いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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144:注意書

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月が沈む前に帝都の城壁の前についた。


すでにいくつかの荷馬車は出発している。
見られては困るので、気配を消しながら走り込んだ。

「さすが都だね。人の出入りは多いんだね。
 ニバーセルもこんな感じ?」
「そうだな、ここに比べればもっと派手だな。」
「へー、ちょっと見たいな。」
「ああ、見に行こう。」
「お風呂入りたいけどダメだよね?」
「そうだな、汗をかいたから入りたいが、小奇麗なままではさすがにな。」
「んんー臭くない?」
彼女は自分の服を匂っている。
「どれ?」
彼女を抱きしめ、香を楽しむ。
「ちょっと吸ってない?」
「ああ、大丈夫だ。しかし、匂うな。」
「え?大丈夫なの?匂う?どっち?」
「ああ、お前は大丈夫だ。ここの匂いだ。魚の生臭さがしてくる。
昔は気にならなかったからかもしれないが、ここまでひどくなかったと思う。
記憶にないぐらいだからな。」
「ふーん、氷が不足しているとか?馬さんたちも氷が少ないからだいってたよ?
荷がかるくなるのはいいがくさいほうがいやだって。ここの氷はどうしてるんだろうね?」
「海峡石か北の山の万年氷か。万年氷だろうな。」
「へー、寒そうな山だね。」
「寒いというか、冷たいだな。そこは氷の山なんだ。
それを切り出しているはずだ。」
「ああ、温暖化で氷が溶けだしてるとか?で、氷不足になってるとか?」
「おんだんかとは?暖かくなる?」
「うん、気候の変動でね、温度が上がっちゃうの。
その万年氷だって、砂漠に持ってきたらととけるでしょ?
万年てのはずっと寒かったから凍ってただけで、
暖かくなったらそりゃ溶けるよね。」
「それも変動か」
「うん、そういうね。でも砂漠の変動とまた違うでしょう。
元のところでもあったよ?で、海面が上昇するって」
「その原因は?」
「んー、いろいろ、あるな、原因は。それを少しでも食い止めようって言われてるけど
そうするには便利な生活を捨てないといけないからなかなか進んでなかったよ。」
「便利なものは手放せないのはどこも同じか。」
「そうだね。」

門の前まで進んだ。
さらに臭いがきつくなる。彼女はますくではなくとっくりにすると言っていた。
とっくり?と聞き返すと顔を赤くし、たーとるねっく、と言い換えていたが、
どちらもわからなかった。
出来上がったものを見ると、首周りに布をだぶつかせ、それを鼻先まであげる。
ますくのように密着性がないが、自分の匂いが上がってくるから
ましだと言っていた。
私にも同じようなものを作ってくれた。自分の匂いではなく彼女の匂いがいいが
しかたがない。

今は出ていくばかりで、入ろうとするのは、赤い馬が引いた幌馬車と、私たちだけだ。
その後ろにつく。

なにか騒いでいるようだ。
早く済ませて、風呂に入りカニを食いに行きたいのに。

「なんだろうね?」
「先に通してもらおうか?」
「横入りはダメだよ、まっとこう。」

なかなか進まないが、どんどん声は大きくなっている。

「だから、この手配書が間違っていると。その訂正を申請してるんじゃないか!
なぜ、それが分からんのだ!」
「エトリー様、もういいでしょ?いうだけなことは言ったんですから。帰りましょう。」

(あの馬に覚えがあるよ?最初に見たお馬さん、お茶と馬が名産で
貸し馬があるって教えてくれた。)
(ああ、確かに、よい馬だから覚えている。では、騒いでるのはコムの村長の息子と、
ああ、守衛殿だな。)
(ああ、言われてみれば。人の顔を覚えるのにがてなんだ。)
(馬はわかるのか?)
(わかるね。あのお尻のラインはよいからね。)
(尻か)
(うん、尻)



「じゃぁ、なにか?この手配書では片目片腕になっているが
それが間違いだというのか?で、各地に手配をし直せと?」
「そうだ、帝都に来ることはないが、よその村や街に行くだろう?
その時に言い逃れできないように先に通達しておくんだ。
もちろんそれを進言したのはコムのエトリーと書いておけ。」
「そもそもこれはニバーセルの手配書なんだ、それを訂正することなんかできないんだよ。
そんなことすればニバーセルに喧嘩を売るようなもんだ。」
「では犯罪者がこの国で堂々と過ごしていてもいいのか?」
「こいつがこの国に入ったかどうかわからないし、
あんたの村ではあんたのいう奴はどうどうと過ごしたんだろ?
間違われてそいつが気の毒だっていうんなら注意書を回すようにするが、
訂正しろはないな。」
「そうなんですよ、村にとっては恩人になのに!!
ええ、どうぞ、砂漠の民、ティス氏は無関係とそれを回してください。」


