いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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335:実力主義

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待ってる間、領主の馬車の馬たちと御者君、カップ君とおしゃべり。
ツイミさんが乗っていた馬も馬車を引くようだ。

「モウさん、うちの馬たちの言ってることわかるんですか!!」
「いや、この子たちがわたしのいうことを理解してくれるから、なんとなくね。
ああ、ブラッシングもう少しやわらかい毛のブラシでしてくれって。」
「そんなことまで!ほ、ほかには?」
「・・・ん?ほんと?あー、え?いうの?」
「なんて?」
「先に言うけど、そういってるような気がするだけだからね?」
「ええ、わかってますよ!でも!なんと?」
「えっとね。
君の恋の相談にはできるだけ力になりたいが、かってに答えを出さないで。
私たちはいつもその答えと逆のことを進言している。君が失敗するのは、
私たちのせいではない。どちらだと聞け。どちらかに頷くようにするからと。
・・・とのことです。」
「・・・・なんてこった。」
「あははははは!!」
「え?うそなの?」
「いやいや、そういってるよ?ほんと、ほんと。イヤー、若いなーって。」
「!頑張ってるんです!」
「そうだよ!頑張って!!雨の日が近いからね!」
「そうです!今年は雨の日が長いと予報が出ていますから。
去年は初日に来てくれた子がいたんです。なのに、すぐに出ていったんです。
なにがダメだったんだろう?」
「え?そういうこともあるの?」
「ありますよ!モウさんはそのすごく仲の良いご様子だからそういうのは
なかったんでしょうけど、女性が選ぶんですよ、男を。
雨の日が終わるまで、数人廻るのが主流ですよ?最近は!」
「え?すごい!最近は雨の日前に決まてしまうのが流行りって聞いたよ?
地域で違うんだね。
じゃ、その、女の子がよ?こいつだめだって次の男に行ったときに
すでに、別の子といちゃこらしてるってこともありうるの?」
「モウ、下品だそ?」
「うー、ごめん。いや、そのどうなの?」
「それはないですよ。男は1人の女の子を、しかし、女の子は数人の男を選びますから。」
「うーわー。じゃ、来てもらってもそこで安心しちゃダメなんだ。
雨の日が終わるまで、ずっと一緒にいられるようにしないといけないってこと?」
「?そうですよ?モウさんもそうだったでしょ?」
「いや、わたしたちは雨の日前に決まってたし、それ関係なくずっと一緒?」
「はー、いいなー、雨の日前か。
それあこがれます。ご主人?なにか助言ってもらえますか?」

気配を落とし、空気と化しているマティスに声を掛けるとは、
なかなかに鋭い子だな。

「その馬の言うとおりだ、勝手に答えをだすな、観察しろ。
わからないなら聞け、それぐらい察しろというのならば、
どこかに答えを出している。
目を見ろ、指先を見ろ、それでもわからなければ抱きしめろ。」
「!!!すごい!勉強になります!先生と呼んでいいですか!!」
「ぶはははははは!!!」
「愛しい人!なぜそこで笑う?」
「だって!ティスはすぐ抱きしめるじゃん!わかんないんだ!」
「違う!!あなたが抱きしめてほしいと考えているからだ!
もちろん私も抱きしめたい!」
「!!!なるほど。もう!ティス!照れるじゃん!」
「・・・頑張ろう。」


半分になり、師匠とツイミさんがでてきて、
領主組もぞろぞろと出てきた。
やっと出発だ。
管理者関係は一切出てこなかった。
師匠とどんな話をしたんだろうか?

ツイミさんの馬車の中に隠密君たちがいる。
領主の両隣にはきれい処。
息子さんはその後ろ。


(護衛というか、武官系のひとはいないの?)
(御者だろ?なかなかに強いな。
大会に出ていればいいところまで行くんではないか?)
(え?そうなの?わかんなかった。)
(お前もそれを警戒して話掛けたんではないのか?)
(いや、ホー姐がさ、
向こうの馬さんの話をちょっと聞いてやってっていうからさ)
(そうなのか。)
(強いって認識されているから任されてるんでしょ?
なんで大会に出さなかったの?)
(身分、家柄がよくないのだろう)
(あー、そういうのね。いやだねー。実力主義で行こうぜ!)
(ははは!そうなると貴族は総崩れだな、ああ、ルカリは努力しているな)


「待たせましたか?さ、行きましょうか?」

スーに師匠。ホーには荷物。一応キトロスを積んでいる風。
わたしたちは徒歩だ。

「師匠?ツイミさんにあのキトロス、
領主館にないですかって聞いてもらえますか?
もっと欲しいです。」

いま、スーを引いているのはわたしなので、
小声で師匠に頼んでみた。
さっきまで、スーを引きながらマティスが呼吸法を教えてもらっていたが、
あとは鍛錬のみ。ホーを引いているわたしと交代したのだ。

「ああ、あれね。話によると毎年南諸国から送ってくるそうですよ?
それで、いつも余らすそうです。最終的には馬の餌だそうで。」
「ええ、聞きました。尚更ほしいですね。」
「わかりました。彼はなかなかにやり手ですから。
あの2人と、それと御者と同じマトグラーサの村の出身らしいですよ。」
「へー。あの2人はかなり幼いですよね?成人前?」
「そうですね。14ぐらいでしょうか?御者は違いますよ。
成人しています。22ですかね。
彼、かなりできますね。」
「ああ、マティスもそういってました。大会に出てればいいところまで行くと。」
「でしょうね。彼と話をしてましたね?その話?」
「いえ、わたしは彼の強さはわかりませんでした。
いま、そういう目で見ればわかりますね。」
「ははは、警戒されなくてよかったんでは?
あなたは、そういう目でみてもわかりませんよ?
手合わせをしない限りわからないでしょうね。」
「護衛のときは気を纏います。」
「ええ、そうなさい。で?彼とは?」
「ああ、恋愛相談?雨の日のびっくり男女事情を教えてもらいました。」
「ほう?」

コットワッツで聞いた話と、火をつけられたこと、
さっき聞いた数件回るという話、そんなことをはなした。


「・・・わたしもその関係はうといと言われても反論できませんが、
雨の日前に契を躱すのは昔からありましたよ?
しかし、それがコットワッツでは流行っている?
で、ナソニールでは雨の日に数件回る?というか、回れる?」


師匠はちょっと考え込んでしまったようだ。
ジェネレーションギャップという奴だな。






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