いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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86:鍛錬と狩りと裁縫

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彼女の気配が動く。
頬にやわらかいものが当たる。
いい匂い。
?何をしている?

寝起きからいいのか?

抱きしめようとしたときには、
彼女は離れていた。

軽く身支度をし、湯を浴び、そのまま台所へ。

またご飯を炊くようだ。

私も身支度をし、そっと湯を浴びに行く。
彼女の歌声が聞こえる。
誕生の歌と違い、ただ、思っていることに不思議な音程を
付けているだけのようだ。

しゃもじ?を片手に腰をかがめ左手を後ろから上げている?
なに?求めている?


「誰がだれを求めているんだ?」

「・・・・おはようございます。」
「誰がだれを求めているんだ?」
「いや、聞こえてるよ?即興の歌の歌詞に突っ込んではいけないよ?」

即興?
しゃもじというのはあの手に持っているものなのか?
楽しそうだからいいのか?


それから、2人で朝と昼の飯の用意をした。
あのソースがこんな簡単にできるとは驚きだ。
それでも彼女は売っていれば買うという。
そういうものなのだろうか?

卵がないだけで泣きはしないが、そう、泣きはしないが、
会わずの月の籠りが終わればすぐに街に行くことにした。

それまでは鍛錬と狩りだ。


「前回の敗因はなんだ?言ってみろ!」
「はっ、運動不足の上に体力のなさ、自身の思い通りに動けるという
過信であります。」
「その通り!でも、どうすればいいか考えろ!」
「基礎体力作りのみですっ」
「えーーーー。」
「・・・・なんなんだ?この物言いは?」
「軍隊ごっこ?」
「・・・ああ、こんな感じだったな。なぜ知ってる?」
「ん?想像、想像。基礎体力って、走ったり?腹筋背筋?」
「そうだな、それが一番だが、この前の動きをゆっくりおさらいするだけでもいいぞ?
本当にゆっくりだ。こういう風に。」

腰を落とし足を広げ、腕を前に出す。
この体勢の維持が鍛錬になる。

「ふーん、なるほど。それで行くよ。
 あ、ジャージに負荷をかけてみようか。ちょっとだけ。」
「負荷?そのじゃあじにか?」
「そう。」

『ちょっと重たくなって。』

「あ、重い、あ、でも、行けるか?うん、行ける!!」
「服が重くなってるのか?」
「そう、この服の要所要所に砂漠石が練り込んでるの。
薄い膜や、糸でね。心臓のところは急所だから守ってくれるよ。
マティスのも作っていい?」
「それはいいな。いつでもいいから作ってくれ。
そうだ、染料もあるんだぞ?
煮沸して洗い流してと手間はかかるが、たぶん”お願い”すれば、
定着するんじゃないかな?」
「おお!すごい。そうだね。えーっと、こっちで使ってはいけない色とか
組み合わせとかある?」
「いや、そんなものはない。あったのか?」
「ないない。昔はあったみたいよ。色で位が決まってるとか、
外国では黄色は王様のいろだから使ってはいけないとか?
んー、あれ?物語の話だったけ?
こっちでないならなんでもいいかな。
ちょっとアクセントに使うくらいのほうがいいね。」
「そうだな。赤や青の原色は避けたいな。お前のあの赤い色はすごかった。」
「あー、そうなの?どてらって大体あの色なんだけどね。
じゃ、それはおいおい作りましょう。
もうね、じっとしてるのもしんどい。動くほうがましかも。
・・・重い」
「・・・・どれ?お?ほんとに重いな?大丈夫か」

抱きかかえてみるとずっしり重い。

「ちょっと、重すぎだね。」
『これの半分、だんだん重くなっていって。』

「お?軽くなった。面白いな。」


あとは、黙々と動きをおさらいしていった。

昼のさんどいっちはうまかった。
卵がふわふわで、いものソース和えは辛子が効いてるのか、
甘ったるさがなくうまい。

彼女はにこにことしていた。
私もなんだかうれしい。

うまいものを食うことは幸せなのだな。

鍛錬は早めに切り上げ、

晩飯は簡単に肉とサボテンと卵白の炒めたもの。
さらご飯がうまい。前回以上だ。
まよねえずも少し付けた。うまい。

風呂から上がると、
タロスのテーブルで、布を拡げ、染料を付けながら
形作っていく。
シャツの代わりのものと、下ばき。
からだにピッタリとしたものだが、動きは邪魔しない。
下着もぴったりとしたものを作ってもらった。

うすい緑の色を全体に付け袖口に蔦のような柄が入っていた。
これは濃い緑。
彼女も全体の色は同じで袖口は薄い赤い色の花びらだ。

「これ、ピアスの形をまねたんだよ?」

たまらず抱きしめ、そのまま、寝室に戻った。


翌日はゆっくり目の朝と昼兼用。
ちょうど月が昇る時間で、狩りに出た。
寝ているトカゲ、米詰めにうまい肉。名前はしらない。
サボテンの葉と、逆さ木の実、蔓。黒い実、忘れていたごむの樹液。
虫よけの葉と匂い消し葉。
この森は何でもある。
・・・砂漠石が影響しているのか?

「どうしたの?」

彼女が覗き込む。

砂漠石の話、砂漠の民の話をした。

「んー、なるほどね、可能性は無きにしも非ず、か。
 あー、ゴムを作るときにね、硫黄を使ったというか、
ごむごむさんが変身するのに硫黄を選んだのね?
硫黄って火山があるところにあるってのが浅い知識なんだけど、
ここいらって火山だった?」
「火山だったかどうか聞かない。海が隆起してこの大地ができ、
砂漠になったとは聞くが、ここ何百年と起こってないはずだ。」
「そう、ならいいけど。海峡石がここ数年少ないんでしょ?
でも、ここにはたくさんあったよ。
地中の流砂の動きが変わったのかもしれないね?
わたしがやらかした地響き以外に地震ってあったの?」
「いや、あの規模ではない。爆裂の響きとちがう振動は、小さなものはあった、かな?」
「そう、ちょっと、気になるけどね。
家も地下だからね。早く北の国に行って2人家を建てよう!!」
「もう、北の国なのか?街に行って草原に行かないといけない。」
「そうだよ!卵と牛乳だ!!」
「ははは、やはり食べ物の話になる。」
「こころに余裕があるからだよ?いいことだ。」
「そうか、余裕か。そうだな。」


鍛錬、狩り、夜は裁縫とこなしていく。
きいまかれもどきという、香辛料を効かしたご飯の上にのった細かい肉はうまかった。
これは、彼女の指示で私が作ったものだ。
「ここに卵の黄身を落としたらさらにうまいよ~」

なんてことを言いうんだ。これ以上にうまくなるのか?



そして、会わずの月の日がはじまった。









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