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15:物持ち
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マティスは物を大切にする人だったようで、ありとあらゆるものが入っていた。
ないのは生ごみと家本体ぐらいなものだ。
そのままの配置でまるまるマティスの生活空間が復元された。
ただ、家本体についている棚とかはないので床に積み上げれれていた。
ちなみに床はただの土ではない。固めたタイル調の土をヘリンボーンように貼ってある。
いいなー。ここで、自分の夢のマイホームを作りたい、いや、作るべし。
そんな夢のマイホーム計画に思いを馳せていたが、マティスが静かである。
「あ、無くしていたものが出てきてうれしいって奴?」
「・・・ちがう、これは全部家にあったものだ。それがどうしてここにある?」
「?ここに逃げるとき、家の中のものでマティスの大事なものをってことで鞄にいれたのよ。
外にあったものはないよ?なんか大事なものあったの?」
「全部、その鞄に入っていたのか?」
「うん、いいでしょ?こっちに来てから作ったのよ。なかなかの出来でしょ?」
「作ったのか・・・作れるのか?」
「ん?ほしいの?これはお気に入りになってるから、材料くれたら作るよ。
なんにしても、こんだけの人さまの荷物を自分の鞄にいれとくのは嫌だしね。
それにしても、物持ちだね。みんな大事なものなんでしょ?
あ、飴ちゃんのビンもあるね。」
「これは、ほとんどが、タロスのものだ。タロスの親の、そのまた親の代から使っていたものらしい。
それをそのまま使わしてもらっていたんだ。」
「なるほど、それは大事だね。なんか、布切れか、鞄ある?それに加工して不思議鞄にするよ?
というか、石の力を使ったらできるんじゃないの?この手合いのものは定番だよ?」
「初めて見たし、聞いたこともない。大体どうやってその小さな鞄に入っていたんだ?
理解できない。」
「うーん、想像力が物を言う世界なのに想像できないと何もできないってことかな?」
「?石の力を使ってか?想像してもその真理まで理解できないと何もできない。
空想しても、それがどうしてそうなっているのかを
理解しないとできない。」
「あ、そういう風にどこかでブレーキがかかるようになってるのかな?
そうしないと、良くも悪くもとんでもない世界になるものね。
んで、わたしにはそのブレーキがない、と。」
「・・・なにもかも思い通りになっているのか?」
「なってないよ。元の世界に帰りたいのに帰れないし、ないものは作れない。
なにもかも知ってなくてもある程度はできるけど、
たぶん、プラスティックとか化学的なものはつくれない。
水も空気から作ってるわけだし、トイレの水はたぶん井戸があったよね?そこから来てると思うよ。
汚水はそれもたぶんどこかに流れてる。消滅させてるわけでもない。
扉君もマティスの家にあったものの寄せ集めかな?床板とかそんなのじゃないかな?
扉君で思い出した。まだ、そとに出るのダメ見たい。音はしなかったけど。
よくよく考えると、こんだけのものを運び出したら、
焼け跡から死体だころか、何の燃えカスも残ってないから余計に不信におもってるかもね。
よっぽの火力でなにも残らず燃えましたって思ってもらえればいいんだけど。
保存食もある見たいだから、当分ここで生活したら?お風呂も作るよ」
「風呂!!」
「お?食いつきいいね。風呂好きなんだね?要望があれば聞くよ♪ジャグジーとか♪」
「じゃぐじぃ?ときどきわからない単語が出てくるな。それが何かわからないが、
その、手足が伸ばせるくらいの、泉に入るようなそんな感じの風呂が王都にあるらしい。
水ではなく、すべてが湯なんだそうだ・・・・それで・・・ん?なんだ?」
日本では最低限の風呂の条件キラキラとした目で語ってくれたので
思わずニマニマしてしまった。
「いや、うん、それくらいならお安い御用ですよ。楽しみにしてて。
それで、わたしもここにいてもいかな?扉君の感じだとまだ外にでるのだめっぽいからね。
せっかく広い空間があるんで、いろいろ実験したいんだ。街に行ってもいいけど、
どの程度なにができるかもう少し把握しときたいしね。
マティスは弟君の見張りがいなくなったら、外に出て、それからどうするの?」
「ああ、ここにはさすがにもういられないからな。しかし、街に行く気はない。
砂漠人として砂漠で生きたい。
ここではない砂漠に行こうと思う
とりあえず、ゼムとは連絡を取りたいから、次の混合いはじめの月まではここにいたい。
ああ、暦だったな。・・・これだよ」
そういって、少し大きめの写真立てのような木組みものを床から拾い上げた。
床にあったということは、作り付けの棚にあったんだろうか?
