いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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281:樹石

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「おはようございます!」
月が沈み、起きて食堂に行くと、村長さん夫婦もう起きていた。
「あら?なにかしら?」
「わたしの故郷の起きたときにいう挨拶です。」
「そうなの?異国なのね?」
「ええ、異国です。手伝います、なにをすればいいですか?」
「あら?いいのかしら?そうね、主人を手伝ってくれる?
土を切り出すの。」
「あ、やっぱり水が?」
「いいえ、この時期は朝のいつもの仕事よ。
それが終わったらかるく食事をするの。もちろん、いっしょに食べてね。」
「はい!遠慮なく!じゃ、村長さん手伝いますよ!」
「え?あなたが?あら!あなたはここにいていいのよ?
手伝ってもらうのはあなたのご主人にと思ったのよ?」
「ああ、いいんです。ティス!ティスはこっちね。わたしは外で!
プリンつくらしてもらって!」
「わかった。」
「あら、初めて声を聞いたわ!」
「ああ、ちょっと持病があって、発作が起きないようにしてたんです。
もう大丈夫なので。」
「そうなの?じゃ、力仕事はしないほうがいいわね。
あなたも、無理しないで?」
「はーい。村長さん!行きましょう!」
「いいのか?若いからな。軽く手伝ってもらうか。」


マティスは奥さんと、わたしは村長さんとお手伝い。


家の裏に行くとかなり深く、四角く掘ってある。
土を切り出しているのだ。
その横に切り出したのであろう土のブロックが積みあがられてる。

「村長さん?この中の土を切り出して、横に積み上げて、
溶ける水をそこ貯めてろ過?」
「そうだ。雪が降る前に、すべて切り出す。
そうすると、雪がここに積もるだろ?それを固めて、氷室に入れる。
すべて入れ終えたら、この積み上げている塊を戻すんだ。
氷室の氷が無くなったら、また切り出して積み上げていく。
塊が廻りの水分を吸い上げているからな。
それをろ過するってことを繰り返す。
だいたい、各家の裏にこれぐらいの貯水孔があるぞ?」
「そうか、わたしたちは砂漠の民なので、水は井戸を使っていました。
これはちょっと重労働ですね。」

話ながら、簡単にブロック状になる土の板を上にあげていく。
スコップで、力を入れればすぐに離れるが、階段で2階下に降り、
また上がり、横の階段を2階分上がって摘みあがる。
ものすごい鍛錬だ。一度に、10個積み上げられるが、
顔と、貸してもらった前掛けは泥だらけだ。
村長さんはわたしの怪力を驚いてる。
1日3つ上がればいいそうだ。この調子なら、今日で今年の分は終わると喜んでいた。
ええ、おまかせあれ!!


「井戸か、いいな。ここも掘れば出るぞ?深ーく掘ればな。
しかし、月が昇り、沈むときに風が吹くだろ?その風で凍ってしまう。」
「あの、樹石ですか?あれをほり込めば溶けるのでは?」
「あはははは!水に届く前に燃え尽きる。それだけ深く掘らないといけないんだ。」
「?掘ったことあるんですか?」
「ほれ、そこにあるだろ?わたしが村長になったとき、最初にしたのが井戸掘りだ。
しっかり、固めて、組んでな、深く、深く、彫った。水はすぐにでたよ。
うれしかった。しかし、翌日にはすぐに凍った。凍った水は一日さらさないと溶けない。
一日待てばまた風が吹き凍る。降りて何かするには深すぎる。
村で一番小さい奴に降りてもらい、樹石を投げ込む。それも命懸けになる。
ここで掘るほうが楽なんだ。だから、わたしが井戸を作ろうといったとき、
だれも手伝ってくれなかった。みんなそうなることが分かっていたからだ。」

少し涙ぐんでそう話してくれた。そうか。
その話を聞きながらだが、すべての土塊を上にあげることが出来た。

「これはいい!ありがとう!空いた時間は村の連中の手伝いができるぞ!」

ああ、いい人だ。


「井戸見ていいですか?」
「ああ、かまわんよ。戒めのためにそのままにしてる。
無駄なことはするなというな。」

その井戸は、人がやっと下りれるぐらいの大きさで、
きちんと燃え残った樹石で固めている。


「これ、もっと大きくして人が簡単に下りれるようにすれば?」
「同じように考えるもんだな。それで、樹石をいれて溶かせばいい?
それも考えたが、それ以上大きくすると崩れたんだ。その大きさが最大だ。」

