いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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383:元首

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ルポイドはコットワッツの2倍くらいの大きさ。
領はおかず、1元首の元様々なことを行っている。
商売をさせてもらった街、スメーカーに元首が住まう館がある。
軍もあり、農業、流通、南方討伐。
小さな国でまとまりよく運営している。
砂漠石を産出しなくてもだ。
香木が高値で取引されている。


「どれぐらいお世話になったの?」
「私は南方討伐には2回参加した。
3回目の直前に砂漠の民になったがな。
その2回ともガイライとニックとこの家に呼ばれた。
今思えば、セサミナの根回しがあったのだろうな。
ここの奥方に可愛がられたよ。
あのときでかなりの高齢だ。いまも現役というのが恐ろしいな。
しかも見た目が変わらない。チャクボと同じぐらいかもしれんな。」
「おお、すごいね。あれか?香木の御利益?」
「わからんな。匂いは?さすがにわからん。
コクならわかるかもしれんがな。」

扉の前に立つとテルマさんが開けてくれた。

「モウ!戻ったか!!」

知人の孫設定が始まっている。

「おじい様!長く連絡できなくてごめんなさい。
しかし、良き伴侶を得てその挨拶に参りました。
これ以上にない良き夫なのです。お褒めください。」
「なんと!そうか!ん?なんと!
そなたはマティスではないか!」
「え!おじい様、ご存じなのですか?
砂漠の民として生きると決めたときに出会ったのです。
ああ、きっとおばあ様の導きがあったのですね。」
「そうかそうか。さ、中に。」
「先に、おばあ様のところに。
御隠れになったことは噂で。すぐに駆け付けることが出来なて
申し訳ありません。」
「いや、こうして戻ったんだ。ウリナも喜ぶ。
こっちだ。」
「・・・いつ練習したんだ?」
「はー、マティス。もう、ダメダメ。」
「そうだぞ?マティス。融通が利かんからな、お前は。」
「・・・。」
「さ、中に。」
「いえ、お墓参りを先に。」
「そうか?それはうれしいな。」


裏に廻り、小さな石に挨拶をした。
一時だが、知人の孫、
かわいがられていたという設定になるということを許してもらう。

植物園にある、小さな花を摘んで供えた。
薬草なのだが、咲いている花はこれだけだったから。

「花か?どうして?」
「え?お花供えないの?あ、ダメなこと?」
「いや、うれしいよ。殺風景だったが、ああ、きれいだな。
ありがとう、モウ。」
「ええ、おじい様。よろこんでもらえたらうれしいです。」

中に入ると、男やもめとは言えないほど
きれいにしている。子供さん、それこそお孫さんが出入りしているのかな?


「あのこれ、コットワッツで流行っている甘味です。
クッキーっていうそうです。」

プリンはさすがに出せない。

「そうか!コットワッツといえばぷりんとかいうのが流行りらしいな?
やわらかいものだとか?食べたことあるか?」
「あるぞ。作ろうか?乳と卵、樹脂蜜か砂糖があればいい。」
「つくれるのか?しかし、砂糖はないな、樹脂蜜も。テオブロマはあるが。」
「それを煮詰めて甘味としましょうか?」

