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第4章 覇気使い四天王。
第147話 黒の終演。
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高島が右手を上げた瞬間、何かを思い出し停止した。
「おっと、君を消す前に確認する事があった」
高島は忍へ接近し、しゃがみこんだ。
そして雑にサングラスを取った。
「気持ち悪いが確かめるか」
そう言って高島は左手で忍の顎を持ち、右手を右目へ容赦なく突っ込んだ。
人間の弱点である内部を弄くられているので、左足と右目の激痛が相まって、悲痛な叫びが止まらない。
「……やっと取れた。こんな義眼見たことないね」
高島は忍の右目から取り出した義眼をマジマジと興味深く観察していた。
それもその筈、この義眼はプラスチックや金属でも木製でもない素材で作られていたからだ。
「……お前、もうちょっと手心はねぇのか?」
容赦ない拷問以上な扱いに対し、忍は肩で息を繰り返し言う事は手加減しろって事だった。
「その発言で分かったのは、君はかなりイカれてるよ。普通なら感情的になって殺すやら一族皆殺しとか言うけど、拷問で手心とか言い出したら人間じゃないよ。もはや奴隷以下だね」
「……」
忍は高島を睨むことすらせず、ただ余裕の表情だ。
「その左目も潰してあげたかったけど、まあいいや。五年前に行方不明だから、どうやって探そうって思っても無理だった。けれど今はここにいる……瀕死の状態で」
「……殺せば『覇気使い最強』はお前の物だ」
「興味がない。それに君は弟が『覇気使い最強』だって言ってたじゃないか。嘘はよくないな?」
「あぁ、そうだ。俺は嘘つきだ。認めたくないが、俺は負けている」
「……なんか冷めたな。君から敗北宣言されたらヤル気がなくなったよ……な~んて言ってほしかった?」
「いや、そこまで期待はしてねぇが……油断してくれんのは待ってた」
よく見ると忍の右腕はダークネスホールへ突っ込まれていた。
高島が気づいた時には遅く、後ろ襟を捕まれていた。そして力強く引っ張られ地面へと勢いよく倒れた。
「クソッ!」
高島が立ち上がろうとしても、まだ忍の右手は捕まっており、立ち上がれなかった。
「流石のおりこうさんでも、路上喧嘩だけは知らねぇだろ!」
左腕と右足で這いずり、高島の上へのし掛かり、不適にも笑っていた。
「まさか!?」
高島が察した瞬間、忍は上半身を大きく反らせ左肘を立てる。
そして重力任せで左肘を高島の鼻へ目掛けて落とした。
マトモにダメージを喰らった高島は涙目で苦悶な表情を浮かべる。
「体力のない俺でも、これなら確実にダメージは与えられる。くたばれ! このいけ好かないインテリ野郎が!」
そして何度も重力任せで肘打ちする。
だが、ワンパターンなので慣れてきた高島に阻まれる。
「お前、何度も何度も鼻を狙いやがって……早く、この鬱陶しい右手を離せ!」
「誰が離すかよ!」
この手を離してしまうと完全に詰みだと感じ、指圧でチアノーゼなろうが離さなかった。
「離れろ、このクソ金持ちが!」
忍は何かに引き上げられる形で、高島と遠くに引き離された。
忍は坂下まで衝撃のみで吹き飛ばされていた。
(能力を使ったな。引き離されたのは痛いが、これで能力は制限される)
もう忍は高島の能力が分かっている様子。
「あ~ちくしょう。離れる合間に俺の右目に一撃加えやがった……」
高島の右瞼は大きく腫れ上がり、切れて少し出血していた。
忍が引き離される際、眼鏡の隙間へ左ストレートで殴り、皮膚を傷つけたのだ。
「これで同じだ」
ガードレールの棒に掴み、片足だけで忍は立ち上がり、頂上にいる高島へ同等と告げた。
「同じ? 右目以外は何も同じではないぞ?」
「この距離なら、お前は能力が使えないだろ?」
高島は頭上を見て、残った左目だけで周囲を注意深く観察した。
「……俺も面倒なことをしたな」
