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196:回転
しおりを挟む妖精の酒の検証は師匠がいないのでまた今度。
王都では、白い砂糖が売っていた。いままでの砂糖は茶色いものだったのだ。
グラニュー糖も。
もちろんこれらは買ったので、メレンゲを使ったお菓子が作れる。
シフォンケーキもできるはず。
これは、ちょっと自分で頑張ってみようかな?
紅茶のシフォンケーキ!食べたい!
生クリームものっけて、アイスも!
「愛しい人、楽しそうだ。なにかあったか?」
「んー、白いお砂糖があったでしょ?サラサラのと。
これでお菓子が作れるなーと。
あ、これはわたしが作ってみるね。
道具も作らないといけないし。
たまにはわたしがマティスに作って、食べてもらいたいんだ。
楽しみに待ってて。」
「ああ、それだけで、楽しみだ。」
「じゃ、今日は時間があるからちょっと研究してみるね。」
「そうか、では私はトックスのところに行ってくる。」
「なぜに?」
「やはり素人なのでな、ドレスのことで相談したい。」
「そのほうがいいね。じゃ、この前のお礼ってことで何か持って行って?
お茶葉はもう、自分で仕入れているみたいだし、
ガムを少し?気に入ったらザバスさんのところで買ってねって。
それと、あ、プリンか。これはコットワッツ、ティータイで流行ってるよって。」
「そうだな。ああ、セサミナとドーガーも連れていく。」
「ああ、タオル地のローブの相談?ドーガーは昆布狩り?」
「そうだ、ルグは置いていく。いいように使えばいい。」
「そう?じゃ、嫌じゃなかったら手伝ってもらおうかな?
結構時間かかるんじゃないの?明日は月が昇るまでに帰ってきてね?」
「そんなにはかからない。そんなに長く、愛しい人と離れたくない。
やっぱり、一緒に行こう?」
「お菓子作りに挑戦したい!失敗は必ずするから見られたくない!
夫婦の長続きの秘訣はお互いの時間を持つことだって、
友達もいってたから、大丈夫!」
「そうか?ルグを甘やかすなよ?」
「はーい。」
では行ってくる、とジェンカのようにつながって移動していった。
送り出すのに、3回の行ってくる、行ってらっしゃいのキスが必要なのはお約束だ。
「さ、ルグ?
わたしはお菓子を作りたいんだけど、ルグはどうする?
ゆっくりお風呂に入ってきてもいいし、家に帰ってもいいよ?
たぶんね、月が沈んでも帰ってこないよ?ゆっくりしておいで?」
「いえ、奥方様のおそばを離れるなと、マティス様、セサミナ様と言われておりますので。
何なりとお申し付けください。」
「そう?じゃ、手伝ってもらってもいいかな?ちょっと一緒に考えて?
それと、奥方って呼ぶのはマティスの前だけでいいよ?
赤い塊は仕事の時だし。モウ、って呼んでくれればいいから。
わたしも呼び捨てなんだし。」
「モウ様?」
「ううん、モウで。」
「それはちょっと。モウ、さん、でいいですか?」
「もうさん?ふふふ、なんかおかしな音だけど、いいよ、様付じゃなければ。」
「はい。」
「いろいろ聞いていくからおもったこと言って?そこからまとめていく。
じゃさ、ハンドミキサー作ろうかなって。」
「はんどみきさ、ですか?」
「そう、こうさ、卵とか、マヨネーズ作るのに、泡だて器を使うでしょ?
でも、手がつかれるから、こう、自動で回転するかたち。強弱も付けられる。
風車みたいにくるくる回転さすの。」
「自動で回転?風車?風?」
「あー、風か?砂漠石で風を起こさせてクルクル軸を回転?風を受けるように羽根を付ける?
