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287:女殺し
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「ニック!!」
「ガイライ!別に隠匿で入ってこなくてもいいだろ?驚いたけどさ!」
「ああ、そうだな。元気そうだ。」
「耳は?治ったと聞いた。」
「そうなんだ。笑うぞ?理由を聞けば。」
「それに、臣の腕?マティスの話は分からない。
ちょっと時間を追って説明してくれ。」
「ああ、どこから?」
「ああ、こいつ、マティスの左目、左腕がダメになった話は知ってる。
理由は今聞いた。それが今治ってる、そこからだ。」
「それはわたしも知らない。モウ、彼女だな?」
「そうだといっただろ?彼女と結婚したからだ。
いや、違うな、彼女が治してくれたんだ。彼女は石使いのようで石使いではない。」
「?わからんが、治ったんだな?最近か?
左腕の筋肉がいまいちだ。少し、集中的につけないと同じように鍛錬していれば
右も筋肉がつく、追いつくのに時間がかるぞ?左だけだ。左だけ鍛錬しろ。」
「なるほど。わかった。」
「それで、あの爺が辞めた話、4部解体?ここらからでいい。」
「ああ、今、わたしが軍部の隊長になった。副隊長がルカリだ。
その下に3部隊がある。すべてわたしとルカリで統括する。」
「ほう!ルカリ!大出世だな。カラームは?」
「大会があったのは知ってるな?その大会で糸を使って廃人だ。」
「大会があったのは知ってる。廃人?
使われたのではなく?使って?しかも糸だなんて、いつの話だ?」
ガイライは事細かに話していく。
機密と言っていい内容だ。私が聞いていてもいいのかと思う内容だが、
これまでのいきさつがあるからいいのだろうが、ニックは?
軍を離れ、尚且つ、隣国だ。それだけ信頼しているということか。
ニックも次々質問をしていく。
ん?彼女が沈んでる。
「ワイプ!いま、愛しい人を悲しませたな!」
「もう!マティス!違うったら!」
そこから宴会だ。
次々酒が、食い物が無くなっていく。
ビールもなんの疑問も思わず、ニックは飲んでいく。
ワイプは、やはりひれ伏してた。わはははは!当たり前だ!
月が沈み、2人は戻るというが、
ガイライがまた来るという。銃の話だ。ニックは興味なさそうだが、
目が一瞬光る。
彼女は、満足そうにすよすよ寝てしまった。
私は少し横になるだけで目が覚めてしまい、
扉君を出し、私も家で熱い湯をかぶった。
彼女が起きたときに、食べられるようにと
さんどいっちを作り、中庭に出る。
左か。左だけ。
「よぉ!起きたのか?モウちゃんは?まだ寝てるな?」
「ニック!彼女が許しているからいいが、モウちゃんなぞ軽々しく呼ぶな!
モウ様、もしくは女神モウ様と呼べ!」
「あははは!ガイライもワイプも呼び捨てじゃないか?」
「ガイライは彼女が気に入ってる。息子だ。ワイプは残念ながら師匠だ。」
「なるほど?わからん。しかし、よくここが分かったな?
イリアスに戻ったことは知ってるだろうが、誰も知らんと思っていた。
ここは弟の嫁さんの実家だ。
2人とも今は買い付けでマトグラーサに出てるがな。」
「去年、ジットカーフのデイの子供に鍛錬してやっただろ?
その子の槍筋がニックの物だったんで聞いたんだ。」
「お!あの子にあったか?いい感じなんだ。
3日でかなりのものになったとおもうんだが、
お前から見てどうだった?」
「いいとは思う。だが、女だ。胸筋ではなく胸が出てくるだろう。
それをどうするかだと思うが、筋はいい。」
「へ?おんな?んー??そうだったか?
昔から子供の性別は判断しにくいんだよ。
しかし、言葉は男だったぞ?」
「ああ、勇ましいテムローサだろ?
いまはかわいいテムローサだと彼女はかわいがっていた。」
「へー、そうなのか。で、そのモウちゃんな?
