ココア

永井 彰

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人生のカタチ

つよさ

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 女子たちは、去って行った。

 子ども同士のケンカだ、とか近所では言われるだろう。

 今まではそんなコトか、と軽く見ていた。

 ただ、社会に出ることで、みんなが自然に世間の荒波に揉まれて、丸くなって仲良くなれるかなんて分からない。

 そんな風になれる、という甘い思考の宗教と言われても、仕方ない。


 絶対なんてないんだ。


 今日だって、あれで済んだから良かったもののと言われれば、私に出来る事はきっと山ほどあっただろう。

 その時、私はただただ息苦しくて、何も言えず、何も出来なかった。

 兄は頼もしいとは言えなかった。
 ただ、少なくとも私より、勇気があったから。そして、心を強く持っていたから、今日はあれだけで済んだのだ。
 やっぱり、そう思いたい。


 私はまた、泣いていた。

 今度はただの、悲しみの涙だった。


「私は君たちの、先生。だけど、家族ではない。君たちが強くなるのも、大事なことなんだよ」

 心理カウンセリング。

 兄だけでなく、家族それぞれが受けることになっているから、患者でなくとも私は私で、こまめにセンセイと話す。

 ただ、センセイに励まされても、今度ばかりは私の心は暗かった。

 強くなるって、結局なんなんだろう。

「センセイ。強くなるって、どうすれば良いんですか」

「海咲さん。それはね、長い人生の中であなたが見つけていくの。あなただけが、あなたの答えを知る事が出来る」

 あなたはあなた自身の、人生の主人公なのよ。
 センセイは、カウンセリングをそう締めくくった。


 あの日以来、女子たちは来なくなった。

 安心して良いのかは、分からない。

 彼女たちもまた、人生の主人公だ。
 だから、いや、だからこそ、私を敵だと思うなら、いつかどこかで酷い何かを始めるかもしれない。


 気にしてばかりも、いられない。


 強くなる事の中に、彼女らを考えるのも含まれてはいると思う。

 だけど、今はどちらも、ただの学生。

 まず人生をどうにかしていかないと、目の前の事に立ち向かっていかないと何も始める事さえ出来ないんだ。


 私は、手付かずになりそうだった宿題を済ませた。

 兄が立ち直ろうとしていて、私が引きこもってしまっては本末転倒。

 自分で自分を励まし、やるべき事を片付けて行った。


 兄は、母と共に出版社へ向かった。

 いかに自立する気が起きても、兄はまだ世間知らずだ。

 切符を買おうとしても、都会まで行けないかもしれない。

 保護者同伴なんて、と笑われたくはないという兄に、家族みんなで配慮した。

 そして選ばれたのは、下世話な人もいそうな大手ではなく、中規模くらいの地味だが堅実な出版社だ。
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