いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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まだ月が昇るまで時間があるので、
さっそく、おかみさんにお茶がおいしかったので
売っているお店と、馬が借りられる場所を聞いた。
お茶屋は隣だそうだ。馬は広場にある馬の水飲み場の前らしい。


隣を除くとお茶のいい匂いがする。
ほうじ茶の匂い。
「すいません!隣の宿で飲んだお茶がおいしかったんで
その茶葉をください。」
「ああ、いらっしゃい!旅人さんだね?ようこそお茶と馬のコムへ。
おや、砂漠の民だね?珍しいね。久しぶりに見たよ。」
品のよさそうなまさしくご老人が応対してくれた。
「馬が借りれると聞きましたよ?この村ではだれもが乗れるんですか?」
自分の話はせずに聞くのが旅の会話の基本。
「ああ、もちろん。この裏が住居になっていてね、そこでたいがい自分の馬を持っている。
馬を育てて帝都にも納めてる。コムの馬は有名だよ。
旅人相手に、貸してくれるところもある。広場に行ってみな。」
「はい、宿のおかみさんにも教えてもらいました。」
「あんた乗れるのかい?」
「あははは!主人が乗れます。」
「そうか、砂漠人だものな。駱駝馬があるものな。
そりゃ乗れるか!乗れないのは村長の息子だけだよ!あははは!」
 「茶葉はこれですか?いろいろありますね。宿で飲んだのはどれでしょう?」
「ああ、宿の茶葉は特別なんだ。この手の茶葉始めてだろ?この癖のない奴がいいよ。
か、余裕があるならこっちか?」
金額が1銀貨と5銀貨。1000円と5000円ぐらい?
無難に1銀貨のものを買ってお釣りをもらった。
「このお茶って木ですよね?どんな木なんですか?」
「へー、興味あるのかい?珍しいね。だが、木じゃないんだ。大抵皆茶葉しか興味ないからな。
馬を借りるんだろ?じゃ、そのまま道を進んでいけば、
一面茶畑に出る。村が共同で作ってるのさ。馬も茶も自慢の独産品だ。
そこの端に小屋があって息子がいるから
宿屋の横のじじいに教えてもらっていいな。案内してくれるだろう。
「はい、ありがとうございます。おじ様の紹介と言わせてもらいますね。」
「おいおい、あんた、さっきからニヤついてるが、その気持ちわかるよ、大事にしな。」
なぜか、一言もしゃべっていないマティスに声をかけ、頷いているマティス。
この村の人とマティスは気が合うようだ。

馬を借りに行く。どこで乗り捨てても勝手に帰ってくるようで
1回5リング。戻ってきたら4リング返してくれるそうだ。
レンタルサイクルだな。
わたしが前か後ろで悩んだが、体が小さいものが前に乗るそうだ。
飛べば乗れるが、ここで披露はできない。なんとか押し上げてもらって
乗ることができた。馬にはお願いしますと挨拶。任せとけと返事はもらった。
マティスはさっそうとまたがる。
貸し馬屋主人が口笛を鳴らす。
「あんた、かっこいいね。男でもほれぼれするな!!じゃ、楽しんできな!!」

マティスが手綱をしならせると、パカラと進む。
「体を私に預ければいい。」
「うん、目線が高いね。馬君、重くない?あははは!」
「羽のように軽いだってさ!色男、色馬だね!」
馬がいろいろ教えてくれる。あそこの野菜はいつも新鮮だとか、
向こうの水飲み場の水の味はいまいちだとか。
それをマティスに教える。ガイド付きとはいいレンタルホースだ。


「あ、見えてきた!あれ?色は緑だけど?草だ!」
馬が笑う。茶が草なのは当たり前だと。
「そうか、ここは草なんだね?馬君はお茶飲んだり食べたりするの?」
新芽は食べさせてもらえないが、5回目に生えてくる芽は馬の餌になるとのこと。
数回摘めるそうだ。


「すいません!茶屋のおじ様に教わって来ました。見学してもいいですか?」
小屋の前で声をあげる。
どこかさっきのおじいさんの面影がある人が出てきた。
馬がやけに興奮している

