283 / 869
283:羽根
しおりを挟む月が昇り、廻りに生き物の気配はなくなっていく。
きちんと整備された街道は北へと延びる。
街道を少しそれると、湿地が拡がる。
この中に樹石が埋まっているそうだ。
村長さんに聞けば、別にだれがとってもいいとのこと。
ただ取るときは一カ所だけ集中して取るのではなく、
まんべんなく少しずつ取るのが約束事だと言われた。
「樹石も集めたいな。街道沿いだと
他の人が困るから、奥に行こうか?」
「奥に行けば、かなりの湿地になるぞ?体の半分は沈む。」
「そうなの?あ、虫いる?」
「羽虫がいる。」
「あ、それ、ダメ!ブーンって?」
「羽音?バタバタ?」
「大きい!!ダメ!」
「うまいぞ?」
「え?食べるの?虫?」
「虫だ。羽は取って、煮込む。
とろりとしたスープになる。体が温まるぞ?」
「え?ちょっと!なにそれ?ものすごく飲みたい!」
「だが、虫だ。どうする?」
「狩るね!うまいなら別のものだね!」
「はははは。そうか。では街道を逸れよう。
飛んでいけば、体が沈むことはないしな。」
「ちなみにその虫はどのようなお姿ですか?」
トンボでした。
長細い胴体に羽根が4枚付いています。
その胴体が1リングの大きさ、太さが。
羽根もでかい。目もあり、手足もある。
食べるところは胴体のみ。
あ、でも、やっぱりダメかも。
羽根は傷がなければ売れるらしい。
イリアスの名産となんとか言えるものだ。
しかし、なかなかきれいなままの羽根は手に入りにくいらしい。
「じゃ、その羽虫の食べ物はなに?それより小さな虫?」
「いや、泥を食べる。
半分まで体を泥に沈める。それで、泥を食べに来た羽虫を捕まえる。」
捕まえるときに、むんずと羽根を掴むから羽根に傷がいく。
なぜなら、体の半分は泥の中、真上に飛ぶトンボを捕まえるには
そうなってしまう。これもなかなかに素早いので、
軍遠征の鍛錬の一種だそうだ。
何十人が泥に埋まっている光景も嫌だ。
しかし、マティスが言う、”うまい”だ。
食べてみたい。
月明かりの中、湿地に進む。
ガマのような植物もちらちら見える。
そこに止まっては、地面に降り、また浮かび上がるもの、それがトンボ。
ここではメイガと呼ばれている。
よく見ると泥を食べてるわけではない。泥の表面にそれこそ
小さな虫がうごめいている。それを食べている。
あー、ダメダメ!!絶対、泥には触れない!
このメイガをカエルが食べる。なので虫よけは収納。
出した瞬間に向こうに飛んでいった。
とりあえず、せっかくいなくなったので樹石を回収。
『樹石!集まれ!あ、まんべんなくね!!』
もう厨ニ病とかの言葉はでない。
「そんなに集めてどうするんだ?」
「んー、布にくるんでカイロとか?お風呂のお湯って大きいからすぐ冷めるでしょ?
熱いお湯入れればいいけど、混ぜるの面倒だから、
これを入れておけば、適温が維持できる。
軽石になったら、蜘蛛の唾液と混ぜてものすごく頑丈な建築材が出来そう。」
「・・・。」
「ん?」
「あなたはすごいな。」
「え?なに急に?ああ、この組み合わせ?
いつか誰かが気付くよ。けど、蜘蛛の唾液は呼び寄せができないと手に入らないから。
んー、まずいかな?でも、ま、いいか。」
「ああ、もちろん。問題なぞない。」
「うふふふ。マティスがそういってくれるから大丈夫。
あ、でも、メイガが戻ってきた!!」
「落ち着け!素早く羽根を掴めばそれで、動かない!」
「え?それで死ぬの?」
「そうだ、それで、羽根を抜く。」
「おーーー。」
「見ておけ。」
マティスがムンズと羽根を掴み、そのまま胴と引き離す。
その間羽根を握ってるんだから、そりゃ、羽根はぐちゃぐちゃだ。
トンボみたいにゆっくり指をまわして、
首を傾けたら、チョキで羽根を掴めばいいんじゃないの?
この場合真剣白羽取りのように両手を使わないといけないけど。
羽根が大きいから。
「ちょっとやってみるね。」
正面に廻り、腕を回しながら、どんどん小さくしていく。
トンボは、なに?敵?餌?と考えながら、羽根をそろえ、こちらに向けてきた。
「シャー!!」
体を丸めて、Cの字になっておとなしくなる。
これで死んでしまっているようだ。
しかし、両手は羽根を挟んでいるのでどうにもできない。
「マティス!どうしよう!」
「やはり、すごいな。そのまま上下に振ってみろ。」
言われた通り、上下に降ると、体と羽根が外れる。
泥に落ちる前にマティスがキャッチしてくれる。
「え?なんて柔い構造なんだ?」
「後ろから引っ張れば簡単にはがれるんだ。
そうか、そうすれば傷がつかないのか。」
「でも、これ、2人1組じゃないと、身が泥に落ちるよ?」
「そうだな。しかし、仕方がない。この方法で行こう。
どうする?羽根を掴むか?身を回収するか?」
「羽根でお願いします。」
「ははは!わかった。」
54匹のメイガ。216枚の羽根。
1枚10リング。4枚セットで傷がなければ50リング。
2700リングの稼ぎです。
でも、もう嫌です。
身の処理はマティスに任せます。
使う部分だけを見れば、ただのちくわ。
その他不要なものは何かに使うかと言われたが、
え?虫の足?複眼?あー、いいです。処分してください、となった。
さっそくスープを作ってくれる。
砂漠で作ったウッドデッキを展開。
カエルの皮も四方に吊るす。
これで、安心。
わたしはその間、羽根の観察。
一般には装飾に使われる。玉虫色に輝く。
4枚セットで色味がいろいろある。
あまり用途は思いつかない。
あ、でも、リボンを作ったらかわいいテムローサの髪に似合いそう。
そうなると、これを丸めてレースの薔薇?あ、いいねー。
それでも、それぐらいしかないな。
あとは、トックスさんへのお土産だ。
スープはとろみのあるおいしいスープだった。
コンソメ?ポタージュ?
体もぽかぽかする。あの体が溶けているとおもってはいけない。
そう、粉末スープのもとだ。
実際、保存は乾燥させて粉末にする。
ええ、もちろん、そうしてください。
13
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる