いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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269:日々に感謝を※

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刻一刻と薄衣が消えていく。

黒衣は夜の帳に姿を変えていく。

姿を現す天上の星々。

美しい。それだけだ。

誰が想像できようか。

誰が理解できようか。

ただ、そこにあるのだと。

それすらも知らぬ者のこと考えることもない。

我らが知っていればいい。

なぜなら、また月が昇る。

また変わらぬ日々が始まるのだ。

ただ、そこにあるのだと。

我らが知っていればそれでいい。

我が最愛の人と共に

また変わらぬ日々が始まるのだから。

日々に感謝を。

愛する人に感謝を。





恒例になりつつある罰ゲームです。
なんなんだ?

料理も完成するころ、そろそろと薄暗くなってきた。
月無し石たちは砂漠に繰り出すという。
あとで迎えに来てくれと。
そうですか、行ってらっしゃいと見送った。


クッションに二人で身を沈め、星が出るのを待つ。
いや、見えてくるのをだ。

「ここにも仲間がいるのかな?」
「わからんな。わからないことだらけだ。」
「そうだね。でも、ま、いいんだよ。知らなくても。食べ物関連は別にして。」
「あはは!そうだな。
愛しい人、また何か詩っておくれ。
あなたを抱きしめ、あなたの香りに包まれながら、あなたの詩を聞きたい。」
「この星たちを見れば、それを称える言葉しか出ないよ?」
「いいんだ。それで。ね?」
「はいはい。」

それで、星を称え、日々に感謝していることを詩う。





「愛しい人。あなたに感謝を。愛している。」
「うん。愛しき人。あなたに感謝を。愛している。」





マティス作の夜用、2人の時だけのドレスを身に付ける。


ダイヤが惜し気もなく使われ、エメラルドのラインが光る。
砂漠石の糸で作られ、ほぼダイヤ、ほぼ裸。
が、さすがマティス、チラリズムをわかっていらっしゃる。

「ああ、美しい。あなたを誰にも見せたくはない想いと、皆に見せたいという想い。
いつも反する想いがあふれる。」
「そうなの?いやらしいこと聞くけど、この石のお金はセサミンに払った?」
「もちろん!現行価格と言ってくれたぞ?」
「もう!甘えちゃだめだよ?これから金額が分かんないほどの価値になるんだから!」
「わかっている。埋め合わせはするさ。これほどのものを見ることが出来たんだから。
トックスにも礼をしなくてはな。」

なるほど、トックスさんのアドバイスもあるから、
きちんと隠すところは隠れているのか。

「廻って?」
「うふふふ。踊ろうか?」
「踊れるのか?」
「故郷の教育を舐めちゃいけないよ?あらゆること習うんだから。
ま、その時の担当の先生の趣味もあるけどね。」

新体操だった。なぜにそのチョイス?と思ったが、
リボンを使うのは楽しかった。
既定の曲があり、リズムも覚えている。
あのとき思い描いたものがここではそのまま再現できるのだろう。
2分半のリズム。

さっそく緑のリボンを作って、足先はカエルの皮で保護する。
足先のブルーがきれいだ。
横からのライトアップも準備完了。
正面にマティスが座る。
悪の帝王のようにニヤリと笑っている。





タタタンタンタンタンタン

リボンを上にあげ開脚ジャンプ。
スカートと言っていいかどうか甚だ疑問なドレスの裾が舞う。
体をそらしながらキャッチし、リボンで円を描く。
廻り、跳ね、リボンの輪の中をくぐる。
最後はリボンを束ね、マティスを指し示す。


マティスの前に跳躍で戻る。
「我が王、我が主。
この舞をあなたに捧げます。あなたが望むときにいつでも舞いましょう。」

足先にキスを落とす。


ん?


見上げた時にはわたしが座り、マティスが膝まづいてる。

「我が王、我が主。
この魂を、あなたに捧げます。あなたと共にいつまでも。」

足先にキスを落とす。あれ、靴は?
そう思った時には、クッションの上に寝かされていた。


そのまま、あらゆるところにキスをされ、でも、ドレスはそのままで、
魂をささげられた。



「愛しい人。このまま私の上で踊って?」

ん、あ、あ、んん



「ああ、きれいだ。なのに汚したい。私はおかしいのだろうか?
ねぇ?あなたにまた掛けていい?私のもので汚れて?」


トンとわたしを後ろに倒すと、
見下ろされ、上から掛けられる。
マティスは恍惚とした顔をしている。わたしも同じ。
求められ、愛され、汚される。
あなたのものなのだ、なにもかも。好きなように、求めるように。

胸に掛かったものをすくい舐める。
マティスの味だ。
うふふふ。おいしいと感じるのは、マティスと同じだ。
ああ、わたしもあふれている。
背を見せ尻を高く上げる。
それだけでマティスはわたしの望むことをしてくれる。


ん、んん、あん



すべて何もかも。あなたと共にいつまでも。




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