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193:唯一
しおりを挟む「ブラナダ、私の妻だ。唯一の伴侶、私の半身だ。
美しいと奥方と真実をいったので、本来ならお前に紹介なぞしたくはないが、特別だ。」
この状態でマティスがわたしの腰を抱き寄せて紹介する。
マティスの師匠に対する拒否感とこの人に対する拒否感は少し違う。
今度はご令嬢の目が点になる。
「マティス様?なにをおっしゃっているんですか?」
「エルティー様、兄、マティスの伴侶、唯一の伴侶は彼女です。
あなたではない。」
セサミンがははっきりと言う。
「セサミナ様まで!ああ、結婚はしていますのね。
仕方がありませんね。わたくしとて夫のある身。貴族と王族の務めです。
しかし、それでも、わたくしが上位、わたくしが唯一です。
あなた、先ほどから失礼ですよ?
セサミナ様の護衛らしいですが、離れなさい。
腕もたいしたことないくせに、厚かましい!
あら?あなた、館に入っていった女ね?その耳飾りに覚えがあるわ。
ふふふ、森の中で奇妙な踊りを踊っていたとか?
マティス様?なにがよいかわかりませんが、この者には同じ怪力の小汚い男がお似合いですよ?
あの面布を付けたものはマティス様の従者ですか?」
どこから突っ込めばいいのやら。
マティスの顔を見あげると、彼女が崩れ落ちた。
2人の護衛は慌てて彼女に近づく。
気圧をかえたのかな?ぶわっと風が動く。
「エルティー様!!」
「貴様!なにをした!!」
「何もしていないだろ?お前たち2人も傍でみていたではないか?
妖精に魅入られてまだ本調子ではないのであろう?
とにかく、マティスの奥方でも、許嫁でもないのだから、はやく連れて帰れ。
これ以上この方々に迷惑をかけるな。
まだ、何かあるというのなら、軍部副隊長ブラナダまで来い。
そう、エルティー様にもお伝えしろ。」
2人はしぶしぶ承諾して、ご令嬢を抱えて連れていった。
「あのエルティー様は思い込みが激しくてな。
改めて、仮入隊のときに同期だったブラナダだ。いまは副隊長をしている。
驚いたよ、遠征前にいなくなって、だいぶたってから、
うわさでコットワッツのごたごたは聞いていたんだ。
いろいろあるさとは思っていたが、最近になって手配書にお前の名前は出てきて驚いていたんだ。
なのにさっきのだろ?もう、涙はでるわで、鼻水はでるわで、いやーよかったな。
奥方の、赤い塊の話も聞いている。ぜひ一度、手合わせ願いたい。
もちろんお前ともしてみたい!!」
この人は戦闘馬鹿なのだろうか?
マティスはさっきのセサミンと同じ顔をしている。実にいやそうな顔だ。
そっくりである。
「マティス、ちょっと放して。
この状態であいさつはしにくいから。」
「お前が挨拶することなぞない。」
「マティスの奥方は挨拶もできないって、わたしが笑われるよ?それはいやだな。」
この場合、マティスが笑われると言っても効果がない。
しぶしぶといった感じだが放してくれた。
「初めまして。マティスの妻でございます。
わたしの一族の習わしで口布をしたままでのご無礼をお許しください。」
「コットワッツの広場での手合わせと演武の話は聞いております。
でひ、一度私の部下たちにも披露してやってください。そして手合わせを!」
「ブラナダ君、やめなさい。マティス君の気がひどい。
それと、演武の披露と手合わせはわたしの許可を得てからにしてください。
直接話をするのもダメです。」
「な、ワイプ殿!いつもにもまして気配が読めなかった!いつの間に?
いや、なぜゆえ、ワイプ殿の許可がいるのですか?
マティスの許可がいるというのであればわかりますが?」
「ふふん、そんなこともわからないとは!いってやりなさい。」
「はい。ブラナダ様、わたしたち夫婦はワイプ師匠の弟子なのです。
なので、鍛練に相当することは師匠の許可がいります。」
「ワイプ殿が?はははは!これはおかしい!
ワイプ殿は鍛錬の厳しさでは有名ですが、その実力はかなり落ちます。
なのに、メディングの護衛を倒したあなたが?
マティスも仮入団時ですでに相当なものだった。その2人が弟子なのですか?」
ブラナダは納得いかないようだ。
マティスはワイプの弟子と言われたことに納得いかないようだ。
「我が夫、マティスがセサミナ様の兄であっても、わたしが姉になるとしても、
セサミナ様は仕えるべき主であるように、
ワイプ様は実力はどう思われようとも師匠であることに間違いはありません。
我が主を待たせております。これで失礼いたします。」
そう見せかけているとしても師匠の実力を知らない奴になにも言われたくはない。
「ブラナダ、ワイプが師匠というの不本意なのだが、妻が言うのだ仕方がない。
ではな、もう話しかけるな。」
「え?それだけ?」
ちょっとかわいそうだが、セサミンを待たせているのだ。
いや、待っているのはハンバーグだ!
「おまたせ!セサミン?うまく逃げたね?」
「え?逃げたなんて!さ、街に行きましょう。王都のはんばあぐです。」
セサミンが話を変えようとする。
しかながないか。
「案内しますよ?」
「師匠のお仕事はもういいのですか?」
「ええ、あとは優秀なるオート君にお任せですよ?」
ぶふっ。オートにオート。
やっとのことで、会合の館を出ることが出来た。
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