3人で料理教室。
どちらかというと大工仕事。ブラスで絞り機を作っている。


「では、今の元首が銃で?」
「そうだ。撃ったのはルカリアの人間だ。故意ではない。
それはわかる。銃弾が新しくなったと売り込みに来たんだ。
その時にな。石使いを呼んで、弾を抜こうにもないんだ。
そこから、医術に明るいもの、石使い、あらゆるものを呼び寄せた。
今回、ルカリアの方でな、かなりの石使いを手配したと。
連れてくるのが筋だろう?迎えに来いと来た。
どうやらルカリアではルポイドと取引があるとマトグラーサに示したい様だな。
お前たちが来いと押問答する時間もないので、迎えにいった。
ああ、そいつらも赤い塊と名乗っていたぞ?」
「ぶっ!失礼。」
「赤い塊は異国の石使い。その者たちがな、そう名乗った。」
「マティス、廃業だよ。これからは青いアヒルとして生きていこう。」
「青いアヒルか?イリアスの広場で皆を昏倒させたらしいな。
死人は出なかったが、皆がアヒルを見るたびに痙攣をおこす呪いが掛けられたらしい。」
「・・・マティス。恐怖の無職だよ?明日からどうやって稼いでいこうか?」
「なんだ?護衛の赤い塊と、石使いは別だろう?
青いアヒルは大道芸人らしいぞ?」
「モウ、砂漠の民の行商だ。大丈夫だ。」
「そうだね。うん。そうだよ。」
「流行りなのか?赤いとか青いとか?アヒルの意味が分からんがな。」
「・・・それで、ルカリアの石使いは?」
「牢屋だ。」
「え?治せなかったから?」
「いや、入国前に事故を装って、逃げようとしたらしい。
それで、アズレが怪我をしたんだ。
殺処分の怪我で、あげく、治せませんとなっていたら、
それこそ殺処分だな、その石使いが。」
「石使いでもなかったんですか?」
「いや、石使いだ。さて、ここまで話した。わかるか?」
「・・・砂漠の民、ティスとモウ。ティスはマティス。
ニバーセルがコットワッツ領国、領主セサミナの実兄。
そして剣のマティスだ。その伴侶と、砂漠の民、モウ。
赤い塊のモウと呼ばれる。
異国の石使いという話もあると?」
「そうだ。そういう話が、お前たちが門前で騒いだ後にわかった。
そうなのか?」
「・・・石使いはわたしの曾祖父にあたる方です。
わたしは武の方に才があると
一族を出ました。赤い塊と呼ばれる一族です。ご存じですか?」
「知らぬな。」
「そうですか。放浪の一族なので。
ただ、高原の民と同じような装束を身に付けます。
そこから別れたのかもしれないと、最近思っております。」
「・・・うまいな。」
「・・・ええ。故郷では100の言い訳ができる女と呼ばれておりました。」
「あははははは!素晴らしい!マティス!良い嫁をもらったな。」
「そうだろう?俺の嫁は世界一なのだ。」
「そうか、そうか。馬を止めたのは?」
「目の前で大声をあげれば馬もひるみますよ。」
「それでは軍馬の意味がないんだがな。それはいいな。
では、その曾祖父、その御仁を呼ぶことはできるのか?」
「呼んで、その撃たれた元首殿の治療を?
治らなければ牢屋行きというのは困りますが?」
「それはないだろう。正式にこちらが依頼するんだ。
そのようなことはない。」
「しかし、そのような話、聞いていません。
わたしの師匠、ああ、わたしたちの師匠はニバーセル資産院のワイプです。
こちらに来ることは報告しています。しかし、石使いとして疑われぬように
気を付けろとなにもいわなかった。軍部ガイライもです。
秘密裏に集め、秘密裏に処分している?」
「・・・ワイプか。また厄介な。」
「テルマ。私の師匠というのは便宜上だ。間違えるな。」
「・・・お前は。はー。で、これをどうする?」
「こう、実を割って、皮をですね、ここに突っ込む。
で、こう、廻すと、絞れて、その液体が、下に。
舐めてください。」
「?甘いな!!しかもいい香りだ!!」
「ええ。と、こうすれば砂糖ができます。
これ、やってると時間がかかるんで、手持ちの砂糖使いますね。」
「・・・これは何だったんだ?」
「おじい様、だれかに突っ込まれたときに困るでしょ?
根回しは必要ですよ?」
「わははははは!それもそうだ。」
「では、作ろうか。すぐにできるから。」
「じゃ、わたしはもう少しこれを改良しようかな?
それで、コーヒーを入れよう。
そこで、報酬の件も含めて話しましょう?」
「!ありがとう。」




「うまいな!この赤いのも!プニカ?腹下しでは?
中のか。はー、知らないことばかりだ。
それにこのコーヒーのうまいこと!!」


テルマさんは満足です。
テオブロマの絞り汁をコーヒーに入れたら、
チョコの香り。おいしい!!