あれはなんだ?ほんとに赤い塊モウ?気が全くない。
まだ、その去年のガキの方が強い。」
「ふん、やはり耄碌したな?ニック。起きたら手合わせしてもらえ。」
「えー、やだよ。モウちゃんかわいいもの。」
「それはわかってる。大会の予選で30人抜き、その後ガイライと対戦して
ガイライに勝った。そのあとは体力不足で倒れ込み負けとなったがな。」
「そんなはなしは知らない!ガイライも言わなかった!!」
「いうものか。気を放たれ一撃だぞ?耳のことで動揺したとしてもだ。
私だって、その気で気を失ってる。」
「おいおい!ほんとか?だったらガイライが臣の腕を出すのもわかる。」
「いや、それはどうだろうか?負けたからとかではなく、
人として尊敬してるようだぞ?」
「え?そうなのか?お前の弟は?領主だろ?それは?」
「あー、それは仕方がない。
あれは彼女の言葉を借りれば姉さん大好きっ子って奴だ。
小さいときは兄さん、兄さんだったのに。彼女もあれをかわいがる。」
「お前、弟には感謝しろよ?
あのチャクボにどんだけ金を渡していたことか。
お前を守るためだぞ?なのに何もしないから、
ガイライと俺とで守ってやってたんだぞ?」
「!!」
「ま、過ぎた話だ。んー、モウちゃんね。手合わせしたいな。」
「かまわないぞ?もともと、槍の手ほどきを頼もうと思っていたんだ。」
「ん?棒術じゃないのか?」
「もともと拳術だ。棒はかじった程度。私がある程度教えたが、
本格的にはあのワイプだ。だから師匠だ。忌々しい!」
「あははっは!それはそうだろうな。お前は教えるには不向きだ。
お?じゃ、俺はニック師匠か?いいねー。」
「ダメだ!師匠とは呼ばせない!!」
「ほんと、お前かわったな?違う意味で心配だ。」
「ふん。あ、起きたようだ。するか?手合わせ?」
「おお、いいな。すぐか?」
「いや、女性は身支度に時間がかかる。
それに飯だ。彼女は3度の飯を食う。」
「へ?3度。それはすごい。だからあの胸か?いいねー。」
「手合わせはないな、お前はここで死ね!!」
「あははは。飯を食うなら俺ももらおう。昨日の飯はうまかったからな。」
部屋に戻ると、彼女は家に戻ったようだ。
「ん?いないな。」
「ああ、すぐに戻る。」
「そうか?」
「聞いていいか?」
「なんだ?」
「なんで軍をはなれた?部下を亡くしたから?」
「ああ、それな。はははは。いや、違う。うん、違うんだ。
ああ、お前には話せるか。臣の腕をささげたんだ。
昔な。なのに、ダメだったんだ。
間に合わなかった。だからだよ。」
「?」
「マティス!おはよう!!あ!ニックさん!おはようございます!」
「ん?そこに扉?増築したのか?いつの間に。」
「ああ、守衛のトルガという奴から伝言だ。酒ばかり飲まず働けと。」
「あはははは!あいつも飲んだくれのくせによくゆうぜ!」
「さ、愛しい人。軽く食べよう。さんどいっちをつくってある。」
「わ!ありがとう。ニックさんもいただきましょう。」
「ああ、いいな。これを食ったら少し、モウちゃんと手合せしたいんだがいいかな?」
「ええ!こちらこそお願いいします。かわいいテムローサのお師匠様と伺いました。
ああ、伝言です。鍛錬頑張っています。次の段階に行きます。とのことです。」
「そうか。自分より強い奴と手合わせ出来たら、次だといったんだ。
マティスが相手ならそうなるな。
師匠じゃないよ。かるく教えただけだ。」
「あ、手合わせしたのはわたしです。棒と槍だったんですが。」
「ほう!それはいい。あれは去年、ここに行商しにきた親についてきてたんだ。
そこの中庭で槍を振り回してたからな、ちょっと仕込んでやった。
ああ、もちろん親にも話はしたぞ?なかなかいい筋で3日だったが、
そこらのもんには負けることはないとおもたんだがな。
