『万物異転、猫が世界の史を紡ぐ【出会い編】 ~出会ってすぐにモフられる~』

メイン君

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第14話 クレアとの出会い

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 ここ数日、狩猟兼修行の日々を送っている。

 俺と魔物の戦いの殆どは、その場で殴り合ったり、噛みつき合ったりするのではなく、俺が逃げ回ってることが多い。正面からぶつかった場合、圧勝するか惨敗する相手しかいないのが理由だ。例えるなら、ボクシングのチャンピオンと戦うことになった時、正面から倒せるのかという話だ。

 フォレストグリズリーという熊をマッチョにしたような魔物に遭遇した時は、横からリルに攫われ、凄い勢いで撤退した。リル曰く、リルなら倒せるかもしれないけど危なすぎて割に合わないとのことだ。あの大きさだと重量は軽く俺の百倍以上ありそうだしね。タックルされたら、大型トラックにはねられる感じだよね。転生してしまうよ……

 魔物との戦いを繰り返したおかげで、俺のレベルは8まで上がった。はっきりとは分からないけど、俺はこの世界の一般に比べて、だいぶレベルが上がりやすい気がする。
 女神様の加護のおかげだとしたら、感謝してもしきれない。
 将来、女神様に会う機会があったらお礼を言わなくては。ついでに猫耳を触らせてもらわねば……


◇◇◇


 その日も、狩りの獲物を探して俺とリルは森の中を歩いていた。といっても俺はリルの肩の上だから、歩いてるのはリルだけだ。なんだかそれだけ聞くと俺が怠け者みたいに聞こえるけど、俺が自分の足で歩いていても今みたいに度々肩に強制移動させられるのだ。
 リルはモフモフ、スリスリしながらニコニコしてるので、俺に不満は全くない。不満どころか臨む所だ。

 ふと足が止まり、リルが前方を注視している。
 魔物かなと思ったが、いつも魔物を見つける時に比べて少し緊張している様子だ。
 そこから音を立てないように少し進むと、前方に木に寄り掛かるようにして座っている人らしきものが見えてきた。こんなところに人?
 リルの方を見たら、真剣な横顔が見えた。こんな魔物蔓延る森の中での人との出会い、良いことばかりではないだろうからね……

 さらに近づくと、木に寄りかかっている姿がはっきりと見えてくるが、それは金髪の少女に見える。ますます森には似合わないし、どうやら酷く疲れているように見える。

 リルは俺を助けてくれたことからも分かるように、とても優しい性格をしている。
 この金髪少女が困ってるようなら、助けようとするだろう。

 リルが少女の目の前まで到着した。そこで少女は突然現れたこちらの存在に気づいたようだ。

「…………」

「…………」

 リルは目前に飛び出したものの、なんて声を掛ければいいのか分からないのだろう。そもそもリルは人と話すのが久しぶりだろうしね。

 少女は口を開けて固まっている。突然、猫を肩に乗せた獣耳少女が現れたら混乱するのも無理ないだろう。

 ここは俺の出番だ。場を和ませるんだ、少女に俺たちは怖くないんだってことをアピールするんだ。そう思い、リルの肩から金髪少女の前の地面に飛び降りる。

「クルニャーン♪」

 できるだけ可愛らしく聞こえるようにと鳴いた。首をかしげる仕草まで追加する。あざと可愛いってやつだ。

「ネコさん?」

 とりあえず目論見は成功したようで、少し警戒を解いてくれた気がする。『あとは任せた』とリルの方を振り向く。ここまで来たってことは、接触しようとしてたってことだもんね。

「こ……こんにちは」

 あれ?なんだかリルが固い感じだ。これは駄目なやつの気がする。

「こんにちは……」

 金髪少女は若干戸惑ってるようだ。まだ状況が理解できないもんね。大きなお目々は疲労しているように見えるけど、真剣にこちらを探っているようにも見える。

「わ……私はリル言います……」

 あ……言葉遣いが変だし、これはやっぱり駄目な感じだ。いつも俺に話しかけるのと様子が違う。

 ニ年間、人と接して無かったし今まで友達もいなかったらしいからね。どう人と接すればいいのか分からないのだろう。俺と接するのは、リルの立場からしたら、会話というより語りかけるというのに近いだろうしね。それにペットと接するのに緊張はしないもんね、ちょっと複雑な気分だけど。

 よし、また俺の出番だ。良い方法を思いついたとクルニャ。
 リルの緊張を解かなくては、そう思ってリルの尻尾に飛びつく。モフモフ&くすぐり作戦だ。

「ちょっ、シュン! ニャハハハッ」

 これは作戦であって、俺がモフモフしたいからでは断じて無い。無いったら無いのである。

「ま、まって! シュンてば! ニャヒャヒャ」

 俺が当初の目的を少しだけ、ほんの少しだけ忘れてモフモフしてると……
 フカフカ尻尾気持ちいい……

「フフッ、あなた達すごく仲がいいのね」

 俺とリルは揃って少女の方を見る。優しそうに微笑む少女に俺達は目を奪われた。

 リルは地面にうつ伏せで俺はその上に乗って、リルの尻尾を両手で抑えている。リルは他に人がいたことを思い出したのか、少し恥ずかしそうに起き上がり、服についた土を払った。

「リルだよ、こんにちは」

 いつものリルに戻った。

「私は、クレア」

 お互い微笑んでいる。これがクレアとの出会いの瞬間だった。

 
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