の広場で、大きな焚き火をするからね。でもリルはお祭りに参加できないから関係ないんだけどね……
いつか屋台っていうお店で、美味しいものをいっぱい食べてみたいなぁ……
ふとパパを見ると真剣な顔をしている。どれくらい真剣かと言うと、ビッグボアの前で剣を構えている時以上だ。
パパに声を出さないで静かについてくるようにって言われた。鳥さんに近づく時のようだ。
…………けど、狩りの時と違って嫌な予感がして、お腹のあたりがキリキリした。
村に近づくと、徐々に大人達の怒鳴り声が聞こえてきた。
その声を聞いた時、頭の中が真っ白になって尻餅をついちゃってた。自分でも何が何だか分からなくて混乱してると、パパに正面から両肩を掴まれた。
「村が盗賊に襲われている。必ず戻るから、ここでじっと隠れていてくれ」と言われた。
ママを助けに行くのだと分かり、自分も連れて行って欲しいと思ったけど、口が震えて喋れないし、足が震えて動けない。
「こわいよ……」
パパに正面から抱きしめられた。口は上手く動かないのに、目からは涙が溢れてきた。
「パ……パ……」
「リル、ここで待っていてくれ。ママを助けてくる」
そう言って、走って村の方に向かっていった。
パパの言いつけを守って、這って背の高い草の所に移動して隠れる。
どれくらい経ったんだろう。怒鳴り声は聞こえなくなった。
村まではまだ結構離れているのに、パチパチと木が燃える音は続いてる。
戻ってくるのを待つ時間はとても長かった。
あたりが暗くなっても戻ってくるのを待った。
ふと気づくと木々の間から光が差し込んできて、日が登ってきたことに気づいたんだ。
怖いくらいの静かさで、たまに鳥の鳴き声が聞こえてくるだけだ。
この時、村がどうなったかを何となく理解していたと思う。パパとママがどうなったかも……
村までフラフラした重い足取りで辿り着いた。
嫌な匂いとブラッククロウの鳴き声。
家があった場所には炭になった元家だったもの。
村の方を見ても人の気配は無い。
「どうして……」と思ったところで意識を失ったと思う。
____________________________________________________________________________________________
その後意識を取り戻したリルは、しばらく家があったところで何をするわけでもなく数日過ごした後、父親からのサバイバルの教えに従い、罠を仕掛けたりすれば安全性を高められる近くの山に篭もることにしたと語ってくれた。
『神様、女神様……存在するならリルを助けて欲しかった。八つ当たりの気持ちだと分かってはいる……けど……』
……それから、リルは狩場を少しずつ移動してニ年間を過ごしたとのことだ。
それで昨日は、川で魚を獲っていたら、俺が流れてきたらしい。
ワイルドキャットはたまに見かける魔物らしく、仔猫の時から一緒にいれば懐いて従魔にしやすいとのことだ。(後から知ったのだが、この世界は動物と魔物というように分かれておらず、俺の知識でいう動物は全部魔物に分類されるようだ)
まあ体小さいし、獲物としては食べられる部分も少ないしね。
息はしてたので助かると思い、連れて来たらしい。
リルは「それに何だか普段狩りの対象とする魔物と同じには見えなかったんだよね」と笑った。
『リル…………』
これから俺は、強くなってリルを守っていけるようになりたい……
リルに近づく理不尽を消し飛ばせるようになりたい……
そう強く願いながら眠りについた。
かたやリルなんて、泳いでいる魚をさも簡単なようにシュパッと手で捕まえたりしていた。
そんなリルがカッコ良かった……俺も早く一人前にならなくては……
ちなみに川原で食べた焼き魚はとても美味しかった……
◇◇◇
夜寝る前に、リルが自身の過去を語ってくれた。
強がるように明るい調子で話してくれたが、内容は酷く胸が締め付けられるようなものだった。
銀狼族の村に産まれ、そこで育ったこと。左右の目の色が違うオッドアイのせいで、両親以外の村人からは不吉な者として、村八分のような目にあっていたこと。
特に子供達は残酷で、友達は一人もできないばかりか、近づくと呪いが伝染るとばかりに避けられていたということ。
『綺麗で素敵な瞳なのに……』
「今思うと、パパは私の将来のことを考えていてくれたのかもしれない」とリルは語った。
独りでも生きていけるようにと、狩りや野営の仕方を教わったとのことだ。それに、トラップ設置の仕方等のサバイバルの方法を叩き込まれたという。
ちなみに今の寝床の周囲には、いたる所にトラップが設置されているとのことだ。魔物が近づくとトラップに捕まったり、近づいてきたことが分かるようになっているらしい。
リルには「危ないから勝手に出歩いちゃダメだよ」って言われた。怖くてトイレも行けないのですが……
十歳まで村で過ごしてたとの話で、友達は居なかったけど両親は優しくそれなりに楽しく過ごしていたという。
両親のことを話す時に遠い目をするリルを見て、なぜか涙が出そうになった。
ちなみにリルは今十二歳とのことだ。
数日歩いたところには街があって、村にはたまに他種族の行商人が来たりしていたとのことだ。
リルは父親に「獣人には少し厳しいけど、街はこの村よりは過ごしやすいかもしれない。街では冒険者としての力があれば獣人でも生活していける」と言われ、将来は街に出てみたいと考えていたとのことだ。
父親からサバイバル技術を教わり、母親からは読み書きや世の中の常識等を教わり、村からは除け者にされていても、それでも両親の愛情に包まれた穏やかな日々だったという。
ところがある日、当時十歳のリルにとって、今までの十年間の理不尽を更なる理不尽で塗りつぶすような出来事が起きたことを淡々と語ってくれた。
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わたしリル! 今日も朝からパパと一緒に山に狩りに来てるの!