へー、モウちゃんが勝ったか。よしよし、これを食ったら湖に行こう。
いい場所があるんだ。そこはいつでも暖かい。」
「はい!」
ダメだ。ニックも師匠と呼ぶ勢いだ。
「愛しい人、いいか?最初の手ほどきを教えてもらうだけだぞ?」
「うふふふふ。うん。」
「なんだ?」
「マティスは、ワイプ師匠を師匠と呼ぶのが気に入らないんですよ。
だからニックさんに槍術を教えてもらったら、
ニックさんのことをニック師匠と呼ぶんじゃないかって。」
「うわー、狭い!こころが狭すぎる!呼び方なんぞどうでもいいだろ?」
「そうだ、だから師匠と呼ばなくてもいい。ワイプは棒術のこととは別に、
武の考え方が尊敬に値するから師なのだろ?ニックにはそれはない。」
「あはははは!そりゃそうだ。ニックでいい。
さ、このうまそうなものを食べよう。なるほど、ワイプの言うとおりだ。
目の前にあるのに食べれんのは拷問だな。」
半分を過ぎたころに宿をでて、湖を目指す。
もし、だれかが訪ねてきたら、湖にいると伝えてくれと
伝言はしておく。ガイライとワイプが来るかもしれないからな。
この宿屋の息子は昨日初めて、ニックの槍捌きを見たのだろう。
私とニックをちらちらと見比べている。
「なんだ?ホスン?」
「伯父貴が槍使いなんて知らなかった!」
「そうか?んー、そうかな?こっちに来てから槍を取ったのは
去年が始めてか。そりゃ、知らんだろうな、あははははは!」
「ニック、なんてぐうたらな生活をしていたんだ?
しかし、それに負けるとは!」
「いや、去年からまたちょっと鍛錬したよ?さすがに、10歳ぐらいのガキより
はやく息が上がるのはよろしくないだろ?あー、よかった、鍛錬しておいて!」
「次はああは行かない!」
「そうか?ま、頑張れ。さ、モウちゃん行こう。案内するよ。」
宿の裏手から森を抜け、湖に出た。
それを左手にぐるりと廻っていくとすこし開けたところにでた。
「ここは湖と地面はなぜか暖かい。雪も積もらない場所だ。」
「地面掘ってもいいですか?」
「え?なんで?」
「愛しい人、それはあとだ。」
「はーい。では、わたしはどうすればいいですか?」
「そうだな、モウちゃんは拳と棒どちらが得意だ?」
「得意ですか?どちらとも言えませんが、拳はかなり長い間接しています。」
「ああ、いい答えだ。じゃ、拳でかかっておいで。」
「愛しい人、かまわない。Gはダメだが、施主殺しでいい。」
「なんだそれ?」
彼女は頷くと青い手甲を嵌める。
「カエルの手甲?贅沢だね。」
「ええ、ガイライにこの手甲と羽根をもらいました。では、行きます。」
「おうよ!」
さすが、ニック。
なんなく躱しているが、彼女が押してくる。
「待った!」
「え?」
「どうだ?ニック。」
「これは、驚いた、いや、それ以上だ。」
「ちなみに彼女はガイライと拳で舞う。」
「な!それを先に言え!じゃ、棒は?棒術はどうなんだ?」
「ああ、私と槍でやって、特殊な状態だが10本中5本とる。」
「なんだそれは互角じゃないか!」
「愛しい人?息は大丈夫か?次は棒だ。」
「はい!マティス師匠!」
「にやけるな!マティス!」
棒と槍。なるほどな。外から見れば、彼女の動きもよくわかる。
経験、それだけだ、彼女に足りないものは。
「待った!」
また、ニックが止める。
あれ以上やれば負けは必至。さすがうまいな。
「マティス!なんで槍を教えない!俺でなくてもお前でもよかっただろ!」
「そこだ。あのワイプが制限を掛けている。まずは棒を極めてから槍を学べと。」
「かー、なんていやらしいこと言いやがる!だから棒術遣いはいやなんだ。
もう、十分極めているだろう。槍をやろう、な、モウちゃん!」
「あ、いえ。教えてもらいたいのですが、やっぱり師匠、ワイプ師匠に
10本中5本とってからでないと。」
「いーやーらーしー!!なんてこと言いやがる!