状況を理解した高島は頭をボリボリと掻き、不快感を示していた。
「お前の能力は最強ではあるが条件付きでしか発動しない。俺と同系統の能力……『影の覇気』だからな」
「もう隠していても仕方ないな。そうだ、私の能力は影を自在に操る力。『影の覇気使い』だ。相手の影以外なら全て操れる」
「その上、影によっての攻撃は全て現実に反映されるイカれた効果。相当鍛えなければできない芸当……もはや執念すら感じる」
高島から感じられる忍に対しての執念と殺意に感服していた。
「生まれながらにして、全てで頂点に君臨していた神崎には分からないだろうな。凡人が頂点までに這い上がる過程を……」
「……俺にも不得意な物はあるぜ?」
「『覇気使い最強』という看板がありながら、ただ神の前に立ち尽くし、海道に残り品川修二を待っていた。それは何故だ? そして再び現れては約束の決闘をすれば良かったのに、それをせず悪魔と戦った。……全てを見下しているからだろ?」
「……」
「海道に居残ったのは、自分より弱い者の上に立ちたかった。自分が勝利者としていたかった。そして神崎流が強いと証明したかった。そして品川修二達と共闘したのは負けた事を認めたくなかったんだろ? 神崎流がチンピラ風情の流派に負けたとなれば恥を隠す為に、一緒に行動すれば消えると思っていたんだろ?」
「さっきから話が噛み合わねぇな。けど、お前が俺を恨む理由は分かった。どちらの流派が強いかの問題だけの話だったな」
忍が考えていたのと違い拍子抜けされた。
「まあ単純な話だ。私は全国に先生が考えた流派を認識してもらいたい。けれど弊害となったのが神崎流だ。そこで私は考えた。覇気も神崎流の頂点である神崎忍を倒せば実績が出てくるだろうと」
「それで魔界連合も巻き込んだって訳か? そんなことしなくても海道まで来いよ」
「……知り合いに魔界連合の幹部の一人は巻き込んだが、魔界連合を巻き込んだというのはどういう事だ?」
そこで初めて食い違う高島と忍の主張が。
「お前、魔界連合の閻魔に喧嘩売ったんじゃねぇのか?」
「何故そんな事をする? 私はお前を殺せたら十分な話だ。そして遺体の処理は魔界連合に任せているだけで、彼等つまり幹部とはビジネスパートナーとして契約している。何故、喧嘩などする必要がある?」
「……」
忍は気付き理解した。この馬鹿騒ぎを起こしたのは高島ではなく、『アトラス財団』の一人による裏切り行為。
先に気づいておけばという後悔ではなく、そんな事して一体何をしでかすつもりが勝っていた。
思い返せば異質ばかりが多かった。
品川と南雲が東京に来たこと、閻魔でも手が回らなく対応できない依頼、予期できない『B.N.A』の登場、高島の食い違う発言。
(もうアイツしかいない。全てを仕組み、不利な馬鹿騒ぎを起こし、品川の電話番号が漏れていた事も……『B.N.A』との繋がりだけは見えないが、答えが分かったら尚更、高島には退いて魔界連合に行かないとな)
早速、忍は行動に移した。
素早くは動けないが頂上までワープすればいいので、面倒な高島を動けなくさせればいいと考えた。
だったら、影が届かない範囲で攻撃するのがチャンスだと思い……
再びダークネスホールに右手を突っ込み、襟足に手を伸ばした。
「二度通用するとでも?」
だが、それは高島には読まれていた。
高島は前へと進み、下る坂の勢いを利用して忍へ一直線に向かう。
(通用しなくてもいいんだよ)
もう一つのダークネスホールを出現させ、左腕を突っ込んだ。
すると一直線へ向かっていた高島の死角である右側から左拳が衝突した。
マトモに顎へ喰らった高島の意識は揺らぎ、大きく左側へ吹き飛ぶ。
(意識は確実に刈り取った。がクソッ! 高島め右側から攻撃くると分かってて、俺の左腕が出た瞬間、殴ってヒビ入れやがった。桐崎め、品川といい格闘化物を製造しやがって!)
だが、高島がいないチャンスだった。
高島は目前にはおらず、街灯の光も高島には届かない、月光も雲で遮られていた。
ワープするなら今しかなかった!
