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111:大丈夫
しおりを挟む「マティス?もう、この国を出ようか?」
爆睡した後に、がっつり食事をとる。
しっぽ煮がおいしい。
「買出しは終わっていないし、
せっかく作ったラスクも皆に渡していないぞ?どうした?」
「んー、逃げたい。」
「なにから?」
「いろいろ。関わりすぎた。やっぱり、領主クラスと関わることなんかしなけりゃよかった。
責任もてない、怖い。」
「そうか。」
「人なんか簡単に殺せるんだね、この世界。
元居たとこなんて、殺人なんか犯したら、もうダメ。完全犯罪なんて無理だ。
絶対捕まる。でも、ここでは逃げ切れる、たぶん。ブレーキが効かない。
捕まるから、人は人を殺さないんだね。そのルールで生活してるだけだったんだ。
だって、戦争なら人を殺すもの。
ここでは?人を殺したらどうなるの?」
「大審判に掛けられる。そこで、石を使った問答があり、量刑が決まる。
大体が、人を殺せば強制労働だ。」
「死刑とかないの?」
「ああ、極刑な。余程だな。生きているだけで、民衆が騒ぎ出すとか、
見せしめの意味もあるな。だが、めったにない。」
「そうなのね。強制労働ってどこで?鉱山とか?」
「いろいろだな。鉱山も多い、荒野の開拓もある。
この大陸の南にはまだ未開の地もあるから、そこも多いな。
石を使うんだ、歯向かわないように。」
「石ってさ、この大陸にでは絶対の価値があるの?」
「あるな。工業国もまるっきりつかないわけではないだろ?
ジットカーフもだ。砂漠石はどこでも基本的に使ってるはずだ。」
「お金は?誰がどこで作ってるの?」
「この大陸には18の国がある。
それぞれに王を置き、彼らが住まう街を王都と呼んでいる。
王たちが働く場所が中央院だな。そのそれぞれの中央院が集まって、
大中央院を作ってる。そこで金も作ってるんだ。」
「大陸、海の向こうにも陸は有るの?」
「ん?海の向こう?海は海だ。」
「?海に船ででてさ、ずーとずーっと進んでいったらどこに行くの?」
「?どこにもいかない、死にに行くことになる。」
「・・・異世界だね。」
「?何を疑問に思っているかわからない。」
「ん?うん。わたしもわからないや。ね?セサミンはうまくやっていけるかな?」
「大丈夫だ、次期領主として正式決まったのは5歳だ。
だが、若さ以外だれも問題にしなかった。」
「5歳ってほんとに子供だね。えー、そりゃ、マティス兄ちゃんひどくない?」
「そうか?父も次期領主といわれたのは同じ5歳と聞いた。」
「そりゃ、5歳から次期領主教育を本格的にやらされて、よこで兄ちゃんが好きなことしてたら、
うん、わたしも砂漠にほり投げるね。」
「ああ、そうだろうな。だから、力になれてうれしいんだ。
お前が手を差し伸べてくれてよかった。
お前が興味を示さなければ、私もなにもしなかっただろう。ありがとう。」
「ん、マティスがそう言ってくれるんなら、うん、よかった。
あとはセサミンが頑張るだろうしね。」
「不安だったんだな?そういうときは体を鍛えればいい。」
「そうだね、健全な精神は健全な肉体に宿るっていうからね。」
「それは、いい言葉だな。
お前が寝ている間に、ラスクも作ってあるし、料理もいろいろ作っておいた。
運動場に行こう。」
「やけに張り切ってるね。でも、うん、鍛えよう。」
「重くなる服を着てな。気圧を下げるとかいうの、軽くあの部屋に施せるか?」
「んー?空気を薄くするってこと?あ!!高地トレーニングみたいな?」
「こうちとれーにんぐ?」
「うん、高原ってやっぱり、上の方なんでしょ?山の上みたいに。
そしたら空気が薄いのね。で、そこで生活してる人は自然と鍛えられるのよ。
だから高原の民は強いんだよ!」
「そういう名前があるんだな。そうなんだ、それが再現できるなら、
鍛錬にピッタリだろ?さ、行こう。
する項目は書き出してあるんだ。さぁ!」
大丈夫だ、よくなってきている、うまいぞ、もう少しだ。
お前はどこの修造だ?
圧を掛け、空気を薄くし、気分が悪くなるギリギリの状態で、走り込み。
服も徐々に重くなっていく。
10代でもこんなハードな運動はしたことはない。
運動でもない。なんだこれは?
しかし、だんだん楽しくなってくる。ランナーズハイか?
マティスとの組手も30分は余裕だ。
攻撃も受けれるようになってきた。
格闘家への道はパターン何になるのだろうか?
3日殺しの3度目の月が沈む数時間前まで続いた。
もちろん、食事、トイレ休憩はあるが、睡眠時間はなしだ。
「さ、これで終わろう。」
それを合図にプツリと記憶が途絶えている。
気が付いたら、セサミナの執務室の椅子で
マティスに寄り掛かるようにして寝ていた。
赤い上着を着て口元も隠している。お風呂はいりたい。
「姉さん!!」
「お!セサミン!なんか久しぶり?」
「姉さん!よかった。目を覚まさなければどうしようかと。」
「ん?どうしたの?マティス?」
セサミナが今までになく、焦って私の足元に縋りついてきた。
横のマティスに聞く。腰に回した手がいやらしい。さわさわ動かすな。
「鍛錬を切りあげるとお前は寝てしまったんだ。
着替えは済ませて、ここに来たがそれでも目を覚まさなかったからな。
寝てるだけだといっても、セサミナがうるさくて。」
「うるさいって!?兄さんの鍛錬に寝ずに付き合わされれば、へたすれば死人が出ます。!!」
「セサミナが、彼女は強いと、領内筆頭だというから遠慮なく鍛錬しただけだ。
愛しい人、どこかに不調はないか?」
「ん、マティス、おはよう。寝ちゃったんだね、着替えさせてくれたの?あんがと。
からだに不調はないよ?きれいにはしてくれたみたいだけど、お風呂にはいりたい。」
「そうなんだ、風呂も入れてやるつもりが、石がさわぐからな。
仕方なく、着替えだけ済ましたんだ。」
「ふふ。それは仕方がないね。セサミンを優先してくれてうれしいよ。」
「お前はそういうと思った。あとでここの風呂を借りよう。」
「あ!賢いね。そうしよう。セサミン?大きなお風呂があるって聞いたよ?
