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411:大失敗の巻き
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幸せな疲労感がある。
呪いの森で分けてもらったものを2人で半分にして飲んだ。
ほんの一口。
すごい効き目だ。
これから、金もうけをするためには仕方がない。
まずは、器屋さんに。
「すいませーん!できてますかー!!」
奥さんが、おっとりしていたあの奥さんが戦場から帰ってきた。
「軍曹!!無事か!!」
思わずそう言って駆け寄ったぐらい。
マティスはすかさず台所にに入り、何かを作り始めている。
おなかに優しいリゾット系かな?
「ああ、できました。100個。
でもでも!!」
「どうした軍曹!しっかりしろ!!」
「ゴム、ゴムが足りない!」
「あ!それは盲点だ。」
「どんな形がいいか、考えて、試作品を作ったらもう、足りないのです!!」
とりあえず、薄めた栄養剤をキトロスジュースに入れて、
すでに屍になってるご主人とお弟子さんたちにも飲ませる。
「はー、これおいしい。」
「よかった。南の果実の絞り汁ですよ。そこに樹脂蜜も入ってます。
ゴムのことはいいですよ。瓶は?50,50はできてるのね?
それで十分。ゴムは出来てるならそれをまねてこっちで作りますから。
さ、奥でうちのが作ってるものを食べてきてください。」
本格的なものご飯になっていた。
重くない?
おにぎりと、唐揚げ。揚げ物が多い。
メイガのスープもある。
フレンチトーストも出ている。
前後の記憶は飛んでいるようなので、
いつかわたしたちがいるかはわかっていない。
ストックしているもので大丈夫なものをさも今作りました的に出している。
がっつく皆さん。
その間に100個の検品。
ああ、いいね。透かし部分が楕円で上品だ。
ゴムは削り出したのだろう。口にキュッとはまる。
油の方も液だれはないようだ。
ゴムが付いていないものが20,20だ。十分。
これはこの形をそのままお願いで作ろう。
その中から、1本ずつ出し、化粧水をとオイルを詰める。
細くなっている首のところに絹のリボンを結ぶ。
竹かごにタオルを2枚、入れて、その2本も入れる。
うん、横にしても漏れないな。歯ブラシも入れよう。
蒸しタオルと歯ブラシの使い方もイラスト入りで入れる。
フタをしてまたリボン。
ちょっとしたギフトセットだ。
いくらになる?瓶で2リング、化粧水、油が1リング
タオルが1.6リング、歯ブラシが0.1、竹かごが、0.3としても
5リングか。瓶が安くならないとだめだな。
最初だから3倍以上は取ってる。今回は突貫だしね。
5リング設定だな。上着より高いのか。
買うか?買わないけどもらってうれしい系ね。うん。
「奥さん、お疲れ様です。
とても素敵なものでした。ありがとうございます。
あ、蒸しタオルと、オイルの使い方も体験しますか?
ここに、この椅子に横になってください。」
「え?え?」
改良したプカプカを使った椅子に横になってもらう。
「楽にしてくださいよ?」
顔をあったためている間に、ハンドマッサージも。
頑張ってゴムを削っていたんだろうな。
ナイフを握っていたところが赤くなってる。
少し治しておこう。
「ふすーーー。」
寝てしまったようだ。
オイルマッサージをして、もう一度、蒸しタオル。
拭き取り、化粧水もこっちですり込む。
「ご主人、ありがとうございました。
奥さん寝ちゃったんで、寝室に運んであげてください。
あ、その竹籠は奥さん渡してください。奥さんへの贈り物です。
こんな風にまとめて贈り物にしたらなんかいいかなって考えています。
頑張って売り込んできますね。
皆さんもありがとうございました。」
「いや、もう、こいつの気迫がすごかったんだ。
惚れ直したんだよ。さすがだって。頑張ったよ。あー、ほんとに寝てるな。
これを渡せばいいのか?いや、こっちこそありがとうよ。
しかし、ま、眠い。今日も店は休みだ。
おまえたちも食ったら寝ろよってもう寝てるのか。
旦那、うまいもんをありがとうよ。
もしかしたらまたうまいもんが食えるぞっていったからな。
助かったよ。
ほんとにうまかった。また、来てくれよ?
