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78:おいしい匂い
しおりを挟む眠れない。
今は月が昇ったばかりだろうか?
あと4度、月が昇れば、会わずの月となる。
それから9度昇れば、混合いはじめ。
それから11度昇れば、合わさりの月になる。
かれんだあでは何日になるのか。
空も飛べる。
物を呼び寄せる、人も。
心の声で話ができる。
そして移動ができる。思った場所に。
セサミナはこのような力を知っているのか?
領主の力を引き継いだといった。
統治する力?石の力に影響されない力?
王都はそれらを上回る力があるということか?
それが国を統治する力。
辺境領主にはない力。
街で海峡石が不足しているという。
もともと出回りにくい石だったが、それでも年に数個は収穫できていた。
ここ数年、ゼムの言うように取れていない。
砂漠石の収穫量は変わらない。
砂漠石は砂漠の中心、ここにゴロゴロあるという。
そんなことは誰も知らない。砂漠の民も知らなかっただろう。
いや、知ったからこそ離れたのか?
影響を受けるから?際限なく欲望が膨れるから?
知らずにいればいいが、知ってしまえばどうしようもない。
欲望に際限はない。
彼女が力の使い方を説明するときには
理屈と、これは多少の嘘もはいるようだが、
納得がいく、納得してしまうような説明と、約束事を決める。
彼女自身がなにかで縛りをつくり、
その中で使うようにしている。
そのほうが違う力も生まれやすいのか?
この力はこれからどう使っていけばいい?
なにを勘違いしている?
なにを慢心しているんだ?
必要なら使えばいいだけだ。
自ら力を振りかざすことはない。
ただ、生きていけばいい。
それが一人ではなく、彼女と2人でとなっただけだ。
彼女を覗き見ると少し微笑んでる。
またおいしいものを食べている夢でも見ているのか?
・・・パンを焼こう。
おいしい匂いで起こすんだ。
乳酪と卵があるんだ、街で教えてもらったパンも作れるだろう。
おやすみ愛しい人。
マティスの考えが流れ込んでくる。
無意識か?
小難しいことを考えているな。
そうだよ、生きていけばいいんだ。
つとめを果たせばいい。
少し、表情にでたのか、
なんでも食い物系に結び付けるのはやめてほしい。
パン、楽しみにしています。
おやすみなさい愛しの人。
パンの焼ける匂いとコーヒーの香り。
素晴らしい。
朝ごはんの匂い。
玉ねぎを炒めた匂いを嗅ぐと
土曜日のお昼ごはんを連想する。
干ししいたけを水に戻す匂いはおそうめんだ。
あ、キノコ類はないのかな?
パタンパタン寝返りを打ちつつ、起き上がる。
トイレに行き、洗面所で顔を洗い、身だしなみを軽く整え、服を抱え、シャワーを浴びに行く。
その前に、台所で朝のあいさつ。
「おはようございます。マティス。
おいしい匂いで目が覚めました。ありがとう。
昨日はよく眠れた?」
「おはよう、愛しい人。
よく眠れたよ。
街で教えてもらったパンの作り方を頭の中で考えていたから
夢の中に出てきた。その通りにできたと思うんだ。
湯を浴びるのか?もうすぐにできる。急いで戻っておいで。」
「はーいい。」
おいしい匂いで目が覚めるのと、
愛しの人のぬくもりを感じながら目覚めるのとどちらが良いかと聞かれたら、
聞いてきた奴を殴り飛ばしてしまうだろう。
比べてはいけないのだ。
両方とも素晴らしいものなのだ。
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