いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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380:仮病

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イリアスの砂浜で程よく乾燥した竹、ブラスを回収。
そこで背負子を改造。
骨組みはブラスでいいのだが、覆いは厚手の綿地?
トックスさんに相談しに行ったら、
ポットの皮を譲ってくれた。
牛革のもっとやわらかいもの。


「糸の色な、どうやら、食べたものの色が出るということだ。」
「よくわかりましたね。クーちゃんの言ってることが。」
「いや、指さしながらの話だ。向こうがこっちの話が分かるからだろうさ。
で、砂漠石と同じ効果は、砂漠石を食べるか、
砂漠石を取ってる動物、植物がいるってことだな。おそらくな。」
「それ、実験するんですか?」
「それよ。あの、クーか?あれ一匹だけでしてもらうのは負担だろう?」
「んー、マトグラーサの砂漠にいるんですよね、クーちゃんの仲間が。
たぶん、仕事として依頼すれば糸は作ってもらえますよ?」
「仕事か。それ、砂漠に行かないとだめなのか?」
「クーちゃんに相談ですね。何匹かこっちに来てもらうのもいいけど、
それは本人達の考えだと。」
「なるほどな。良し、ちょっと準備をしておこう。
また相談にのってくれ。」
「もちろん。この皮、ありがとうございます。」
「いや、その折りたためる背負子ってのいい考えだ。売れるぞ?」
「この大きさが持てるのは一部ですよ。
もっと、小さいものがいいと思いますよ?」
「そうだな。よしよし、作ってみるかな。」
「じゃ、ブラス、何本かおいていきますね。」
「おうよ!ありがとな。」

この会話をしながら横で、トックスさんとマティスは
白いドレスの衣裳を相談していた。
会話をしながら、マティスのスケッチに指摘、手直しをしていく。
マルチタスクができる人だ。


お礼はもちろん、ワサビだ。
お刺身は収納庫に入れている。

「うまいな!!」

魚好きにはワサビは必須だ。
半分の時に、刺身の漬け丼を用意。
お醤油にワサビを解いて掛けるといい。
いくら丼もうまうまだ。
緑茶もお気に入りなのだ。

トックスさんちは和風がよく似合う。
だって、半纏着てるもの。




そこから、気合でおこたから脱出。
ルポイドにドルガナ側から入り、コーヒー豆を大量買い。
ナルーザ側の検問でまた、鳥肉を仕入れてくれと言われる。

「どうする?」
「買って戻って来るのは問題ないが、時間が合わないな。
前回は月が沈んですぐに仕入れ、月が昇る少し前にここに入っただろ?
同じようにしないと怪しまれるぞ?」
「そうか。鳥肉もその時間の方が鮮度がいいしね。
ナルーザに入ってもいいけど、ちょっと勉強不足だから、それはまた今度。
本音は関わりたくない。お蚕様ちょっと怖い。」
「ではそれまで、鍛錬だな。」
「そうなるね。うん。
師匠とニックさんをコテンパンに打ちのめすべく頑張ろう!」
「いいな!そうだ!こてんぱん?いい言葉だ!」
「コテンパンが?けちょんけちょんってのもあるよ?」
「それだ!ワイプはこてんぱんのけちょんけちょんだ!!」


かわいい。
3歳児のようだ。言わないが。



フレシアに入り、検問ではやはり5リング取られた。
やり取りも面倒なので、そのまま。
前回の布屋さん行き、ルポイドで売れまくったと報告。


「そうだろうね。え?3リングで?それは安いね。
損をしたんじゃないのかい?」
「いえ、わたしたちは砂漠の民です。
その日のうちにルポイドに入りましたから。」
「それはすごい!けど、この前ほとんど買ってくれたからね、
今あるのは安い生地ばかりだよ?」
「あのふわふわのものは?」
「ああ、あれかい?あれはナルーザから入ってくるんだ。綿だね。
あまり使い道はないんだが。あれならたくさんあるよ。
なんだったら、ほかの店でも集めて来ようか?
あれが売れたっていったら羨ましがられたからね。
絹糸を仕入れるときに、どうしても一緒に売りつけられるのさ。
たまにあんたたちみたいに珍しがって買うものがいるくらいだ。」
「もったいないですね。綿入れとかに使えるのに。」
「こっちはそこまで寒くないからね。
しかも寒い地方に行けばもっと安価で手に入るだろ?
売れないんだよ。
でも、あんたたちなら、寒い地方でも売れるかもしれないね。
運送費があまりかからないんだから。」
「そうですね。そこがわたしたちの強みですよ!
じゃ、あるだけ売ってもらえますか?
きっと北のイリアスなんかで売れると思うんです。」
「イリアス!そんな遠くに行くのかい?それは売れるよ!
他の綿より、ここの綿は温かいと言われてるからね。
じゃ、ちょっとここでお待ち。すぐに集めてくるよ。」


