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第15話 親子の受難
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さて、ドタバタしたけど、少し落ち着いてクレアの方を見る。
歳は見た感じ十歳いかないくらいだろうか。森の中を彷徨っていたからか、整った顔と青い瞳には疲労の色が濃く出ている。金色の背中まである長い髪もボサボサになっている。服は白い厚手のワンピースだが、高級そうな服だけに余計ボロボロになっていることが目立つ。
一見いいとこのお嬢様に見える。
どうして森の中にいるのだろうと俺が思っていると。
「クレアはここで何してるの?」
リルがクレアに質問を投げかける。
クレアが返答するためか口を開こうとした瞬間、リルが警戒した様子で後方に視線を向けた。
何かが近づいて来ている。
すわ魔物かと警戒していたところで、木々の間から男が一人現れた。歳は三十台くらいだろうか、剣を構えてこちらを警戒している。男は服の上からでも一目で鍛えられているのが分かり、「熟練の冒険者」というのがラノベ脳な俺の率直な感想だ。
ただ、着ている服が派手ではないのだが、山にいるにしては生地と仕立ての感じが良すぎる気がする。
「パパ!」
クレアが男に向かって声をかけた。
「クレア、大丈夫か!」
「待って、パパ! この人達は大丈夫だから!」
クレア自身の安否に対する問いだったが、クレアは場を落ち着かせることを優先したようだ。
話がこじれないので有り難い。
「君は?」
リルに対する質問だ。俺はペットくらいに認識されてるのだろう。リルは一瞬だけこちらに視線を向けて、すぐに男の方へ視線を戻す。
「私はリルと言います。シュ……このワイルドキャットと一緒に私達はこの山で暮らしています」
いつもより丁寧な感じの言葉遣いだ。『私達』を強調したように感じて嬉しくなる。
「剣を向けてすまなかった。私の名はアルフレッドという。君……達と話がしたい」
アルフレッドが剣を鞘に収めて謝ってくる。ただ完全に警戒を解いてはいないように感じる。山賊とかいそうな世界だし当然のことだ。下手な油断は死に繋がりかねないだろう。
「分かりました。場所を移動しましょう。水や食べ物を用意します」
リルは見るからに疲労の色が出ているニ人を見て、休息が必要だと判断したようだ。リルは俺を持ち上げ肩に乗せ、その様子を見ていたクレアが微笑ましそうに微笑した。
「クレア、歩けるか?」
「結構休んだし大丈夫よ」
どうやら木に寄り掛かっていたのは、休憩していたところだったようだ。魔物がいるこの森では休憩も結構危ないのだが、すぐ駆けつけることができるところに父親がいたということだろうか。
「ついて来てください、途中で歩けなくなったら言ってくださいね」
リルが親子に声をかける。いつもより丁寧な口調のリルが少し大人びて見えた。
山が似合わないこの親子にはどんな事情があるのだろうか。
俺達はいつもの住み処へと歩み始めた。
◇◇◇
「はぁ……、美味しい」
クレアは食事をしてやっと人心地がついたようだ。リラックスしている姿は年相応に見える。
食事は俺がリルと出会った時に作ってくれたスープに似ていて、あの時の春菊のようなのと、細かく刻んだ肉が入ってる。この春菊は疲労回復の効果とかあるのかもしれない。
「リル殿、食事と呼べるものを食べたのは五日ぶりだ、感謝する」
アルフレッドも、満足そうにしている。
そうだろう、そうだろう。リルの作るご飯は美味しいのだよ、ちょっと自慢気な気分だ。
俺達は焚き火を挟むようにして、リルの正面にクレアとアルフレッドが並んで座っている。
俺はというと、定位置であるリルの膝の上だ。しかもリルが手ずからスプーンで俺の口元までご飯を運んでくれている。クレアがニコニコしながら、こっちを見ている。
「まず、私達がなぜ森の中にいたのかを話してもいいだろうか」
「はい」
アルフレッドが事情を説明してくれるようだ。
「私達は所用があって伯都ベルーナから、王都ラウルバーグへ旅をしているところだった」
リルが頷く。
リルは周辺の地理をある程度は両親から教わっていると言っていたが、知っている地名なのかもしれない。