(ダークネスホール)
もはや体力等は限界に近く、これが最後のダークネスホールで終わらせたかった。
そして見事にダークネスで頂上へワープでき、魔界連合の入口は目と鼻の先だった。
「影罠」
そう言葉が聞こえた同時、忍の腹から黒い手が突き抜けて出てきた。
「!?」
あり得ないと頭が一杯となり、恐る恐るとした表情で背後へ振り向いた。
背後にいたのは黒い人形をした何かだった。
「あ~痛いな。けど、ちゃんと意識はハッキリとしてきた」
意識が回復した高島は頭を回して血流を刺激し、更にハッキリさせようとした。
「影罠といって、私の影を引き離して待機させる事ができる技法です」
頭を回しながら自分の影へ接近する。
「自分の影と引き離すと存在自体が消滅する危うい技法ですが、私はこれを一分間は維持できるようになりました」
「……」
「おや、あまり驚いてないですね? というより化かされた感じですか……」
高島の影は腹から手を引き抜き、本人の影へと戻った。
「……お前……わざと……致命傷を外し……やがったな……」
息をするのも必死で振り向く所か、顔は青白くなっていた。
「そうですねけれど街灯の光程度では、貴方を殺すことなんて力がなくて、時間がかかり過ぎる。月光を待つのも、それはそれで面倒です……ですので雲には退いてもらいましょう」
高島は忍の目前まで移動し、その場で開く動作をする。と影も同じ動きをした。
薄暗い夜雲は真ん中から裂け、月光が二人を照らした。
「……さようなら神崎忍」
さようなら宣言で忍は弱々しく右手を前へ出していた。
もう本能だけで戦おうとしていた。が、右手は高島に届く前に、腕からするりと切断された。
「……」
もはやアドレナリンで痛みも感じず、悲鳴も上げる事もできない。
そして身体は無数に切り刻まれ大量出血し、自慢の髪型であるコーンロウのゴムは切れ、髪の毛は分散された。
高島からは一切手を出していない。殆んどが影が攻撃していた。
(品川……お前との約束……どうやら守れそうにない……らしい……)
忍が死ぬ間際に思った事は五年前に品川と交わした約束、決闘だった。
本人が本気で人生の中で後悔したのは唯一コレだけだった。
そして頸動脈を深く切られ、影はトドメと言わんばかりに……
「ぐふっ」
影は忍の胸へ手を刺し、心臓を勢いよく引き抜いた。
それは同時に現実でも反映され、忍の胸に穴が開いて血管を切った心臓が飛び出た。
空中で浮かび弱々しく脈動していた。
もうショック死してもおかしくない状況なのに忍に意識はあった。
「これで黒の終わりですね」
高島は勝ったと確信し、現実で忍の心臓へ右掌で掴み……影と同時に潰し破裂させた。
「……」
忍の身体は糸が切れたように前から倒れた。
瞳に光は存在せず、血色は死体の様に青白く、アスファルトと衝突しても身体一つ動かせずに……
この日、この時をもって神崎忍は……若くして絶命した。
「おっと、君を消す前に確認する事があった」
高島は忍へ接近し、しゃがみこんだ。
そして雑にサングラスを取った。
「気持ち悪いが確かめるか」
そう言って高島は左手で忍の顎を持ち、右手を右目へ容赦なく突っ込んだ。
人間の弱点である内部を弄くられているので、左足と右目の激痛が相まって、悲痛な叫びが止まらない。
「……やっと取れた。こんな義眼見たことないね」
高島は忍の右目から取り出した義眼をマジマジと興味深く観察していた。
それもその筈、この義眼はプラスチックや金属でも木製でもない素材で作られていたからだ。
「……お前、もうちょっと手心はねぇのか?」
容赦ない拷問以上な扱いに対し、忍は肩で息を繰り返し言う事は手加減しろって事だった。
「その発言で分かったのは、君はかなりイカれてるよ。普通なら感情的になって殺すやら一族皆殺しとか言うけど、拷問で手心とか言い出したら人間じゃないよ。もはや奴隷以下だね」
「……」
忍は高島を睨むことすらせず、ただ余裕の表情だ。
「その左目も潰してあげたかったけど、まあいいや。五年前に行方不明だから、どうやって探そうって思っても無理だった。けれど今はここにいる……瀕死の状態で」
「……殺せば『覇気使い最強』はお前の物だ」
「興味がない。それに君は弟が『覇気使い最強』だって言ってたじゃないか。嘘はよくないな?」
「あぁ、そうだ。俺は嘘つきだ。認めたくないが、俺は負けている」
「……なんか冷めたな。君から敗北宣言されたらヤル気がなくなったよ……な~んて言ってほしかった?」
