いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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179:温泉卵

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クスクス笑ってるとマティスが舌打ちをする。
何気にショックだ。
「違う!ワイプだ!ワイプが来たから!!
ああ、愛しい人は何をしてもいいんだ!
ああ、わかった、ワイプが死ねばいいんだな?待っていろ!!」

わたしに抱き付き恐ろしいことさらっというが、
いやよいやよも好きなうちという言葉を教えたら怒るだろうか?

「ふふふ、わかってる。でも殺しちゃだめだよ?やっぱり呼ぶ前に来ちゃったね。
でも、ウロウロしてるみたい?この気だよね?」
「わかるのか?」
「うん、師匠が呼んでーって言ってるみたいな感じ?」
「生意気な!ルグ!ヤッテこい!」
「は!!」

ルグが飛び出したけど、ほんとノリがいいね。


わたしたちがする移動とセサミンたちが使える移動は
少し違うのだとこのとき気付いた。
わたしはマティスところへ行ける。逆も。どこにいてもだ。
呼ぶこともできる。セサミンたちはそれはできない。
あくまでも物体移動だ。


少ししたらルグが師匠を連れてやってきたけど
本当にやりに行ったのか、土汚れがついてる。
とりあえず、きれいにはしてあげた。
マティスはルグに情けないと嘆いている。

「いやー、迷いましたよ?
離れとは聞いてましたが、本当に離れですね。
ここ、たしか取り壊しが決まっていますよ?
その割にはきれいですね?」
「壊すんならもらっていいかな?取り壊し代、浮くよ?」
「それは助かりますね。コットワッツが責任をもって取り壊し、
残材も処理すると申請しておきましょう。」
「セサミン?いい?」
「ええ、姉さんのお好きに。」
「師匠、それでお願いします。」
「わかりました。では、先に申請しておきましょう。場所はわかりました。
すぐに戻ります。」

そういって消えていった。
ちょっとかっこいい。


この館は古いが、建造した当初はモダンだったんだろう。
作りもしっかりしている。よい物件が手に入った。
師匠もすぐに戻り、串カツを堪能することになった。

「自分でこの油の中にいれて食べるのは面白いですね。」
「マヨとたれと混ぜてもおいしいよ?」
「あ、エビがおいしい!」
「これは野菜?あ、おいしいです。」

「このスープはほんとにおいしいですね。」
「そうだ、ドーガー?これ、この昆布。ジットカーフの帝都近くにある漁港にあるんだ。
海の植物で櫂が絡むから、港に捨ててある。いったらもらっておいで?
洗って、広げてね、水分だけ移動させればいい。
水に入れて一晩おいても出汁が出るし、水に少し付けて火にかけて、
沸騰前に取り出せばいい。で、塩で調整。簡単でしょ?
何枚か乾燥したのあげるから、自分で作ってみ?出汁を取ったとの昆布を
細く切って奴、これもおいしいでしょ?でも、これに頼ってばかりはいけないよ?」
「はい、わかりました!」
「ま、水分補給がお澄ましだったと思えばいいんだけどね。」

 「これがちゃわんむし?たしかにプリンのようですが、ああ、出汁が入ってるのか。
あ、肉とエビも?これはいいですね。」
「卵液をね、ざるでこすの。泡もとってね。それで、なめらか茶わん蒸し。
うまくできてよかったよ。」


皆満足してくれたようだ。
温泉卵も、おっかなびっくりで、さらご飯におとして、
魚醤落としてもおいしいよーって紹介すると
あっという間に温泉卵もご飯もなくなった。


まだお呼び出しはかからないというので、まったりデザートを食べる。
今日のデザートはリコッタチーズの木苺和えと樹脂蜜のかかったアイスクリームだ。

「姉さん、先ほどの甘い匂いの話、してくれますか?」
いつになく真剣にセサミンが問うてくる。
「甘い?」
マティスが聞き返すので、会わずの月の日のことだいうと、
ああ、とまたわたしを後ろから抱きしめた。
いまは、みんなゆったりクッションとでくつろいでいる。
最初から順序良く、2人で寝てしまったことは置いといて、
水音、小型妖精、綿毛、種、妖精の酒と話していった。
セサミンの顔色が悪い。師匠は驚いている。
ルグとドーガーはリコッタチーズに夢中だ。

「やっぱり、飲んじゃダメなものだった?」
「だ、だから!兄さんはもっと世間を勉強しないといけないんだ!
なにも知らなさすぎる!!」

セサミン絶叫している。え?死んじゃう系?
「なんだ!セサミナ!彼女が死ぬのか!?どうなんだ!!」
「マティス落ち着いて!マティスも飲んだんだから死ぬんなら一緒!
問題なし!」
「あ、そうだな。セサミナ!脅かすな!」
「あははははは!これは面白い!その酒まだありますか?」
「ワイプ様!!」
「飲めなくて当たり前の酒ですよ?モウ殿、マティス君。
それはおっしゃる通り妖精の酒です。
この王都の頂点は誰か知っていますか?王族?いいえ、妖精です。
王族が妖精を侍らせているのではなく、妖精が王族を侍らせている。
公然の秘密です。領主なら皆知っています。
かまわないのですよ、誰が頂点でも。運営さえしっかりしていれば。
実際、何も問題は起きていない。いまはね。
もちつもたれつです。
妖精は安穏な生活を、王族は妖精から報酬をもらっています。
勝手にやっておけばいい。
その報酬の一つが妖精の酒です。ほかにも妖精の涙とか、妖精の羽根だとか。
緑の目の涙の話知っているでしょ?ある条件で涙を流すと石になるというもの。
これは妖精が緑の目で、妖精の涙という言葉が独り歩きした結果ですよ。
そんなものはあるわけがない。
人間の先祖は妖精かお蚕様かどちらか、もしくは両方と言われています。
眉唾な説ですね。でも、王族は妖精が与えてくれるもので、
妖精に戻れると信じているものが多い。
うつくしく、長命。蚕様も同じ。仕えれば主のようになれると思っている。
会わずの月の次の会合では妖精が酒を振る舞います。
この時期にね。それが今年はないと。酒は来年だとね。
王族連中は数滴の酒がもらえないだけでえらい騒ぎでね。
その後すぐに変動があった。そしたら今度は妖精がえらい騒ぎだ。
その妖精の酒は妖精が飲むもので、振る舞いはその一部だけなんですよ。
あげく、今まで振舞った酒を返せと要求しているらしい。笑いますよね?」
「姉さんが甘いいやな臭いだというのは、妖精の匂いです。
言われなければ気付かなかったですが、妖精はその匂いをもっときつくしたような匂いです。
この王都にはその残り香が充満しているのでしょう。
基本、妖精はこちらに興味は持ちません。街中ではそこかしこに飛んでいます。
常になにかを話しているが理解できない。こちらの言うことはわかるのようですが。
話が分かるのは王族の一部だけです。」
「酒を返せという要求が出ましてね、今回の会合の追加議題はそれですよ。
通知もいったでしょ?あらゆる酒を持って来いとね。妖精が気に入れば次の振る舞いに参加できると。」
「ええ、来ました。誰も本気で考えていない王族と妖精の問題だ、好きにすればいい。
どの領主もそう考えています。」
「それはないですよ、セサミナ殿?みな、目の色を変えて酒を探して持ってきています。
 体一つで来たのはコットワッツ領だけですよ?」
「!ははは!そうか、やはりわたしは若いですね。その駆け引きはわからなかったし、したくない!
あんな、尊厳のない扱いを妖精から受けている王族のいうことなぞ、聞きたくない!!」」


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