こいつもちゃんと礼がしたいはずだから。」
「ええ。また。」
挨拶も早々に出発だ。
ピクトの手前まで移動しないといけない。
きっと広場は店でいっぱいのはずだ。
急がないと!!
荷車を出してピクトの王都に走り込む。
並んでいる!わたしたちが最後尾か、仕方がないな。
「次!!」
皆目的は同じ。昨日稼いできた人相手の商売だ。
どこのだれかだけ報告。何を売るかは言わなくていい。
もったいないな。統計をとれば傾向が分かるのに。
広場の使用料は3日で20リング!高い!
できれば今日だけで売り切りたいが、仕方がない。
それと引き換えに、店を出す位置が書いた地図をもらった。
かなり奥だ。
いい場所は早い者勝ちだから、
前々日から待ってたんだな。
しかも、わたしたちは月が沈んで、
器屋に寄ってからだ。
あと、2、3のスペースしか開いていないようだ。
危ない、危ない。
が、わたしたちが最後の行商のようで、
受付をしめ切っていた。
開いているところ、選んでいいよと言ってくれたので、
かなり奥だが、裏手に広い空き地があるところを選んだ。
塩、化粧水、油、魚の皮、あとは干し肉、メイガ、
絹も売ってる。あ!コーヒーもだ。
コメ、小麦、野菜類もだ。
コットワッツの製品はないな。
ちょっとした料理も売ってるね。
なんだろ?お肉を焼いてるのかな?
じゃがいもも蒸かしてる?
砂漠石!砂漠石も売ってる!
「砂漠石も売ってるよ?露天で売ってもいいものなんだ。」
「コットワッツは指定の店だけだな。ゼムの店とかな。
相場より安いか?ああ、だが、少し小さい。ほら、まとめて使う道具も売っている。
そっちの方が本職だろうな。
しかし、どこの石だ?コットワッツではない。マトグラーサでもないはずだ。
間の砂漠はあの通りだしな。中央砂漠か?」
「あとで聞いてみよう。でも、装飾もついておしゃれだね。」
「ん?ああいうのが好みか?作ろうか?」
「ほんと!うれしいな!それを使ってます!的にできるから
便利だね、きっと!!」
魔法の杖だ!
「ああ、そうなるな。良し、2人で揃いの物を作ろう!」
「イエーイ!」
「その、いえいというのはなんだ?よろこんでいるときの掛け声だとはわかるが?」
「うん、それであってるよ?やったーとか?うれしいーとか?」
「いえーい?」
「そ、イエーイ!!ビンゴもうまいこと使ったよね?」
「ふふふ、そうか?」
ビンゴとか、イエーイとか、使い方あってるよね?
確かめようがないから仕方がない。
どうやら、3日間みなこの場所で寝泊まりするようだ。
トイレは各自。あとで、各自が処理場に捨てるみたい。
うん、そっちの方がいい。
食の祭りで使ったテントが使えるかな?
少し奥まってテントを建てる。
中は魚の皮を敷き、
真ん中におこたを出した。
プカプカのクッションも置く。
「愛しい人?入ったら出れなくなるぞ?」
「そ、そうか!危ないところだった!!」
おこたはダメだ。泣く泣く収納した。
ここでの販売のメインはコットワッツ製品と
トックスさんのコートだ。
クッションも売りたい。
竹細工もだ。
塩も、化粧水も皆が売っている。
目立つように青の絹地でトルソーに
ドレスを纏わせる。
これは3銀貨のドレス地。2リングだ。
ちょっと値上げした。
持っているものすべて並べる。
その横にダウンと魚のコート。
ちょっと絹地でスカーフぽっく。
ちょっと!奥さん!どうですか!!!
「ティス!ティス!これどう?」
「・・・そのペラペラの布を巻く意味は?」
「・・・。おしゃれ?」
「・・・すまない。わからない。あ!砂風を避けるのにいいな!」
「そうなるのか。そうだね。うん。」
必要美だ。ここで求められるのは。
だからトックスさんの意匠がいいのだ。
ポケットは必要、それがおしゃれ。
必要なものをおしゃれにする!これだね!
テントに戻って、絹地を各色を細長く切っていく。
端の処理はお願い級。共色で。
1束から20枚。
ほつれ止めの手間を入れて2銀貨。
赤、緑、モモ、黄色、青。
あんまり数が出るとだめかな?