「いや、そこまで期待はしてねぇが……油断してくれんのは待ってた」
よく見ると忍の右腕はダークネスホールへ突っ込まれていた。
高島が気づいた時には遅く、後ろ襟を捕まれていた。そして力強く引っ張られ地面へと勢いよく倒れた。
「クソッ!」
高島が立ち上がろうとしても、まだ忍の右手は捕まっており、立ち上がれなかった。
「流石のおりこうさんでも、路上喧嘩だけは知らねぇだろ!」
左腕と右足で這いずり、高島の上へのし掛かり、不適にも笑っていた。
「まさか!?」
高島が察した瞬間、忍は上半身を大きく反らせ左肘を立てる。
そして重力任せで左肘を高島の鼻へ目掛けて落とした。
マトモにダメージを喰らった高島は涙目で苦悶な表情を浮かべる。
「体力のない俺でも、これなら確実にダメージは与えられる。くたばれ! このいけ好かないインテリ野郎が!」
そして何度も重力任せで肘打ちする。
だが、ワンパターンなので慣れてきた高島に阻まれる。
「お前、何度も何度も鼻を狙いやがって……早く、この鬱陶しい右手を離せ!」
「誰が離すかよ!」
この手を離してしまうと完全に詰みだと感じ、指圧でチアノーゼなろうが離さなかった。
「離れろ、このクソ金持ちが!」
忍は何かに引き上げられる形で、高島と遠くに引き離された。
忍は坂下まで衝撃のみで吹き飛ばされていた。
(能力を使ったな。引き離されたのは痛いが、これで能力は制限される)
もう忍は高島の能力が分かっている様子。
「あ~ちくしょう。離れる合間に俺の右目に一撃加えやがった……」
高島の右瞼は大きく腫れ上がり、切れて少し出血していた。
忍が引き離される際、眼鏡の隙間へ左ストレートで殴り、皮膚を傷つけたのだ。
「これで同じだ」
ガードレールの棒に掴み、片足だけで忍は立ち上がり、頂上にいる高島へ同等と告げた。
「同じ? 右目以外は何も同じではないぞ?」
「この距離なら、お前は能力が使えないだろ?」
高島は頭上を見て、残った左目だけで周囲を注意深く観察した。
「……俺も面倒なことをしたな」
状況を理解した高島は頭をボリボリと掻き、不快感を示していた。
「お前の能力は最強ではあるが条件付きでしか発動しない。俺と同系統の能力……『影の覇気』だからな」
「もう隠していても仕方ないな。そうだ、私の能力は影を自在に操る力。『影の覇気使い』だ。相手の影以外なら全て操れる」
「その上、影によっての攻撃は全て現実に反映されるイカれた効果。相当鍛えなければできない芸当……もはや執念すら感じる」
高島から感じられる忍に対しての執念と殺意に感服していた。
「生まれながらにして、全てで頂点に君臨していた神崎には分からないだろうな。凡人が頂点までに這い上がる過程を……」
「……俺にも不得意な物はあるぜ?」
「『覇気使い最強』という看板がありながら、ただ神の前に立ち尽くし、海道に残り品川修二を待っていた。それは何故だ? そして再び現れては約束の決闘をすれば良かったのに、それをせず悪魔と戦った。……全てを見下しているからだろ?」
「……」
「海道に居残ったのは、自分より弱い者の上に立ちたかった。自分が勝利者としていたかった。そして神崎流が強いと証明したかった。そして品川修二達と共闘したのは負けた事を認めたくなかったんだろ? 神崎流がチンピラ風情の流派に負けたとなれば恥を隠す為に、一緒に行動すれば消えると思っていたんだろ?」
「さっきから話が噛み合わねぇな。けど、お前が俺を恨む理由は分かった。どちらの流派が強いかの問題だけの話だったな」
忍が考えていたのと違い拍子抜けされた。
「まあ単純な話だ。私は全国に先生が考えた流派を認識してもらいたい。けれど弊害となったのが神崎流だ。そこで私は考えた。覇気も神崎流の頂点である神崎忍を倒せば実績が出てくるだろうと」
「それで魔界連合も巻き込んだって訳か? そんなことしなくても海道まで来いよ」
「……知り合いに魔界連合の幹部の一人は巻き込んだが、魔界連合を巻き込んだというのはどういう事だ?」
そこで初めて食い違う高島と忍の主張が。
「お前、魔界連合の閻魔に喧嘩売ったんじゃねぇのか?」
「何故そんな事をする? 私はお前を殺せたら十分な話だ。そして遺体の処理は魔界連合に任せているだけで、彼等つまり幹部とはビジネスパートナーとして契約している。何故、喧嘩などする必要がある?」
「……」
忍は気付き理解した。この馬鹿騒ぎを起こしたのは高島ではなく、『アトラス財団』の一人による裏切り行為。
先に気づいておけばという後悔ではなく、そんな事して一体何をしでかすつもりが勝っていた。