パパが得意の弓で仕留めた鳥さんを三羽も籠の中に入れて担いでいるの。
お家に帰ったらママにキノコや野草と一緒に料理してもらうんだぁー。
野宿する時のパパの焼いただけの料理もそれはそれで好きだけど、ママの料理は同じものから作ってるとは思えない程美味しいんだよぉ。ムフフフ…………
そんなことを考えてたらヨダレが出てたらしくて、パパに注意されちゃった……
いけない、いけない。
パパは昔冒険者だった時のことをよく話してくれるんだ。ダンジョンで宝物を見つけた時のことや強い魔物を倒した話を聞いてると、リルも自分が強くなった気がしてくるの。でも次の日に強くなってなかったことに気づいて少し落ち込むんだよぉ。
リルも大きくなったら冒険者になるんだよ! って言うと、パパは嬉しそうにニコニコしながら頭を撫でてくれるんだー。エヘヘヘヘ……。
夕方、お家に向かって歩いていると、村の方から煙が上がっているのが見えた。
今日はお祭りだったかなと思ったんだ。お祭りの時は村の真ん中の広場で、大きな焚き火をするからね。でもリルはお祭りに参加できないから関係ないんだけどね……
いつか屋台っていうお店で、美味しいものをいっぱい食べてみたいなぁ……
ふとパパを見ると真剣な顔をしている。どれくらい真剣かと言うと、ビッグボアの前で剣を構えている時以上だ。
パパに声を出さないで静かについてくるようにって言われた。鳥さんに近づく時のようだ。
…………けど、狩りの時と違って嫌な予感がして、お腹のあたりがキリキリした。
村に近づくと、徐々に大人達の怒鳴り声が聞こえてきた。
その声を聞いた時、頭の中が真っ白になって尻餅をついちゃってた。自分でも何が何だか分からなくて混乱してると、パパに正面から両肩を掴まれた。
「村が盗賊に襲われている。必ず戻るから、ここでじっと隠れていてくれ」と言われた。
ママを助けに行くのだと分かり、自分も連れて行って欲しいと思ったけど、口が震えて喋れないし、足が震えて動けない。
「こわいよ……」
パパに正面から抱きしめられた。口は上手く動かないのに、目からは涙が溢れてきた。
「パ……パ……」
「リル、ここで待っていてくれ。ママを助けてくる」
そう言って、走って村の方に向かっていった。
パパの言いつけを守って、這って背の高い草の所に移動して隠れる。
どれくらい経ったんだろう。怒鳴り声は聞こえなくなった。
村まではまだ結構離れているのに、パチパチと木が燃える音は続いてる。
戻ってくるのを待つ時間はとても長かった。
あたりが暗くなっても戻ってくるのを待った。
ふと気づくと木々の間から光が差し込んできて、日が登ってきたことに気づいたんだ。
怖いくらいの静かさで、たまに鳥の鳴き声が聞こえてくるだけだ。
この時、村がどうなったかを何となく理解していたと思う。パパとママがどうなったかも……
村までフラフラした重い足取りで辿り着いた。
嫌な匂いとブラッククロウの鳴き声。
家があった場所には炭になった元家だったもの。
村の方を見ても人の気配は無い。
「どうして……」と思ったところで意識を失ったと思う。
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その後意識を取り戻したリルは、しばらく家があったところで何をするわけでもなく数日過ごした後、父親からのサバイバルの教えに従い、罠を仕掛けたりすれば安全性を高められる近くの山に篭もることにしたと語ってくれた。
『神様、女神様……存在するならリルを助けて欲しかった。八つ当たりの気持ちだと分かってはいる……けど……』
……それから、リルは狩場を少しずつ移動してニ年間を過ごしたとのことだ。
それで昨日は、川で魚を獲っていたら、俺が流れてきたらしい。
ワイルドキャットはたまに見かける魔物らしく、仔猫の時から一緒にいれば懐いて従魔にしやすいとのことだ。(後から知ったのだが、この世界は動物と魔物というように分かれておらず、俺の知識でいう動物は全部魔物に分類されるようだ)
まあ体小さいし、獲物としては食べられる部分も少ないしね。
息はしてたので助かると思い、連れて来たらしい。
リルは「それに何だか普段狩りの対象とする魔物と同じには見えなかったんだよね」と笑った。
『リル…………』
これから俺は、強くなってリルを守っていけるようになりたい……
リルに近づく理不尽を消し飛ばせるようになりたい……
そう強く願いながら眠りについた。
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