いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
382 / 869

382:一族郎党

しおりを挟む
さくっとそのまま広場を抜けようとしたら
後ろから大声をあげられた。

「待て!」

だけど、タンスが擁壁となって向こうからは見えないし、
こっちも気にならない。


「愛しい人、あれは先ほどの門番だ。」
「そうなの?甲冑つけてるからわかんないよ。
甲冑あるんだね。あ!そういえばティスの軍服姿見てない!」
「ガイライに調達はしてもらっているぞ?」
「見たい!見たい!!」

制服2割増し!嘘だ!うなぎ昇り!天井知らず!
ウナギ食べたい。
いや、トウモロコシが手に入ったんだ、そこから何ができるか考えないと。

2人の頭の中は別のことに夢中になっている。
後ろがうるさいけど。

とうとう前に回ってきた。


「お前たち!!聞いてないのか!」
「「・・・。」」

「怖い話をしようか?」
「え?ここで?」
「そうそう。」

うんしょとタンスを下す。
まわりの人たちも何事かと集まってきている。
鎧男はじっと待ってくれている。
人の話を聞けるのはいいことだよ?

パンと手を叩き話し始めた。

「山奥に母親と2人暮らしの男がいたんだ。
その年の流行り病でね、母親が死んだんだ。
男は嘆き悲しんだ。
ああ、もっと、なにかできたんじゃないかって。
でも、それはどんなことをしてきたとしてもそう思ってしまう。
親孝行な男だったんだよ。
嘆き悲しんでも、男は生きている。
ご飯を食べて、働いて、生きていこうって誓ったんだ。
それから1年、母親がなくなった日だ。
男は母親を偲びながら飯を食べていた。
するとね、
トントンって扉を叩く音が聞こえる。
こんな遅くに誰が?っておもって扉に近づく男。

こんな声も聞こえる。

”お前、お前、開けておくれ”

母さん!!
そんな!母さんは死んだんだ!
どうして!化けものになってしまったのか!どうして!

ここの地方では死んだ人が1年で戻ってくるって話があったんだ。
でも、亡き人に一目会いたさに扉を開けてはいけない。
それは亡き人に非ず、化け物なんだ。

”お前、お前、開けておくれ”
”どうした?
お前の好きな甘味を買って両手がふさがっているんだ、開けておくれ”

ああ、母さん!!

”だめだ、開けれないよ。ここは母さんのいるところではないんだ”
”帰っておくれ、母さん!!”


男は扉に縋りついて嘆願した。
化け物を家に入れれば自分も化け物になる。
それはいい。
だが、あの優しい母さんが化け物のまま
この世をさまようなんて許されない!!


”お前、お前、なにをいってる?ここはわたしの家だ。
どうして?開けておくれ!”

ドンドンと扉を叩く音が、まるで体当たりしているような音に代わる。

母さん、母さん!!


”タロウ!!はやく開けておくれ!!”

男は息をのみとうとう扉を開けた!

ガラ!!

”おばちゃーん、たろうっちの家は向こうだろう?
酒飲んでるのか?しかたねーなー。送っていくよ”
”あれ、カンベか?あらいやだ!
なんだ?泣いていたの?ダメだよ?
おっかさんも心配してでてきてしまうよ?
あんたのぶんもあるからいっしょにたべようね。”
”いつもあんがと。さ、それもつよ”


ということで、カンベは悲しいこともあったけど、
親切なご近所さんもいて、たのしく生きていきましたとさ。



一人芝居、名前はちゃんと呼びましょう、でした。」

一瞬の静寂。
そこからの笑い。皆が、鼻をずるずる言わす。

いやはや、拍手喝さい。
泣きながら、笑って、おひねりを投げてくれる。

2人で回収。すごい!5リングはあるよ!!

