いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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16:海峡石

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久しぶり笑ったし、たくさん話したから頬が痛だるい。
地元の友達との集まり後の疲労感がある。
あー、彼女たちとの次の集まりはいつだったか、参加率は低いが、
それでも毎回、次回の集まりを知らせてくれる距離感がありがたかった。

初めてのキス話や、結婚、出産、嫁姑問題。
最近は子供たちの進学の話などが出ていた。
そりゃ、年も取るよね。というか、このナイスバディーを見せたい。
もう、どこ場所の何部屋ですか?なんて言わさない!

「・・・これはどこで?」
「地響きがあったっていってたでしょ?それをやらかしたのは、まぁ、わたしなんだけども、
 そこにあったのよ。粉々に砕けたんだけど、元に戻れって願ったらこうなったんよ。
わたし自身が元に戻れと願ったつもりが握っていた石が元に戻ったという話。」
「元戻れか・・・砂漠石はもともと大きな塊で、それが長い年月をかけて地下水脈に呑まれながら砕けていくらしい。
 これはそれにも呑まれなかった原石なんだろう。」
「原石か。なるほどね。これってひと財産はある感じ?」
「1年はこの国を動かせるくらいだ」
「わぉ、国家予算の1年分ってこと?じゃ、わたしがひとりで生きていくなら問題ないほどの財産だね。」
「・・・ひとりで?」
「うん、ひとりで。 
 で、そのほかの石もね、なかなか面白いのよ。見てくれる?」

なにか言いたそうな目を向けられたが、
先の事はわからんしね、集めた石コレクションを見てもらった。

「夜にね散歩してるとなんとなく砂漠に呼ばれる感じがするのよ。
 それで、そこに行ってみると石が表面に出てきてる感じでね、
マティスの石の色もきれいだけど、この子たちもきれいでしょ?
この緑色のとか、あ、これはほんとに透明なの。あれ?これって砂漠石?」

砂漠石の定義がいまいちわからないが、
色とりどりの20個ほどの石をマティスの家にあった大きなテーブルに並べていった。
鉱物はあまり詳しくないが、形は蛍石のように八面体だ。

「これらは砂漠石ではない。海峡石と呼ばれるものだ。
 砂漠は昔、海の底だったらしい。海底にはこういう様々な石が沈んでいる。
 砂漠石は大きさに価値があるが、海峡石は色と透明度だ。
 これ全部でその砂漠石と同じだけの価値がある。」
「おお!!超大金持ち♪砂漠は昔海だったってのはわたしの世界ではあったよ。
で、これもやっぱり願いが叶うの?」
「おそらく。」
「おそらく?」
「希少すぎて試すものがいない。願いがあるなら砂漠石ですむ話だからね。
 装飾としての価値の方が高い。しかし、特定の願いに特化しているという話も聞く。」
「へー、ちょっとファンタジーぽいね。なんだろう?青は水が出るとか?」
 
ファンタジー色がいきなり濃くなったので、青い石を摘まみ上げ
そう話した。

水が八面体のすべての面からとうとうと溢れ出る。
うわっ、と思わず投げ出してしまった。
カツンと床に落ちたが、水は止まり、溢れ出た水も床にしみ込んでいった。

「・・・願ったのか?」
「願ってない。想像しただけ。願うときははっきりと願う。無意識もあるかもしれないけど。」

出しっぱなしの砂漠石を粘土のようにむしり取り
コップを2つつくった。
『水』

その願いで1つのコップには水が満たされる。

マティスは粘土のようにむしり取ったことに驚いたのか、
水を出したことに驚いたのか、またおもしろ顔をさらしていた。

空の方のコップを持って
「おいしい水」

と、いっても水は満たされない。願っていないから。

「ね、いまのは言っただけだから水は出てこない。」
『冷たくておいしい水』

そう願うと持っている手にもわかるほどに冷えた水が満たされた。

「こっちの水のほうがおいしいよ。
ちょっと座ろう。わたしの作った椅子より、
マティスんちにあった椅子のほうがさすがにいいよね。
椅子を作るのは難しい。座面の高さとか背もたれの角度とかね。
あ、クッションはマティスの毛布で作ってもいいかな?」

テーブルにコップを置き、毛布を”呼び”よせた。
何も言わずに、うなずくだけのマティス。
顎が外れたのか?

毛布はウール100%なのかキャメル100%なのかわからないけど
一度もこもこに戻し、50cm角ぐらいのフェルト状にした。
砂漠石を膜にして空気層を作りそれをフェルトで挟む。
程よい感じの反発力がでて、売れるんじゃなかろうかとひそかに思う。
色はいまいちだが。

「はい、これね。水も飲んで。」

椅子にクッションを置き、座すように促す。
座った瞬間にすぐに中腰になり、恐る恐る座る。
気に入ったのか、口角が少し上がった。
水を一口飲み、そのあとは一気に飲んだ。

「うまい。」
「そう、よかったね。」

「便所のあの、座るところの柔らかさがすばらしくて、
ずっと座っていたいと思ったほどだ。
このくっしょんといったか?これはあれ以上に座り心地がいい。」

嬉しそうに話すマティス。
もっと詳しくトイレの感想を聞き出そう。そしてマイホームに反映させるのだ。

落とした青い海峡石を拾い、わたしも椅子に座った。
うん、売れるよ、このクッションは!

「水に特化したってことかな?砂漠石みたいに消えないしね。
砂漠石だとこのくらいに大きさで水を出したらどれくらいで消える?」
「この大きさだと、湯あみに使う桶があるんだが、あれを満たすくらいだ。
ふつうは水を出すのには使わない。もったいないし、井戸水で事足りる。」
「あれ?湯あみの時に石を使ってなかった?」
「見てたのか?水を出したんじゃなくて、水に入れて湯に変えていたんだ。
 熱を出していた。」
「ずっと見てたわけじゃないってっ!小さいの3つもっていってるから
それで、お湯を出してるんだと思ってたよ。
試してみようか?桶は?大事なもの?こっちにある?」
「大事だが、外に出していたからない・・・な。」
「そうか、お風呂を作った時に試してみよう。ほかの色の石もね。
それよりも暦だよ、動かしてみて。」

話がどんどん逸れるが、トイレにカレンダーが元々の話だ。
小さな袋から取り出したすこし黄色味の丸い小さな石を暦箱の上にはめ込んだ。
一瞬淡く光り、箱の中に溶けていく。
すると左寄りの上部に少しだけ重なりがはずれた2つの丸い月が現れた。
「合わさりの月の夜の次だから少し離れている。
 これが少しずつ離れて、合わずの夜になる。また近づいて行って混合いはじめ、合わさりの月の夜になる。」
「その大きさでどれくらい動くの?」
「大体1年だ。雨の時期にあたらしい石を嵌めていた。大きさはほんとに小さなものでいいんだ。」
「へー、意外と長持ちするのね。でも、どうゆう仕掛けなんだろう?」
「ああ、石を嵌めるときに『時示せ月の姿を』って願うんだよ。
子供が最初に覚える願いの1つだ。」
「定番な願い言葉ってやっぱりあるんだ。ほかにはどんなのがあるの?」
「・・・渇き潤せ水の姿を、熱求めよ火の姿を、流れるもの風の姿を・・」
「うわー声にだすと結構恥ずかしいね。まさに厨二病。」
「ちゅうにびょう?声に出すのは子供の時だけだ、慣れれば思うだけで水と火と風は使える。」
「おもしろいねー。最初の教育でかなり制御されるとみたね。
たとえばさ、

---蒼き母なる水を満ち満たせ
---焼き尽くせ紅蓮の炎よ
---風は刃となりて百里を駆け抜けよ

とか、うわー、恥ずかしいこれ、こんな言葉でさ、火とか水とか出したら
大惨事じゃん?子供の時に小さな小さな願いで馴れさすんだね。
それで、満足するからそれ以上の力は求めないと。
思うに、多少は石の大きさが影響してるかもしれないけど、あんまり関係ないんじゃないかな?
大きい石を使ってるから願いが叶うって思い込みが肝心みたいな?
石はあくまでも願いの媒体で必ずしも必要じゃないと思うよ。
どちらかというと変幻自在な不思議石ってことのほうが重要だ思うけどな。」

「・・・・」

また、マティスが固まった。
お風呂、作ろうかな。


 
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