いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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223:捨て駒作戦

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師匠はマティスの話を聞いて、それを資産院5人に指示をしている。
武器の開発はかまわない。それを資産院が知らないのがまずい。
武器と資産は密接な関係があるからだ。

その指示が終わると師匠に褒められた。
「我が弟子、モウ。素晴らしい棒術でしたよ。」
「そうだ、素晴らしかった。」

2人に褒められてやっと落ち着いた。

コットワッツ3人組はもちろん絶賛だ。



残りは軍部副隊長たちだ。

3番隊副隊長、3番さんはマティスのアドバイス通り槍の長さを変えてきている。
体重は早々変えられない。
同じ部隊の人間なのだろうか、5人が挑戦している。
連携というのはこういうものなのだろう。
3番さんもちょっと苦戦したが、2人を倒したらあとは一気だ。

にこやかに試合は終わり、
倒れた人たちにも手を貸し、起こしていた。

2番さんも同じような感じだ。
5人中、2人が他領国の護衛のようで、まずは軍部の3人。これはあっけない。
残りの2人が1人ずつ挑んでいく。
格段に2番さんが上なのだが、以前師匠の言った意味が分かった。
得るものがない強さだ。憧れもない。
ただ強いだけ。
当然、護衛2人は負けてしまう。
この日一番の黄色い歓声が上がった。


次は1番さん。
あれ?わたしもか。
無指名、指名無しの20人と、わたしだけ2回目。


「あんたが強いのはわかったから先に1番副隊長ガイライ殿とやってくれ。
少しくらいは弱らせてくれよ?そのあと、20人一気にかかれば、良いところまで行く。」

なるほど、捨て駒作戦ですな。
そのほうがいい。連携を取りましょうなんて言われたらどうしようかと思っていたから。

『了解した。』



1番ガイライさんとわたしが対峙して、技場の端まで20人が下がる。

向こうも拳術なのか何も持っていないので、わたしも棒をマティスに向かって投げる。
『マティス!』
「おお!」

うまくとってくれた。
それを見て1番さんは顔をしかめる。
え?行儀悪かった?

『拳術使いとお見受けいたします。
わたくしも覚えがございますので、御指南願いたい。』

ますます顔をしかめる。えー、敬語か?敬語がおかしいのか?

どっちにしろこっちが下だ、打って出る!

『参る!』

躱される。返される。これはすごい。
重さのない体のわたしの速さの上を行く。

「・・・異国の方か?18か国以外?いや、大陸以外か?」


なんで?
急いで距離をとる。なんでばれた?この型か?

この思考の間を付いて向こうが間合いを詰める。
両手で塞ぐので精一杯。

「ここだけの話、わたしは耳が聞こえぬ。誰も知らない。
マティスという言葉の口の動きはみなと同じなのに、
後はわかない。異国の言葉かとおもったが、廻りは理解している。なぜ?」

アウトー!!
読唇術か。そりゃダメだ。言葉と口の動きの違和感を無くすだけの言霊だ。
言葉が聞こえないんじゃ意味がない。

「ガイライ?」
「ああ、我が名だ。」
「1番副隊長さん?」
「・・・わからない。」

聞こえないのに1番副隊長をするのは大変だね。
生まれつきなのかな?いや、それだと誰も知らないというのはないだろう。


(ガイライ、いつから?)

ガイライさんに話しかける。
音が聞こえて驚いたのか、わたしから距離をとる。

おお!とどよめきが起きる。
マティスからはなにも言ってこないからこのまま聞いてみようか?

(考えるだけでいい。わたしは目の前にいる、モウだ。)
(モウ殿?聞こえる。治ったのか?)
(違う。頭に話しかけているだけ。石の力だと思えばいい。で?いつから?)
(ああ、そうか。聞いてどうする?)
(いや、わたしも以前、砂漠風にやられた。耳が聞こえないのはつらいなとおもっただけ。)


この間は、打ち合い、蹴り合いだ。


(砂漠風ではない。ガムも噛んでいた。かなり前だ。南に遠征中に徐々にな。)
(思い当たるのは?)
(ない)

蹴りが重い。
耳垢がたまって栓になってんじゃないの?
(石使いには?)
(石使いには頼んでいない。しかし、かなり大きな石を使って願ったがダメだった)
(なんと願った?)
(耳が治るようにと)
(耳が聞こえるようにとは?)
(?同じことだろ?)
ああ、なるほど。

(モウ殿?もっと声を聴かせて?声ではないとわかっている。
しかし、またなにも聞こえない世界に戻りたくはない。傍にいてほしい)
(ははは!聞こえていなかったのなら仕方がないが、わたしはマティスの半身。無理な話だ)
(ならば奪うまで)

(愛しい人、気を纏え)
(な?マティスか!)
(ええ、ご無沙汰しております、ガイライ殿。この者は私の半身、奪われるわけにはいかない)
(ならば、お前を倒すまで)
(それも無理だ。まず、愛しい人に勝てないのだから。施主殺しでいいぞ。)
(アイアイサー)

知り合いか?


距離を取り、気合を入れる。

『はっ』
20人は壁に打ち付けられほぼ失神。
ガイライさんはさすがに耐えている。そのまま打つ。

『セイッ!!』

正拳付きでフィニッシュ。

静まり返った中で、マティスが声を掛けてくれる。

「我が半身、モウ!見事!!」

ここで、大歓声だ。
なんせ、1番副隊長を倒したんだ。暫定1番だよ?
でも、ま、ここまで。
体力の限界です。
倒れ込むと同時にマティスが抱き上げる。

審判の勝利宣言前に倒れたので双方、敗退。
20人の中でかろうじて立っている人が勝利者となりました。
ラッキーだね♪

2番さんとマティス、3番さんとルグが残っているけど
この時点で19人、総当たり戦となったようです。





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