いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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21:気合を入れる

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部屋から出てきた彼女に手伝いは不要と、席に促し、
酒を勧めると、良い返事が返ってきた。
改めて彼女を見ると、タロスの服を着ていた。
あの血の色のように赤い上着ではなく、砂漠人が着るゆったりとした服だった。
熱のこもらない素材で、肌触りがいいものだ。
織の等級も貴族が普段使いに使うぐらいいいもので、
あまり贅沢をしないタロスの一番の金の使いどころだ。
すこしほつれもあったが、修繕したのだろうか、縫い目も見えずに
きれいな袖口にかけてきれいなふくらみを取っていた。
ふくらみ・・胸が強調されている。
赤い服ではわからなかったが、あの時掴んだ胸のふくらみが
そのまま見て取れた。
恥ずかしさのあまり、少し早口で話しをした。

グラスを作ったこと、服が似合っていること、
ガラスのこと、料理の事。
おいしそうに食べる様子にこちらもうれしくなった。
彼女はよく礼を言う。ありがとう、と。
言われることも少ないが、言うこともない。
ありがとう。もっと、それ以上の言葉で感謝を伝えたい。

風呂への期待度が上がる中、青い海峡石で
酒を薄めた。私にも石を寄こし、薄めて飲むように勧める。

指で石を挟んで、冷たい水と念じる。
サラサラと水があふれ、グラスに落ちる。
飲むと味は薄くなったのか分からないほど、冷たく飲みやすくなっていた。
うまい。

この食べ物はなんだと?聞かれるままに料理の説明をし、
それを聞きながらうれしそうに口に運び、幸せそうな顔をこちらに向ける。
それを見ながら酒を飲む。
うまい。

ほわほわとした気持ちのなかで、石鹸は有るかと聞いてきた。
石鹸。ある。あれは大事なんだ。
普段の湯あみではもったいなくて使えないが、大きな砂漠石を収穫できた時や
雨の日に使う。雨の日は砂漠にもいかない。街にも行かない。
当然今日は使う。用意をしろと言われたので、
寝床の横に作った棚から下着と石鹸をもってきた。
風呂だ!

「風呂に行こう!」
「はいはい、風呂に行こう」

勝手に開け閉めする扉は便所で体験済みだ。
服は脱いでいいのか?え?今はいいのか?

酔いが覚める。
手で押した透明な扉の向こうには、砂漠が広がっていた。
少し高くなった扇状の面に水がある。浅いのかと思ったが、底は深いようだ。

そちらに見とれてると入り口横の少し狭い空間を説明しだした。
石を押すと上から湯が出てくる。見たことはないが滝?なのか?
広い水面はやはり湯で、中で座ったりできるようになっている。
湯も水も出し放題。

そして、じゃぐじい。

縁の突起をおすとふつふつと水面から泡が立ち始めた。
沸騰してるわけではなく、風を押し出しているらしい。

やっと言葉が回復した。

「・・・すごい。」

その言葉で満足そうにうなづくと、便所に行ってこいという。
そんなことを言うな。わかっている。
湯につかりながら冷たい水も飲める。それも砂漠石から作る。
なんて、なんて贅沢なんだ。ここは王宮か?
王宮でもこんな贅沢はしない。

便所に行き、座りたい衝動は押え用を足すと、気合を入れて風呂の中に入った。
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