5色5本ずつ。ピクト限定ということで。
端にモのタグだけ付けようか。
さっきのとりあえず端切れで巻いたものを外し、
ちゃんとした商品を巻く。
えーとなんだ?ミラノ巻き?
青のドレスもどきが目立って、お客がゾロゾロと来ている。
ただ見ているだけだ。
金額は値札をつけているから。
数字は大抵の人は読める。
ドレスかと思ってみるがよく見れば布だけだ。
で、2リング。
その横は?お?いい感じの上着。
だが、セットで12リング。バラだと、3と10。
首元が2銀貨。
んー横のは?タオル?ゴム?歯ブラシ?
これにも一応看板をつけている。
タオル 8銀貨 ゴム 1銀貨 歯ブラシ3本1銀貨。
クッションもあるよ。
ご自由にお座りくださいって書いてる。
ここで呼び込みすれば売れるだろう。
でもさ、思ったのよ。
ちょっと言霊入ってるのかも?と。
なので、今回は無し。
ここで、実験ですよ。
売れなかったら仕方がない。
廻りは呼び込みがすごい。
わたしたちは並んで椅子に座ってそれを見ている。
ダウンコートとスカーフは巻いて。
逆にこんな風に身構えられてる店があったら、
わたしなら遠慮する。
「呼び込みしたほうがいい?」
「いや、そんなことはないな。懐の金と、ほかの店での値段。
それを確かめるようだぞ?」
「あ、そんな話してる?」
「ああ。」
「ほかに出してるところないからね。戻ってきたら売れるかな?」
「ダメなら明日も出すか?」
「いや、3日分払ったけど、終わるまでいれば、
各地に帰る行商とかち合う。いち早く街道に出よう。」
「そうだな。向こうからあの5人組が来るな。
あのまま砂漠に入ったのだろうな。」
「10リングか。いい金額だよね。」
「ん?」
「それだけで一月生活できるわけでもない。
だからほかの仕事を持ってるはずだ。
で、1晩、ま、2日だよね。それで、10リング。
ぱーっとつかってもいい感覚を持っちゃうね。
で、この市場だ。行商からかなり高い設定で税をとる。
行商もここで稼げる。稼いだ金をここに落としてもいくだろう。
あの宿、もしかしたらそういうきれい処の宿だったかもしれないね。」
「ああ、そうか。そうかもしれないな。」
「ん?そういうとこ行ったことある?」
「話だけだ。娼婦ではない、一晩だけの相手の店だろ?」
「そういう人のことなんていうの?」
「遊女だな。」
「ああ、それは納得な翻訳だ。」
「いるのか?故郷にも?」
「もちろん。どの世界にもいて当たり前だ。」
「そうか。」
「その人たちを娼婦って言うのよ。だから驚いたの。」
「それは驚くな。娼婦に遊女と言ってはいけない。逆もだ。」
「あー、そうなんだ。聞いといてよかった。ちなみになんで?」
「だれでも遊女になれるわけではないからな。
よっぽどの器量よしということだ。
ただの娼婦に遊女のようだと言えば、遊女が怒るな。
娼婦はそれを相手にいわれれば、遠回しに断られているということだ。
遊女は娼婦と言われれば、
そこまで器量よしではないと言われたことになる。」
「なるほど。」
5人組がやってくる。
イリアスの次期継承者だとすれば、
10リングの稼ぎはたかが知れている。
しかし、楽しそうに買い物を楽しんでいるようだ。
「いらっしゃい!ピクトの砂漠で稼いできたんですね?
うらやましい!どうですか?
ダカルナでは商品がなかったんでお出しできませんでしたが、
夜を通して運んできましたよ!」
「・・・間の砂漠を馬無しで抜けたんだな?
何者だ?」
「ふふふ。それを聞いてどうします?
あまり無礼なことはしたくはないが、
人に名を聞く時は仕事以外はまず自分から名乗るものですよ?
ま、前回のお客さんだ。
砂漠の民の行商ですよ。
知りませんか?砂漠の民のひと駆けは赤馬のひと駆けだ。
そこが砂漠ならなおのこと。
さ、そんなことより、見てっておくれよ?
全部見てから戻って買おうなんてそんな暢気なことを言ってはいけないよ?
