いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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08:問答

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声をかけあらかたの説明をすると、
いつものように姿と気配は消しててくれ、と言われた。
ストーカー行為は完全にばれていたようだ。

言われるまま、姿を消すとマティスは石を握り何かを願っていた。
左目が濁り、左腕がだらんとなる。
眼帯を慣れた手つきで付けると片手で掃除を始めた。

戻したのか?なんで?
今からくる貴族様にバレるとまずいとか?

砂漠のほうから土煙と地響きが聞こえてきた。
思ったより速くついたようだ。
徹夜になるんじゃないの?
ご苦労なこった。

ノックもせず、扉があき、
3人のいかにも剣士風な男たちが入ってきた。
それをほうきの柄に器用に腕を置き眺めているマティス。

「控えぬか、無礼者!」
「辺境は王都の恩恵を受けていない。受けていないものに王都の法は通じぬ。」
「減らず口を!誰のおかげで生きられると思っているのだ!」
「誰のおかげ?大審判の前で明らかにするか?
こちらはそれでもかまわない!」

まさにぐうの音も出ないといった感じで黙り込む剣士。
その後ろから、貴族然としてあの男が入ってきた。

「これはこれは兄上、お久しぶりです。」
「俺に兄弟はいない。」
「ああ、そうでした。我が兄は片手片腕で子だねを無くしたので、
兄ではなくなったのでしたね。」
「・・・何の用だ?」

「押えろ!」

あっという間にマティスは2人の男に押さえられた。

「何をする!!」

「王都や領国の法が届かぬ辺境。
強きものが法であろう?少し聞きたいことがあるだけだ。」

そういうと、そばにいた剣士が1つの砂漠石を取り出した。
先ほど取ってきたものとは違って、かなりの大きさだ。


『汝に問う。嘘偽りなく返答せよ。
虚実ならば、息をすることはならぬ』

「なっ?そんなことのためにそれほどの石を使うのか?
それだけあればどれほどの民が助かると思っているのだ!!」

『問以外を答えても、息をすることはならぬ』
「・・・・」

『混合い初め前の地響きは知っているな?その時、その場所に行ったか?』
「・・・知っている・・・いった。」

『うむ、その時に砂漠石が出たはずだ。それはどこにある?』
「・・・どこにもない」
『砂漠石はなかったのか?』
「・・・ない。」
『そこになにかなかったのか?』
「・・・あった。」
『それはなんだ?』
「・・・赤い塊。」

砂漠石を使って、強制的に問答が始まった。

そういう使い方もできるようだが、
この弟さん?ほんとヤな奴ですな。
で、マティスは兄上っことでお貴族様か?

おお!ここにきてパターンBなのかしら?
てか、赤い塊ってわたしのことね?

『生きものか?石か?』
「そうだ・・・ちがう・・・」
『どんな生き物だ?今どこにいる?』
「この世のものとも思えない雄たけびを上げる・・・
今は、今はどこにいるか知らない。」

問に答えるだけだから、その答えか?
自ら知っていることをすべて話すようにもっていかないと逃げ道はたくさんある。
しかし、この世のものとも思えない雄たけびを上げるって失礼な!

『ゼムがいつもの取引以上に食料を置いていったのはなぜだ?』
「・・・祝いのため。」
『なんの祝いだ?』
「・・・なんでもない祝い。」

「チッ。・・・地鳴りも石が少ないのもたまたまか・・・
その為だけにこの大きさを使ったのは
さすがに無駄だったか・・減りもさすがに早いな。
あと一つがいいところか・・。」

減り?エネルギーがなくなってきたってこと?
自称弟君を睨みつけるマティス。

『最後だ、お前の母の名を言え!!』

目を見開くマティス。うわー、なんか、お家騒動っぽいね。

「・・・知らない。・・・知らない」
『知っていて知らないと答えても虚実となるそ?知らぬわけがないだろう?』
「・・・知らない。』

『もう一度聞く。母は名は?答えよ!!』

「・・・知らない・・・・・はぁはぁ・・・
答える義理はない!!!  ぁぁぁぁ・・・」

押さえつけられている体を無理やり起こし、
腹の底から大声を上げた。
問答以外の返答をしたので息ができないのか?

『大丈夫、大丈夫。息はできる。ゆっくり、静かにね。
少しお眠りなさい。わたしが起こしてあげるから』

見えないことをいいことにマティスの頭を抱え込むように、強く強く念じた。
全体重がわたしに寄り掛かった来る。
支えきれなくなり、そのまま崩れるように倒れてしまった。
あ、顔面直撃だわ、、、ごめん。

崩れると同時に問答に使った砂漠石はさらさらと砂になり消えていく。

「ふん、気を失ったのか。」

マティスを腹を思いっきり蹴り上げた。

「セサミナ様、それ以上は血殺しになります。」
「問答をしただけだ。
そもそも血殺しというのは石を使っての血縁者殺しのことであろう?
正直に話せば何も問題がなかった。今も気を失ているだけだ、
石も消え失せたんだ、息もできるだろうよ。
そもそも兄弟ではないと自らいったではないか?
ここは辺境、法は届かぬ。
ならば、火の不始末で、なにもかも燃えても仕方がない。
な?アルビン?」

「は、おっしゃる通りでございます。」

マティスを押さえつけていた片割れがにこやかに答える。

「帰るぞ!」

な?火をつける気?

行きがけの駄賃とばかり、ベットの下にある砂漠石の箱をとり、
くず石を使うランタンや金目のものを一切合切取っていった。
扉を閉めると、油でも撒いているのか?
ばしゃばしゃと音がする。

バキバキと木が爆ぜる音。火よりも一酸化中毒のほうが怖い。
この世界であるのかはわからんが。
煙が充満し、もう視界がはっきりとしない。
カバンの中の砂漠石で薄いドームを作り、空気を確保。
いま、飛び出したら、捕まるのが落ちだ。
上空に飛び上がるのもと得策ではない。
いったん火が収まるまで土中に潜るか?

『火が届かないところ。大きな区間。
地下にある。そこは空気もあるし、寒くもなく熱くもない。
そんなところに続く階段。誰にも見つからない
 秘密の扉が、今ここにある』

ご都合主義の文言を並べ立て、床に手押し当てる。
いかにもな扉が現れ、開くと階段が続いていた。

『家の中のものでマティスの大事なものはカバンに入って!』

ズトンといろんなものがカバンに入っていく。
マティスを毛布にくるみ浮かしながら階段を下りていく。
もちろん扉には、

『燃えない、見つからない、門番よろしく♪』


と唱えながらひと撫でした。
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