「ありがとうございます!ありがとうございます!」


「お前!お前!ふざけるのもいい加減にしろ!!」

いや、怒ったね。そりゃ怒るよ。
ちょっと泣いた?
でもさ。

「・・・お前、お前って誰のこと言ってんだ?
分からなければ先に自分が名乗るのが筋だろう?
それをやんわり伝えるために芝居までしてやったのに、
わかんないのか?」
「い、愛しい人?そのためにか?」

マティスは号泣だよ。
涙腺弱いな、もう!
鼻水、かみなさい。
カーゼのハンカチを出す。

「ほれ、ティス。チーンって。」
「!!っ。」
「すっきりした?」
「したが、恥ずかしい。」
「うふふふ。そう?じゃ、帰ろう?お風呂入りたいんよ。」
「そうだな。」


「貴様ら!!」

お前が貴様になっても同じなんだが。
そもそも馬から下りてから話せ。
あれだ、コムの村長の息子と同じだ。

ああ、槍なんか構えるから。
応戦せざる得ない。

「モウ?行くか?」
「そうだね。騎馬戦は初めてだけど。
これ、あれだよね?

馬よ!とまれ!!」


馬が前足をあげて止る。
転げ落ちるわな。

頑張る鎧男。
こっちに来るけど。

構えるか。




「はははは!マレイン、控えろ。
マティス、久しぶりだな。」
「ご無沙汰しております。テルマ殿。
ご健勝のことお慶び申し上げます。」
「はん、年寄扱いしてくれるな。で?そちらは?紹介してくれるか?」
「ええ。我が唯一の伴侶、モウです。
モウ、南方討伐時にここルポイド軍の隊長だったテルマ殿だ。」
「マティス、だったではない、今もだ。」
「それは、ああ、なるほど。モウ、挨拶を。」
「初めまして、テルマ様。マティスの妻、モウと申します。」

馬を下りた老紳士が挨拶する。
ずっと一緒にいたのだ。おひねりを遠くから1リング投げてくれた人だ。
なるほどといったのは部下の醜態を見て。
後継者不足だね。


「モウ殿は異国の方か?」
「ええ、そうです。あなた方がいう南方ではないのですが。」

この広場では黒髪が半分はいる。
髪色で判断したのではないな?この人も黒髪だ。半分は白髪だが。
自分の髪を一房もって見てみる。

「ああ、死者が蘇るというのは異国の話によくあるんだ。」
「そうでしたか。こちらでは嫌忌なことなのでしょうか?」
「そんなことはない。
先ほどの話、わしも泣きそうだったぞ?最後は笑ったがな。」
「お楽しみいただければ幸いです。御多分な祝儀もありがとうございます。」
「いや、少ないぐらいだろう。
しかし、マティスが嫁を貰っているとはな。話はこちらにも来ている。
まさかな、と思たんだが。なるほど。」

怖いな、その情報網。
どんな話しで聞いているんだろう?

マティスの顔見る。
名探偵はすぐに気づくのだ。

「テルマ殿?それはどのような話で?」
「ん?ニバーセルの会合で領主セサミナ殿と和解したこと?
ああ、その前に手配書も廻っていたな。
あとは武の大会での活躍。赤い塊という護衛だとか。
伴侶を得たことだな。」
「モウのことは?」
「砂漠の民で石使いだと聞いたぞ?んー、あとは
金に、が、厳しく、お、よく食べると。」

金にがめつく、大喰らいって言おうとした!!

「マティス、もうだめだ。わたしは隠居するよ。
もう、俗世とはおさらばだ。」
「それはいいな。とにかく、帰ろう?」
「いやいや、待ってくれ。領主館に来てほしいのは本当なんだ。」
「なぜ?」
「トマイザー様がな、礼をしたいと。アズレのこともある。
門でのやり取りは聞いたのでな。マレインが対応を間違った件も
謝りたいと。来てくれぬか?」


「結構だ。報酬はもらったし、謝罪も受け取った。
テルマ殿、いや、テルマが息災だとわかっただけで十分だ。
ここには用はない。」
「そうだな、わしも元気な顔を見れてよかったよ。また寄ってくれ。
今度はわしのところにな。モウ殿?あはははは、噂なぞ気にするな?
所詮噂だ。」
「テルマ、それは違う。事実だ。」

フォロー無しかよ!!