マティス!なんでそんなことを許したんだ!お前だって槍で舞いたいだろ?
俺だってそうだ!」
「いや、先に剣で私は舞っている。それで満足したんだが、
ガイライと拳でも舞っているのをみて槍でも舞いたいと欲が出た。
そしたら、いつの間にかワイプにそういわれたそうだ。
なので、10本中10本取れるように鍛錬は積んできたつもりだ。」
「剣で舞うのか?お前が?剣のマティスが舞うのか?」
「あ!剣のマティスってやっぱり有名なんですか?」
「有名って、モウちゃんしらないの?え?モウちゃんいくつ?」
「48です?」
「だったら知ってるだろ?近隣諸国でも有名だった。
ん?異国か?」
「ああ、そうです。異国です。」
「どこ?」
ニックの気が鋭くなる。
「え?」
「ニック、やめろ!彼女はこの大陸以外の異国だ。それ以上気をだすな。死ぬぞ?」
「は!面白いことを言う。」
「マティス君!」
「ニックもやめろ!」
ワイプとガイライだ。
もう来たのか、仕事をしてるのか?こいつらは。
一気に気は霧散した。
「何やってるんですか?あなた方は?」
「師匠!もう来たんですか?ガイライも。お仕事してます?」
「もちろん。
そうそう今誰が資産院の院長だと思います?オート院長ですよ?」
「おお!大出世ですね。なにかお祝いしないと!!」
「そうですか?それは喜びますね。
あのクッキーの差し入れ、いたく感動していましたから。
なにか甘味をお願いできますか?」
「ええ、わかりました。ガイライは?3番さんに押し付けてるの?」
「まさか!彼は進んでやってくれてますよ?
ああ、今、わたしが軍部の隊長で彼が副隊長です。」
「おお!ガイライ!出世だね!そういうことは早くいってくれないと!
母さんはお祝いの用意をしないといけないからね。今日はなにが食べたい?
ガイライの好きなものにしようね。」
「ええ、母さん。うれしいです。あのすき焼きがいいです。」
「そう?じゃ、それにしよう。
ニックさん?やはり異国というのは言わないほうがいいですか?気が鋭かった。」
「いや、違うよ?モウちゃん。違うんだ。うん、異国だったら知らないかもしれないな。
すごかたんだもう、キャーキャー女どもが下は5歳から、もうじき死ぬだろうばーさままで。」
「おお!さすが、わたしのマティス!女殺しですな!」
「ん?嫉妬するか?」
「んー、それはないな。だってマティスはわたしのものだもの。
周りがなんと騒いでもね。むかつくけど。」
「ははは。そうだな。」
「おまえ、マティス。やっぱり変わったな。
いや、そんなことはいい!異国の話もいい!舞だ!剣の舞!見たい!」
「それはわたしも見たいと思っていました。母さん、祝ってもらえるのなら、
それを見せてもらえませんか?」
「え?あんなんで祝いになるの?わたしはいいけど、マティス?いい?
さっきの気はだめだったよ?」
「ん?そうか?ニックがあなたを威嚇するからな。」
「もう!じゃ、マティスしようか?わたし、まだ体力も息も続くよ?すごいね!」
「そうだ、すごいぞ?ワイプ!おまえの師匠の座もあと数日だ。」
「はいはい。しかし、また、剣の舞が見られるとは運がいい。」
彼女は、ニックの気のことはそのまま流しているが、なんだあれは?