戻った時は売り切れだ!」
気分を悪くしたのか、何も言わず帰っていった。
あーあ。
「なんていえばよかったの?」
「わからんな。」
「ね。」
それから、可愛らしいお嬢さん2人組がやって来た。
「いらっしゃい。一通り見てきたのかい?
いいのはあった?うちと同じのはなかっただろ?
そりゃそうだ、新作だからね!
ささ、袖を通すだけでもいいよ?」
「・・・3日目まで数はあるの?」
「ん?どうして?」
「・・・3日目は安くなるから。今日は見るだけ。」
あー、なるほど!それか!
そりゃ、誰も買わないわ!
「ちょっと、お嬢ちゃんたち、ここにお座り。
いいからさ。脚がくたびれただろう?
ここに試しで座って、ちょっとおばちゃんとお話ししよう。
ティス!なんか、お茶と、んー、おかきかな?樹脂蜜の!」
彼女たちは最初は躊躇したが、
お茶と初めて見るお菓子を見ると、やっと座ってくれた。
「お茶、緑だけど、ジットカーフ、コムのお茶葉と一緒だから。
わたしが作ってみたんだけどね、うまく発酵できなくて。
これはこれでいいだろ?
このお菓子はおかき。米をつぶして油で揚げたものだ。
樹脂蜜を絡めている。ん?うまいか?ふふ。」
彼女たちは成人前。
砂漠石拾いには2か月前から参加している。
子供でもいいということになったそうだ。
それで、大人たちと同じように、
1日目は下調べ、2日目でなくなりそうなもの。
3日目で、安くなったものを買うという。
成人前で月10リング稼ぐというのはどうなんだろ?
あのお醤油少年が知ったら卒倒しそうだ。
「そうなんだ。値引き前提なんだね。
でも、1日しか出さない店もあるだろ?え?それはないの?
そうなんだ。わたしたち初めてでね。
今日しか出さないんだよ。で、まったく売れない。
みんな見に来てくれるんだよ?
遠くから。値段もさ、わかるようにしてね。
だから逆に買わないんだね。
大失敗の巻きだよ?ティス君。」
「まき?失敗は失敗だな。」
がっかりだね。明日も出すか?いや、なんかもうめんどい。
いかんな。
「あの、今日だけ?」
「そうなんよ。いろいろあってね。
どうだい?買っていかないか?最初のお客さんだ。
選び放題だよ?人気の青もある。」
「あれは?ドレスではないの?」
「あれは布だけだ。でもさ、
あんな風にひだを付けるだけで豪華になるだろ?
本場フレシアの絹だよ?自分で作るのが一番いいよ。
だって自分の体にピッタリなものができるからね!
ほら、肩からあててごらん。
なにも青が流行りだからって青にすることはないんだ。
青いドレスのなかにこの真っ赤があれば目立つだろ?
でもね、一番いいのは自分に似合う色だ。
さ、いまは誰もいない。買うも買わぬも、かまわないよ。
自分で確かめてごらん?
水鏡も置いてるよ?よく見えるはずだ。
さ、見ておいで。」
浅い桶の内部に黒く塗って、水を張っている。
この黒の塗料が分からなくて、炭と膠を混ぜたのだ。
「うわー!これわたし?」
「そうだよ?ほら、お揃いの髪飾りもあるよ?
だけど、ドレスって着るの?まだ、ちょっと早いんじゃないかな?
いま、その体にあったのを作っても、そのおっぱい。
おっと、声が大きいか?まだまだ大きくなるよ。」
ぼいんと、胸の前でふくらみをジェスチャーする。
「「キャーーー!!」」
「・・・愛しい人!」
あ、ダメなんだ。
「ごめんごめん。でもそうだろ?
それより、今から着ることのできるこのコートがおすすめだ。
3リングだよ?上のコートは10リング。
2つ買ってくれるなら12リングだ。
ん?ちょっと予算が足らないかな?」
「・・・取ってくる!あの、これ、置いてて!売らないで!」
「ほんとかい?いいよ、どの色?
このモモ色?お嬢ちゃんも?赤?いいね。わかったよ!
上のは白と茶だね。わかった。よく考えて戻っておいで。」
それから、月が沈んで半分。あと3時間で月が昇る。
休みなしの3日間のようだが、月が昇れば終わりにしよう。
「どうして?」
「え?値引き前提というのがね。
それを見越して高い値をつけてるんだろうけどね。
そこまでの駆け引きは苦手なのよ。
それに最初に買ってくれたお客さんに悪いでしょ?」
まだ、誰も買ってくれないが。
勝った翌日の値下げ札。
あのがっかり感は許せん。
それがすぐに売り切れるのなら、ああ、早く買ってよかったと、
自分を慰めれるが、セール最終日になっても売れ残っていたら悲しい。
しかし、その慰め方も知っている。
これを着こなすのはわたしだけだったのだと。
・・・うん、むなしいね。
しかし、呼び込みをしないとほんと売れないね。
お嬢さん2人が戻ってきた。
なにやらシュンとしている。ん?親御さんか?
それぞれの親なんだろうか?
ものすごく嫌な顔つきだ。
怒られたのかな?ありうるねー。
「お帰り!どうしたんだい?やっぱりやめとくかい?」
「あの・・・」
「ん?」
「ちょっと!あんたかい?初日に高いものを買わそうって奴は!!」
「どうしたの?」
「ちょっと!聞いてるのかい!!」
聞こえてるけど、聞いてないよ?
「母さん・・。」
「ん?わたしはお嬢ちゃんに聞いてるよ?
やっぱり高い買い物だ。やめとくかい?
それをわざわざ言いに来てくれたんだね。ありがとう。
そのままほっぽててもいいのに。えらいね。」
「なんだい!客を無視するのかい!!」
買ってくれるん客だが、
文句だけ言うのなら客以前の問題だ。
「ティス!撤収だ。」
「イエス!マム!」
これをしないと生活できないというものがないから
根性がないんだな、わたしには。
「え?本当に?」
「そうだよ?」
片付けは簡単。
荷車に乗せるだけだから。
茫然と見る2組の親子ににっこり愛想笑いだけして、店をたたんだ。
ちょうど客の流れがすくなったところで、
はい、ごめんなさいよと、荷車を押していく。
途中、砂漠石を売っている店の前で、
どこの産地だ?とマティスが聞いてくれた。
「ん?なんでそんなことを聞く?」
「いや、コットワッツは出ないだろ?
マトグラーサも爆裂石は出ないと聞いた。
ここの砂漠も小さすぎてダメだろ?
となるとどこだって話になったな。」
「へー、くわしいな。買ってくれるならいいぜ?」
「選んでもいい?」
色がついてるものが混じっているのだ。
「へ?どれも一緒だぞ?好きにどうぞ?」
色がついてる物をいくつか選ぶ。
ないのも少し。
いくらくらいだろう?
「これで。」
「なんだ、大きいのを選んだじゃないのか?
くずには変わらないけどな。」
・・・くずっていうな。
「全部。全部でいくら?」
ああ、自分がイラついてるのが分かる。
「へ?全部?これ?100だよ、100リングだ。」
男はニヤリと笑う。
「ティス?」
「かまわないよ?で?どこの産地なんだ?」
マティスがすごむ。
「ちゅ、中央だ。」
「中央のどっち?西?東?」
「西だよ!なんだよ!おい!買えよ!100で!」
50ずついれた袋、2つを台の上に出す。
袋をやることもない。
その袋にすべて入るぐらい。
「行こうか。」
「うん。おなかすいたね。何食べようか?」
「久しぶりに鍋はどうだ?」
「うん!」
マティスがやさしい顔で笑ってくれる。
ふふふ。無駄遣いしちゃったね。
それを許してくれるいい旦那様だ。
呪いの森で分けてもらったものを2人で半分にして飲んだ。
ほんの一口。
すごい効き目だ。
これから、金もうけをするためには仕方がない。
まずは、器屋さんに。
「すいませーん!できてますかー!!」
奥さんが、おっとりしていたあの奥さんが戦場から帰ってきた。
「軍曹!!無事か!!」
思わずそう言って駆け寄ったぐらい。
マティスはすかさず台所にに入り、何かを作り始めている。
おなかに優しいリゾット系かな?
「ああ、できました。100個。
でもでも!!」
「どうした軍曹!しっかりしろ!!」
「ゴム、ゴムが足りない!」
「あ!それは盲点だ。」
「どんな形がいいか、考えて、試作品を作ったらもう、足りないのです!!」
とりあえず、薄めた栄養剤をキトロスジュースに入れて、
すでに屍になってるご主人とお弟子さんたちにも飲ませる。
「はー、これおいしい。」
「よかった。南の果実の絞り汁ですよ。そこに樹脂蜜も入ってます。
ゴムのことはいいですよ。瓶は?50,50はできてるのね?
それで十分。ゴムは出来てるならそれをまねてこっちで作りますから。
さ、奥でうちのが作ってるものを食べてきてください。」
本格的なものご飯になっていた。
重くない?
おにぎりと、唐揚げ。揚げ物が多い。
メイガのスープもある。
フレンチトーストも出ている。
前後の記憶は飛んでいるようなので、
いつかわたしたちがいるかはわかっていない。
ストックしているもので大丈夫なものをさも今作りました的に出している。
がっつく皆さん。
その間に100個の検品。
ああ、いいね。透かし部分が楕円で上品だ。
ゴムは削り出したのだろう。口にキュッとはまる。
油の方も液だれはないようだ。
ゴムが付いていないものが20,20だ。十分。
これはこの形をそのままお願いで作ろう。
その中から、1本ずつ出し、化粧水をとオイルを詰める。
細くなっている首のところに絹のリボンを結ぶ。
竹かごにタオルを2枚、入れて、その2本も入れる。
うん、横にしても漏れないな。歯ブラシも入れよう。
蒸しタオルと歯ブラシの使い方もイラスト入りで入れる。
フタをしてまたリボン。
ちょっとしたギフトセットだ。
いくらになる?瓶で2リング、化粧水、油が1リング
タオルが1.6リング、歯ブラシが0.1、竹かごが、0.3としても
5リングか。瓶が安くならないとだめだな。
最初だから3倍以上は取ってる。今回は突貫だしね。
5リング設定だな。上着より高いのか。
買うか?買わないけどもらってうれしい系ね。うん。
「奥さん、お疲れ様です。
とても素敵なものでした。ありがとうございます。
あ、蒸しタオルと、オイルの使い方も体験しますか?
ここに、この椅子に横になってください。」
「え?え?」
改良したプカプカを使った椅子に横になってもらう。
「楽にしてくださいよ?」
顔をあったためている間に、ハンドマッサージも。
頑張ってゴムを削っていたんだろうな。
ナイフを握っていたところが赤くなってる。
少し治しておこう。
「ふすーーー。」
寝てしまったようだ。
オイルマッサージをして、もう一度、蒸しタオル。
拭き取り、化粧水もこっちですり込む。
「ご主人、ありがとうございました。
奥さん寝ちゃったんで、寝室に運んであげてください。
あ、その竹籠は奥さん渡してください。奥さんへの贈り物です。
こんな風にまとめて贈り物にしたらなんかいいかなって考えています。
頑張って売り込んできますね。
皆さんもありがとうございました。」
「いや、もう、こいつの気迫がすごかったんだ。
惚れ直したんだよ。さすがだって。頑張ったよ。あー、ほんとに寝てるな。
これを渡せばいいのか?いや、こっちこそありがとうよ。
しかし、ま、眠い。今日も店は休みだ。
おまえたちも食ったら寝ろよってもう寝てるのか。
旦那、うまいもんをありがとうよ。
もしかしたらまたうまいもんが食えるぞっていったからな。
助かったよ。
ほんとにうまかった。また、来てくれよ?
こいつもちゃんと礼がしたいはずだから。」
「ええ。また。」
挨拶も早々に出発だ。
ピクトの手前まで移動しないといけない。
きっと広場は店でいっぱいのはずだ。
急がないと!!
荷車を出してピクトの王都に走り込む。
並んでいる!わたしたちが最後尾か、仕方がないな。
「次!!」
皆目的は同じ。昨日稼いできた人相手の商売だ。
どこのだれかだけ報告。何を売るかは言わなくていい。
もったいないな。統計をとれば傾向が分かるのに。
広場の使用料は3日で20リング!高い!
できれば今日だけで売り切りたいが、仕方がない。
それと引き換えに、店を出す位置が書いた地図をもらった。
かなり奥だ。
いい場所は早い者勝ちだから、
前々日から待ってたんだな。
しかも、わたしたちは月が沈んで、
器屋に寄ってからだ。
あと、2、3のスペースしか開いていないようだ。
危ない、危ない。
が、わたしたちが最後の行商のようで、
受付をしめ切っていた。
開いているところ、選んでいいよと言ってくれたので、
かなり奥だが、裏手に広い空き地があるところを選んだ。
塩、化粧水、油、魚の皮、あとは干し肉、メイガ、
絹も売ってる。あ!コーヒーもだ。
コメ、小麦、野菜類もだ。
コットワッツの製品はないな。
ちょっとした料理も売ってるね。
なんだろ?お肉を焼いてるのかな?
じゃがいもも蒸かしてる?
砂漠石!砂漠石も売ってる!
「砂漠石も売ってるよ?露天で売ってもいいものなんだ。」
「コットワッツは指定の店だけだな。ゼムの店とかな。
相場より安いか?ああ、だが、少し小さい。ほら、まとめて使う道具も売っている。
そっちの方が本職だろうな。
しかし、どこの石だ?コットワッツではない。マトグラーサでもないはずだ。
間の砂漠はあの通りだしな。中央砂漠か?」
「あとで聞いてみよう。でも、装飾もついておしゃれだね。」
「ん?ああいうのが好みか?作ろうか?」
「ほんと!うれしいな!それを使ってます!的にできるから
便利だね、きっと!!」
魔法の杖だ!
「ああ、そうなるな。良し、2人で揃いの物を作ろう!」
「イエーイ!」
「その、いえいというのはなんだ?よろこんでいるときの掛け声だとはわかるが?」
「うん、それであってるよ?やったーとか?うれしいーとか?」
「いえーい?」
「そ、イエーイ!!ビンゴもうまいこと使ったよね?」
「ふふふ、そうか?」
ビンゴとか、イエーイとか、使い方あってるよね?
確かめようがないから仕方がない。
どうやら、3日間みなこの場所で寝泊まりするようだ。
トイレは各自。あとで、各自が処理場に捨てるみたい。
うん、そっちの方がいい。
食の祭りで使ったテントが使えるかな?
少し奥まってテントを建てる。
中は魚の皮を敷き、
真ん中におこたを出した。
プカプカのクッションも置く。
「愛しい人?入ったら出れなくなるぞ?」
「そ、そうか!危ないところだった!!」
おこたはダメだ。泣く泣く収納した。
ここでの販売のメインはコットワッツ製品と
トックスさんのコートだ。
クッションも売りたい。
竹細工もだ。
塩も、化粧水も皆が売っている。
目立つように青の絹地でトルソーに
ドレスを纏わせる。
これは3銀貨のドレス地。2リングだ。
ちょっと値上げした。
持っているものすべて並べる。
その横にダウンと魚のコート。
ちょっと絹地でスカーフぽっく。
ちょっと!奥さん!どうですか!!!
「ティス!ティス!これどう?」
「・・・そのペラペラの布を巻く意味は?」
「・・・。おしゃれ?」
「・・・すまない。わからない。あ!砂風を避けるのにいいな!」
「そうなるのか。そうだね。うん。」
必要美だ。ここで求められるのは。
だからトックスさんの意匠がいいのだ。
ポケットは必要、それがおしゃれ。
必要なものをおしゃれにする!これだね!
テントに戻って、絹地を各色を細長く切っていく。
端の処理はお願い級。共色で。
1束から20枚。
ほつれ止めの手間を入れて2銀貨。
赤、緑、モモ、黄色、青。
あんまり数が出るとだめかな?
5色5本ずつ。ピクト限定ということで。
端にモのタグだけ付けようか。
さっきのとりあえず端切れで巻いたものを外し、
ちゃんとした商品を巻く。
えーとなんだ?ミラノ巻き?
青のドレスもどきが目立って、お客がゾロゾロと来ている。
ただ見ているだけだ。
金額は値札をつけているから。
数字は大抵の人は読める。
ドレスかと思ってみるがよく見れば布だけだ。
で、2リング。
その横は?お?いい感じの上着。
だが、セットで12リング。バラだと、3と10。
首元が2銀貨。
んー横のは?タオル?ゴム?歯ブラシ?