その棚に整然と並んでいた盗み読んだ本も山積みになっていた。
「ここに小さい砂漠石を嵌めるんだ。そうすると月の重なり具合が開いた穴から光ってわかるんだ。
一般家庭ではだれもが見るところに置いておくものなんだ。
貴族の家にはもっと装飾色が強いもので、暦を見るというよりは装飾品だったな。
砂漠人は見なくてもわかるんだが、タロスはなぜかわからないといって
これを使っていた。俺も最初は見ないとわからなかったから、助かったよ。最初にとった砂漠石も
これに嵌めたんだ。1年も砂漠にいれば見なくてもわかるようになったんだが、
タロスがずっと俺の取った石を必ず嵌めていた。
タロスが死んだ後も習慣で嵌めていたがそれもここ最近使ってなかったな。
光らなくなってそのままにしていたんだ。」
「タロスさんって砂漠人なんだよね?代々の?
じゃ、これ、マティスのために用意したんだね。いいね、そういうの」
「え?私の為?え?・・・あ・・・それまでは暦はあの家にはなかった・・・
タロスが教えてくれてて、石を収穫できてそれで・・・
わしもわからんって、これを、出してきて、石を出せって・・・それで・・・」
どう聞いても砂漠人のタロスが必要としない暦を使っていたのは
マティスの為だろう。余計なことを言ったのだろうか?
一人称が私にになってるし、木組みの暦を手に固まってしまった。
「いいひとだね、タロスさんは」
「・・・ああ、尊敬する砂漠人で自慢の父親だった」
「そうか、その暦、電池切れ?というか、石切れなのね?
光ってるのを見たいけど
わたしのもってる石で動かすってのはちょっとあれだねぇ・・・」
「?」
「いや、これ、たぶんマティスの取ってきた石っていうこだわりで動いてたんだよ。
それを他人にの取った、といか、拾った石で動かすのってなんか、いやでしょ?
こういうのはタロスさんのこだわりを押し通すのがいいんだよ。
と、いってもマティスの取った石はみんな取られたからね、どっかにないのへそくりみたいな石」
「へそくり?」
「へそくりがない世界なのか、驚きだね
うーん、なんかあった時のために隠しておく財産みたいな、感じ?」
「ああ、それならわかる。ベットの下の石は取られたんだよな?
あれとは別に隠してある石はあるぞ。
棚の後ろに隠していたから、何もかもその鞄に入っていたんなら、どこかにあるはずだ。」
「なにもかもじゃないよ。大事なものっていう括りがあるよ。」
「大事なもの、か。石は必要なものだが、大事なものと思っていたかどうか。
あ、石を入れていたものはタロスの鞄なんだ。大事だよ、大事!」
「ふふ、大事、ね。」
「・・・なにがおかしい?」
「おかしかないよ、大事なものがあるっていいなっておもって。」
「だれだって、お前にだってあるだろ?」
「あるよ?うーん、あった、かな?どちらにしても今はないよ、あ、このどてらと鞄は大事、ふふ」
「・・・帰れないって決まったわけじゃないだろ?」
「帰れるってわかってるわけでもないのよ。突然いなくなったら帰ったって思ってね。」
「・・・・」
「さっ、鞄を探そう?ね?どんなの?あー、ちょっとまって。」
しんみりしそうなのから強引に話を戻す。そこで、閃いた。
実験その1
『マティスのへそくり石が入ったタロスの鞄、ここに来て』
埋もれた本や、箱、保存食が入った瓶が山になっていたところが崩れ、
ポシュっという音とともに手元に鞄が飛んできた。
「なるほど、物にもお願いが効くんだね。そりゃそうか、石の加工や土の加工も
それらにお願いしてるんだものね。」
「・・・すごい、もう言わないと誓ったのに」
「え?なんでそんな誓いしたの?」
「・・・便所で言いまくったからだ!!」
「そりゃ、最高の賛辞だね、お風呂でもきっと言いまくるよ。」
「・・・そりゃ楽しみだ。」
「ふふ、で、この鞄にはいってるの?出して、暦に入れてみてよ。」
ずっしりとした肩掛けの鞄をマティスに渡した。
ずっとしまい込んでいたのか、タロスとの思い出を思い出したのか
懐かしそうに受け取ると、中から小さな袋にをいくつか取り出した。
「大きさはいまいちで、売ってもたいしたことがないものばかりなんだが、
色や形が面白いものを集めていたんだ。最初はベットの下に同じように入れていたんだが
タロスが死んでからあいつらが家探しをするようになったんだ。
タロスもきれいだから売らずに持っとけと言っていたし、盗みはされてないが
念のため隠してたんだよ。」
そういいながら、手のひらに石を取り出した。
雫型や金平糖のようなもの、すこしピンクの色味が濃いもの、青いのもある。
「うわぁ、すごくきれいだね。こっちのほうが価値がありそうだけど?」
「いや、砂漠石の価値は大きさ、次に形だ。色は関係ない。」
「へー、ところ変われば品変わるって奴かな?
