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210:一体感
しおりを挟む「セサミナ様!マティス様!大変なのです!
館がありません!虫だらけの木があるだけなのです!」
「ブラナダ殿?これはいったいなんの騒ぎですか?」
お嬢を無視して副隊長さんに話を聞くセサミンはさすがだと思う。
師匠は皆がこのお嬢に意識が行った瞬間に移動した。
これもさすがだ。
副隊長さんの話はこうだ。
セサミンが謁見の館に到着したのを見て、
無事に資金受領を終えたのを館で出迎えるべく、館に向かったが、
館がないと。5本の大木が奇妙に組み合わされて、
近づいてみると、一斉に虫が降りそそいできたそうだ。
きっと、館裏の森の呪いに違いないと、慌てて戻ってきたそうな。
セサミンに近づこうとしたところを近くにいた副隊長が止め、
館がなくなるというのは摩訶不思議なことだと、考えている間に、
お嬢が駆けだして、今の状態。
うーん、突っ込みどころ満載だ。
なんであんたが館で出迎えるんだ?
セサミンの近くにいた副隊長はなにをしてたんだ?
襲われているセサミンをだまってみていたのか?
それに、裏の森の呪いというのも気になる。
「エルティー様?お聞きしてもよろしいですか?
なぜあなたが、館で出迎えるのですか?
あなたは、わたしの許嫁ではない、今後一切そのようなことは言わないと
あなたの名に誓いましたよね?」
「ええ、もちろん。でも、姉として迎えるのは問題ないでしょう?」
「あなたはわたしの姉ではない。わたしの姉は3人。
2人の姉は望まれ他領の豪族に嫁いでおります。
ああ、あと2人いる兄の奥方は数には入りません。
もう一人はここにいる。あなたではない。」
「あら、ではわたくしは4人目ね。」
「兄の奥方という意味ですか?」
「そうよ?」
「どの兄ですか?」
「ふふふふ、いやだわ、マティス様よ?」
「マティス兄上の奥方は一人、唯一なのです。」
「だから、その唯一がわたくしなのです。そんなことより、セサミナ様?受領したリングは?
もう一度資産院に預けたのかしら?わたくし、少し入用なのですよ。お借りしてもいいですわね?
だってコットワッツのものはマティス様の物でもあるのですもの。」
「まず、訂正しておきましょう。今回受領した資金はわたし個人が受けたものです。
コットワッツ領のために使いますが、コットワッツのものない。」
「まぁ!そうなんですの?それは素晴らしいわ!でも、同じことですよ。
姉であるわたくしが借りても問題ないですわね?」
「何回も言いますが、あなたは姉ではない。マティス兄上の妻ではない。」
「なんてひどいことを!マティス様!あまりにもひどい言いようですわ!
わたくしを認めないなんて!きっとご自身の立場が危うくなるのを危惧しているのですわ!
優れたものが国を治めることは世の習わし。マティス様はセサミナ様より優れていますもの。」
「兄上、わたしは頑張りました。」
「そうだな。私もそう思う。
ブラナダ、あのときお前は我々に迷惑をかけるなと、
なにかあれば己のところに来いといったんではないのか?
すでに、一度館まで来ていたようだ。お前なにをしていたんだ?」
「こちらに来れば、対処できるが、勝手に行かれてはどうにもできないだろ?」
「では、いま対処してくれ。迷惑だ。
ワイプ師匠に部下をけしかけている暇があれば、いま対処してくれ。」
「そうなんだ!
やはりワイプ殿はたいしたことはないんだ。なにもせずに下を向いてセサミナ殿と
笑っていただけだ。」
「部下をけしかけたのは認めるんだな。」
「ああ、ささいな腕比べだ。コットワッツの筆頭と次席はさすがだな。
もっと上位をぶつけないと。」
ああ、この人も馬鹿なんだ。悪びれてる様子はない。
はーっとマティスがため息をついている。こういうところがマティスが避ける理由だろう。
わたしも嫌だ。
「マティス様?」
「お前は私の唯一ではない。私の唯一はこのモウだけだ。
これ以上私たちに絡んでくるな。迷惑だ。」
おお!
わたしたちとギャラリーが一斉に声をあげた。
妙な一体感が出来ている。
「なにを言ってますの?わたくしが唯一でしょ?
そうおっしゃたではないですか?」
「お前とこうして話をするのは今が始めてだ。コットワッツに来ていたようだが
私は会ったこともない。それも40年以上前だ。
セサミナの資金受領の話を聞いてたかりに来たのか?
セサミナに断られ、次に兄が現れたから鞍替えか?
金の無心か?恥知らずな。王族が聞いてあきれる。」
「何という無礼なことを!恥知らずはあなたたちです!あなたの許嫁なぞ、こちらから願い下げです!」
「もともと許嫁でもなんでもない。我々に一切近づくな!
近づけば、お前にだけに虫が降ってくると思え!」
顔を真っ赤にして退場するお嬢。
2人の護衛もついているから大丈夫だろう。
最後のは言霊だ。虫が降ってくるのは嫌だな。
またギャラリーから拍手が上がり、お昼寝組も目が覚めてやっと解散となった。
ブラナダはまだマティスとわたしに手合わせをしたいと言ってきたが、師匠を通せと押し通した。
ここにいれば、ダートたちが出てきて微妙な雰囲気になるだろうから、
とっとと解散。人気のないところまで歩いてそこから移動した。
もちろん厩にもより、とっておいた茶葉を差し入れ。
あと4日で帰ることを伝えておいた。
館の場所には、
虫がわしゃわしゃといたけれど、速やかにお帰り願った。
明日からは3日間、資産院の鍛練場での鍛錬なので、
作り置きできる食材を総動員で作っておいた。
いくらはこの間はつけておく。
大樽でかったしょうゆもどきは、地下にがばちょした部屋に寝かせておく。
発酵に必要な微生物も生き物なので、砂漠石の膜は忘れない。
もう少し置いておくべしとおいしいものセンサーが言うのだ。
購入したお酒も保存しておいた。
いっぱしの酒蔵のようだ。
ご飯を炊いて、パンを焼き、唐揚げを作り、卵焼きも作る。
ハンバーガーもだ。甘味も作っておく。
作った端からみんなが食べていくからなかなかストックできない。
それでも、これだけあれば十分だろうというぐらいまでの食料は作っておいた。
各自明日からの3日に備え、早くに寝る。
マティスとは地下の家に帰って先生ごっこをやった。
ものすごく盛り上がってしまい、恥ずかしかった。
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