「そうだけど!事実だけども!!」
「あはははは!よく食べることはいいことだぞ?」
「ありがとうございます。テルマ様。」
「では、いずれまた。」

「無礼者どもめが!どうしても館に来てもらうぞ!」
「控えろ!マレイン。お前の方が無礼だぞ?」
「どこがですか!現コットワッツ領主の兄だとしてもだ!
テルマ殿もなにを遠慮しているんだ!」

「彼は?」
「ルポイド元首エデト様の子息、トマイザー様の弟だな。
我が軍の副隊長だ。」
「うーわー。あ、失礼。」
「あははは。いいさ、誰もがそう思っている。
遠慮なぞしていない。筋が通ってる。これ以上引き留めようがない。
力づくでなぞ恥さらしなことは言うなよ?
うちの筆頭でも命を掛けねばならん。
それで、五分五分だ。」
「そうなの?マティス?」
「そうだな。あの2人だろ?世の中は広いということだ。」
「そうか。頑張ろうね。まずは師匠とガイライだね、けちょんけちょんは。」
「ガイライか!元気か?あれは、うむ、少し疎くなったな。いろいろと。」
「次回の遠征時に会うだろう。ニックも戻っているぞ?」
「ああ、その疎くなったからニックが戻ったと聞いているが?」
「ははは。会えばわかる。」
「そうか。いい話なんだな。それはいいな。」
「テルマ殿!!」
「あきらめろ。」
「!・・・。
そこな、2人、今宵の晩餐会に招待する。月が昇って半分からだ。
お前たちは月が昇り始めたら、館に来られよ。断れば、不敬罪として
一族郎党にもその罪は及ぶぞ!!」


そういうと、パカラと馬に乗って帰っていきました。
月が昇る頃って、そのころにはイリアスでモモ拾いしているよ?


「不敬罪って、一族郎党だって。なに?コットワッツとやりたいの?」
「そういうことだな。一度戻ってセサミナと作戦会議だ。
コーヒーとテオブロマ、トウミギが自前になるぞ?」
「やった!!セサミン喜ぶね!!」
「待て!頼むから!!セサミナ殿は喜ぶのか?
いつからそんな好戦的になったんだ?
本当に待ってくれ。頼む!!」


ご老体の泣きの頼みで、恐怖の晩餐会出席することになった。

「そんな余裕があるのか?」
「・・・ないな。わかるか?
ないからこそ開かねばならん。今宵、ドルガナ公が来る。」
「私の立場はどうする?コットワッツの領主の兄だが、
実際は砂漠の民だぞ?コットワッツになんの関係もないんだ。」
「わかっているさ。
コットワッツでも、ニバーセルでもややこしくなるだけだ。
砂漠の民、ああ、わしの知人の孫でどうだ?モウ殿ことだ。
わしも出るからな。婿をとって報告に来たと。」
「おじい様?」
「いいな!とにかくしたくもあるし、その荷物も、うむ、すごいな。
わしの家に行こう。お前も来たことがあるだろう?いまは一人だ。
妻は大分前になくなった。」
「良くしていただいたんだ。墓にも参らせてくれ。」
「それはあれも喜ぶな。では行こう。」

待って!今度はこっちが言いたい!!

「ああ、テルマ。わたしたちは一度砂漠のテントに戻る。
それから伺うので先に待っててくれ。」
「そうか?では、できるだけ急いでな?場所はわかるな?すまない。」

馬に乗りさっそうと帰っていく。
大変だ!

「マティス!お風呂!!お手入れ!!
ドレスは?赤?青?ピンクは勘弁!!」
「緑だな。わたしは軍服を着よう。」
「キャー素敵!!ではでは、急がねば!!」


一人芝居を見てた人たちも、
テルマさんがさっと手を払い、遠くから伺っていただけだ。
話のやり取りは聞こえていない。



「テルマ様が出てきて驚いたよ。どうした?
なにか言われたのか?」
「いや、あの芝居の話だ。お褒め頂いたよ。
あの鎧の男ことも謝罪された。なんなんだろうな?」
「マレイン様な。頭が悪い、力もない。
だがいい人だよ。さっきの話に出てくるような親思いなんだ。
あれ、泣いたよ?最後は笑ったけどな。ぶっ。
ああ、エデト様が怪我したんだ。
いや、詳しくは知らないんだが、怪我したことは皆知っている。
いろんなところから医者が来ている。
だから気が立ってるんだろ。」
「そうか。そういうこともあるのだろうな。ではな。」
「ああ、また来てくれ!
3回目の許可書があれば年間の許可書も買えるからな!」




見えないところまで移動。
そこから扉君の家に戻って、お風呂。
超特急での準備。
砂漠の民の服に着替えて、テルマさんの家に移動した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...