いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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54:枕の神様

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お風呂の中でマティスの”普通”にきれいにされ、
歯も指で磨かれ、寝間着も着せてもらう。
寝間着はスエットを改造したものだ。
裸で寝ると、寝返りを打つとき胸を挟む。
抱きかかえられ、
部屋に連れて行ってもらう。

うん、なんだか介護されてるみたいだ。
事実、介抱されている。
おもいつくことをすべてやっておきたいのだ。
あとで、いつかきっと。
ダメなのだ。

「水飲んで?」
これはコップで。

「ほら?こっち。おいで?」
枕がないので、腕枕。でも、最初だけ。

むにむにと良い場所を探して寝る。

「おやすみ、愛しい人。
 明日のゆっくり起きればいい。」

チュッとおでこにキス。

ふふ、どこのハーレクインだ?
おやすみなさい。




水を飲ませ、抱き寄せれば
ぐりぐりと腕に頭をすりつけ、口づけを落とせば
しあわせそうに微笑む。
おやすみなさいと唇がうごく。

明日はアサ飯とヒル飯は兼用になるか?
遠出する準備もいる。
水や食料はいいが、武器が少ない。とっさに作ることは無理だろう。
ある程度先に作っておくか。

眠らずに作っておくか?
この時期に眠る方が珍しい。

いや、彼女の寝息を横で、胸元で聞けば、
自然と眠くなる。これが普通なのだ。

もう一度、口づけを落とし眠りについた。






朝起きると横にマティスがいた。
珍しい、いつもはわたしより先に起きているのに。

朝日で目が覚めるわけではないから、
枕の神様にお願いしている。
枕の裏を8時間後なら、8回たたくのだ。
これは結構効くおまじないで、休日に使っていた。
ゆっくり寝たいから目覚ましは使わないが、気づけば夕方でした、というのを避けるためだ。
こちらの世界には枕がないので、
マティスの腕をぐりぐり8回こすりつける。
いなくても大体8時間後に目が覚める。あれ?神様はどこに?

今回はさすがに介護疲れかと、静かに伸びをする。
扉の横にある鏡が目に入り、さすがに起き抜けはぼさぼさだなーと、
そろりと起き出した。



後ろを振り返り、もう一度鏡をみる。
・・・位置を変えよう。
ベットを埋め込んでる壁側に移した。

熱いシャワーを軽く浴び、身支度を済ませ、
台所でコーヒーの用意をする。
砂糖を入れてもいいだろうか?
台所の主に聞かないといけない。
さとうはなにからできてる?サトウキビ?砂糖大根?
あればいいな、糖分を分離させればいいんだから。

ドン

「ぎゃっ!」

大きな音に思わず声が出る。
ドスドスと足音を響かせ、マティスがやってきた。

「びっくりした!どうしたの?あ、おはようございます。
コーヒー入れるよ?」
「・・・おはようございます。
 起きたらいないから、その、驚いた。」
「先に目が覚めたんだ、ごめんね。次からは必ず起こすようにするよ、めったにないと思うけど。」
「そうしてくれ。部屋の感じも違っていたから余計に驚いたんだ。」
「・・・鏡の場所を変えました。」
「!残念だ。」
「やっぱり、気づいてたんだね?ん?暗かったから見えなかったでしょ?」
「・・・前ほどではないがよく見えている。見たいと思っているから。」
「・・・そうですか。コーヒーは?」
「先に湯を浴びてくる。贅沢になれてしまったようだ。
少し待っててくれ。」
「あいあーい。」
「了解したってことだな?」
「うん、まってるよー。」

風呂に向かわず、こちらに突進してきた。


ぎゅっチュッ

朝から何をやっとるか、早くいってこい

思いはしたが声には出せなかった。

さ、気を取り直して今日の予定を考えなくては。
ほしいものリストも作っておこう。


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