あとでもう一度聞くか。
彼女が棒を剣に変えていく。
私も三日月を出す。
ああ、楽しいな。あれからかなりの鍛錬をした。
私もどこまで舞えるのだろうか。
『参る!!』
月が昇り、湖面に光る。
4つの月の中、剣が舞う。
「ガイライ!別に隠匿で入ってこなくてもいいだろ?驚いたけどさ!」
「ああ、そうだな。元気そうだ。」
「耳は?治ったと聞いた。」
「そうなんだ。笑うぞ?理由を聞けば。」
「それに、臣の腕?マティスの話は分からない。
ちょっと時間を追って説明してくれ。」
「ああ、どこから?」
「ああ、こいつ、マティスの左目、左腕がダメになった話は知ってる。
理由は今聞いた。それが今治ってる、そこからだ。」
「それはわたしも知らない。モウ、彼女だな?」
「そうだといっただろ?彼女と結婚したからだ。
いや、違うな、彼女が治してくれたんだ。彼女は石使いのようで石使いではない。」
「?わからんが、治ったんだな?最近か?
左腕の筋肉がいまいちだ。少し、集中的につけないと同じように鍛錬していれば
右も筋肉がつく、追いつくのに時間がかるぞ?左だけだ。左だけ鍛錬しろ。」
「なるほど。わかった。」
「それで、あの爺が辞めた話、4部解体?ここらからでいい。」
「ああ、今、わたしが軍部の隊長になった。副隊長がルカリだ。
その下に3部隊がある。すべてわたしとルカリで統括する。」
「ほう!ルカリ!大出世だな。カラームは?」
「大会があったのは知ってるな?その大会で糸を使って廃人だ。」
「大会があったのは知ってる。廃人?
使われたのではなく?使って?しかも糸だなんて、いつの話だ?」
ガイライは事細かに話していく。
機密と言っていい内容だ。私が聞いていてもいいのかと思う内容だが、
これまでのいきさつがあるからいいのだろうが、ニックは?
軍を離れ、尚且つ、隣国だ。それだけ信頼しているということか。
ニックも次々質問をしていく。
ん?彼女が沈んでる。
「ワイプ!いま、愛しい人を悲しませたな!」
「もう!マティス!違うったら!」
そこから宴会だ。
次々酒が、食い物が無くなっていく。
ビールもなんの疑問も思わず、ニックは飲んでいく。
ワイプは、やはりひれ伏してた。わはははは!当たり前だ!
月が沈み、2人は戻るというが、
ガイライがまた来るという。銃の話だ。ニックは興味なさそうだが、
目が一瞬光る。
彼女は、満足そうにすよすよ寝てしまった。
私は少し横になるだけで目が覚めてしまい、
扉君を出し、私も家で熱い湯をかぶった。
彼女が起きたときに、食べられるようにと
さんどいっちを作り、中庭に出る。
左か。左だけ。
「よぉ!起きたのか?モウちゃんは?まだ寝てるな?」
「ニック!彼女が許しているからいいが、モウちゃんなぞ軽々しく呼ぶな!
モウ様、もしくは女神モウ様と呼べ!」
「あははは!ガイライもワイプも呼び捨てじゃないか?」
「ガイライは彼女が気に入ってる。息子だ。ワイプは残念ながら師匠だ。」
「なるほど?わからん。しかし、よくここが分かったな?
イリアスに戻ったことは知ってるだろうが、誰も知らんと思っていた。
ここは弟の嫁さんの実家だ。
2人とも今は買い付けでマトグラーサに出てるがな。」
「去年、ジットカーフのデイの子供に鍛錬してやっただろ?
その子の槍筋がニックの物だったんで聞いたんだ。」
「お!あの子にあったか?いい感じなんだ。
3日でかなりのものになったとおもうんだが、
お前から見てどうだった?」
「いいとは思う。だが、女だ。胸筋ではなく胸が出てくるだろう。
それをどうするかだと思うが、筋はいい。」
「へ?おんな?んー??そうだったか?
昔から子供の性別は判断しにくいんだよ。
しかし、言葉は男だったぞ?」
「ああ、勇ましいテムローサだろ?
いまはかわいいテムローサだと彼女はかわいがっていた。」
「へー、そうなのか。で、そのモウちゃんな?
