いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「王族が入場します。
わたしは、警備があるので戻ります。また、ここに来てもいいですか?」

ガイライさんがセサミンに聞かずにわたしに聞く。
「セサミン?いい?」
「ええ、もちろん。」

「ガイライさん、お仕事終わってからですよ?」
「ええ、ルカリは元気なので、任せてすぐに戻ります。」
「あ、そうなの?2番さんは?」
「カラームは、ちょっと使い物にならない。
同じように糸を吸ったのか、控室に戻ると同時に眠っています。」
「あら?あれって双方が寝ちゃうの?」
「わかりません。蜘蛛の糸だと思うのですが。」
「糸ね。蚕、蜘蛛、ああ、蝶もだすか。
蜘蛛も海にいるだけではなく、陸にもいるでしょ?ちがう種類かもしれないね。」
「陸?陸に蜘蛛がいるのですか?」
「え?いないの?そうなんだ。いや、ここの虫は大きいから
大きいサイズの蜘蛛がいないんなら、うん、いいかな。」
「モウ殿はどのような生物がどこにいるかを把握しているのですか?」
「まさか!故郷ではだいだいは知ってるけど、
こっちはもうね、違うからね。私の知ってる蜘蛛と、
こっちでいう蜘蛛は違うかもしれないけど
糸を出すっていうのは同じだから、そうかなって。」
「・・・そうですか。
では、すこし失礼いたします。」

ガイライさんもこぶしを作って水平に重ねる。
?頷けばいいの?

コクンと頷くと満面の笑みで出ていった。
あ、ダメな奴か?

慌ててセサミンと師匠を見ると驚いている。
マティスは当然という顔だ。

「これってなに?」

マティスにこっそり聞く。

「左手は心臓につながっている。
その上に右手を置く。右手は相手を示す。
つまり、自分はあなたを支えてます、お仕えしますということだ。
最上の礼だな。辺境領国は王族に膝は折るが、
その礼はとらない。軍部もだ。
頷くということはそれを認めたということだ。」
「おお、御大層だね。
セサミン?もう一度やってみ?」
「ええ、何度でも。」

またセサミンがわたしの前でその形をとる。
従者2人も後ろに控える。
主が支えると誓うなら、その従者も当然といったところか。

上下に組み合わせる手を、わたしは包み込む。
驚くセサミン。

「なら、わたしは守るからね。」
「ああ、我らの賢者。わたしの姉さん。ありがとうございます。」

あとで、ガイライさんにもしておかなくては。


王族と貴族の入場があり、
勝ち進んだ者の名前が挙げられる。
師匠はまた天文院の様子を見に行っている。

コットワッツ ルグ
天文院 マランド

コットワッツ ドーガー
マトグラーサ ケーブ

中央院 ポリス
ルカリア ライガー

マトグラーサ タブネア
コットワッツ マティス


コットワッツは優秀だよね。

天文院のクッション泥棒は師匠に申し訳ないがもう少し貸していてほしいと
言ってきたそうだ。
3つ並べて、タブネアにやられた人を寝かしているという。
そこに寝かすと息が安定して寝ているそうだ。
そういうことなら仕方がないと、いうと、
「モウ殿ならそういうと思いました。
これが終わった後でここに謝罪に来るでしょう。」
さすが、師匠だ。
それを伝えると今度は銃の報告と糸の報告をまとめるとか。
王都で一番忙しいのではないだろうか?



「ルグ、頑張ってね。
でも、無理はしない、引く時は引く。これは戦じゃない。
無理をすることが主を守ることじゃない。
そうだよね?」
「はい、奥方様、赤い塊殿、我らが主がお仕えする方。」
「長い、長い。呼び名が。どんどん長くなりそうだ。
とにかく、無理せずサクサクと。」
「はい!」


第11試合 
開始



「模範だな。」
「きれいだよね。これは、ルグが上位だよね。」
「そうだな。ルグめ、まだ纏ったままだな。
ドーガーお前は?」
「外しています。重さも。」
「速さで勝負か。次の試合な、
糸を使った領国だ。人のことは言えぬが、動きがいつもと違うとわかっているのに
それ以上は疑問に思わなかった。気を付けろ。
ワイプが言うように他に意識を移せれば問題なかった。
だが、どうやって移すかだ。私は愛しい人の声だったが、
お前にも声を掛けるか?それで意識が動くか?」
「いえ、なんとか自力で。しかし、もしもの時はお願いします。」
「そうか、わかった。」

「勝者、ルグ!」

歓声が上がる。
きれいだった。二人して手を上げ声援に応え、
タオルも渡している。



第12試合 
開始


「使ってる?」
「使っているな。こうして、外からみればわかるな。
糸が舞って、ドーガーの体にまとわりついてる。
最初は小さな糸くずだったのに。」
「マティス様、わたしには見えません。」
「あれか、うっすら見えるね。そろそろ、声を掛ける?」
「いや、まだ大丈夫だ。口を動かしているだろ?
食い物に意識が行っている。」
「「さすが、ドーガー。」」

しかし、実力差はある。

ああ、やっぱり。

「・・・二刀流だ。」
「一度はやるものだ。私もやったぞ。」
「ええ、わたしもです。」
「そうなんだ。そこから極めなかったの?」
「向かなかったな。」
「ええ、同じく。」
「右と左で別々の動きが出来ないとダメなんだ。」
「ああ、あるね。右で、2拍子、左で3拍子とる感じだ。」
「?」

押してるが、もう少しか。
向こうも糸が効かないのが分かったから、
必至だ。最初から使わなくても、強いのに。

惜しいな。


「勝者、ケーブ!」


『よくやった!ドーガー!
 ケーブ殿も見事!!』

技場に出て、2人を健闘を称える。
最初の糸のことは別にして、思う存分戦ったのだろう。
握手をしている。こちらが負けたのにタオルを渡すのはどうかと思うが、
ドーガーは普通に渡している。
ケーブは糸が見えるのか、ドーガーの体についている糸を気にしている。

右手をくるりと動かし、

『風よ、ここにある糸を紡いでおくれ』

同じように糸にして回収する。
驚いてみているが、目礼をするぐらいだ、もらってもいいだろう。



「ドーガー!二刀流!かっこよかったよ!
ものにしてるんだね!マティスとルグも挑戦したことある見たいだけど、
ダメだったんだって!」
「え?そうなんですか?すごい!では、わたしは、すでにその上を行っているということですか?」
「そうだよ。右と左で違う動きができないんだって。
こういうの。」

右手を上下、左手で三角を描く。

「?」

ドーガーも真似するが、なんなく同じ動きになる。
「ふふ、これ、マティスとルグの前でやってみ?
たぶんすぐにはできないから。」
「ほんとですか! 」

負けたのに元気だ。


さっそく、2人の前で披露している。
ほんとにダメなんだ。

「トックスさん?」

トックスさんはずっと糸の研究。
必要な道具は取り寄せている。

その横で、セサミンはコールオリンと殻を研究している。
従者の試合何ぞそっちのけだ。

「はい。次の糸。」
「え?おお!すごいな。いい糸なんだが、いかせん量が少ない。
ありがたい。」
「もう、今の人は使わないだろうな。
もう一人のマトグラーサが使えばもう一回糸にできるよ。」
「ガイライの旦那が止めた試合の相手だろ?使うかね?」
「んー、言われてみればそうか。でも、ダメもとで使うんじゃないかな?」
「そうか?そうだな。あと同じだけ手に入ればいいな。
旦那?ああ?何やってんだ?」

「奥方様!ぷくく。2人ともできないんですよ!」
「あははは!やっぱり?ほれ、わたしはできるよ?」
「なんだ?その動きができないのか?俺もできるぜ?」

3人並んで、ズンッタッタ。

マティスとルグはどうしてもつられる。

でも、そこは天才型だ。
しばらくするとできるようになった。

「一瞬だけだったね、上位に立ったの。」
「いえ、これからは二刀流を極めます。!」
「さすが!頑張って!」
「はい!」

「おや、なにをしていたんですか?」

師匠が戻ってきた。










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