「こう、持つのですようね?手でつかめるぐらいの太さ?」
「そう、筒を2重にして、中に羽根の付いた泡だて器を入れる?で、砂漠石で風を送って回す。」
「?直接砂漠石で廻せば?」
「!!それだ!」
何のことはない、持ち手を2重にして軸の上に極小の石を嵌めて回転をお願いすればそれでOK。
複雑な動きでもないから、5.6回は使える。
「難しく考えることないよね。シンプルイズベスト!
よかった!ひとりで考えていたら、大げさなことになってたよ!」
「お役に立ってますか?」
「おお!クラリス!ちょっと違うけど。お役に立ちますか?っていってみ?」
「?お役に立ちますか?」
「立ちます 立ちます 謎は解けたぜ!」
「?はぁ。」
「あははは!さ、型も作ったし、材料はうる覚えだけど、オイルがポイントだったと思う。
頑張ってメレンゲを作っていこう!!おー!」
「お、おー!」
そこからは、当分、いりませんっていうぐらいの失敗作が出来上がった。
火加減は、鶏館にも赤石の窯を作ったので失敗はない。
そもそも膨らまない、しっとり来ない、膨らみすぎ。
冷ましたりなくて取れなかったり、空気がはいって穴が開いていたり。
しっとり感がない、ぱさぱさなど。
何とか、分量を調整しながら、出来上がったときの嬉しさは、2人で泣いた。
「やりましたね!これが完成ですね?柔らくしっとり、まさにおっしゃていた通りです。」
「よかった!この基本の分量さえわかれば、後は紅茶入れたりしてさ。
まずは、プレーンで食べよう。ホイップクリームも作るよ。
あ、失敗した奴は、フレンチトーストにしてしまおう。」
「はい!」
2人でしたお茶はなかなかに楽しかった。
王都から派遣されてコットワッツに来たこと。
あれよあれよというまに筆頭になったこと。奥さんと出会って結婚したこと。
息子ができたこと。セサミナ様が仕えるべき主だとわかったこと。
赤い塊との出会い。タナガのことも。
「あれは、わたしより早く筆頭と呼ばれるようになったのです。
しかし、ラルトルガのタナガとは言われない。
わたしは、恥ずかしながら筆頭と呼ばれると同時にコットワッツのルグと。
あとで知ったことですが、セサミナ様さまざまな場所でそう、いってくれたんです。
うちの筆頭はすごいと。ラルトルガの領主、ファンロ様は褒めることをしない。
自分の自慢ばかりだ。200人いた剣士も、どこから集めたか知らないが、
領主と娘をほめておけば金になると、試合前に話していましたよ。」
「そうかー、タンタンじゃなくてタナガは目を覚ましたかな?」
「どうでしょうか?求める要求と比例すると言われてますから、
18国からの追放と同等のもの。どれほどになるかわかりませんね。」
「18国以外ってどこになるの?」
「こちらと交流していないだけで、南にある国々のことですね。
未開の土地も含まれます。どの国も所有を主張していない土地。
この王都とマトグラーサの砂漠とのあいだの森は未開の土地となっています。
この館の区画の向こうです。」
「へー、そこだけ飛び地で未開の地となってるの?」
「昔からですよ。そこを領土としても、なにもうまみがないとかで。」
「あとで、探検に行こうか?」
「ダメです!館からは出てはダメだと厳命されています。」
「だれに?マティス?」
「マティス様とセサミナ様にです。」
「ふーん。じゃ、屋上は?ウッドデッキ作りたい。
バーベキューとかジャグジーとかできるように。外だけど外じゃない感じ。」
「それはいいですね!あの木を加工するのですか?」
「そう!そこらへんはわかってるから大丈夫!よし!屋上に行こう!
屋上は作ってるから!」
ルグは本当に鶏小屋を作ったことがあるようで、
なかなかの大工さんぶりだった。
ログハウス風のものは作ってもらった。移動ができるから楽だと。
植物園も屋上に移し、ドームで覆う。開閉式。
次の合わさり月の日には月明かりの下でお茶が摘めそうだ。
外には、例のお嬢が来ていたが、さくっと無視をした。
3人の隠密はクッションごと消えていた。
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