いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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121:街道

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「ん?もっとか?」
「ん」

いま、わたしはマティスの膝の上、裸エプロンの儀は終わり、
そのままがいいと駄々をこねられたが、即却下で服を着込み、
ならば、ここで食べろと、膝の上なのだ。
そして食べさせてもらっている。
マティスも器用に、わたしの口に入れた後に自分も食べてる。

「これはうまいな。焼くのは?難しいのか?」
「ううん、火加減は赤石君がしてるから大丈夫。フライパン君もね。」
「お前はいつも物に君付けだな。」
「そりゃ、お世話になってるもの、君付けぐらいするよ。あ、ちゃんかもしれないないね。
フライパンちゃん?いや、ちがうな。やっぱり君だ。」
「そうか、さあ、もう街を離れるか?」
「うん、気になるけど、そうなるといつまでたっても出発できないものね。
よし、行こう!!あ、でも、旅人風に嘘でも荷物持たないとね。
こう大きな鞄を作ろうか?それと、砂漠であの靴は楽だけど、草原までは土の道?
それにあった靴を作ろう。さきにその準備だ。服は、砂漠の民のこれね。
わたしたちは砂漠の民なんだから。」
「ああ、そうだ、我々は砂漠の民だ。」


そこからいろいろ作りあがていく。
1日が短いから、もう、月が昇る時間だ。

「月夜に出発するのはお間抜け?」
「砂漠に出るわけではないからな。
ただ、街道には盗賊も出るし、野獣もいるだろう。」
「んー、昼間より人は少ない?」
「そうだな、ここからラーゼム、ラーゼムから北の国と道はあるが、
ラーゼムに行くより、王都に行く街道のほうが大きい。
ラーゼム行は少し西に逸れるんだ。どちらにしろ、人は少ない。」
「目の色だけ変えておく?」
「ああ、変に騒ぎになっても困るしな。」
「そうか、変えるんじゃなくて、ほかの人が見たら青く見えるようにすればいいんだ。
わたしは緑の目の方がいいな。あ、青が嫌ではないのよ。でも、きっと緑がマティスの色だから。」
「そうか、ありがとう、愛しい人。そのようにしてくれるか?」
「ん」

『愛しきマティスの緑の瞳は我が瞳のみ写る。他のものは青に』

「・・・確かめようがないね。」
「そうだな。人と合えばわかるだろう。しかし、お前はいつも良き言葉を紡ぐな。」
「ふふふ、これが厨ニ病というやつですよ」
「ちゅうにびょう?前にも言っていたな。病なのか?」
「一種のね。こういうのが元の世界にあったとだけ。別に何ともないから心配しないで。大丈夫。」
「そうか、お前が言うなら、大丈夫だな。」
「あ、ついでにわたしの口の動きの違和感を無くそう。口元隠すの面倒だもの」
「お前の顔をだれにも見せたくないな。」
「え?美人じゃないから?」

笑いながら答えた。
顔はいたって普通だ。そんなのいまさらだ。

「なにをいう!!お前のその笑顔がまずいんだ!皆が惚れる!!」
「あははは、そうなの?別に誰が惚れてもいいよ。わたしが惚れてほしいのはマティスだけだし、
わたしが惚れてるのはマティスだけだ。」

『言葉と口の動きの違和感をなくして』

「自分に掛けるときは簡潔なんだな?」
「ちょっとさっきのは恥ずかしかったから・・・」
「かわいい!」
「もう!!」


中庭に出て、扉君と家を収納。
小さなサボテンの森にも挨拶をした。
少し横着をして、街外れの街道の入口まで気配を消し飛んでいくことにする。
下に見える街並みは、まだ月が昇ったばかりなので活気がある。
砂漠にさえ出なければいいのだから、あたりまえか。

ここ以外の街も似たり寄ったりだとマティスが説明してくれた。
ただ、やはり領主館があるので一番の活気だそうだ。
茸祭りは他国はもちろん、ほかの街からも来るからものすごい人らしい。
赤ちゃんたくさん生まれた後だから、
来るのは独身の男女で、来年に向けてのアタックが始まる出会いの場なのだそうだ。
いかに茸に当たらないかも男をあげる指針になるとか。
タロスは当たったことがないからもて男なんだと。
「タロス伝説すごいね」
「そうだろ?そこもあこがれる理由の一つだ。」
「んー、茸の研究している人いないの?」
「研究?調べるのか?難しいな。雨の後に数日はえるだけで、数日で枯れるからな。」
「そうか、茸はね、菌類でね、植物でも動物でもなくてどちらかというと動物に近いんだって。」
「動物?」
「うん、なんかで読んだよ。でも、こっちにそれがあてはまるとは思えないけどね。」
「そうだな。」

そんな話をしながら、街道の入口へ。
「さ、行こう。」
「俺たちの戦いはこれからだ!!」
「え?何?」

そこから漫画の話、打ち切りの定番セリフ
絵が動くアニメの話
子供の頃に見ていたアニメの主題歌はなし
この歌の話がまずかった。

「歌か、なにか歌ってくれるか?そのすきだった歌を。」
「え?歌は嫌なんだけど、うーん、ほんとに子ど向けの話の歌でもいい?」
「いいぞ?お前の歌声が聞きたい」

結局、ビッケは小さなバイキン〇とジムボタ〇の歌を歌った、

バイキングは海の盗賊で、
ボタンパンチは家宝のボタンを握って繰り出すパンチだとも説明した。

「お前の世界の歌は真理が含まれているな。
 君にもあるこの力、この願い・・・」
「え?そんな大げさな。真理が含まれるのは〇ンダムだよ?」
「それは?」
「ふふふ、この歌はその中でも一番心に響くよ?
聞きたいかね?」
「ああ、聞きたいな。」

この時のマティスはまだ笑っていた。
それはそうだ、わたしがご機嫌に歌い、パンチのところでは実演付きだ。
あの歌は実際に戦争を命のやり取りを経験したことのないものが聞くから
いい歌だとおもうのだ。
わたしもファースト世代なので、この歌はよく聞いていた。
MP3で購入しエンドレスに流していたものだ。
当然歌詞を見なくてもフルで歌える。
お風呂で一人で歌うときは”お、降りられるのかよー!”というセリフも入る。

で、調子にのって歌いました。
2人並んでいたのに、いつのまにか、
わたしが前にマティスが後ろで。


I pray,pray to bring near the New Day

すこしこぶしが入ったが仕方あるまい。
この英文はすこし間違っているそうだが、マティスには意味は通じているだろう。

「ね?真理でしょ?」

振り返るとマティスは目を見開き
茫然と立ち尽くしていた。
歌詞の意味がわたしの感情と力で増幅されていた。

「お前はあの感情をしっているのか?
私が殺さなければ生きていただろう人間の気持ちを。
殺さなければ死んでいた私の気持ちを。」
「ああ、マティスマティス、知らない、知らないんだ。
でも想像はできる。それはそれは安っぽい想像だけどね。
辛かったんだね?大丈夫。もう、大丈夫なんだ。
だって、わたしがいるでしょ?もう手に入れてるんだよ。
だから守って。これからはそれでいいんだ、ね?」

マティスは黙って抱きしめてくれた。
騎士団での生活はどんなものだったんだろうか?
まさに生きるか死ぬかなのだろう。
平和ボケしたわたしには想像できるといったが、
実際にはできないだろう。
ただ、そのような場面が来たとしても、
マティスがいるなら大丈夫。

そこから一応〇ンダムのあらすじ、名セリフも教えておいた。
あくまでも作りものだが、実社会でも使える言葉だと。

そこから名台詞を置き換える遊びが始まった。

今回優勝は

見せてもらおうか。王都の護衛の性能とやらを

だった。


ハンバーガーが出回った時は

ハンバーグとは違うのだよ、ハンバーグとは!
だ。

セサミンに教えておくべきだったと
2人で笑い合った。


月が真上にまで来たので、
今日はここでテントだ。
折角なので、家には入らず、旅っぽい旅をすることにした。
トイレとお風呂は帰る。
いかにもな丈夫そうな綿の布で覆ったものだ。
実際は支柱もなく浮いているが、外から見れば、それぽいだろう。
それを少し開けた空間に置いて、火を起こし、一応落ちている木で、
肉を焼いて食べた。

本当は寝ずに火の番をしなければいけないが、
テントの回りの気配を消して、ぐっすり眠った。















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