163 / 869
163:牽制
しおりを挟むその合図で次々料理が運ばれてくる。
おお!さすがです。色とりどりの料理だ。見た目がきれい。
次々運ばれる方式ではなく、目の前にすべて並べられて、
御付きが取り分けるようだ。
この場合、師匠にはマティスが、セサミンにはルグ。
何気にルグは優秀ですね。
一通り並べ終えたときに、師匠が呼んでくれた。
「モウ、いい機会です。良いものを見ることはそれだけで勉強になります。
行儀のいいことではないですが、こちらに来てよく見せてもらいなさい。
ファンロ殿、かまいませんね?」
有無を言わせない、さすがだ。
ファンロも、だまって頷く。タンタンはこちらを睨みつける。一瞬だが。
別にいいじゃん、見るだけなんだから。
「はい!師匠!」
師匠の横に立ち、演技でもなく、感心してしまった。
色のバランスがいいのだ。フランス料理のように少量をセンス良くまとめているのではなく
一つ一つでまとめられて、大皿になっている。
こう、唐揚げを大皿にてんこ盛りではない。
声色だけ気を付けて率直な意見を述べさせてもらう。
「一つの絵を、絶景を見ているようです。
これをとりわけ食していっても、
そのソースの跡が、また、一つの絵となるように皿の柄一つとっても計算されている。
ここは食が豊かだけではなく、感性も豊かなのだと感服いたしました。
『ここラルトルガでの食事は我らによりよい力となる』 そう感じました。」
にこりと笑って、ファンロに礼をする。
横にいる師匠には
「師匠?あとでお味はおしえてください。」
みなが笑い声をあげる。
マティスはちょっと不機嫌だ。なぜに?
「まさにその通りです。さ、どうぞ、お召し上がりください。」
(マティス?)
(笑顔を振りまくな!)
(ああ、そっち。マティスは振りまかないといけないよ?ティス兄さん?」
(頑張る!)
セサミンが質問攻めにあってる。
師匠は食べることに夢中だからだ。
「そうですね。ふらりと、あの赤い塊殿は現れて、護衛を受けてくれたのですよ。
金でね。それともう1つ条件があるようですが、それはわからずじまいでした。
メディング様は変動のことを知り駆けつけてくださったんですよ。
賭けなぞ口実。どのような結果でも資産を譲ってくださったのでは?
感謝しかありませんね。」
よくいうわー。
しかし、おなかすいた。
クッキーを、口のなかに移動してみる。あ、成功。
横のドーガーにも身振りで教える。
口をちょっと開けて、クッキーを見せたらすぐに理解した。
ものすごく行儀が悪い。でも、許して。
しかし、水分が欲しくなる。
ドーガーも同じようだ。
頷き合ってやめた。
水の移動はちょっと怖いのあきらめた。
「ええ、武の祭り、ここにいる2人もなかなかのもので、
赤い塊殿と素晴らしい演武を見せてくれました。
わたしも鼻が高いですよ?もう一人の男ですか?
ああ、赤い塊殿が連れてきました。メディング様が赤い塊殿を甚く気に入りましてね。
護衛を受けるには彼が必要だとかで。なんでしょうね?その条件はわからないのですよ。」
マティスが気に入るかどうかだよ?
「次回は食の祭りと予告はしています。我が領で流行っているぷりんはご存じですか?
ああ、さすがですね。あと、はんばあぐも。あれは王都に店を構えるとかで
出ていってしまたんですがね。みなが楽しめるようなものを提案できると思うのですよ。
どうぞ、よろしかったらご参加ください。次回は大々的にするつもりです。
ここの感性豊かな食に触れることは我が領民にも素晴らしき力になることでしょう。」
「それは素晴らしい。わたしもぜひ参加したいですね。」
食べることになると積極的に会話に参加する師匠、さすがです。
「時にワイプ様は、今回はどのような経緯でコットワッツ領主殿とご一緒されているのですか?」
「ご存じでしょ?メディング殿の財産ですよ。
額が額なだけに、道中によからぬものが湧くかもわかりませんのでね。
護衛も兼ねております。」
「ワイプ様がですが?失礼ですが、その・・・」
「ははは、言いたいことはわかりますよ?事務職のわたしがいたところで
何の役にも立たない。牽制の意味のほうが大きいですね。
それに、セサミナ殿お傍付きのルグとドーガーはわたしの目から見てもなかなかのもの。
わたし、こう見えても見る目はあるのですよ?演武も見事なものだったとか。
それでも、我が弟子2人の足元には及びませんが。」
「セサミナ様、このようにおっしゃてますが、どうなのですか?
コットワッツのルグといえば、名は知れ渡っている武人。
今回初めて会いますが、ドーガー殿とおっしゃったか、次席を担う若人もいると聞いています。
なのに、そのお二方が足元にも及ばないとは!」
そうなんだ?ドーガーの顔を見ると照れ臭そうに微笑んでいる。
ルグもだ。
じゃ、マティスはほんと強いんだね!
(マティス!素敵!!)
(当然だ)
そう答えるマティスも微笑んでしまっている。
その様子を
この部屋にいるご婦人方は見とれている。
ぼけっとして聞いていなかったが、ファンロさんの奥方と娘たち、その他、親戚もろもろ。
同席しているのだ。
「いえ、ファンロ様、ワイプ様の弟子、お二方は、ルグとドーガーも認める腕です。
あまりにかけ離れているので、嫉妬もおきないほどに。」
そういうセサミンの言葉にルグとドーガーも頷いている。
え?そうなの?わたしも?と隣のドーガーを見ると
視線に気付いたドーガーがまた頷いた。
ちょっとうれしいので、わたしも笑った。
マティスが殺気をドーガーに飛ばしたのだろう、
ブルリと身震いするとまっすぐ、正面を向いた。
13
あなたにおすすめの小説
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。
従属せよ。
これを拒否すれば、戦争である。
追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。
そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るため。
サナリア王が下した決断は。
第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。
王が、帝国の人質として選んだのである。
しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。
伝説の英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる