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237:卑怯者
しおりを挟む「コットワッツ ルグが棄権したことにより、本大会の優勝は、
ルカリア ライガー」
歓声が一転、ものすごいブーイングだ。
勝手に言ってろ!
それでも、そのまま進む。
進行?審判の人、強いな。中央院のひとなんだろうか?
「勝者、ライガー。褒美は何を望むか?
賞金1万リングか副隊長の座か望みのものとの対戦か?」
「望みのものと対戦しとうございます。」
おお!!わたしも声をあげてしまった。
どうするんだろう?銃での演武?射的?撃ち合い?
「誰を望むか?」
「はい、コットワッツ領国の方々にはことごとく棄権されましたので、
本選に惜しくも出場できなかったコットワッツ、赤い塊、モウ殿と。」
うわー、そう来たか。
「愛しい人、始末しようか?」
「もう!またそんなことを言う。これ、断っても5000リングもらえるんだよね?わたしは。」
「ええ。断られると、相手は1リングも手入りませんので、恨まれますよ?」
歓声はものすごいな。
「コットワッツ、モウ!中央へ!!」
「姉さん!出るのですか?」
「ん?呼ばれてるからねぇ。トックスさん、毛皮のコート!!本番用の耳飾り!!」
「え?奥さん、これで行くのか?」
「もちろん!見せびらかさないと。マティスは邪魔しちゃだめだよ?」
「残念。」
毛皮を着て、モデルよろしく、中央に行く。
おお!歓声がすごいね。
『優勝おめでとうございます。ライガー殿。
1万リング、副隊長を蹴ってのわたくしとの対戦を希望とのこと。
お心、よっく、わかります。』
「はは、さすが、コットワッツの赤い塊。わたしの気持ちが分かるというのか?」
『ええ。』
「では、さすがにその姿ではなにもできぬだろう。着替えてこられよ。」
「ふふ。で?指名された時点で5000リングはわたしくしのものなのですよね?
それはどこに?」
「ほう。金にがめついというのは報告通りだな。審判!先に5000リングを!」
え?がめついって、どこ情報?
「5000リング、ここへ!!」
審判もため息つきながら言わないで!!
(師匠?これって資産院から?)
(今回は軍部依頼で、5000、1万を2つ、きちんと箱詰めして用意しています)
(ここの一般客ってどれぐらい?)
(ああ、4000弱です)
(ありがとうございます)
では、では。
ばさりと、毛皮を脱ぐ。
どよめきが起る。
そのドレス姿で戦うのかと。
馬鹿か。
『皆のものよっく聞けい!
なぜ、ライガー殿は、このわたしくしを指名したかを!
わたくしは、試合なぞ致しませぬ!そう返事するとわかっていたからだ!
では、わたしくしには5000リング、ライガー殿には?
不名誉?否!名誉だ!戦い頂点に立つべきもの!
この5000リングも皆にお返しするべきだと思っておられる!
出口で返してもらえるだろう。
わたしくしはそのことをお伝えする役目をもらったことを誇りに思う!
そして、皆の者!ニバーセルが領国の戦士に、
ルカリアのライガー殿に!惜しみない拍手で称えておくれ!』
「な!!」
ライガーコールが湧く。
一大ショーをみて、その入場料が戻ってくるんだ。
誰も文句は言わない。
ルカリアのライガーは名誉を取ったのだと言われるだろう。
「さ、ライガーさん?応えないと。1リングも手に入らないんだ。
名誉ぐらいもらっときなよ。」
「貴様!」
「あんた、命拾いしたんだよ?にこやかに、手を振ってあげな?」
「命拾いしたのはお前だろう?卑怯者が!」
「卑怯で結構。そもそも、わたしをどうしろといわれたんだ?
コットワッツは生意気だから始末しろって?まずは護衛から?
銃の売り出しは成功したんだ。もういいだろ?
ほら、応えないと不審がる。
なにか一言いってやれ。はずかしいのか?かわりに言おうか?
こころから思っていなくてもいい。皆に感謝の言葉をいうんだ。」
ものすごい顔で睨まれた。
「皆!皆の惜しみない声援でここに立つことが出来た。
リングはささやかな礼だ。ありがとう!」
ライガーコールが鳴りやまない。
それをにこやかに受けるライガー。さっきの顔と全然違う。
『審判殿。すまぬが、ライガー殿の希望だ。この技場から出る
一般客に返してやってくれ。不正などはないよな?』
すこし言霊を使う。
「はい!」
『ありがとう。一般客は4000弱だと聞いた。
残りの1000リングは、手間代だ。みなで分けてくれればいいらしい。
さすが、ライガー殿だな。』
また、ライガーににらまれた。
『さ、審判殿、最後にうまくまとめておくれ。
最後の締めの言葉で、この大会の価値が決まる。
みなに感謝の言葉を忘れずにな。』
「皆の者!静かに!
此度、軍部主催の武の大会、優勝者はルカリアのライガー殿だ!
賞金も副隊長の座もいらぬと戦士の名誉を取った!今一度惜しみない拍手を!
主催者、軍部!御覧いただいた王族の皆さま、貴族の方々、院の方々、
急遽開催で奔走した、わが中央院のもの達、そして応援してくれた皆に!心からの感謝と拍手を!」
ライガーコールからニバーセルコールだ。
王族も文句は言えまい。
「以上もって閉会!」
返金の手続きがあるから、この人たちはまだまだいそがしいんだろうな。
頑張ってくれとしか言いようがない。
「愛しい人、戻ろう。」
「うん。」
いつの間にか、そばに現れたマティスが、コートを着せてくれた。
どこぞのマダムみたい。
「待て!」
「なに?」
「卑怯者共が!群衆を巻き込んで逃げるとはな!」
「ああ、それで?」
「恥ずかしくないのか!」
「恥ずかしい?何に対して?銃を持つものが、その威力を見せるために
群衆の前でなぶりものにするのは恥ずかしくはないのか?
そこまでの威力はない銃なのか?だとしたらルグを棄権させたのは早まったな。」
「!」
「売り出しに成功したんだろ?これから王族との会議があると聞く。
いつかは誰かが作り出すものだ。それをとやかく言うことはできないがな。
襲い来る暴漢を銃で撃退することができるかもしれない。
か弱き女子供でも使えるんだ。
狩りが格段にしやすくなる。いいことづくめか?
これからより強いものを、止まれば倒れる車輪のように
次々作っていかなければならないな。でないとすぐに追い越されるぞ?
だが、最初に作ったのはルカリアだ。
かわいそうに。」
「かわいそう?なにを戯言を!
コットワッツだって銃を使っているだろう!」
「そうだな、使っているのだろう。
より性能のいい銃をルカリアから買うことになるんだろうな。
だがな、お前たちは当事者だ。
お前たちは死ぬ前か、死んでからか、必ず後悔するだろう。
なんてものを作り出したんだとな。
それはいつだと思う?
愛する家族、子供、主君、同僚、お前たちの大切なものが銃で命が奪われたときだ。
だれだって死ぬ。これは真理だ。
だが、誰だってその原因を作り出したものには
なりたくないって話だ。それだけの話だ。
お前たちはこれから大量に死んでいく人たちの原因を作ったものになるんだ。
その重圧に耐えれるのか?」
なにを偉そうにいってるんだ?わたしは。
「愛しい人、行こう。セサミナが待っている。」
「うん。」
「ま、待って!!」
「まだあるのか?」
「糸は?糸だって同じだろう?」
「そうだな。糸も同じだ。」
「だったらなぜ、銃だけが責められるんだ?」
「責めてはいない。言っただろ?ルカリアが開発しなくても誰かがしている。
ただ、当事者にはなりたくないだけなんだ。そうだな。卑怯者だ。
我が主にも護身用に持たすことになるだろう。
各家庭でも普通に持つ時代になるな。隣の家が持ってるのに、
こっちが持っていないと不安だからな。
そしたらどうなる?子供があやまって友達を撃ってしまうかもしれない。
手入れの最中に子供を殺してしまうかもしれない。
強盗だと思って撃った相手が、驚かそうとしていた自分の恋人かもしれない。
そこまで想像したのか?それでも、価値があると売り出したんだろ?
ああ、先ほどの言葉は取り消そう。後悔するな。
お前たちはずっと憎悪の対象だ。怒りの対象が後悔していたら、
どうしていいかわからないからな。
糸だって同じ話だ。そう、なんだって同じ話だ。剣も槍もな。
銃だけが責められることではないな。
ふふふ。これは失礼した。
わたしの拳一つで、棒1本で人は死ぬ。その責任は負える。わたしはな。
ただな、お前は、ルカリアはどうなのだろうと思っただけだ。
銃を扱う人間が一番銃の怖さを知っておかなくてはいけない。
それを会議で伝えられたらいいな。」
たしかに、わたしは卑怯者だ。
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