そうか。

「じゃ、紐を結んだ樹石を、下に下してから燃えてもらうとか?
紐も燃えちゃうけど。」
「ほんとうに砂漠の民は面白いことをいうな。その樹石にどうやって火をつけるんだ?」
「ん?砂漠石で?」
「ん?誰が?」
「?」
「?」

2人で首をかしげた。

「愛しい人!プリンはできた。ここにもコーヒーはあるそうだ。
頂こう。どうした?あははは!真っ黒だな!」
「まぁ!あなた!ほんとに真っ黒!」

マティスと奥さんが呼びに来てくれて話はそこで終わった。
村長さんはもっと女性に気を遣えと奥さんに怒られていた。
マティスは笑いながら、顔を拭いてくれた。

マティスが入れたコーヒーと豆を甘く煮たものをいただく。
おいしい。砂糖は貴重だが、樹脂蜜は売るほどではないが、山に入ればとれるとのこと。
ちょっとずつ、少しずつある。
裕福ではないが、不自由ではない。


コーヒーに樹脂蜜と乳を入れる。うまーい。贅沢な味だ。
奥さんも気に入ったようだ。
プリンも砂糖は使わず樹脂蜜オンリー!うわ、たのしみ。

行商は半分過ぎからの方がいいだろうとのこと。
みなが農作業で月が沈んだあとすぐは忙しいのだ。

それで、さっきの話をもう一度聞いてみる。

「樹石に火をつけるときって砂漠石になんてお願いしてるんですか?」
「ん?お願い?そういう意識はないな?
最初の願い言葉のようなことをいってるんだろ?
言葉にすれば、やっぱり、熱求めよ火の姿じゃないかな?」
「それを砂漠石にですよね?で、火がついて?樹石に火が付く?
樹石が燃えるとき砂漠石はもえてないですよね?ちょんってふれるだけ。」
「ああ、言われてみればそうだな。
ん?改めて言われるとどうやってるんだ?」
「ここで、やってもらえますか?」
「ああ。」

なにげにやっていることを、改めて聞かれるとわからなくなるのは
よくあることだ。

村長さんは桶に汲み置きの水をいれ、
小さな樹石ともっと小さな砂漠石を持ってきた。

「あはははは!あまり見るなよ!照れるじゃないか!」

「・・・・。ああ、樹石を燃やせ、だな。」

燃えた樹石は水に落ちて、ジュッという音とともに白く軽石状態になった。
お湯になったものはもったいないので、あらいものに使う奥さん。さすがだ。


「それで?これがどうした?」
「うふふふふふ。」
「え?ちょっと怖い!どうした!!」
「愛しい人、怖いぞ?」
「え?もう!ティスまで失礼な!」

マティスは気付いたのだろう、笑いながら言う。

「村長さん、じゃ、大きめの樹石とさっきと同じぐらいの砂漠石を
毎日使うのってもったいないですか?」
「もったいなくはないな。樹石はそこらにあるし、砂漠石は小さいのだろ?
遊びに使うのはダメだぞ?」
「遊びに使わないのでくださいな?」

村長さんは不思議に思いながらも、
握りこぶし大の樹石と今使った小さな砂漠石をくれた。
この砂漠石はニバーセルからイリアスが買い、
年に3回の行商が売りに来る。
辺境の村でも不自由がないようにきちんとそういう仕組みができている。


砂漠石には長いロープを、
短いロープで2つを結ぶ。砂漠石を回収するためだ。


皆で外に出る。
村長さんはなぜか顔が険しい。気付いたのだろう。
しかし、そんなバカなと思っているようだ。

「砂漠石よ、下に降りたら、樹石を燃やして。お願いね。」

スルスルと下に落とす。ほんとに深いな。
コトンと音がした。凍ってる水面だろう。
軽くなったので引き上げる。
砂漠石は無事だ。燃えるまでの時間差があるのだろう。
また、カタンと音がした。底に軽石となった樹石が落ちたのかな。
あ、軽石だけど沈むのか。軽くはないのね。
桶に紐を付けたものをまたおろす。
ん?このほうが重労働じゃない?滑車を付けてもらおう。

マティスに引き上げてもらって、桶の水を見せる。

「ね?
水の引き上げは滑車を作るとして、
問題は、軽石が底にたまることかな?
この時点で、網を沈めておけばいいかな?で、たまったら引き上げる?
もしくは、砂漠石に石取っててお願いするとか?」
「あんたは!あんたは石使いか!!」
「あははは!違うよ?砂漠の民だ。
やってることは一緒でしょ?
ちょっと砂漠石にお願いする言葉が増えただけ。」


村長さんは泣き崩れる。
奥さんがそっと抱きかかえていた。
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