いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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353:手紙

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師匠の家の台所に移動すると、
卵と乳がどんと置いてあった。
使ってもいい、むしろ使えと言ことなのだろう。
オムライスがいいな。
朝から重いか?いや、わたしが食べたいから大丈夫だ。

「ご飯を炒めて、それを卵で包むの。
とりあえず、ごはんを炊こうか。おにぎりも作っとこうね。
海苔もあるし、竹、ブラスの葉もあるしね、包めるよ。
冷めてからじゃないとべちゃってなるから気をつけないとね。」



王都で仕入れたいたお米を炊く。
炊けたら、チキンライスとおにぎりだ。
最初の1つは失敗したが、あとはさすがマティスだ。
失敗作は師匠の分になるようだ。
おやつには餡バターパン。これは大量に。
キトロスのジュースにモモも入れる。懐かしのネクターだ。

野菜が全体的に少ないので、
塩漬けの肉、ベーコンとカンランのコールスロー風サラダ。
ポテトサラダも。


やはり、先にお風呂に入ってきたのだろう、師匠がやって来た。

「オハヨウ。モウ、マティス君。
本当にここに住んでもらえないでしょうかね?」
「嫌だ。」
「はー、残念です。」
「カップ君たちは?」
「起きてますよ、モウと会うので、風呂に入るようですね。
普段は面倒だと入らないんですが。」
「そうなの?シャワーを増やしておきましょうか?
さっと浴びるだけで気持ちがいいから。」
「そうですか?お願いします。できれば、地下の鍛練場にも。」
「わかりました。」
「・・・甘い。」
「うふふふ。想像してみ?
野郎どものシャワーの順番待ちなんか見たくないでしょ?」
「・・・仕方がないな。」

ツイミさんは院の近くで部屋を借りているそうで、
夜はこっちで一緒に食べているそうだ。
当番制でご飯を作っているが、師匠はエントリーしていない。

「モウ!オハヨウ。」
「モウちゃん、オハヨウ。」

ガイライとニックさんもやってくる。

「おはようございます。朝ごはん、できてますよ。」

8人の朝食。
師匠はお代りをしていた。カップ君たちもだ。
マティスに作り方を聞いている。
聞いてできるというのが素晴らしい。


「ガイライ、これ、いいでしょ?
ブラスでつくったの。半分のときのご飯ね。
おにぎりと、餡バターパン。おかずは卵焼きと唐揚げ、ポテトサラダね。
おにぎりに海苔、黒いの巻いてるけど、おいしいから。
でも、歯につくからね。食べた後は口をゆすぐか、歯磨きね。
ツイミさん、ルカリさんとオート君の分もあるよ。」

竹かごで作ったお弁当箱を布でくるんである。

「モウ様!ありがとうございます。」
「うん。一杯食べてね。ん?ルビス君?ちょっと背のびた?」
「そうでしょ!チーズと乳と、肉、いっぱい食べてます!」
「そうか、それはいいね。野菜もとらないとね。ちょっと急激に伸びると、
体、痛くなってない?」
「・・・。」
「ああ、いいのよ、成長痛だから。
骨の成長に筋肉の成長が追い付かないからだったかな?あれ?逆?
どっちにせよ、お風呂にゆっくりつかって、痛いところを揉んどけばいい。
ん?痛いの黙ってた?ダメだよ?体の不調はすぐに言わないと。
怒られるとか、そういうことはないから。
それにお仕事中になにかあったら命とりでしょ?すぐに師匠にね?」
「・・・はい。」
「なるほど、だから動きが鈍かったんですね。」
「師匠も気付いたのなら聞かないと。」
「聞いてもわかりませんでしたよ?」
「そうか、一気に大人になるから経験ないんだ。
他も知らないか。ま、そんときはわたしにね。わかんないことが大半だけど。」
「ええ、そうしましょう。ルビス、悪かったですね。」
「いえ!その、双子だから、なんか違うのかなって。
・・・チュラルに相談しても心配かけるだけだから。」
「あははは!違うよ?言わないほうが心配する。そうでしょ?
チュラル君?」
「はい。でも、言いたくないのかと、聞いたらよけい悩むんじゃないかって。
やっぱり、双子だから、悪いことが起きてるんじゃないかって。
怖くて聞けなかった。」
「んー、ほんと、双子なんてたくさんいるのよ。
双子だからっていう弊害はないよ?
カップ君は?気付いてたでしょ?」
「はい。ツイ兄には話しています。
やっぱり、双子だからなのかなって。
もう少し様子をみてからワイプ様には相談をと。」
「うん。もう少しじゃなくて、すぐにね。
もちろん、カップ君の恋愛相談もすぐだよ?」
「な!!いまは仕事を頑張っていますから!」