こっちのほうがわたしの世界では絶対価値があるよ、だってほしいもの。
わたしもちょっとだけ集めてたんだよ、石。ゆっとくけど、ずっとあんたのそばにいたわけじゃないからね?
ちょっと鞄のなか出してもいいかな?」
「まだ、その鞄にはいているのか?」
「うん、最初に見つけた石、というか岩と、夜な夜な集めたきれいな石」
「夜に砂漠に出ていたのか?」
「ん?うん。あまり眠くなかったし、夜はマティスが寝てて暇だしね。
眠くなったら昼間にマティスの借りて寝てたよ。」
「・・・もう少しここでの常識を学んだほうがいい。おなじ寝床で寝るのは夫婦だけだ」
「いや、借りただけだよ?同衾したわけじゃないし、そもそも最初に寝かしつけたのマティスじゃん。
なかなか寝心地がいいなとおもったのよ、えっと、これって飴ちゃんと同等のお怒り物件?」
「・・・いや・・・その話は後だ。最初に見つけた岩?」
「うん、そう、これ。」
話がそれたので、さっそく、最初の石を出した。
鞄にいれて好きなように使っていたにもかかわらず、大きさは変わっていない。
「・・・・」
「おーいい、マティス君、大丈夫?」
マティスが顎を外さんばかりに大きな口を開けている。
その顔がおかして声をあげて笑ってしまった。
ないのは生ごみと家本体ぐらいなものだ。
そのままの配置でまるまるマティスの生活空間が復元された。
ただ、家本体についている棚とかはないので床に積み上げれれていた。
ちなみに床はただの土ではない。固めたタイル調の土をヘリンボーンように貼ってある。
いいなー。ここで、自分の夢のマイホームを作りたい、いや、作るべし。
そんな夢のマイホーム計画に思いを馳せていたが、マティスが静かである。
「あ、無くしていたものが出てきてうれしいって奴?」
「・・・ちがう、これは全部家にあったものだ。それがどうしてここにある?」
「?ここに逃げるとき、家の中のものでマティスの大事なものをってことで鞄にいれたのよ。
外にあったものはないよ?なんか大事なものあったの?」
「全部、その鞄に入っていたのか?」
「うん、いいでしょ?こっちに来てから作ったのよ。なかなかの出来でしょ?」
「作ったのか・・・作れるのか?」
「ん?ほしいの?これはお気に入りになってるから、材料くれたら作るよ。
なんにしても、こんだけの人さまの荷物を自分の鞄にいれとくのは嫌だしね。
それにしても、物持ちだね。みんな大事なものなんでしょ?
あ、飴ちゃんのビンもあるね。」
「これは、ほとんどが、タロスのものだ。タロスの親の、そのまた親の代から使っていたものらしい。
それをそのまま使わしてもらっていたんだ。」
「なるほど、それは大事だね。なんか、布切れか、鞄ある?それに加工して不思議鞄にするよ?
というか、石の力を使ったらできるんじゃないの?この手合いのものは定番だよ?」
「初めて見たし、聞いたこともない。大体どうやってその小さな鞄に入っていたんだ?
理解できない。」
「うーん、想像力が物を言う世界なのに想像できないと何もできないってことかな?」
「?石の力を使ってか?想像してもその真理まで理解できないと何もできない。
空想しても、それがどうしてそうなっているのかを
理解しないとできない。」
「あ、そういう風にどこかでブレーキがかかるようになってるのかな?
