いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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307:合わさりの月

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ひさしぶりのコットワッツの砂漠。
何もない。砂には鉱物はある。ただ、砂漠石はない。海峡石も。
タロスさんの墓石もなくなっている。

砂漠石はあと600年掛けて生まれてくるのだろうか?
あの月無し石の親分もいないのか?それもわからなかった。

サボテンの森の位置にデッキを展開した。
月が昇る。


「どう?」
「常にあなたに触れていたいと思う心持と同じだ。
ああ、違うな。この月明かりの中であなたを抱きたい。」
「んー、それって、いつもだよね?
寒いからお風呂作ろうか?樹石があるから温度の維持もできるしね。」
「いや、そのままで抱きたい。」
「外でってこと?ここで?」
「そうだ。」
「・・・お布団敷いていい?それで、空気は遮断したいな。さすがに寒いよ?」
「ああ、かまわない。」


何もない砂漠。デッキの上に、お布団。台所も、植物園も出さずに、
ただ2人だけ。日中よりも明るい月明かりの中、
なにも語らずただ2人で抱き合った。
わたしも同じなのだ。常にマティスに触れていたい。
なにも考えずにマティスだけを感じていたいのだ。
それが欲なのだろう。

2人寄り添って満足げに話をする。

「愛しい人、雨の日に私の寝床に来て?食べ物もたくさん用意する。
今年は雨の日が長いといっていた。こうしてずっとあなたを抱いていたいんだ。」
「うん、そうして。ずっとね。でも、でもね、マティス?」
「なに?愛しい人?」
「たぶんよ、たぶん子はできない。でも、万が一がある。ここには出さないで。」
「!!」

ちゃんと言っておかないと。

「だって、わからないでしょ?授かればいいという話じゃないの。
だから、試すこともしたくない。するべきじゃない。意思をもって作らないの。
望んでいないの。試さないで。お願い。」
「わかっている。わかっているよ、愛しい人。私も望んでいない。
しかも緑の目だ、望みようがないんだ。」
「うん、そうだね。そうなんだ。」
「中に出さなくてもあなたを抱きたい。」
「うん、だからね、そのね・・・」
「?掛けてもいいの?」
「うん、いいし、わたしもいっぱい、その舐めたいし、そのね・・・」
「?」
「そのね、その、お尻で、ね?」
「!愛しい人、今もいい?」
「今はダメ!」
「どうして?」
「お風呂と一緒なの!!」
「そうなのか?では、私の部屋に風呂を作らないと。」
「ああ、旅館、宿屋でね、露天ぶろ付きの部屋ってあるよ。
個人の部屋ってわけじゃないけどね。床にお湯が流れるタイプにしよう。
ちゃんとベットもある広い部屋。家を建てようか?」
「それもいいな。どこに?」
「どこでも。持ち運びするから。窓が大きいのがいいね。」

ずっと気になっていたことが言えてほっとした。
月の明かりのおかげなのだろうか。

それから、きれいにして、身支度。
呪いの森の手前に移動。そこから中に入る。
明るい。明るすぎる。


「月の明かりだけではないよね。葉っぱが光ってる?反射してるのかな?」

呪いの森の植物園だけ出してみると、やはり葉っぱは光っていた。
よく見ると、水滴がついているのだ。
それが反射しているようだ。これが、泉の元なのか?
自ら水を作り出しているのか?
砂漠石があり、月の光がある。それがこの世界に必要な要素なのだ。

ここではただ、きらきら光る木々を見つめてまったりお茶をのんだ。
もちろん、一番茶だ。
なるほど、うまい。
茶葉を摘んでお願いしてお茶になってもらった。
ここに来る前に月の光を浴びながら、摘み、お願いしたのだ。
素人が作るより、一番いい状態の茶葉だ。