とりあえず、クーちゃんの質問コーナーは月が昇ってから。
各自お仕事に向かう。
20人のこともそのあとだ。
わたしたちは呪いの森に置きっぱなしな家の改造をすることにした。






「おお、のめり込んでますね。」


移動はできた。が、木と一体化している。
小枝ちゃんと木のおうちのようだ。
わたしはちいさなおうちを買ってもらった記憶がある。
あのおもちゃたちはどこにいったんだろうか?

なかなかに良い具合なので、このままにすることにした。
お茶はできるのだ。問題ない。
こたつを出せば、壁と屋根の一部がなくてもいいだろう。


次はサボテンの森の防風林を完成させないといけない。
テムローサに教えてもらった、水に強い木、イペーロを植えることにした。
こっそり採取はしてきたのだ。
「ブラスは?」
「いや、あれはダメだ。たぶんものすごく繁殖が強い。
手入れも大変。植えちゃダメな植物だと思う。
イーペロも成長が速くてすぐに大きくなるって。
そうなったら伐採しよう。お風呂に使えるから。
それを一番外に、そこから、逆さの木を植えよう。もちろんサボテンもね。
ゴムは商品になったからね。ここでは植えない。
あとは渓谷の木も植えるよ。
呪いの森の植物群はダメだけどね。
あとはダメもとで、キトロスとテオブロマもね。
最初は砂漠石のドームの中で。緑石も使おう。」
「・・・愛しい人?また、いろいろ急いでないか?」
「ん?そうかな?でも、することいっぱいだよ?」
「たくさんあるが、なにも今することはないだろ?
来年でも、再来年でもいい。」
「・・・うん。そうだね。ほんとだ。
でも、食の祭りのうまうま籠にはもう一品欲しいし、
メイガもカエルも茸も筍も。これは見逃せない。
もちろん、チョコもだ。」
「ああ、それらは待ってくれないからな。
うまうま籠、のりともう一つか。
サボテンは入っている?5番茶も?それとおいしい水。
リンゴの代わりだな?カンランではなく?」
「カンランもはいってるよ。できれば甘い系がいいな。」
「キトロスはだめか。手に入らない。」
「んー、そういう果実がいいな。そういえば柿は?」
「あれは新年ごろだな。木苺は時期が過ぎた。ブドウは?」
「すでに人が食べるいるものは避けたい。だからウリもダメ。
なんかない?」
「・・・コットワッツとデジナの国境に渓谷がある。
その渓谷がコットワッツのゴミを処理しているところだ。
そこではなく、砂漠に面しているところに、
少しだけ甘い実がなる。ほんとうに少しだけな。
かなり背の高い木になるんだ。
石をあて、房ごと落ちてきたら一度は食べる。
デイのウリのようなもんだな。しかし、そこまで甘くもないから、
誰もとらないし、鳥も食べない。
雨にあたって、そのまま地面に落ちる。」
「ほう?それ、地面におちたら、くさい?」
「甘い匂いはする。だから虫が寄ってくる。」
「虫。いま、ぶるっときた。
んー、ぎんなんではないな。なんだろう?」
「ダクルと呼ばれている。」
「今の時期?」
「そうだな。今頃だな。赤い実だからテンは喜ぶかもしれんな。」
「良し、取りに行こう!」
「・・・・。」
「ん?ダメ?」
「話しておいてなんだが、そこはゴミ処理場に近い。
匂うかもしれんぞ?」
「それはないでしょ?セサミンはちゃんとしてるって言ってたよ?」
「ああ、そうだな。では行こうか。」


そこはまさに南国だった。
「でかい!まさにヤシの木!!」

何十メートルもあろうかというヤシの木だ。
ナツメヤシ?乾燥させたら甘くなるんだっけ?
真っ赤な、テニスボールぐらいの実。でかい!!