「ティスのことだね」
「そうだな、コムの守衛殿?どうされた?」

口元を覆ていたものを下す。
臭いがきつい。

「衛兵!こいつだ!こいつが砂漠の民、ティスことマティスだ!捕まえろ!
進言したのはエトリーだ!!」
「あはははは!こいつがマティス?手配書の?
わざわざ隣国の帝都の入国審査に並んでいる?
あはははは!!それはいい!!」
「なにがおかしいだ!!」
「エトリー様!!いい加減にしてください!!
ティスさん、よかった、どこかで抜かしたようだ。
ティスさん達が話してくれた馬を使った茶畑の見学会のはなし、
村上げてすることになったんだよ。
それと、貸し馬屋にサボテンの話しただろ?
あの次の日には馬がうるさくせかすから
ニバーセルのコットワッツの領主館に向かったんだ。ああ、あいつは俺の倅だ。
豚もありがとうな。見学会の話が盛り上がった後に皆でふるまったんだ。
へたに血抜きをしてない状態で、さらにうまかった。
傷をつけて血を流したら、一気に抜かないとダメなんだよ。
それが早ければ早いほどうまいんだ。
それがその場でできないなら、そのままにするほうがいいんだよ。」
「コットワッツには?」
「ああ、それで、向かった途中のラーゼムでうまく領主の遣いとあったらしく、
なんでもメーウーを買いに来たとか。
話をしたらしいんだ。そしたら、その領主の遣いが、駱駝馬ではないコムの赤馬を気に入って
一緒に連れて行ってくれたとか。馬も喜ぶサボテンも手に入り、馬も買ってももらえることになった。
まー今は、村はおまつり騒ぎだ。
なのに、エトリー様が、やっぱりあれがマティスだって聞かなくて、
手配書の訂正を進言するんだて聞かなくてね。
一人行かせてもよかったんですが、追いついて、礼と
目的地まで送ってあげれるかと思ったんで。
追い抜いたようなら仕方がないが、礼が言えてよかった。
村長からもくれぐれもよろしくと言われてたんでね。」
「おい、やっぱり人違いなんだろ?手配のものが帝都に来るわけがない。
マティスとティスは別人だと注意書きは回しておこう。
それで、お前たちは帝都に入るのか?」
「いえ、用件はそれだけで。このまま村に戻ります。
あ、これはコムの特産の茶葉です。よかったらどうぞ。」
「これはいいな!ありがとうよ!」
「どうして!こいつのことは置いといても
海の幸を味わってからでもいいじゃないか!」
「何言ってんですか!昨日すれ違ったやつらが、
俺たちを物色するような目で見てたでしょ?コムの守衛だと気付いて愛想笑いしてたが、
あの目つきはよくない。盗賊の目だ。いやな目だった。」
「ああ、そいつらは昨日襲われた。6人中3人で襲ってきたんで
返り討ちにした。」
「ああ!やっぱり!?エトリー様早く戻りましょう!
村に入る前に捕まえましょう!そのほうがよっぽど村のためだ。エトリー様の手柄ですよ!!」
「なに!そうか!良し、戻ろう。コムの赤馬は脚が早いからな!いけ!!」
「はい!!あ、これは茶だ。。もうすぐ摘み時なのは聞いてるよな?。
10束じゃ、さすがに少なかったと預かったんだ。会えたら渡してくれってさ。」

こんもり生い茂った植木鉢を中から出して彼女に押してつけて行く。
「では!すいません、お騒がせしました。注意書のほうもよろしくおねがいします。」

あっという間に視界から消えていった。
赤馬が早いのは本当のようだ。

「はー、初っ端から騒々しい。で、あんたたちが砂漠の民、ティスか?そっちは?」
「妻のモウだ。」
「はは、砂漠の民でティスか、ま、似てると言われれば似てる名だな。
コムの村長は今、臥せっているんだ、で、息子が張り切って
なにか手柄を取って父親を安心させてやりたいらしい。
しかし、飛んだ迷惑だったな。注意書は回しておいてやるからな。
茶葉ももらったしな。ま、ついてるな。
さ、仕事だ。

止まれ!!お前たちはどこのだれで、どこからきてどこに行く?」

同じように聞いてきた。

「俺たちは砂漠の民、ティスと妻のモウ。
ニバーセルが一領国、コットワッツの砂漠、サボテンの森から来た。
帝都で数日泊まり、近くの漁村に行くつもりだ。」
「なぜ?」
「砂漠が本当に砂だけになったんだ。砂漠の民は狩りをする。
砂漠に狩るものがいなくなたので、別のものを狩るしかない。だから海だ」
「そうか、ま、頑張れとだけ言っておこう。で、奥さんだろ?なんで口元を隠している?」
「ああ、砂漠の民はこうなんだ。」
「へーそうなんだ。砂漠の民ってのはそんな薄い服なのか?初めて見たよ。
今はいいがもうじき寒くなるぞ。毛皮を調達することを勧める。
ようこそ、ジットカーフが帝都、海の幸と毛皮の都へ。」
「ありがとう。毛皮はやはり必要か?」
「そうだな、ここ何年は暖かいけどな、無しというわけにもいかないな。」
「そうか、カニを出している店でおすすめはあるか?」
「ああ、やはりここに来たら食べないとな!俺に聞いたのは正解だ!
このまま、突っ切れば広場があるそこから先は帝都の中の都、
皇帝様が住まう場所だ。決して近づくな。
しかし、広場から手前は庶民の街だ。活気がある。
そこで、宿屋もしている、カニ馬屋が一番だ。泊まるんならそこもおすすめだ。」
「ありがとう。そこに行ってみる。」
「ああ、楽しんでいってくれ。」

「ティス、よかった、楽しみだね。お茶もこんなに。」
「ああ、たのしみだ。」


カニ馬屋はカニと馬の絵の看板が上がっていたのですぐにわかった。
彼女はうまは馬なのか、とつぶやいていた。





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