いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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308:拠点

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月が沈む前に師匠の家に戻ったようなので、
鍛練場に移動した時には、師匠の配下と呼んでいいのか、
高原の民、2人組が鍛錬をしていた。

露骨に嫌そうな顔をするが、
マティスに気付くと満面の笑みでやって来た。

「マティス様!食事の差し入れありがとうございます!
前回もそうですが、あの修羅場を乗り越えられたのも、
あの食事があったからこそ!
ありがとうございます!!」
「ああ、様はいらない。礼なら我が妻に。」
「え、えっと、そのマティス、さんの奥方は、その赤い塊のモウ殿と
その、砂漠の民の方?お二方いらっしゃると?赤い塊のモウ殿は
今回ご一緒ではないのですか?」
「?私の妻は唯一で、彼女だ。彼女が赤い塊で、砂漠の民で、
わたしの愛しい人だ。
ワイプ!お前の配下にどういう躾をしているんだ?
飯の礼より愛しい人がわからんというのは問題だぞ?」
「はいはい。
服装で人を識別していてはだめですよ。骨格を見なさい。
彼女がわたしの一番弟子で、赤い塊のモウ、砂漠の民のモウ、
あー、わかってますよ、マティス君の唯一の伴侶ですよ。」
「ふふふ。一緒に鍛練しましたよね?食事はお口に合いましたか?
あれはほとんどはマティスが作ったんですよ?
お礼というならば、やはりそれを用意したワイプ師匠と我が夫に。」
「え?だって、服が違う!」
「あなた方2人も今日はニバーセルの一般的な服ですよ?」
「あ!そうか!」
「はー、情けない。そんなんだから標的に逃げられるんですよ。」
「う、うるさい!」
「わたしも、顔と名前はなかなか覚えられないですよ?
でも、お二方は覚えてます。うれしそうにお芋をもらってくれたので。
ダナフさんとサーナルさんですよね?」
「「はい!そうです!」」

こっそり師匠に聞いたのは内緒だ。

「あの、モウ殿!一度手合わせをお願いしたい!」
「わたしはワイプ師匠の弟子なので、武に関することはすべて
師の許可がいるのです。師匠に聞いてもらえますか?」
「ワイプ、さん?どうでしょうか?」

師匠の許可というよりマティスの許可だ。
師匠はマティスを見て、マティスが頷けば、許可するんだろうな。
ほら、ね。

「そうですね。許可はしましょう。モウ、かまいませんよ。」
「はい、師匠。ダナフさんとサーナルさんはなにを得意としているのでしょうか?」
「「拳術です。」」
「では、それで。マティス?槍術の鍛錬はこの後でいい?」
「ああ、かまわない。あの酔拳最後のはダメだぞ。」
「アイアイサー。」


服は最初に作ったものでいいか。
髪もくくらないと。
「ちょっと、身支度してきます。」

ここのトイレは通常のトイレだし、更衣室もないので、
ちょっと外に出るふりをして、扉君を出し、家に帰る。
どこか定位置に扉君を常に出していたほうがいいかな?


「お待たせしました。」

少しの間だと思ったのに、ガイライもやってきてる。
お仕事は?

「モウ!今から手合わせをすると聞いたが?」
「はい。ガイライ隊長殿?お仕事は?」
「いま、軍部入ったところだ。モウの気配がしたので、先に来た。」
「いや、仕事は?始業時間じゃないの?ああ、そういう感覚はないんだね。」
「?」
「いえ、いいです。こちらお二方は高原の民、ダナフさんとサーナルさんで、
拳術を得意とするそうです。なので、拳術をと。
あまり、棒、槍と偏っていてはいけませんしね。見ていかれますか?」
「もちろん。」

そうだろうな。


軽くストレッチだけやって、始めよう。
まずはダナフさんと。


「始め!」
師匠が審判を務める。

礼をして一歩下がるが、彼はしない。
殺気が膨らむ。なるほど戦闘民族ね。
あくまでも戦う手段、武道ではない。
ストリートファイターだ。しまった、昇竜拳という言葉しか知らない。

殺しにかかってこられるのは、あのお粗末な強盗以来初めてだ。
比べることもできないけど。
わたしもどちらかというと道は極めていない。
戦うというのは殺ということだ。
ただ、あとあと面倒だという、
故郷では考えられない思考になってる。
手合わせではそれはないのだが。

ああ、集中せねば、彼に失礼だ。


「はっ!!!」

あ、腎臓にもろに入ったかも。
声もなく、うずくまり、固まってしまった。


「次!」

え?師匠?いいの?