おかみさんは隣近所に声を掛けていく。
縄張りなんかないんだろうな。

「綿だって。」
「そうだな。綿より高いことは確かだ。」
「そうなるね。あの話しぶりじゃ、あれが何か知らないか、
知らないふりをしているか、マティス分かる?」
「知らない、知ろうとしないということだろう。」
「なるほど。触らぬ神に祟りなしって奴だ。」
「?」
「物事に関係しなければ、
面倒なことに巻き込まれることはないってことだね。
ここの人たちの信条ともいう感じだけどもね。
うん、いいことだと思う。」
「しかし、気になるのだろう?」
「なるけどね。そこ止まりで。
いいとこどりはするけどね。」

「お待たせ!前回の金額でいいんだね?」
「もちろんです!えっと、どれくらい?」
「ああ、外に出ておくれ。」


綿の山でした。
1m×1mで3銅貨。300円。安いの高いの?わからん。
交渉はおかみさんがしてくれている。
お蚕様のお布施込み。

それを5軒、200枚ほど持ってきてくれている。
5×200×3=30リング
おまけで端切れももらう。これがうれしい。
ゴムを使った髪飾りを作っておこう。
またお礼にと1リング渡そうとしたが、十分もらっているといわれた。いいひとだ。
周りに何と言って集めたかは知らない方がいいだろう。
商売、商売。

マティスの背負子を広げて、パンパン。入りきれないものは移動です。

「押し込めば結構入るもんだね。」

すいません、入ってません。

「ではまた、寄らせてもらいます。」
「ああ、待ってるよ。」
「あ!鳥肉ってやっぱり月が沈んでからの仕入れの方がいいんでしょうか?」
「鳥も仕入れるのかい?」
「ええ、前回月が沈んですぐに市場に。」
「ああ、だったら、いまから開く市場があるよ。
食べるのは月が昇ってからだからね。仕込みがない店はそこでかってるよ。」

なるほど!夜向けの市場なんだ。
予定変更。
場所を教えてもらって、そこで大量購入だ。
交渉も問題ない。
捌くのは大変なので、最初から捌きているものを買う。
もちろん、首無し内蔵無し、桑の葉巻きも。

「内臓も買うのかい?これは葉で巻いても日持ちしないぞ?」
「まぁ、いろいろと。これ、今さばいたものですよね?」
「そうだ。鮮度が売りだからな。今日か、明日には食べてくれよ?」
「わかりました。」


ここでも砂漠の民は大食いだと定着してしまった。
事実だけども!!

場所を変え、支障がない程度に買っていく。
あとは野菜類も。


月が昇る前に砂漠に出れた。

「5リングはお蚕様に進呈した。
あとは?綿と鳥の内臓?は!なんだ?ろくなもの買ってないな。
ああ、いいよ。お蚕様も何も言わないさ。通って良し!」

ありがとう、お蚕さま!


検問を出た途端にすべて収納。
これで鮮度は保たれる。
ルポイドのナルーザ側の検問近くまで移動し、そこで今日は泊る。
もちろん、鍛錬もした。重さはこの行商中、常に5倍なのだ。

槍術も基本の型を流し、手合わせ、
その後、棒術、拳、剣と同じようにこなしていく。
実戦経験が格段に少ないわたしに合わせての鍛錬だ。

「でもさ、相手がマティスだけだったら偏るよね?」
「そうだな。盗賊でも来ればいいが、
そこらの盗賊よりも愛しい人のほうが
すでに強いからな。」
「そうかな?あ!山脈の方でいるって言ってたよね?
そこで頑張ろう。」
「そうなるな。では、飯にしようか。いい具合に焼けているはずだ。」
「お風呂は?」
「体を拭くぐらいだな。向こうから4人ほどやってくる。
駱駝馬が4頭。行商か?」
「残念、盗賊ではないのか。」
「いや、それはわからんな。そんなつもりはなくても、
相手が弱いと見抜くと盗賊になる輩かもしれんしな。」
「怖いな、それ。」
「お前が湿地の2人に注意したように出来心というのもあるしな。」
「それね。んー、極悪非道ならいいのにね。」
「ふは!それを望むか?」
「いえいえ、滅相もない。」


その馬車は、俊足馬と同じぐらいの速さで駆け抜けていった。
もう、月が昇って半分は過ぎている。

「急ぎの馬車?」
「トリヘビの連絡では届かない内容か?荷物か?
私たちも肉を運ぶならあれぐらいしないといけないな。」
「いや、冷蔵、冷凍馬車が導入されるから、
あそこまで急ぎはないんじゃない?
冷凍ものが嫌っていううのがあるかもしれないけどね。
そうなると次に来るのは窯だよ、窯!」
「あれは砂漠石をふんだんに使っている。一般には無理だろう。」
「そうか。でも、樹石を使えばある程度できるよ。」
[そうなるな。・・・・戻ってきた。1頭一人だ。どうする?」
「砂漠の民は砂漠を旅するもの。結構強い。
師匠が鍛錬のワイプだしね。」
「・・・・・。」
「いや、これは結構使えるよ?剣のマティスでもいいけど、結局は
師匠の弟子だよ?」