後で貸し切りでマティスと入っていい?」
「え?貸し切りというのはいいですが、2人ではいるのですか?」
「うん、なんで?」
「いえ、あ、夫婦だからいいの?え?」
「あははは、家族風呂だよ?ここは男女で分けてるの?時間帯?」
「時間で分けています。一緒に入るなんてとんでもない。」
「そりゃそうだ。でも、家族なら一緒に入ってもいいでしょ?」
「そう、そうですね。なるほど。あ、湯殿のはなしではなく、もうじきあの2人が来ます。
屋敷にいるようにと先に伝令が来ました。なので、兄さんたちに来てほしかったんです。
この屋敷の下?と言ってたんですが、意味が分からず、どうしようかと思いました。
気付いたら、姉さん抱え込むようにして座って、驚きました。
聞けば、鍛錬疲れで寝てるだけだと。
姉さん、兄さんは大陸一といっていいほどの腕前なのです。
騎士団に属していたころはだれも兄の鍛錬項目には付き合えなかったと聞きます。
暗殺の手が伸びても、守るのは不慮の事故を装ったものと毒殺などからだけだったんですよ。」
「そうなの?さすが、わたしのマティス。強いんだね。かっこいい!」
胸元に頭をぐりぐりした。
「そうか?愛しい人にそういわれるのは実にいい気分だ。
で?セサミナ?私たちがいなければならない理由を聞こうか?」
「はい。姉さんの言うとおり、間違って呪いがかかったと。
いったん息子たちに相続を済ませ、形式上ここに来るというのです。
それはいい。息子たちとの話は秘密裏に進んでいます。
渡した財産が戻ると思っているようですが、そうはならない。
あとは身内の話です。わたしには関係ない。繊維工場と製鉄工場が
領主の主導で運営されることにはなんの影響もない。
ただ、新しい事業を行うということは王都にはすでに流れています。
王都の人間も来るそうです。それで、どうしたものかと相談したかったんです。」
「ふふ、セサミン?そんなことを相談なんかしなくていい。
大丈夫。よく考えて?いままでも自分で考えてこの領土を納めて
王都とわたり合ってきたんでしょ?ほら?落ち着いて?大丈夫、ね?
あなたは使う人だ。わたしは使われる人。さ、逆に聞くよ?わたしはどうすればいい?」
「あああ、そう、そうですね。ええ、大丈夫です。
すいません、甘えてしまったようです。
・・・・あのたおるとごむは新規事業で生産すると公表します。
しかし、まだ試作段階だ。姉さん?あの二つは完璧な商品、
あの段階に行くまでのすこし劣化したものを作れますか?」
「んー?ゴムは生ゴム状態でいいと思うよ?ゴムの木ってのがどれかわからなければ
マネしようがないしね。タオルは、うーん、ちょっと目の粗い?手作り風?
こんな感じ?」
懐から出す感じで、二つのものをセサミンの前に置いた。
「ああ、これはこれで素晴らしいです。これらに関して、すぐに石の隠匿を掛けます。
ドーガー、すぐに。」
「お?ドーガー君?生きてる?」
「はい、赤い塊様には、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません、
お心遣い、このドーガー一生感謝していきます。」
「ははは、大げさだね。ま、沈黙は金、雄弁は銀っていってね、
沈黙がいいって言われるけど、あんたのそれは一つの特徴だ、うまく使えばいい。
ドーガーが言っていたことだ、間違いはないはずって感じでね。」
「はい、はい。ありがとうございます。」
「ドーガー、急げ、時間がないぞ?」
「はい。」
「姉さんの大丈夫はほんとうに大丈夫になりますね。
兄さんのとは大違いだ。」
「そ!それ!!セサミンもそう思う?どこの詐欺師かっていうくらい胡散臭いよね?
あー。共感できるひとがいてよかった。」
「・・・セサミナ?」
「事実です。姉さん、もうすぐあの2人が来る。
甘えるわけではないですが、そばにいてくれますか?」
「いいよー、赤い塊でそばにいるよ。必要なら呼んで?
でもこの服見た途端血反吐吐くんじゃない?掃除大変だよ?」
「いえ、1度、2度吐いてそれから目隠しをしているそうです。
裸踊りは実行していたようですよ。わたしも2人の屋敷に密偵はいるので様子はわかります。」
「ああ、目隠しか、そりゃそうだね。」
「ははは、賢くはなかったな?愛しい人。」
「ほんとだよ。」
「なにを!!姉さんが賢くなければ、あらゆる人が間抜けです。」
「んー。そのお間抜けにわたしもはいってるってことだよ。ま、そんなもんでしょ。
んじゃ、気配をけしてそばにいるよ?頑張ってね?」
「はい、姉さん。兄さんも。見ていてください。」
「んー、じゃ、マティス、横で待機しておこう。」
「ああ、そうしよう。」
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