あれはなんだ?ほんとに赤い塊モウ?気が全くない。
まだ、その去年のガキの方が強い。」
「ふん、やはり耄碌したな?ニック。起きたら手合わせしてもらえ。」
「えー、やだよ。モウちゃんかわいいもの。」
「それはわかってる。大会の予選で30人抜き、その後ガイライと対戦して
ガイライに勝った。そのあとは体力不足で倒れ込み負けとなったがな。」
「そんなはなしは知らない!ガイライも言わなかった!!」
「いうものか。気を放たれ一撃だぞ?耳のことで動揺したとしてもだ。
私だって、その気で気を失ってる。」
「おいおい!ほんとか?だったらガイライが臣の腕を出すのもわかる。」
「いや、それはどうだろうか?負けたからとかではなく、
人として尊敬してるようだぞ?」
「え?そうなのか?お前の弟は?領主だろ?それは?」
「あー、それは仕方がない。
あれは彼女の言葉を借りれば姉さん大好きっ子って奴だ。
小さいときは兄さん、兄さんだったのに。彼女もあれをかわいがる。」
「お前、弟には感謝しろよ?
あのチャクボにどんだけ金を渡していたことか。
お前を守るためだぞ?なのに何もしないから、
ガイライと俺とで守ってやってたんだぞ?」
「!!」
「ま、過ぎた話だ。んー、モウちゃんね。手合わせしたいな。」
「かまわないぞ?もともと、槍の手ほどきを頼もうと思っていたんだ。」
「ん?棒術じゃないのか?」
「もともと拳術だ。棒はかじった程度。私がある程度教えたが、
本格的にはあのワイプだ。だから師匠だ。忌々しい!」
「あははっは!それはそうだろうな。お前は教えるには不向きだ。
お?じゃ、俺はニック師匠か?いいねー。」
「ダメだ!師匠とは呼ばせない!!」
「ほんと、お前かわったな?違う意味で心配だ。」
「ふん。あ、起きたようだ。するか?手合わせ?」
「おお、いいな。すぐか?」
「いや、女性は身支度に時間がかかる。
それに飯だ。彼女は3度の飯を食う。」
「へ?3度。それはすごい。だからあの胸か?いいねー。」
「手合わせはないな、お前はここで死ね!!」
「あははは。飯を食うなら俺ももらおう。昨日の飯はうまかったからな。」
部屋に戻ると、彼女は家に戻ったようだ。
「ん?いないな。」
「ああ、すぐに戻る。」
「そうか?」
「聞いていいか?」
「なんだ?」
「なんで軍をはなれた?部下を亡くしたから?」
「ああ、それな。はははは。いや、違う。うん、違うんだ。
ああ、お前には話せるか。臣の腕をささげたんだ。
昔な。なのに、ダメだったんだ。
間に合わなかった。だからだよ。」
「?」
「マティス!おはよう!!あ!ニックさん!おはようございます!」
「ん?そこに扉?増築したのか?いつの間に。」
「ああ、守衛のトルガという奴から伝言だ。酒ばかり飲まず働けと。」
「あはははは!あいつも飲んだくれのくせによくゆうぜ!」
「さ、愛しい人。軽く食べよう。さんどいっちをつくってある。」
「わ!ありがとう。ニックさんもいただきましょう。」
「ああ、いいな。これを食ったら少し、モウちゃんと手合せしたいんだがいいかな?」
「ええ!こちらこそお願いいします。かわいいテムローサのお師匠様と伺いました。
ああ、伝言です。鍛錬頑張っています。次の段階に行きます。とのことです。」
「そうか。自分より強い奴と手合わせ出来たら、次だといったんだ。
マティスが相手ならそうなるな。
師匠じゃないよ。かるく教えただけだ。」
「あ、手合わせしたのはわたしです。棒と槍だったんですが。」
「ほう!それはいい。あれは去年、ここに行商しにきた親についてきてたんだ。
そこの中庭で槍を振り回してたからな、ちょっと仕込んでやった。
ああ、もちろん親にも話はしたぞ?なかなかいい筋で3日だったが、
そこらのもんには負けることはないとおもたんだがな。