「おい!お前たち!どこのものだ?」

(なんで上からなんだろうね?)
(実際上に立つ人間なんだろう)

「お前こそなんだ?盗賊か?」

マティスが槍を構え、少しの殺気を放っていく。
おお、ビビるね。

「待て!怪しいものではない!」
「怪しいものが自分が怪しいというものか!」

(ぶほっ!)
(ふふふん。この勝負私の勝ちだな)
(むー、次はわたしが勝つよ)


噴き出してはダメダメゲームなのだ。


「失礼した。私はルポイド国のものだ。
急ぎで帰還しているが、あとすこしというところで、
馬車が壊れてしまった。
それは立て直すことができたんだが、
馬が一頭けがをした。殺処分するほどでもなんだが、
連れていくにも置いていくわけにもいかない。
すまないが、お前たち、馬を一頭運んでくれぬか?」
「あはははは!これはおかしなことを言う。
お前が盗賊ではなくて、逆に我らが盗賊とするなら何とする?」
「はは!悪いがそれは見抜けるのだ。
ルポイドに行く途中であろう?荷は鳥肉だろ?」

なんでわかるんだろ?匂い?


「そのうまそうに焼けている肉を見ればわかるさ。
館に来てもらえれば、10リング渡そう。
前金で5リングだ。どうだ?」


(どう思う?)
(いいんじゃない?)

「わかった。その仕事引き受けよう。
我らは砂漠の民、ティスと、妻のモウだ。
砂漠を廻っての行商をしている。」
「そうか!それは助かった。
館で、トマイザーを訪ねてくれ。怪我した馬はもう少し先にいる。
あれが落ちついたら連れてきてくれ。では、すまないが急ぐのでな!」

ドドドドっと去っていく。
一緒にいた駱駝馬は頼んますと言っていた。

「えらくかわいがっているんだね。」
「どうだろうな。馬は怪我すればそのまま殺処分が相場だ。
そこまでしなくてももう走れないのなら種馬にするつもりかもしれん。」
「なるほど。」


怪我をしているんなら急いでいかねばと、
焼き立てのお肉ー、を我慢して、走って向かう。

魚の皮を引いた上に寝かされていた。
血が出ているわけではない。


「大丈夫?立てる?
トマイザーさんに頼まれたんだ。館に連れていってって。
立てない?骨が折れてる感じ?わかんないか。」
「折れてはいないだろう。折れていれば連れてこいとは言わないな。
筋が伸びたか、ひねったか。しばらくすれば治るものだろうな。
冷やしの薬草を充てているからな。」
「へー。そういうのまったくもって持ってないね。」
「そうだな。どこかで仕入れるか。使うことはないが、
持っていないと怪しまれるな。」
「うん。怪しいものだ、それこそ。」
「あははは!そうなるな。」
「でも痛そうだね。んー、治せるけど、どうしようか?
演技できる?痛いふり。え?仮病?さぼるときにするの?
悪いやっちゃなー。
これ治るのどれくらい?3日?じゃ、そんな感じで。
名前は?アズレ?」


『砂漠の疾風、ルポイドのアズレ!
その痛みは消えてなくなり、再び風となれ』


疾風ってなんやねん。
いや、ちょっとかっこいいからね。


「どう?どう?あ、大丈夫?歩いて、走って?
で、演技!うーわー。プロですね。」

ものすごく痛々しそうに足を引きずってる。


「・・・。」
「マティス?」
「戦場でこういう馬をよく見る。あれは演技か?」

アズレが違う違うと否定する。

「あはははは!内緒内緒ね。
もう少し軽い感じがいいかも。なんか食べる?うまうま籠あるよ?
お馬さんのおすすめご飯。わたしたちも食べるから。」


やっとご飯です。
そのままカンランに包んでいたので少し冷めたけど、
逆にしっとりしてうまうま。
冷たいケンタッキーがおいしい感じ。
パンにはさんで食べました。


「あの人たちはどこから入るのかな?やっぱりナルーザ側の検問?」
「そうだろうな。少し寝てからでも遅くはない。
今日はこのままここで寝よう。」
「うん。あー、お風呂はいるのおかしいよね?」
「そうなるな。」
「汗かいたのに!今日は別々に寝よう、ね?」
「ふふふふ。ダメだ。」
「あ、匂いだけ飛ばす?」
「それができればジットカーフ帝都で苦労はしないだろう。」
「いや、根性でやればできるかも?」
「しなくていい。おいで?」
「あ!簡易のお風呂に入りましたって!
あれを見せてもいい。」

そうだよ。お風呂有るもの。

「今はいい。おいで?」
「・・・はい。」

交渉決裂。
わたしも思いっきり嗅いでやる。





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