「あのじじいがおじ様とは笑わせる!見学?珍しいな?旅人か?
大抵茶葉しか興味ない奴ばかりなんだがな。馬まで借りて来たのか?それはご苦労なこった。
あ!その馬に新芽を食わさないでくれよ?馬が食ったあとは芽が出なくなるからな。」
「はい。我慢できるよね?あ、帰りにおすすめの野菜屋さん依るから
そこで、なにか買ったげる。ね?」
馬はそれはありがたいとおとなしくしてくれた。
「へー、いうことわかるのかな?」
「賢い馬だ。指示する前に先に進んでくれる。」
マティスもほめている。馬も嬉しそうだ。
「ははは、それはあんたらのことがよほど気にいたんだろう。
きにいらないやつには従わない。
ここコムの馬はそういう馬だ。茶葉もな。
気に入った作り手にはうまいやわらかい新芽を出してくれるのさ。」
「へー、こちらの気持ちにこたえてくれるのは育てるほうもうれしいですね。」
「おうよ。で?奥さんか?なんの見学だ?」
「いえ、お茶ってどんな木なのかなと?草なんですね?」
「あはははは、茶が木か!そいつはおもしれえ!!ああ、知らなければそう思うかもな。
草だよ。もうすぐ合わさりの月一番茶だ。そこから4回摘める。味はどんどん落ちる。
5回目は馬の餌だ。で、一度枯れて、合わさりの月まで伸びる。それを摘む。この周期だ。
あと5回で合わさりの月で一番茶だ。それまでここにいないのかい?うまい茶が飲めるぜ?」
マティスを見るが首を振る。そこまで長居はしないようだ。
わたしもそこまでここにいることもないと思う。
「そんなに長居はできないんですよ。合わさりの月までには海に出たいんです。
あの、この草、お茶の株を分けてもらうことはできないですか?」
「かまわないよ?でも葉が勝手にお茶になるわけじゃないぜ?」
「ええ、でも、記念に。馬さんがおいしいという新芽をかじってみます。」
「あはははは!確かにな。かじっても新芽はうまいぜ。ああ、これはいいな。
それに見学か、馬を借りてな。ははは!
奥さん、月の下で摘むのが一番うまい。そこから4回摘める。5回目は味は落ちるからな。
それまで味は楽しめるだろう。10株ほどいいぜ。なにか入れるものを持ってきてやろう。
ほら、かわいい奥さんの旦那!手伝ってやれ!」
小屋に入って入れ物を持ってきてくれるようだ。
どれがいいんだろう?10株?1株が鉛筆1本ぐらいの太さ。
「馬君10株もらえることになったんだけどおすすめってわかる?」
馬君がふんふんと、選んでくれた。それを抜くのはマティス。
かわいい奥さんの旦那と言われご満悦だ。
10株選ぶと息子さんが小さな鉢植えをもって出てきた。
「選んだのかい?あんた目利きだね?いいのばかり選んでるよ。
ほら、ここの土もかけてやろう。これで、水もたっぷりやればいい。」
かわいい、緑の鉢植えになった。部屋の飾りにもなりそう。
「ありがとうございます。おいくらになりますか?」
「金か?そうだね?いくらぐらいがいいと思う?」
「?この鉢に入れただけで部屋の飾りにもなりそうです。
小さいのでお土産にもなりそうですしね。でも、高いのはダメかな?
んー、見学に来て、説明をしてもらって、芽を摘んで
植えてそれをお土産に持って帰る?交通費は別?
んー、いくらなら行くか?ってことか?5000円?ちょっと高いか?
お茶の試飲付き?
いや、新芽が4回楽しめるなら。0.5リング、銀貨5枚かな?」
「試飲って?」
「茶葉っていろいろあるでしょ?試しに飲めればいいかな?と
摘んで、植えて、お茶を飲ませてもらって、その気にいった茶葉を買うと。
まー飲むだけ買わない人もいると思いますけどね。
その費用も見て銀貨5枚?」
「はー、なるほどね。じゃ、銀貨5枚だ。」
さっきお釣りでもらった銀貨5枚を渡した。

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