思い返せば異質ばかりが多かった。
品川と南雲が東京に来たこと、閻魔でも手が回らなく対応できない依頼、予期できない『B.N.A』の登場、高島の食い違う発言。
(もうアイツしかいない。全てを仕組み、不利な馬鹿騒ぎを起こし、品川の電話番号が漏れていた事も……『B.N.A』との繋がりだけは見えないが、答えが分かったら尚更、高島には退いて魔界連合に行かないとな)
早速、忍は行動に移した。
素早くは動けないが頂上までワープすればいいので、面倒な高島を動けなくさせればいいと考えた。
だったら、影が届かない範囲で攻撃するのがチャンスだと思い……
再びダークネスホールに右手を突っ込み、襟足に手を伸ばした。
「二度通用するとでも?」
だが、それは高島には読まれていた。
高島は前へと進み、下る坂の勢いを利用して忍へ一直線に向かう。
(通用しなくてもいいんだよ)
もう一つのダークネスホールを出現させ、左腕を突っ込んだ。
すると一直線へ向かっていた高島の死角である右側から左拳が衝突した。
マトモに顎へ喰らった高島の意識は揺らぎ、大きく左側へ吹き飛ぶ。
(意識は確実に刈り取った。がクソッ! 高島め右側から攻撃くると分かってて、俺の左腕が出た瞬間、殴ってヒビ入れやがった。桐崎め、品川といい格闘化物を製造しやがって!)
だが、高島がいないチャンスだった。
高島は目前にはおらず、街灯の光も高島には届かない、月光も雲で遮られていた。
ワープするなら今しかなかった!
(ダークネスホール)
もはや体力等は限界に近く、これが最後のダークネスホールで終わらせたかった。
そして見事にダークネスで頂上へワープでき、魔界連合の入口は目と鼻の先だった。
「影罠」
そう言葉が聞こえた同時、忍の腹から黒い手が突き抜けて出てきた。
「!?」
あり得ないと頭が一杯となり、恐る恐るとした表情で背後へ振り向いた。
背後にいたのは黒い人形をした何かだった。
「あ~痛いな。けど、ちゃんと意識はハッキリとしてきた」
意識が回復した高島は頭を回して血流を刺激し、更にハッキリさせようとした。
「影罠といって、私の影を引き離して待機させる事ができる技法です」
頭を回しながら自分の影へ接近する。
「自分の影と引き離すと存在自体が消滅する危うい技法ですが、私はこれを一分間は維持できるようになりました」
「……」
「おや、あまり驚いてないですね? というより化かされた感じですか……」
高島の影は腹から手を引き抜き、本人の影へと戻った。
「……お前……わざと……致命傷を外し……やがったな……」
息をするのも必死で振り向く所か、顔は青白くなっていた。
「そうですねけれど街灯の光程度では、貴方を殺すことなんて力がなくて、時間がかかり過ぎる。月光を待つのも、それはそれで面倒です……ですので雲には退いてもらいましょう」
高島は忍の目前まで移動し、その場で開く動作をする。と影も同じ動きをした。
薄暗い夜雲は真ん中から裂け、月光が二人を照らした。
「……さようなら神崎忍」
さようなら宣言で忍は弱々しく右手を前へ出していた。
もう本能だけで戦おうとしていた。が、右手は高島に届く前に、腕からするりと切断された。
「……」
もはやアドレナリンで痛みも感じず、悲鳴も上げる事もできない。
そして身体は無数に切り刻まれ大量出血し、自慢の髪型であるコーンロウのゴムは切れ、髪の毛は分散された。
高島からは一切手を出していない。殆んどが影が攻撃していた。
(品川……お前との約束……どうやら守れそうにない……らしい……)
忍が死ぬ間際に思った事は五年前に品川と交わした約束、決闘だった。
本人が本気で人生の中で後悔したのは唯一コレだけだった。
そして頸動脈を深く切られ、影はトドメと言わんばかりに……
「ぐふっ」
影は忍の胸へ手を刺し、心臓を勢いよく引き抜いた。
それは同時に現実でも反映され、忍の胸に穴が開いて血管を切った心臓が飛び出た。
空中で浮かび弱々しく脈動していた。
もうショック死してもおかしくない状況なのに忍に意識はあった。
「これで黒の終わりですね」
高島は勝ったと確信し、現実で忍の心臓へ右掌で掴み……影と同時に潰し破裂させた。
「……」
忍の身体は糸が切れたように前から倒れた。
瞳に光は存在せず、血色は死体の様に青白く、アスファルトと衝突しても身体一つ動かせずに……
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