いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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163:牽制

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その合図で次々料理が運ばれてくる。
おお!さすがです。色とりどりの料理だ。見た目がきれい。
次々運ばれる方式ではなく、目の前にすべて並べられて、
御付きが取り分けるようだ。
この場合、師匠にはマティスが、セサミンにはルグ。
何気にルグは優秀ですね。

一通り並べ終えたときに、師匠が呼んでくれた。
「モウ、いい機会です。良いものを見ることはそれだけで勉強になります。
行儀のいいことではないですが、こちらに来てよく見せてもらいなさい。
ファンロ殿、かまいませんね?」
有無を言わせない、さすがだ。
ファンロも、だまって頷く。タンタンはこちらを睨みつける。一瞬だが。
別にいいじゃん、見るだけなんだから。

「はい!師匠!」

師匠の横に立ち、演技でもなく、感心してしまった。
色のバランスがいいのだ。フランス料理のように少量をセンス良くまとめているのではなく
一つ一つでまとめられて、大皿になっている。
こう、唐揚げを大皿にてんこ盛りではない。

声色だけ気を付けて率直な意見を述べさせてもらう。

「一つの絵を、絶景を見ているようです。
これをとりわけ食していっても、
そのソースの跡が、また、一つの絵となるように皿の柄一つとっても計算されている。
ここは食が豊かだけではなく、感性も豊かなのだと感服いたしました。
『ここラルトルガでの食事は我らによりよい力となる』 そう感じました。」

にこりと笑って、ファンロに礼をする。
横にいる師匠には
「師匠?あとでお味はおしえてください。」

みなが笑い声をあげる。
マティスはちょっと不機嫌だ。なぜに?

「まさにその通りです。さ、どうぞ、お召し上がりください。」

(マティス?)
(笑顔を振りまくな!)
(ああ、そっち。マティスは振りまかないといけないよ?ティス兄さん?」
(頑張る!)

セサミンが質問攻めにあってる。
師匠は食べることに夢中だからだ。

「そうですね。ふらりと、あの赤い塊殿は現れて、護衛を受けてくれたのですよ。
金でね。それともう1つ条件があるようですが、それはわからずじまいでした。
メディング様は変動のことを知り駆けつけてくださったんですよ。
賭けなぞ口実。どのような結果でも資産を譲ってくださったのでは?
感謝しかありませんね。」

よくいうわー。
しかし、おなかすいた。
クッキーを、口のなかに移動してみる。あ、成功。
横のドーガーにも身振りで教える。
口をちょっと開けて、クッキーを見せたらすぐに理解した。
ものすごく行儀が悪い。でも、許して。
しかし、水分が欲しくなる。
ドーガーも同じようだ。
頷き合ってやめた。
水の移動はちょっと怖いのあきらめた。

「ええ、武の祭り、ここにいる2人もなかなかのもので、
赤い塊殿と素晴らしい演武を見せてくれました。
わたしも鼻が高いですよ?もう一人の男ですか?
ああ、赤い塊殿が連れてきました。メディング様が赤い塊殿を甚く気に入りましてね。
護衛を受けるには彼が必要だとかで。なんでしょうね?その条件はわからないのですよ。」

マティスが気に入るかどうかだよ?

「次回は食の祭りと予告はしています。我が領で流行っているぷりんはご存じですか?
ああ、さすがですね。あと、はんばあぐも。あれは王都に店を構えるとかで
出ていってしまたんですがね。みなが楽しめるようなものを提案できると思うのですよ。
どうぞ、よろしかったらご参加ください。次回は大々的にするつもりです。
ここの感性豊かな食に触れることは我が領民にも素晴らしき力になることでしょう。」
「それは素晴らしい。わたしもぜひ参加したいですね。」

食べることになると積極的に会話に参加する師匠、さすがです。

「時にワイプ様は、今回はどのような経緯でコットワッツ領主殿とご一緒されているのですか?」
「ご存じでしょ?メディング殿の財産ですよ。
額が額なだけに、道中によからぬものが湧くかもわかりませんのでね。
護衛も兼ねております。」
「ワイプ様がですが?失礼ですが、その・・・」
「ははは、言いたいことはわかりますよ?事務職のわたしがいたところで
何の役にも立たない。牽制の意味のほうが大きいですね。
それに、セサミナ殿お傍付きのルグとドーガーはわたしの目から見てもなかなかのもの。
わたし、こう見えても見る目はあるのですよ?演武も見事なものだったとか。
それでも、我が弟子2人の足元には及びませんが。」
「セサミナ様、このようにおっしゃてますが、どうなのですか?
コットワッツのルグといえば、名は知れ渡っている武人。
今回初めて会いますが、ドーガー殿とおっしゃったか、次席を担う若人もいると聞いています。
なのに、そのお二方が足元にも及ばないとは!」

そうなんだ?ドーガーの顔を見ると照れ臭そうに微笑んでいる。
ルグもだ。
じゃ、マティスはほんと強いんだね!

(マティス!素敵!!)
(当然だ)
そう答えるマティスも微笑んでしまっている。

その様子を
この部屋にいるご婦人方は見とれている。
ぼけっとして聞いていなかったが、ファンロさんの奥方と娘たち、その他、親戚もろもろ。
同席しているのだ。

「いえ、ファンロ様、ワイプ様の弟子、お二方は、ルグとドーガーも認める腕です。
 あまりにかけ離れているので、嫉妬もおきないほどに。」

そういうセサミンの言葉にルグとドーガーも頷いている。
え?そうなの?わたしも?と隣のドーガーを見ると
視線に気付いたドーガーがまた頷いた。
ちょっとうれしいので、わたしも笑った。

マティスが殺気をドーガーに飛ばしたのだろう、
ブルリと身震いするとまっすぐ、正面を向いた。
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