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192:たかり
しおりを挟む閉会の合図でざわつき始める。
増税のことを改めて疑問視する者もいない。
よろしくされたのだ。領地に帰っても、筆頭従者以下が参加しているこの会合では
だれも反対もしないのだろう。
決まったことなのだ。
みなはこのままここに残って酒の味比べ大会に参加するのだろう。
従者に酒の搬入を指示している。
不参加のコットワッツ組は街に呑みに行くぜ!
ほんとは社会人として参加するほうがいいんだろうけど、妖精がらみは不参加でいいでしょう。
うまい酒が見つかることを祈る。
と、がやがやしているところを抜けていこうとすると、
マティスに声を掛ける人達がいた。
「マティス!!」
「マティス様!!」
軍部の報告を読み上げていた人と
件のご令嬢だ。2人の護衛もいる。
マティスは完全に面布を外している。
それであの三文芝居からじっとわたしを見ているのだ。
声を掛けた2人を無視して聞いてみる。
「マティス?ああ、もうマティスと呼んでいいんだね。
マティス、どうしたの?」
「愛しい人。私は演技というものをした。
あの扉君の時のように褒めてはくれないのか?」
「そうです!姉さん!ほめてください!」
セサミンまでそんなことをいう。
扉君?ああ!
「ここで、2人を称賛していたら、時間がいくらあっても足りないよ?
まずは街に出よう。そこで祝杯だよ?
長い兄弟喧嘩がおわったお祝い!ね?」
「わかった!」
「はい!」
褒めなかったので拗ねていたようだ。
困った兄弟め!ああ、ルグとドーガーもか。
後でまとめて褒めてあげよう!!
「おい!マティス!無視するな!」
「マティス様!!」
「ブラナダ、話したくない、視界にも入れたくないから、無視をするんだ。」
「なんという身もふたもないことを!しかし相変わらずだ、元気そうでよかった。
コットワッツ一行を襲った賊はお前が倒したんだろう?
ワイプ殿がそう報告していた。腕をあげたんじゃないのか?
本当に久しぶりに会ったんだ、挨拶ぐらいさせてくれ。
それと美しい奥方を紹介してくれ。」
昔の知り合いのようだ。
この態度も昔からなのか?めげないタイプのようだ。
そして、何気にマティスの喜ぶツボを押さえてくる。
美しい奥方と言われれば、マティスはご機嫌になる。
「まぁ!ブラナダ様!美しいなどと!お口がお上手ですのね。
まだ、正式には妻ではありませんが、同じですわね。
さぁ、マティス様、紹介してくださいまし!」
娘2の演武、いや、お遊戯の時よりも目が点になったと思う。
マティス以外全員。
「エルティー様、それはどういう意味ですか?」
ブラナダさんとやらが聞いてくれる。
よかった、みな固まって声が出せなかった。
「なにをおっしゃってますの?あなたが紹介してくれとおっしゃたんでしょ?」
「セサミナ殿?そうなのか?」
セサミンとも顔なじみのようだ。
セサミンはこっちに振るなという、心底いやそうな顔をしていた。
「エルティー様、お久しぶりでございます。30数年ぶりでしょうか?」
「まぁ!セサミナ様!本当に!先ほどご逗留の館まで出向きましたのよ?
そうしましたら、この者が、締め出したのです!
どういう教育をなさっているのかしら?まあいいですわ。
わたくしがいればこのようなことは今後一切ありません。ご安心くださいませ。」
ルグをひとにらみして、またセサミンににっこり微笑んだ。
「館に訪問者があったことは報告を受けています。
なんでも、わたしの許嫁を名乗るもので、たかりの物だろうと追い返したと。
わたしには領地に残した妻が2人いるだけです。許嫁なぞいてませんし、今後もない。
エルティー様が訪問されたとは聞いていません。
まさか、許嫁を名乗ったたかりがエルティー様だとおっしゃいますか?」
「失礼ですわね、セサミナ様!たかりだなんて!」
「え?では、エルティー様だったんですか?
わたしの許嫁なぞ、どうして嘘を?」
「嘘?いずれそうなるのですから嘘ではありません。
しかし、その話は終わりました。あのときお会い出来ていれば
また違った運命でしたのに!この従者を恨むのですね、わたくしを邪険にした報いです。
従者教育というの本格的にしないといけないようですわ。
それに、コットワッツは不思議な方々を雇っておいでね。
マティス様と同じような面布を付けた小汚い男と口元を隠した女が大きな木を抱えていましたの!
きっと力自慢で雇われたのね。役に立ちそうならそのまま置いておくのもいいかしら?
それでも、わたくしを置いて先に館に入るというのはいただけませんわ。あの2人も再教育ですね。
それに先程の会合でのあの素敵な館のいわれよう!わたくし、抗議しようかと思いましたのよ?」
「館のことはいい。エルティー様?
コットワッツ領、領主セサミナの許嫁などという戯言は2度と口にしないでいただきたい。」
「ま!なんて言い方かしら!ええ、2度と口にしません!わたくしの名に誓います!」
はぁーとセサミンがため息を漏らす。
一人だけ逃げやがった!あとでくすぐりの刑だ!
「いや、セサミナ殿、なにも話は済んではいない。
マティス、あなたの兄上の唯一の伴侶というのはこのエルティー様なのか?
赤い塊と呼ばれる、この方だと思っていたんだが。」
「唯一の伴侶!そこまで思っていたなんて!
でも、わたくしは王族、すでに3人の夫がいますが、
その想いには報いたいと思っていますのよ?」
エルティー嬢がマティスの方を向きにっこり微笑む。
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