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128:片眼の兄
しおりを挟む「さぁ、もう月が沈む。王都までの食料は何がいいのだ?」
「え?選べるのですか?ああ、これは悩みます。おにぎりは堪能しました。
やはり、最初に頂いた、パンがいいですね。卵と、あの肉は?」
「あれは砂漠トカゲだ。」
「なるほど、あのしっぽ煮はうまいと聞きましたが、食べそびれましたね、残念です。」
「では、さんどいっちとしっぽ煮を付けよう。2~3人分あればいいのか?」
「あ、5人分ほどで。」
「日持ちはしないぞ?」
「あ、大丈夫です。急いで帰って食べますから。」
「・・そうか」
「ええ、それをいただいて、約束は守ります、必ず。領主殿の財産譲渡の場に立ち会い
不正がない限り誰にも文句は言わせません。」
「ああ、それで頼む」
「?じゃぁ、マティスが片目片腕になってなくて砂漠の民で草原に向かっていることは報告するの?」
彼女が気を膨らましつつある。ああ、かわいい。
「?なぜ?片目片腕の領主の兄はいなかったし、草原に向かうのはマティス君でしょ」
「?」
「モウ、ワイプの中で食事を与えたマティスと片眼の兄は別物なんだ。」
「ああ、そうなの?でも聞かれたら?草原に向かう砂漠の民の夫婦はどんな感じだったとか?」
夫婦!いいな!
「マティス君?またニヤついてますよ?それは聞かれれば答えますよ?どうして?」
「そんな!!」
「モウ、押さえろ!大丈夫だ、遅かれ早かれ誰かが気付く。
それこそ、ずっと赤い服を着た高原の民を探すわけでもないし、
砂漠の端に住んでいた兄が嫁をもらって国を出た話もみなが知ることになる。
それを結びつける時間が早いか遅いかだけだ。北に行くまではさすがに大丈夫だ。」
「北に?ジットカーフですか?いいですね。海の幸!」
「そうだ、それが目的だ。今回の料理はほとんどが私が作ったが
作り方を指示してくれたのは彼女だ。
彼女の故郷と酒と海の幸が合うんだそうだ。どうだ?うらやましいだろう?」
「うらやましいって、なんですかそれ?」
「ふん、モウ、あの酒を出してやれ、そしてクツクツの話をしてやれ!」
「え?ああ、カニね。あの、これが私の故郷のお酒です。どうぞ。」
ビールが出たところから日本酒が出ても疑問に思わない。それがワイプだ。
「お、酒精の強そうな酒ですね。では、頂戴します。あー、これは海の幸が合いますね。
なるほど。でも、うらやましいまで行きませんよ?」
「いけ!モウ!」
「何そのかけ声?えっと、カニって食べたことあります。」
「はい、もちろん。わたしもジットカーフに行ったことあるんですよ。いろいろな仕事でね。
カニは群を抜いてうまいものです。今回のこの焼肉と同等ですね。それが?」
「そのカニの甲羅の味噌ありますよね?」
「あれもうまい!!ええ!思い出したらよだれが出ますね」
「その味噌をですね、甲羅に残したまま、身もほぐし入れて甲羅を器に
さっきのお酒を入れて、火にかけるんです、こう、クツクツと。
その味噌とお酒を一緒に呑む?食べる?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
先ほどの威嚇の気とは比べもならないものが膨れ上がり、
彼女抱え、馬たちがいるところまで飛ぶ。
馬たちも素早く起き上がり、警戒したが、主の様子を見て鼻息をもらすだけで、
彼女をつついて水のお代りを要求した。
主も主だがその馬も馬だ。
彼女を置いて、ワイプのところまで戻ると、かなりうなだれていた。
「・・・わたしはどうすれば?」
「あの酒は我々しかもっていない。カニを都合して、ほかの酒ですればいいだろ?」
「なんてことをいうんだ!あの味を知っていなければそれは試したことでしょう?
でもわたしは知っている、代わりのもので満足するものなどできない!!」
「はは、そうだな。ではせめて嘘は言わなくていいからとぼけておいてくれ。
うまく北の国で落ち着いたら、お前を招待してやろう。
なんだったかな?あさりのさかむし?かいせんどん?よせなべ?
なにかうまそうな料理を彼女が教えてくれるそうだ。」
「なんて、なんてことだ。名前だけでうまそうだ。必ずですよ?呼んでくださいよ?」
「ああ、わかった。約束だ。ちなみにあの酒の種類はまだあるそうだ。どれが一番合うかは
実際に作って試すことになっている」
「・・・・」
「ははは、それで、一番うまかった奴を食べさせてやるからな。」
「いいえ、全種類です。」
「ははは、そうだな。わかった。」
「はー、一気に力が抜けました。肉を食べていなければ倒れていたところです。
あー、月が沈みますね。もう、そろそろ、出発しましょう。あ、食料ください。」
「ああ、待て、すぐ用意する。モウ!ワイプは出発するぞ、サンドイッチの用意をしてくるから。」
「はーい」
「あ、マティス君、これ、あの分かれ道で拾ったんです。マティス君のものですか?」
「ああ、そろばんだ。わすれていたな。使い方はモウに聞いてくれ。」
テントに入り、扉君から家に戻り、
サンドイッチを作る。挟むものは作り置きがあるからいいが、
5人分は時間がかかる。
そうだ、一つにマヨネーズを入れてやろう。あいつのおどろく顔が思い浮かぶ。
しっぽ煮は大きめの容器に入れフタをして、布でくるんだ。
ある程度暖かさは持つだろう。ここで石の力を使うとさらにややこしくなる。
それを籠にいれ、皮袋も用意した。彼女においしい水を入れてもらえばいい。
テントをでると、ワイプが彼女の前にひれ伏していた。
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