「それで?もうじき月が昇る。
その前に話せ。」



銃の購入は武の大会前から打診があった。
しかし、軽量になってもいかせん高い。
それに精度も悪い。その時は見送ったのだ。
それからしばらくして、新しい銃弾ができたと。
確かに格段に良くなった。
撃ってみますかと渡されたときに銃口を向けたまま差し出したのだ。
足に当った。
すぐさま、そのものを拘束、治療に当ったが、弾がない。
血が常ににじんでくる。
わかるか?館からは血の匂いがする。
最初はそこからだけだったのに、今では体中から血がにじみ出ている。
エデト様は最初は笑っていたのだ。
これは安くしてもらわねば、割が合わんとな。
ルカリア側も必至だ。そんなことが世間に知れたら
銃どころではない。ニバーセルにも知られるわけにはいかないからな。
徹底的に箝口令を引いた。
怪我をしたということはわざと知らせている。
医者を探しているということもな。
出入りが激しいからな。隠せば隠すほどどこからか真実が漏れるものだ。
怪我をしている、医者を探しているということは知っていても
ルカリアの人間の銃で撃たれ、石使いもお手上げなどと言えぬからな。
しかし、ドルガナ公がやって来る。
怪我をする前にも来たのにだ。
くだらない挨拶だ。
トマイザー様ではまだ駄目だ。
エデト様でないと、どんな難癖をつけてくるかわからん。
ルカリアからくる赤い塊と呼ばれる石使いが最後の賭けだったんだ。


「今までの石使いは?ほんとに始末してるの?」
「それはさすがに。牢屋に入ってもらっている。
ルカリアの人間も。ライガーと言ってたな。
武の大会の優勝者だ。知っているか?」
「あちゃー。それ、根本的にダメですよ?
ルカリアの領主はライガーの伯父にあたります。
ライガーは邪魔ものですよ、次期領主と呼ばれているので。
自分の息子を次に据えたいはずだ。
ライガーを助けることはしない。だから、使える石使いも派遣しない。
これ、わたしでも知ってる話ですよ?
ルカリアとの連絡は誰が?」
「・・・・トマイザーとマレインだ。」
「うーわー、だね。息子2人、おとっつあん助ける気ないよ?
んー、テルマ殿?あなたも?」
「そう思われるか?モウ殿?」
「どうだろうね?国の面子なんてもんがあって、
大々的に助けられないってのはわからんでもないけどね。
が、消極的だね。」
「・・・今だ。今がダメなのだ。
気を失わず、
ドルガナ公が雨の日を過ぎてからくるのなら問題ない!!」
「それは訳は聞かないよ?けど、この経緯は師匠に報告する。
それと、英雄ライガー殿は丁重にね。いまさら遅いかな?」
「いや、丁重だ。ワイプにはそうだな、報告してくれ。
その方がいい。」
「ん?知って師匠の負担が増えるなら、黙ってますけど?」
「・・・弟子なのか?どちらが師かわからんな。
後で知ることになるより、速いほうがいいだろう。
ライガーがルカリアにいないことはすでに知るところだろう。」


りんりん

腰の袋が光る。

「少し外すぞ。」


誰だろ?

「どうした?」
「いえ、気にしないでください。
で?うちのじいちゃんはおそらく、体の中にある銃弾を取り除けます。
今、昏睡状態?それも治すんですか?
意識が戻ればいいい?
どこまで?寿命ならなにやっても無駄ですけど?」
「・・・エデト様は170歳だ。いつお亡くなりになってもおかしくない。
あの2人は100を超えてからの息子たちだ。
意識が戻り、雨の日が終わり次第、退いてもらう。
そこまで持たせてくれ。」
「・・・それ、ご本人は承諾しているの?」
「もちろんだ。
・・・撃たれたのも計画の一端だ。ルカリアの人間には悪いがな。
しかし、意識がなくなるとは思わなかった!!」
「いや、そんなお手軽に撃たれちゃダメでしょ?」
「・・・お手軽?そうだな、まさしく。情けないな。」
「うん。ちょっとね。」

