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07:天気の話のように
しおりを挟む合わさりの月の日は体震える。
砂漠の石が呼んでいるのに行けないからだ。
会えない気持ちを押さえつけると涙があふれる。
自分を自分で抱きしめ、月が沈むのを待つ。
「これは夢だよ。」
いつの間にか姿を表した女がベットに腰かけていた。
逃がすまいと腰にしがみつく。するとおんなは抱き返してくれた。
これは夢なのか。
「眠れないの?」
優し気な声が聞く。違うと首を振れば、
「どこか痛いの?」
と問いかける。また首を振る。
「寝れないんなら、今日はとくに明るいし、砂漠にいこうか?」
「・・・?・・・いかない。」
「?なんで?音が聞こえてるよ。
きっといっぱい石が表に出てる。取りに行かないと、
トカゲにみんな取られるよ?」
合わさりの月の夜に砂漠に出ようと誘う。
子供でも酔っ払いでも冗談でもそんなことは言わない、
いや、言えない。
抱き着いた腰から離れ、黒い瞳を見つめた。
「・・・合わさりの月の夜は砂漠に出てはいけない。」
「?なんで?」
こいつはなんだ?石使いではないのか?
槍を構え、素早く奴の首にあてがった。
「待て、何もしない、話がしたい!」
「何もしないって、槍刺さってるじゃん!!」
そうなんだが、仕方がなく槍を下した。
「・・・・おやすみ、泣き虫さん!」
そういうと女は瞬く間もなく姿と気配を消した。
「っちくしょう!!!!出てこい!!!」
力任せに槍を振り、近くに合ったものが音をたたて崩れる。
寝室をで、家中を探し回った。
「いるんだろう!勝手に本を読んだり、
飴をくすねたのも知ってるんだぞ!!
出てきやがれ!!」
しかし、女は出てこなかった。石を使ってもわからないのだろう。
あれだけ大きな石を使ってもわかったのは最初の1回だけだ。
おかしいと思ったのは最近だ。
本の位置が微妙に違う。
いつもの偵察かと思ったが、それにしては微妙な感じだ。
奴らはさっき来ましたとばかりのあからさまな感じがしない。
それだけだと気のせいにしたが、飴玉が1つ減っていた
とっておきの赤玉。次に食べるのを楽しみにしていた。
見間違えるわけがない。
絶対にいる!
狭い家を一人で声を出し、いるかもわからない奴に対してなだめすかして話しかけた。
なんの反応もなかった。やはり夢だったのか。
違う、飴玉がなくなってる!
私が数を間違えるはずがない!
しかし、情けなくなって机に伏せてしまった。
先ほどとは違う涙がでそうだ。
それからどれくらいたっただろうか?
「・・・コンバンハ。」
女の声にすぐさま槍をとり構えたが、すぐに下した。
「話がしたい、槍も刺さない、消えないでくれ。頼む。」
必死に懇願した。私が人に頼むとは。
「いや、いいんだけど、さっきさ、砂漠に行ったらさ、
お貴族様がいてね。
石がすくねー、外れとかげはどーしたー?
ゼムは商売人だ!
見に行くぞー!
がってんだーってなったんだけど、大丈夫?」
私の胸の内をしらずに、
女は軽い感じで恐ろしいことを天気の話のように話した。
「なに?石が少ない?ゼムのやつしくじったのか?
それより奴は来るのか?」
「しくじったんじゃなくて仕入れと支払いの量があわないから怪しいって話だよ
お貴族様は把握してるみたいだね。」
あの時の食料か?大体それは大方がゼムの腹の中に納まったんだ。
石は結局砕かずにそのまま持ってるのか。
どうする、ごまかせるか?目は眼帯で、腕は動かさなければいい。
いや、一時的にでも石を使ったほうがいいな。
「いまから、いやな客が来る。
あんたはいつものように姿と気配は消しててくれ。
何があっても出てくるな。
それが終わったら話をさせてくれ。な?頼む。」
「・・・わかった。」
そういうと女は姿と気配を消した。
まだ近くにいるのか手を伸ばしたが、空を切るだけだった。
ああ、急がないといけない。
ベットの下にある石を取り出して、
『少しの間左目は見えない。少しの間左腕は動かない』
3つ握った石は砂となり消えていった。
長年使っていた眼帯を再び付けると、
とりあえず、散らかった部屋を片付け始めた。
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