そこから、渓谷に飛んだ。明るい岩肌にぎっしりカエルが見えたので、
そこで、引き返した。
集まってきているのだろうか。雨の日前はカエル狩りだ。

マトグラーサの砂漠に移動する。
わたしたちが砂玉を回収したあたりには
やはり、ヒマワリの種よりすこし大きめの石を吐き出している。

「師匠は回収方法は門外不出だって教えてくれたけど、
砂漠から出る石は同じだね。それをどう回収するかが違うだけなんだろうね。
セサミンは石を使うけど、ここでは蜘蛛の糸を使うのかな?」
「昔からだったら、蜘蛛の糸が流行ったのは後だということか?」
「かもしれない話になるけどね。バレると困るから、
あわてて海蜘蛛をすべて殺したかもしれないよ?
マトグラーサが。もしくは、海蜘蛛の糸こそがマトグラーサの秘密で、
それが外に漏れたのかもしれない。それで、流行りに流行って絶滅。
マトグラーサの石は回収できなくなった。最近になって砂蜘蛛の糸にも
同じような効果があることが分かったとか?
変動の内容が分からないけどね。増えつつあるってことは、
同じ800年周期だとしても
600年前の話になる。周期は違うかもしれないね。
だって、マトグラーサでも砂漠石が取れるというのは共通の認識だ。
変動の周期が数十年単位で砂蜘蛛の大発生かな?
そもそも、コットワッツの変動規模だったら記録に残っていないはずないけど、
コットワッツの800年前の変動は領主の力に引き継がれているだけだ。
そこを突き詰めるとこの世界はやっぱりおかしい。
どこかで誰がか記憶を制御していると考えるほうが筋が通るかな?」
「記憶を制御、か。」
「思い当たることある?」
「新年には王の言葉ある。それを聞いた後は、
すこし記憶が混濁する。そんなものだと思っていたが、これは違うんだな?」
「あー、そうだろうね。なんか、やらかしてるな。真名の宣言だっけ?」
「そうだ。」
「変動はなかったことにして、砂漠石は王都から買ってるってことにするのかな?
で、増えたころに、ま、600年後以降?マティスの前の前の前ぐらいの代で、
800年ごとの変動の話が領主の力として記憶される。
200年前から集めて、それが20年分。
王都にしてみれば、20年分の石を単純にもらうだけのはなしなんだ。
悪気なんて一切ないね。」
「・・・。やはり、そんなことはあり得ない。
そうだとして、タロスの家がない、
タロスの木も、墓石もないのに?おかしいとなるだろう?」
「そこは落としどころがどこかにあるんだよ。家は燃えている。
セサミンとは和解している。旅をしている。どこかで新年を迎えて、
あれ?となっても、コットワッツに戻るだけだ。」
「あなたは?あなたのことは?」
「んー、そこだね。わたしはその宣言とやらは効かない。これは断言できる。
変動がなかったことになると、
わたしとの記憶も飛ぶかもしれないね。」
「・・・。どうしたらいい?」
「どう?緑の目は消えてるかもしれないけど、またわたしに会えば惚れるだろ?
同じだよ?」
「ああ、そうだ。愛しい人。必ず、私の前に。お願いだ。試さないで。
すぐに名を呼んで。そうすれば大丈夫だ。断言できる。」
「うふふふふ。もちろん。それでだめでも思い出すまでずっとそばにいるから。
できるだけ早く思い出してね。約束ね。」

砂漠から飛び出るヒマワリの種型は一応回収した。
だって、砂玉を除去したのはわたしたちだという屁理屈で。

そのまま、北上ルートを通り、砂漠石を回収しながら、
マトグラーサ側にあるテントまで移動した。










あまり見たくない光景だった。




「きゃー!!」
「これは!俺のものだ!!!」
「あはははははは!!」

なんというか、乱痴気騒ぎ?
ほぼ裸に近い成人男女が、砂の上で石を拾い、まー、やってる。
食事をむさぼってるもの、酒をあおってるもの。
欲望むき出し。健全な欲望だといえる。
人殺しは起きてないから。いや、このテントでは、か。

(・・・。師匠呼ぶ?)
(そうだな。ワイプ!起きてるか!)
(マティス君?どうしました?モウに何かありましたか?)
(師匠、わたしは元気、ではないけど、うん。
いま、マトグラーサの砂漠のテントです。
ちょっと来れますか?)
(え?砂漠に出てるんですか?あとで、また、例の水もらえますか?
もしくは、違う数式を)
(数式はあれで打ち止めです。ごめんなさい。とにかくちょっと見てください)
(呼ぶぞ)
(どうぞ)