「あれは、伯都から王都までの街道を十日程馬車で進んだ時のことだった……。」
アルフレッドがそこまで話した時、クレアが悲痛そうな顔をした。その時のことを思い出しているのだろうか。
「街道の人気の無い場所で、私達は盗賊に偽装したとある傭兵団の襲撃を受けた……護衛はつけていたが、多勢に無勢で徐々に討ち取られていき…………」
アルフレッドは歯噛みして続きを話そうとしている。今の話で気になったのだが、まるでその傭兵団を知っているかのような口ぶりだ。リルは黙って続きに耳を傾けている。
「いよいよ全滅するというところで、私とクレアを逃がすために護衛と従者が足止めになってくれたのだ。その間に私達は街道から外れ、この森の中に逃げ込み、五日程彷徨っていたところでリル殿と出会ったというわけだ。あの時はクレアを休ませている間に、近くに水や果物がないか探していたところだった」
隠すつもりなのか、とりあえず大枠の説明をするつもりだったのか、所々重要な事を伏せているのを感じる。
リルの方を見ると、分かっているというように、俺に向かって頷いた。
「分かりました。今日のところはゆっくりと休んでください。今後どうするかと、詳しい話はまた明日聞かせてください」
リルのその言葉を聞いて、アルフレッドは感心した様子だ。もしかしたら、大まかな話をして信用できるかどうか、リルを試したのかもしれない。まあ、明日には分かることだろう……
リルが二人を寝る場所まで案内して、周囲に罠が仕掛けてあるから魔物の心配はいらないことを説明した。うっかり罠に引っ掛からないように、リルが起こしに来るまでは下手に動かないこと、リルと俺が寝る場所までの間にも罠があるということも伝えた。
こちらが警戒を残していることに、アルフレッドは当然のことというように嫌な顔一つせず受け入れていた。
寝床に入って暫くは無言のリルに撫で回されたが、途中で俺はリルの抱きまくらに転職した。いわゆるジョブチェンジだ。得意魔法はモフモフヒーリングとかだろうか……
「おやすみ、シュン」
「クルニャン」
いつもより、リルの抱きしめる力が強かった気がする…………
歳は見た感じ十歳いかないくらいだろうか。森の中を彷徨っていたからか、整った顔と青い瞳には疲労の色が濃く出ている。金色の背中まである長い髪もボサボサになっている。服は白い厚手のワンピースだが、高級そうな服だけに余計ボロボロになっていることが目立つ。
一見いいとこのお嬢様に見える。
どうして森の中にいるのだろうと俺が思っていると。
「クレアはここで何してるの?」
リルがクレアに質問を投げかける。
クレアが返答するためか口を開こうとした瞬間、リルが警戒した様子で後方に視線を向けた。
何かが近づいて来ている。
すわ魔物かと警戒していたところで、木々の間から男が一人現れた。歳は三十台くらいだろうか、剣を構えてこちらを警戒している。男は服の上からでも一目で鍛えられているのが分かり、「熟練の冒険者」というのがラノベ脳な俺の率直な感想だ。
ただ、着ている服が派手ではないのだが、山にいるにしては生地と仕立ての感じが良すぎる気がする。
「パパ!」
クレアが男に向かって声をかけた。
「クレア、大丈夫か!」
「待って、パパ! この人達は大丈夫だから!」
クレア自身の安否に対する問いだったが、クレアは場を落ち着かせることを優先したようだ。
話がこじれないので有り難い。
「君は?」
リルに対する質問だ。俺はペットくらいに認識されてるのだろう。リルは一瞬だけこちらに視線を向けて、すぐに男の方へ視線を戻す。
「私はリルと言います。シュ……このワイルドキャットと一緒に私達はこの山で暮らしています」
いつもより丁寧な感じの言葉遣いだ。『私達』を強調したように感じて嬉しくなる。
「剣を向けてすまなかった。私の名はアルフレッドという。君……達と話がしたい」
アルフレッドが剣を鞘に収めて謝ってくる。ただ完全に警戒を解いてはいないように感じる。山賊とかいそうな世界だし当然のことだ。下手な油断は死に繋がりかねないだろう。
「分かりました。場所を移動しましょう。水や食べ物を用意します」