そうしないと、良くも悪くもとんでもない世界になるものね。
んで、わたしにはそのブレーキがない、と。」
「・・・なにもかも思い通りになっているのか?」
「なってないよ。元の世界に帰りたいのに帰れないし、ないものは作れない。
なにもかも知ってなくてもある程度はできるけど、
たぶん、プラスティックとか化学的なものはつくれない。
水も空気から作ってるわけだし、トイレの水はたぶん井戸があったよね?そこから来てると思うよ。
汚水はそれもたぶんどこかに流れてる。消滅させてるわけでもない。
扉君もマティスの家にあったものの寄せ集めかな?床板とかそんなのじゃないかな?
扉君で思い出した。まだ、そとに出るのダメ見たい。音はしなかったけど。
よくよく考えると、こんだけのものを運び出したら、
焼け跡から死体だころか、何の燃えカスも残ってないから余計に不信におもってるかもね。
よっぽの火力でなにも残らず燃えましたって思ってもらえればいいんだけど。
保存食もある見たいだから、当分ここで生活したら?お風呂も作るよ」
「風呂!!」
「お?食いつきいいね。風呂好きなんだね?要望があれば聞くよ♪ジャグジーとか♪」
「じゃぐじぃ?ときどきわからない単語が出てくるな。それが何かわからないが、
その、手足が伸ばせるくらいの、泉に入るようなそんな感じの風呂が王都にあるらしい。
水ではなく、すべてが湯なんだそうだ・・・・それで・・・ん?なんだ?」
日本では最低限の風呂の条件キラキラとした目で語ってくれたので
思わずニマニマしてしまった。
「いや、うん、それくらいならお安い御用ですよ。楽しみにしてて。
それで、わたしもここにいてもいかな?扉君の感じだとまだ外にでるのだめっぽいからね。
せっかく広い空間があるんで、いろいろ実験したいんだ。街に行ってもいいけど、
どの程度なにができるかもう少し把握しときたいしね。
マティスは弟君の見張りがいなくなったら、外に出て、それからどうするの?」
「ああ、ここにはさすがにもういられないからな。しかし、街に行く気はない。
砂漠人として砂漠で生きたい。
ここではない砂漠に行こうと思う
とりあえず、ゼムとは連絡を取りたいから、次の混合いはじめの月まではここにいたい。
ああ、暦だったな。・・・これだよ」
そういって、少し大きめの写真立てのような木組みものを床から拾い上げた。
床にあったということは、作り付けの棚にあったんだろうか?
その棚に整然と並んでいた盗み読んだ本も山積みになっていた。
「ここに小さい砂漠石を嵌めるんだ。そうすると月の重なり具合が開いた穴から光ってわかるんだ。
一般家庭ではだれもが見るところに置いておくものなんだ。
貴族の家にはもっと装飾色が強いもので、暦を見るというよりは装飾品だったな。
砂漠人は見なくてもわかるんだが、タロスはなぜかわからないといって
これを使っていた。俺も最初は見ないとわからなかったから、助かったよ。最初にとった砂漠石も
これに嵌めたんだ。1年も砂漠にいれば見なくてもわかるようになったんだが、
タロスがずっと俺の取った石を必ず嵌めていた。
タロスが死んだ後も習慣で嵌めていたがそれもここ最近使ってなかったな。
光らなくなってそのままにしていたんだ。」
「タロスさんって砂漠人なんだよね?代々の?
じゃ、これ、マティスのために用意したんだね。いいね、そういうの」
「え?私の為?え?・・・あ・・・それまでは暦はあの家にはなかった・・・
タロスが教えてくれてて、石を収穫できてそれで・・・
わしもわからんって、これを、出してきて、石を出せって・・・それで・・・」
どう聞いても砂漠人のタロスが必要としない暦を使っていたのは
マティスの為だろう。余計なことを言ったのだろうか?
一人称が私にになってるし、木組みの暦を手に固まってしまった。
「いいひとだね、タロスさんは」
「・・・ああ、尊敬する砂漠人で自慢の父親だった」
「そうか、その暦、電池切れ?というか、石切れなのね?
光ってるのを見たいけど
わたしのもってる石で動かすってのはちょっとあれだねぇ・・・」
「?」
「いや、これ、たぶんマティスの取ってきた石っていうこだわりで動いてたんだよ。
それを他人にの取った、といか、拾った石で動かすのってなんか、いやでしょ?
