いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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336:耳

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月が昇る前に領主館に到着。
ツイミさんが声高に言う。

「本日は領主館でのもてなしをお受けください。
州の管理者とは違うということをわかっていただかないと、
そうでございますね?ストーム様?」
「そうだな。」
「そうですか?ありがたくお受けします。
ああ、弟子はここでいったん分かれますので、わたしだけになりますが。」

領主のがっかりした顔が印象的だ。
なんだ、夜のお手紙をくれるつもりだったのか?

(ワイプ?なぜだ?)
(モウが次に着るドレスがないから断れと)
(そうなのか?同じドレスはダメなのか?)
(野郎ばっかりならいいけど、領主さんの両脇にいた女性陣になにいわれるか)
(なにをいうのだ?)
(同じドレスを着るなんてあんたの旦那は甲斐性なしかと)
(そうなるのか?)
(いや、嫌味の一種だよ?あいさつの一種だといってもいいけど
答えるのも面倒でしょ?)
(新しいものを作りに行こう)
(うん、また今度ね。それよりラーメン鉢取りに行こう。もう出来てるよ)
師匠、ラーメン鉢取りに行って、気配を消して戻ってきます)
(ゆっくりしていてもいいですよ?)
(いえ、コットワッツに戻るまでは弟子としてお傍に)
(余程心配かけたんですね。では、そうしてください)
(ワイプ、これはつなげておく)
(ああ、あなたもですか。ええ、わかりました)
(キトロスは確保してくださいね)
(はいはい)


スーとホーにまた戻ると伝え、
馬車から離れたところで姿を現したルビス君達に声を掛ける。

「ルビス君!チュラル君!」
「モウさん!あれ?領主館に泊まるのではないのですか?」
「ううん、ここでいったん師匠とお別れ。また、月が沈めば合流するけどね。
これ、良かったら食べて。御者のカップ君にもね。
あまり日持ちしないからみんなで食べてね。」
「えー!カプ兄にも?」
「ん?兄弟なの?」
「そう、俺たち兄弟なんだ。」
「そうなんだ!」

(ほんとだ、耳の形おんなじだもの)
(耳?)

「おい!ルビ!ラル!何してる!」
「「うげ!」」
「モウさん!こいつらがなにか失礼をしましたか?」
「ううん。リンゴの話になってね、そのリンゴを作った甘味があるから
お裾分け。カップ君も嫌いじゃなければもらって。」
「・・・お前たち、いつどこでそんな話ができたんだ?」
「ああ、ツイミ殿も知ってることだから。」
「え?ツイミ様も?」
「そうそう。たくさんあるから、ツイミ殿にもね。じゃ、また明日ね。」

アップルパイをホールで渡す。
リンゴ飴もおまけだ。



なにも入っていない背負子を背負って、師匠と別れ、街に向かう。
付いてきてる気配はないので、角を曲がり、気配を消した。

(愛しい人?耳の形とは?)
(ああ、兄弟で同じ形になるんだよ。違うから兄弟じゃないってことじゃないよ?
同じなら兄弟に間違いがないってこと。)
(では、あの御者も間違いなく兄弟だ。ツイミもな。)
(え?そうなんだ。兄弟っていっても同じ父親、同じ母親だよ?歳離れすぎてない?)
(そうか、たまたまか)
(兄弟じゃなくても血のつながりがあるかもね。おなじ村出身っていうからさ。)
(そういうものか。)
(うん。じゃ、ラーメン鉢取りに行こう。ん、だっこ)
(ああ、おいで)


この頃の移動はマティス任せだ。
さりげなく抱きしめて、匂いを満喫しているのはもちろん内緒だ。








「飴ちゃんのはいっていたビンあったでしょ?」
「?ああ、あれな。それが?」
「あれって陶器で、フタは木だったけど、あれでガラスってないかな?」
「ないだろうな。グラスがやっと庶民、それでもゼムぐらいの
金持が買えるくらいだ。」
「そうか。じゃ、陶器で、こう密封性のいいものないかな?」
「みっぷう?密封ね。知らんな。」
「そうかー。でも、お酒とかで封をしてるのあるよね?」
「ああ、あるな、気が抜けないようにな。」
「そうそう、その原理を瓶に付けてほしいんだけど。」
「あるんじゃないか?」
「あったら買ってもいい?ジャムを入れたりしたい。
この前買った小分け用はやっぱりフタがないからね、使いづらい。」
「ああ、かまわない。それも見に行こう。」



人気のないところに移動して、
器屋さんに移動しながら話をしている。
お酒の瓶、これも陶器だが、この口に金物で
フタを取り付けている。ゴムではなく、なにかを挟んでいた。
きっとカンランだ。
あれをゴムにしたら密封性が高まるだろうな。



「すいませーん!できてますかー?」

表に誰もいないので声をあげると
奥からご主人が出てきた。

「おう!もちろんだ。
なかなかうまくできたと思うぜ?それに小物類もな。」

きちんと包んでくれている1つを開けて見せてくれた。

「おお!ラーメン鉢そのもの!それで軽い!すごい!ご主人天才!!」
「おいおい!なんだよ!知ってるよ、俺は天才なんだよ!がははははは!」


なかなかにノリのいいご主人だ。

「ありがとうございます。
それで、こういうのないですか?」

マティスに説明したように説明したが、そういうものはないと言われた。

「なんでそんなのがいるんだ?」
「食品を保存するのに便利でしょ?」
「カンランでフタをすればいい。口をひもで縛ればいいぞ?
砂漠ではそうしないのか?」
「砂漠ではカンランは手に入らないからな、フタは木だ。
それでも密封性があるかと言われればないな。」
「密封性ね。カンランもないな。」
「でしょ?カビらない?」
「あははは!そうなる前に食べないからだよ!」
「おお!真理ですな。それでも、もうちょっと長持ちさせたいからね。
密封させればちょっとは長持ちするらしいの。
お酒だって、長持ちするでしょ?」
「ああ、そういわれればそうだな。ま、酒は寝かせてるっていうのが正しいが。
余計なものが入らないようにしてるってことらしい。
なるほどな。つくろうか?金はもらうが?」
「ほんと?じゃ、この大きさとこの大きさ、んー、このおおきいのも。
それをそれぞれ、3つ。」
「わかった。そうだな、今、窯は開いてるし、手も空いてるから
今から作ろう。明日、半分には出来てるだろう。
悪いが、成功しようが、失敗しようが先に20リングだ。」
「ええ。おねがいします。」
「・・・金持ちだな?」
「ちょっと収入がありまして、思っていたことにばーっと使おうかと。」
「いいね!その考え方!ま、天才の俺が作るんだ失敗はないから安心しろ!」
「もちろん!だから頼むんですよ!」
「おうよ!」


そんな感じで引き受けてもらった。

「愛しい人?20リング、かなり高いぞ?」
「え?そう?今から1日あの人の時間と技術を買うんだよ?
うまくいったら儲けものだ。ここでケチっても仕方がない。
もう少し予算があればできたのにっていうことは極力なくしたい。
それに、いまはお金持ちなんだから。
ラーゼムのようにならないように、それだけ気を付ければいいよ。」
「ああ、そうだな。」
「けどさ、ほんとは、その瓶ね、ガラスで作りたいの。
あのご主人に頼んでもいいけど、きっと、セサミン案件だ。
出来上がったものをガラスで作りたいって聞いてみる。」
「そうだな。よく気付いたな。」
「でしょ?さ、師匠のところに帰ろう。」
「ああ、おいで。」
「うん。」




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