『ワイプ、来い』

上空に呼んだので、魚の皮の上に乗る状態にしました。
魔法の絨毯です。

「師匠?声出しても大丈夫です。膜は張ってます。気配も消せています。
欲の膨れ具合はどうですか?」
「欲より、なにより、え?浮いてるの?」
「んー、魚の皮を浮かしてその上に乗ってる?そんな状態です。欲は?」
「ああ、大丈夫?でしょうか?」

んー、厳しそうだ。
「師匠?わたしを抱きしめて?」
「なに!!ワイプはここで死ね!!」
「もう!マティス!仕方がないでしょ!」
「ダメだ!弟子を抱きしめたいのなら、私でもいいだろ!!」

マティスがわたしを抱え、そのマティスを師匠が抱っこ状態。

「師匠?大丈夫?」
「どうなんでしょうかね?前回ほどではないです。それで?」
「ああ。下だ、下を見てくれ。」
「下?・・・・。」
「愛しい人。あなたは見なくていい。こちらに。」
「うん。」
わたしはマティスの胸に顔をうずめる。
マティスがわたしの廻りの音を閉じたのだろう。何も聞こえない。
ただ閉じる前に、遠くで歓喜ではない悲鳴が聞こえた。



頬にマティスのキスだ。
(愛しい人。ワイプの家に戻った。目を開けて。)

「マティス。戻った?あ!師匠は?」
「大丈夫ですよ。」
「そう、よかった。一応泉の水を。何か食べますか?」
「ああ、ありがとう。呼ばれる少し前に戻ったところだったんですよ。
湯をかけて食べる食料の食べ方を読んでいたところでね。
まずはそれを食べなければ。」
「ああ、ちょうどよかったですね。
おうどんとお茶漬けですよ。すぐ作りますね。」
「いいえ、わたしが作ってみたい。お湯をかけるだけなんですよね?」
「そうですよ。あの砂時計で、お茶漬けは3分、おうどんは5分ぐらいで。
それが基準で、あとは好みですね。」
「わかりました。あなたたちは?」
「あ、いっしょにいいですか?わたしおうどんがいいです。マティスは?」
「ここで食べるのか?お茶漬けで。」
「はいはい。湯を沸かす道具はありますからね。」


(なんで一緒に食べるんだ?)
(ん?こういうのはいっしょに食べたほうがおいしいよ?)
(そうなのか?)
(一人で食べると、むなしいのよ。空腹は満たされるけどね。)
(なるほど。)

「これ、まだまだ改良の余地がありまくりですね。」

味が全体に薄い。
メイガの粉、2種類を入れまくった。

「好みじゃないですかね。あとから入れる方がいいのでは?」
「そうかな?あ、胡椒とチーズもいいかも。」

そうなるとおうどんではなくラーメンだ。
卵とかん水?
かん水ってアルカリ性の塩水?

「師匠!次回のお湯で簡単麺は期待しててください!」
「それは楽しみですね。これはこれで素晴らしいので、
また作っておいてくれますか?」
「だったら、収納庫でいいだろ?補充はしておくぞ?」
「ダメです。この、お湯を沸かす、掛ける、待つ、この行為が
ある程度の制御をかけるのですよ。」
「あー、わかるわー。ほんと、わかります、師匠!」
「なんなんだ、お前ら2人は。」
「残念だ、マティス君、君には一生わかるまいよ。」
「愛しい人?」
「うふふふ。料理をしない人の気持ちだもの。
それで、あの砂漠のことは?」
「モウ、あなたが気にすることはありませんよ。
ま、違法ギリギリのことをしていたと思っていればいいです。」
「そうなんですか?
その、だれか、怪我したり、死人とか出てなかったですか?」
「大丈夫ですよ。」

うそだ。

「愛しい人、眠いだろ?帰ろう。
眠くないなら、鍛錬しようか?今日の分はまだだからな。」
「うん、鍛錬しよう。眠くないから。」
「わかった。ワイプ、お前は?」
「そうですね、わたしも付き合いましょうかね。
では、資産院の鍛練場に行きましょうか?」


何も聞かないほうがいいのだろう。

鍛練場に行って、汗を流してすっきりしよう。
それで、ラーメンを作ってみようか。

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