「愛しい人、ワイプだ。気を付けろと。
遅いと言ってやったがな!!」

マティスの満面の笑み。


(師匠?)
(よかった。マティス君があなたにつないでくれないんですよ!)
(ああ、大丈夫です。横にいますから)
(それで?あなたは無事?)
(もちろん。いま、テオブロマいりのコーヒー飲んでます)
(それはいいですね。ああ、安心しましたよ)
(ふふふ、さすが師匠ですね。報告する前にこの話を掴むとは)
(いえ、遅すぎたぐらいです。
ライガー本人より、ライガーに向かう動きを重視しすぎました)
(丁重にもてなしているそうですよ、テルマ殿曰く)
(いるんですね?)
(ええ、一緒にプリン作りました)
(なにやってるんですか。それで、エデト殿は?)
(今から見ます。雨の日まで持たせてくれればいいと)
(後継者問題?)
(ああ、なるほど。報酬はいかほどもらえばいいですか?)
(1万で。しかし、モウ、次からも同じような依頼が殺到しますよ?)
(わたしの曾祖父にね。
それに、撃たれてすぐなら、鉛玉ではなく、砂と鉄を移動させればいい。
今回は時間が立ちすぎるので
他の石使いが治せるどうかわかりませんが、
そこは、元首の強靭な力が働いたと)
(砂!そうでした!)
(可愛そうですが、動物での実験、進めてください)
(ええ、わかりました)
(あ!師匠?トウミギって知ってます?)
(馬の飼料ですね。あ!おいしいんですか?)
(ええ、楽しみにしててください)
(はー、うれしい知らせです。
では、モウ、うまく稼ぎなさい。マティス君によろしく)
(ええ、わかりました)




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



誰だ?セサミナ?

ガイライ?

ちっ、ワイプか?

りん


(なんだ?ワイプ?)
(よかった!今どこですか?ルポイドなら気を付けて!)
(遅い!ルポイドで、テルマの家だ。石使いとして仕事をする)
(待って!雇われた石使いが行方不明扱いです。
テルマ殿といえど信用できないどころか
主導かもしれない!!)
(そうだろうな。ライガーもいるらしいぞ?)
(そこに?ああ、詳しくはあとで聞きます。
モウは無事なんですね?どうして声が聞こえないんですか?)
(いまはテルマと話をしている)
(テルマ殿は信用できるんですか?)
(私たちに害はない)
(後で必ず報告を)
(・・・テルマまでにもお前の弟子だと知られてしまった)
(いや、それは事実なんですから、お願いしますよ?)
(10リングだ)
(はいはい。わかりました)


うるさい奴だ。

「愛しい人、ワイプだ。気を付けろと。
遅いと言ってやったがな!!」


愛しい人が下を向いた。
ワイプと話をしているな?



「マティス?モウ殿も?」
「気にするな。」
「ワイプがどうしたんだ?」
「連絡が、トリヘビのような連絡が来たんだ。」
「!そうか。それで気を付けろと?」
「あなたが主導かもしれないと言っているぞ?」
「さすがだな。半分はそうだ。
銃で撃たれる。先行きに不安が出る。
雨の日に、エデト様の子が生まれる。それに王位を譲る。
後見人はわしだ。」
「・・・そこまで長生きできるのか?」
「わしの血筋は長寿だ。問題ない。
それに生まれてくる子はわしのひ孫になる。
孫娘の子だ。」
「自分の血筋を元首に据えるためか?」
「・・・そうだ。いけないことか?」
「いや、私たちには関係がないからな。
それを現、元首も認めているんだろう?」
「そうだ。あの2人がエデト様の子ならこんなことはしない。」
「違うのか?」
「・・・。」
「まぁいいさ。もうじき月が昇るな。
案内してくれ。」
「いまはその服装でいいが、晩餐会は礼服だ。
わしのものとドレスは孫娘の物を届ける。」
「いや、準備はしている。誰も来ない部屋だけ用意してくれ。
さきに元首の様子を見るのだろ?
愛しい人、報酬は?」
「ん?ああ、1万リングで。」
「わかった。すぐに用意しよう。」




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