リルは見るからに疲労の色が出ているニ人を見て、休息が必要だと判断したようだ。リルは俺を持ち上げ肩に乗せ、その様子を見ていたクレアが微笑ましそうに微笑した。
「クレア、歩けるか?」
「結構休んだし大丈夫よ」
どうやら木に寄り掛かっていたのは、休憩していたところだったようだ。魔物がいるこの森では休憩も結構危ないのだが、すぐ駆けつけることができるところに父親がいたということだろうか。
「ついて来てください、途中で歩けなくなったら言ってくださいね」
リルが親子に声をかける。いつもより丁寧な口調のリルが少し大人びて見えた。
山が似合わないこの親子にはどんな事情があるのだろうか。
俺達はいつもの住み処へと歩み始めた。
◇◇◇
「はぁ……、美味しい」
クレアは食事をしてやっと人心地がついたようだ。リラックスしている姿は年相応に見える。
食事は俺がリルと出会った時に作ってくれたスープに似ていて、あの時の春菊のようなのと、細かく刻んだ肉が入ってる。この春菊は疲労回復の効果とかあるのかもしれない。
「リル殿、食事と呼べるものを食べたのは五日ぶりだ、感謝する」
アルフレッドも、満足そうにしている。
そうだろう、そうだろう。リルの作るご飯は美味しいのだよ、ちょっと自慢気な気分だ。
俺達は焚き火を挟むようにして、リルの正面にクレアとアルフレッドが並んで座っている。
俺はというと、定位置であるリルの膝の上だ。しかもリルが手ずからスプーンで俺の口元までご飯を運んでくれている。クレアがニコニコしながら、こっちを見ている。
「まず、私達がなぜ森の中にいたのかを話してもいいだろうか」
「はい」
アルフレッドが事情を説明してくれるようだ。
「私達は所用があって伯都ベルーナから、王都ラウルバーグへ旅をしているところだった」
リルが頷く。
リルは周辺の地理をある程度は両親から教わっていると言っていたが、知っている地名なのかもしれない。
「あれは、伯都から王都までの街道を十日程馬車で進んだ時のことだった……。」
アルフレッドがそこまで話した時、クレアが悲痛そうな顔をした。その時のことを思い出しているのだろうか。
「街道の人気の無い場所で、私達は盗賊に偽装したとある傭兵団の襲撃を受けた……護衛はつけていたが、多勢に無勢で徐々に討ち取られていき…………」
アルフレッドは歯噛みして続きを話そうとしている。今の話で気になったのだが、まるでその傭兵団を知っているかのような口ぶりだ。リルは黙って続きに耳を傾けている。
「いよいよ全滅するというところで、私とクレアを逃がすために護衛と従者が足止めになってくれたのだ。その間に私達は街道から外れ、この森の中に逃げ込み、五日程彷徨っていたところでリル殿と出会ったというわけだ。あの時はクレアを休ませている間に、近くに水や果物がないか探していたところだった」
隠すつもりなのか、とりあえず大枠の説明をするつもりだったのか、所々重要な事を伏せているのを感じる。
リルの方を見ると、分かっているというように、俺に向かって頷いた。
「分かりました。今日のところはゆっくりと休んでください。今後どうするかと、詳しい話はまた明日聞かせてください」
リルのその言葉を聞いて、アルフレッドは感心した様子だ。もしかしたら、大まかな話をして信用できるかどうか、リルを試したのかもしれない。まあ、明日には分かることだろう……
リルが二人を寝る場所まで案内して、周囲に罠が仕掛けてあるから魔物の心配はいらないことを説明した。うっかり罠に引っ掛からないように、リルが起こしに来るまでは下手に動かないこと、リルと俺が寝る場所までの間にも罠があるということも伝えた。
こちらが警戒を残していることに、アルフレッドは当然のことというように嫌な顔一つせず受け入れていた。
寝床に入って暫くは無言のリルに撫で回されたが、途中で俺はリルの抱きまくらに転職した。いわゆるジョブチェンジだ。得意魔法はモフモフヒーリングとかだろうか……
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「クルニャン」
いつもより、リルの抱きしめる力が強かった気がする…………
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