へー、モウちゃんが勝ったか。よしよし、これを食ったら湖に行こう。
いい場所があるんだ。そこはいつでも暖かい。」
「はい!」
ダメだ。ニックも師匠と呼ぶ勢いだ。
「愛しい人、いいか?最初の手ほどきを教えてもらうだけだぞ?」
「うふふふふ。うん。」
「なんだ?」
「マティスは、ワイプ師匠を師匠と呼ぶのが気に入らないんですよ。
だからニックさんに槍術を教えてもらったら、
ニックさんのことをニック師匠と呼ぶんじゃないかって。」
「うわー、狭い!こころが狭すぎる!呼び方なんぞどうでもいいだろ?」
「そうだ、だから師匠と呼ばなくてもいい。ワイプは棒術のこととは別に、
武の考え方が尊敬に値するから師なのだろ?ニックにはそれはない。」
「あはははは!そりゃそうだ。ニックでいい。
さ、このうまそうなものを食べよう。なるほど、ワイプの言うとおりだ。
目の前にあるのに食べれんのは拷問だな。」
半分を過ぎたころに宿をでて、湖を目指す。
もし、だれかが訪ねてきたら、湖にいると伝えてくれと
伝言はしておく。ガイライとワイプが来るかもしれないからな。
この宿屋の息子は昨日初めて、ニックの槍捌きを見たのだろう。
私とニックをちらちらと見比べている。
「なんだ?ホスン?」
「伯父貴が槍使いなんて知らなかった!」
「そうか?んー、そうかな?こっちに来てから槍を取ったのは
去年が始めてか。そりゃ、知らんだろうな、あははははは!」
「ニック、なんてぐうたらな生活をしていたんだ?
しかし、それに負けるとは!」
「いや、去年からまたちょっと鍛錬したよ?さすがに、10歳ぐらいのガキより
はやく息が上がるのはよろしくないだろ?あー、よかった、鍛錬しておいて!」
「次はああは行かない!」
「そうか?ま、頑張れ。さ、モウちゃん行こう。案内するよ。」
宿の裏手から森を抜け、湖に出た。
それを左手にぐるりと廻っていくとすこし開けたところにでた。
「ここは湖と地面はなぜか暖かい。雪も積もらない場所だ。」
「地面掘ってもいいですか?」
「え?なんで?」
「愛しい人、それはあとだ。」
「はーい。では、わたしはどうすればいいですか?」
「そうだな、モウちゃんは拳と棒どちらが得意だ?」
「得意ですか?どちらとも言えませんが、拳はかなり長い間接しています。」
「ああ、いい答えだ。じゃ、拳でかかっておいで。」
「愛しい人、かまわない。Gはダメだが、施主殺しでいい。」
「なんだそれ?」
彼女は頷くと青い手甲を嵌める。
「カエルの手甲?贅沢だね。」
「ええ、ガイライにこの手甲と羽根をもらいました。では、行きます。」
「おうよ!」
さすが、ニック。
なんなく躱しているが、彼女が押してくる。
「待った!」
「え?」
「どうだ?ニック。」
「これは、驚いた、いや、それ以上だ。」
「ちなみに彼女はガイライと拳で舞う。」
「な!それを先に言え!じゃ、棒は?棒術はどうなんだ?」
「ああ、私と槍でやって、特殊な状態だが10本中5本とる。」
「なんだそれは互角じゃないか!」
「愛しい人?息は大丈夫か?次は棒だ。」
「はい!マティス師匠!」
「にやけるな!マティス!」
棒と槍。なるほどな。外から見れば、彼女の動きもよくわかる。
経験、それだけだ、彼女に足りないものは。
「待った!」
また、ニックが止める。
あれ以上やれば負けは必至。さすがうまいな。
「マティス!なんで槍を教えない!俺でなくてもお前でもよかっただろ!」
「そこだ。あのワイプが制限を掛けている。まずは棒を極めてから槍を学べと。」
「かー、なんていやらしいこと言いやがる!だから棒術遣いはいやなんだ。
もう、十分極めているだろう。槍をやろう、な、モウちゃん!」
「あ、いえ。教えてもらいたいのですが、やっぱり師匠、ワイプ師匠に
10本中5本とってからでないと。」
「いーやーらーしー!!なんてこと言いやがる!