サーナルさんも同じようなスタイル。
どちらかというとキックボクシングか?
2人が連携をとるとさらに強いのだろうな。

彼には踵落としで沈んでもらった。


「それまで!」


礼を取り、師匠にも礼。
マティスとガイライのところに戻り、振り返りさらに礼。

「愛しい人!さすがだな。」
「モウ、見事!」
「彼、えーとダナフさん?腎臓に入ったと思うんだけど、
大丈夫かな?内臓系って石使いさんで治るの?」
「ああ、あのあたりをやられると血の小便がでるな。
2、3日で治るだろう。それでだめなら石使いだな。
その程度の不調はすぐに治る。」
「そうなんだ。医者が石使い?」
「そうなるな。医術に長けている石使いだ。」
「へー。」
「愛しい人?かなり撃たれていたが、どうだ?」
「うん、あおたんはできてるね。だるい。重いというか鋭かった。
本格的に殺気を受けたよ。でも、うーん・・・。」
「なんだ?」
「恨みの殺気じゃないからね、勝つという意味での殺気かな?
高原の民は何に対して戦っているんだろうね?」

2人をどこかに運んでいった師匠が戻ってきた。

「モウ!良い動きでしたね。」
「師匠!彼らは?大丈夫そう?」
「ええ、丈夫が取り柄ですからね。」
「彼らは気の鍛錬はしないのですか?」
「わたしから指示するものでもないんですよ。
彼らが気付いて教えを乞えばいつでも。」
「そうか、もったいないね。」
「モウはその点素直ですね。」
「ガイライから見て彼らはどうですか?」
「そうだな、少し甘いか。ワイプ、なぜ育てない?」
「難しいですね。今の状態に満足してる以上成長はないですから。
こちらが教え込んでも無駄です。
今回のことで少しは欲が出ればいいんですがね。」

この世界は望み、努力すれば叶う。
へたしたら努力もいらない。体力は別だが。
なるほどな。

「モウ?例の6人ですが、賭けの報酬はどうしますか?」
「忘れてたね。どうしようか?まさか、本当にマッパで大行進は
見せられる方が気の毒だしね。心持は?頑張ろう!ってなってる?」
「いえ、残念ながら。あなたに敵対心があるだけです。」
「あ、そ。じゃね、伝言お願いできる。

”賭けの報酬の件ですが、こちらが大人げなかったようなので
無効とします。これが大人の余裕というものです。以上”

これで。」
「モウ、それではますます、あなたを敵視する。」
「いいよ、それで。これで、わたしになにかちょっかい掛けてくるんなら
ある意味根性はあるよね。さ、当分、王都はいいか。ね?マティス。」
「そうだな。これから、どうする?今日は槍術の鍛錬はいいだろう。」
「じゃ、いったん帰ろう。」
「わかった。」
「ガイライ、何かあったらわかるから。頑張ってね。
師匠も食事はきちんととってくださいね。
ニックさんとルカリ殿によろしく。あ、オート君にも頑張ってと。」
「ええ、伝えておきましょう。」
「ニックはいま新人と共同で生活している。ルカリも付き合ってる。
伝えておこう。」


ガイライとはお約束のハグをして、そのまま王都の門を出ることになった。


「帰るってどこにかえろうか?」
「どこか拠点がいるか?
コットワッツの砂漠か、イリアスの泉か、呪いの森か、渓谷あたりに
家を建てるか?」
「コットワッツの砂漠に帰ろう。扉君の家に帰ってお風呂に入ろう。
それから、セサミンのところに顔だして、それから、それから・・・。」
「眠いんだな?いいよ、お眠り。」
「うん。ごめん、なんか、疲れた。」

眠さの中に砂漠のあの光景が蘇る。








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