こういうのはタロスさんのこだわりを押し通すのがいいんだよ。
と、いってもマティスの取った石はみんな取られたからね、どっかにないのへそくりみたいな石」
「へそくり?」
「へそくりがない世界なのか、驚きだね
うーん、なんかあった時のために隠しておく財産みたいな、感じ?」
「ああ、それならわかる。ベットの下の石は取られたんだよな?
あれとは別に隠してある石はあるぞ。
棚の後ろに隠していたから、何もかもその鞄に入っていたんなら、どこかにあるはずだ。」
「なにもかもじゃないよ。大事なものっていう括りがあるよ。」
「大事なもの、か。石は必要なものだが、大事なものと思っていたかどうか。
あ、石を入れていたものはタロスの鞄なんだ。大事だよ、大事!」
「ふふ、大事、ね。」
「・・・なにがおかしい?」
「おかしかないよ、大事なものがあるっていいなっておもって。」
「だれだって、お前にだってあるだろ?」
「あるよ?うーん、あった、かな?どちらにしても今はないよ、あ、このどてらと鞄は大事、ふふ」
「・・・帰れないって決まったわけじゃないだろ?」
「帰れるってわかってるわけでもないのよ。突然いなくなったら帰ったって思ってね。」
「・・・・」
「さっ、鞄を探そう?ね?どんなの?あー、ちょっとまって。」
しんみりしそうなのから強引に話を戻す。そこで、閃いた。
実験その1
『マティスのへそくり石が入ったタロスの鞄、ここに来て』
埋もれた本や、箱、保存食が入った瓶が山になっていたところが崩れ、
ポシュっという音とともに手元に鞄が飛んできた。
「なるほど、物にもお願いが効くんだね。そりゃそうか、石の加工や土の加工も
それらにお願いしてるんだものね。」
「・・・すごい、もう言わないと誓ったのに」
「え?なんでそんな誓いしたの?」
「・・・便所で言いまくったからだ!!」
「そりゃ、最高の賛辞だね、お風呂でもきっと言いまくるよ。」
「・・・そりゃ楽しみだ。」
「ふふ、で、この鞄にはいってるの?出して、暦に入れてみてよ。」
ずっしりとした肩掛けの鞄をマティスに渡した。
ずっとしまい込んでいたのか、タロスとの思い出を思い出したのか
懐かしそうに受け取ると、中から小さな袋にをいくつか取り出した。
「大きさはいまいちで、売ってもたいしたことがないものばかりなんだが、
色や形が面白いものを集めていたんだ。最初はベットの下に同じように入れていたんだが
タロスが死んでからあいつらが家探しをするようになったんだ。
タロスもきれいだから売らずに持っとけと言っていたし、盗みはされてないが
念のため隠してたんだよ。」
そういいながら、手のひらに石を取り出した。
雫型や金平糖のようなもの、すこしピンクの色味が濃いもの、青いのもある。
「うわぁ、すごくきれいだね。こっちのほうが価値がありそうだけど?」
「いや、砂漠石の価値は大きさ、次に形だ。色は関係ない。」
「へー、ところ変われば品変わるって奴かな?
こっちのほうがわたしの世界では絶対価値があるよ、だってほしいもの。
わたしもちょっとだけ集めてたんだよ、石。ゆっとくけど、ずっとあんたのそばにいたわけじゃないからね?
ちょっと鞄のなか出してもいいかな?」
「まだ、その鞄にはいているのか?」
「うん、最初に見つけた石、というか岩と、夜な夜な集めたきれいな石」
「夜に砂漠に出ていたのか?」
「ん?うん。あまり眠くなかったし、夜はマティスが寝てて暇だしね。
眠くなったら昼間にマティスの借りて寝てたよ。」
「・・・もう少しここでの常識を学んだほうがいい。おなじ寝床で寝るのは夫婦だけだ」
「いや、借りただけだよ?同衾したわけじゃないし、そもそも最初に寝かしつけたのマティスじゃん。
なかなか寝心地がいいなとおもったのよ、えっと、これって飴ちゃんと同等のお怒り物件?」
「・・・いや・・・その話は後だ。最初に見つけた岩?」
「うん、そう、これ。」
話がそれたので、さっそく、最初の石を出した。
鞄にいれて好きなように使っていたにもかかわらず、大きさは変わっていない。
「・・・・」
「おーいい、マティス君、大丈夫?」
マティスが顎を外さんばかりに大きな口を開けている。
その顔がおかして声をあげて笑ってしまった。
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