一つ取ってもらう。
見た目はリンゴ?いや、プラム?
皮はつるつるで、かじると、しゃくりと食べれる。
はずれのリンゴのようだ。

「甘くないね。でも、落ちたら甘い匂い?
それを食べたことは?」
「ないだろう。その時はどろどろなんだ。雨にあたってな。」
「そうか。これ、とっても大丈夫?」
「いいだろう?ここも砂漠だ。誰の領土でもない。
端だったんで変動でも残ったんだな。
セサミナに聞こうか?」
「うん。セサミンはマティス大好きっ子だからマティスが聞いて?」
「私が聞いても、すぐに姉さんは?だぞ。」
「あははははは!そうだね。」


(セサミナ?今いいか?)
(兄さん!ええ、いいですよ。今イリアスですか?姉さんは?)
(もちろんいるよ~。もうコットワッツに戻ってるの。今は砂漠の端?)
(端?)
(デジナ近くの砂漠だ。)
(そうなんですか?わたしも近くですよ?ゴミ処理場の視察です)
(お!お仕事だね?一人なの?)
(ええ、移動で来れますから)
(問題はないか?)
(ええ、3人のうち交代で、毎日見に来てます)
(そうか)
(移動ができてよかったですよ)
(ん?毎日確認するもんなの?)
(ああ、湿地の匂い、ひどかったでしょ?こちらも問題ないかと気になりまして)
(さすがだね!よしよし、姉ちゃんがご褒美をあげようね。こっちこれる?)
(ダクルの木だ)
(わかりました)

「姉さん!」
「お疲れ様~。ルグかだれかにこっちに寄るって連絡しとこうか?
心配するでしょ?」
「大丈夫です。手紙を飛ばしました。
わたしの机の上に移動させればいいわけですから。」
「お!そうか!賢いね!」
「ありがとうございます。
しかし、いろいろ移動している姉さんには届けられません。」
「うふふ。そうか。扉君の家もしょっちゅう帰ってるわけではないからね。
できるだけどこにいるかは事前に報告するからね。」
「はい。それで、どうしてここに?」
「これだ、ダクルの実。とってもいいか?」
「これですか?姉さん、これは甘くないですよ?」
「うん。さっき食べた。でも、嫌いじゃないよ。あっさりして。
このまま雨に打たれてしまうんだったら、とってもいいかな?」
「ええ、それはかまわないですよ。砂漠は誰の領土でもないです。
砂漠石は近隣国での取り決めで取れる範囲が決まっています。
ま、その範囲が実質領土ですけどね。」
「そうか。じゃ、砂に金銀があるってわかるともめるね。」
「ええ、おそらく。」
「けど、取ったら終りだからね。砂漠石みたいに増えないと思うよ。」
「そうでしょうね。砂漠石のように範囲を取り決めることになると思います。
砂漠石と同じ範囲とはいかないでしょう。」
「そうなると、サボテンの森は外れるかもしれないね。」
「いえ、そこは必ず範囲に入れます。」
「さすが、頼れる領主様だ。じゃ、感謝の気持ちを込めてお昼にしよう。
何食べたい?」
[うれしいです!なんでもいいです!
あ、ラーメンはいいです。いま、厨房係の味見に毎日付き合っているので。」
「そうか。じゃ、なにがいいかな?オムライス?」
「同じものでいいのか?」
「うん。わたしはカレーをかける。」
「なんですか?それ?おいしそうだというのはわかります。」
「うふふふ。おいしいよ?じゃ、3つね。わたしはカレーソースを作るよ。」


カレーソースと、かわいい旗も作った。似顔絵付き。
セサミンは、もちろんよろこんだ。
かわいいなぁ。








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