マティス!なんでそんなことを許したんだ!お前だって槍で舞いたいだろ?
俺だってそうだ!」
「いや、先に剣で私は舞っている。それで満足したんだが、
ガイライと拳でも舞っているのをみて槍でも舞いたいと欲が出た。
そしたら、いつの間にかワイプにそういわれたそうだ。
なので、10本中10本取れるように鍛錬は積んできたつもりだ。」
「剣で舞うのか?お前が?剣のマティスが舞うのか?」
「あ!剣のマティスってやっぱり有名なんですか?」
「有名って、モウちゃんしらないの?え?モウちゃんいくつ?」
「48です?」
「だったら知ってるだろ?近隣諸国でも有名だった。
ん?異国か?」
「ああ、そうです。異国です。」
「どこ?」
ニックの気が鋭くなる。
「え?」
「ニック、やめろ!彼女はこの大陸以外の異国だ。それ以上気をだすな。死ぬぞ?」
「は!面白いことを言う。」
「マティス君!」
「ニックもやめろ!」
ワイプとガイライだ。
もう来たのか、仕事をしてるのか?こいつらは。
一気に気は霧散した。
「何やってるんですか?あなた方は?」
「師匠!もう来たんですか?ガイライも。お仕事してます?」
「もちろん。
そうそう今誰が資産院の院長だと思います?オート院長ですよ?」
「おお!大出世ですね。なにかお祝いしないと!!」
「そうですか?それは喜びますね。
あのクッキーの差し入れ、いたく感動していましたから。
なにか甘味をお願いできますか?」
「ええ、わかりました。ガイライは?3番さんに押し付けてるの?」
「まさか!彼は進んでやってくれてますよ?
ああ、今、わたしが軍部の隊長で彼が副隊長です。」
「おお!ガイライ!出世だね!そういうことは早くいってくれないと!
母さんはお祝いの用意をしないといけないからね。今日はなにが食べたい?
ガイライの好きなものにしようね。」
「ええ、母さん。うれしいです。あのすき焼きがいいです。」
「そう?じゃ、それにしよう。
ニックさん?やはり異国というのは言わないほうがいいですか?気が鋭かった。」
「いや、違うよ?モウちゃん。違うんだ。うん、異国だったら知らないかもしれないな。
すごかたんだもう、キャーキャー女どもが下は5歳から、もうじき死ぬだろうばーさままで。」
「おお!さすが、わたしのマティス!女殺しですな!」
「ん?嫉妬するか?」
「んー、それはないな。だってマティスはわたしのものだもの。
周りがなんと騒いでもね。むかつくけど。」
「ははは。そうだな。」
「おまえ、マティス。やっぱり変わったな。
いや、そんなことはいい!異国の話もいい!舞だ!剣の舞!見たい!」
「それはわたしも見たいと思っていました。母さん、祝ってもらえるのなら、
それを見せてもらえませんか?」
「え?あんなんで祝いになるの?わたしはいいけど、マティス?いい?
さっきの気はだめだったよ?」
「ん?そうか?ニックがあなたを威嚇するからな。」
「もう!じゃ、マティスしようか?わたし、まだ体力も息も続くよ?すごいね!」
「そうだ、すごいぞ?ワイプ!おまえの師匠の座もあと数日だ。」
「はいはい。しかし、また、剣の舞が見られるとは運がいい。」
彼女は、ニックの気のことはそのまま流しているが、なんだあれは?
あとでもう一度聞くか。
彼女が棒を剣に変えていく。
私も三日月を出す。
ああ、楽しいな。あれからかなりの鍛錬をした。
私もどこまで舞えるのだろうか。
『参る!!』
月が昇り、湖面に光る。
4つの月の中、剣が舞う。
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