これにも一応看板をつけている。
タオル 8銀貨 ゴム 1銀貨 歯ブラシ3本1銀貨。
クッションもあるよ。
ご自由にお座りくださいって書いてる。
ここで呼び込みすれば売れるだろう。
でもさ、思ったのよ。
ちょっと言霊入ってるのかも?と。
なので、今回は無し。
ここで、実験ですよ。
売れなかったら仕方がない。
廻りは呼び込みがすごい。
わたしたちは並んで椅子に座ってそれを見ている。
ダウンコートとスカーフは巻いて。
逆にこんな風に身構えられてる店があったら、
わたしなら遠慮する。
「呼び込みしたほうがいい?」
「いや、そんなことはないな。懐の金と、ほかの店での値段。
それを確かめるようだぞ?」
「あ、そんな話してる?」
「ああ。」
「ほかに出してるところないからね。戻ってきたら売れるかな?」
「ダメなら明日も出すか?」
「いや、3日分払ったけど、終わるまでいれば、
各地に帰る行商とかち合う。いち早く街道に出よう。」
「そうだな。向こうからあの5人組が来るな。
あのまま砂漠に入ったのだろうな。」
「10リングか。いい金額だよね。」
「ん?」
「それだけで一月生活できるわけでもない。
だからほかの仕事を持ってるはずだ。
で、1晩、ま、2日だよね。それで、10リング。
ぱーっとつかってもいい感覚を持っちゃうね。
で、この市場だ。行商からかなり高い設定で税をとる。
行商もここで稼げる。稼いだ金をここに落としてもいくだろう。
あの宿、もしかしたらそういうきれい処の宿だったかもしれないね。」
「ああ、そうか。そうかもしれないな。」
「ん?そういうとこ行ったことある?」
「話だけだ。娼婦ではない、一晩だけの相手の店だろ?」
「そういう人のことなんていうの?」
「遊女だな。」
「ああ、それは納得な翻訳だ。」
「いるのか?故郷にも?」
「もちろん。どの世界にもいて当たり前だ。」
「そうか。」
「その人たちを娼婦って言うのよ。だから驚いたの。」
「それは驚くな。娼婦に遊女と言ってはいけない。逆もだ。」
「あー、そうなんだ。聞いといてよかった。ちなみになんで?」
「だれでも遊女になれるわけではないからな。
よっぽどの器量よしということだ。
ただの娼婦に遊女のようだと言えば、遊女が怒るな。
娼婦はそれを相手にいわれれば、遠回しに断られているということだ。
遊女は娼婦と言われれば、
そこまで器量よしではないと言われたことになる。」
「なるほど。」
5人組がやってくる。
イリアスの次期継承者だとすれば、
10リングの稼ぎはたかが知れている。
しかし、楽しそうに買い物を楽しんでいるようだ。
「いらっしゃい!ピクトの砂漠で稼いできたんですね?
うらやましい!どうですか?
ダカルナでは商品がなかったんでお出しできませんでしたが、
夜を通して運んできましたよ!」
「・・・間の砂漠を馬無しで抜けたんだな?
何者だ?」
「ふふふ。それを聞いてどうします?
あまり無礼なことはしたくはないが、
人に名を聞く時は仕事以外はまず自分から名乗るものですよ?
ま、前回のお客さんだ。
砂漠の民の行商ですよ。
知りませんか?砂漠の民のひと駆けは赤馬のひと駆けだ。
そこが砂漠ならなおのこと。
さ、そんなことより、見てっておくれよ?
全部見てから戻って買おうなんてそんな暢気なことを言ってはいけないよ?
戻った時は売り切れだ!」
気分を悪くしたのか、何も言わず帰っていった。
あーあ。
「なんていえばよかったの?」
「わからんな。」
「ね。」
それから、可愛らしいお嬢さん2人組がやって来た。
「いらっしゃい。一通り見てきたのかい?
いいのはあった?うちと同じのはなかっただろ?
そりゃそうだ、新作だからね!
ささ、袖を通すだけでもいいよ?」
「・・・3日目まで数はあるの?」
「ん?どうして?」
「・・・3日目は安くなるから。今日は見るだけ。」
あー、なるほど!それか!
そりゃ、誰も買わないわ!
「ちょっと、お嬢ちゃんたち、ここにお座り。
いいからさ。脚がくたびれただろう?
ここに試しで座って、ちょっとおばちゃんとお話ししよう。
ティス!なんか、お茶と、んー、おかきかな?樹脂蜜の!」
彼女たちは最初は躊躇したが、
お茶と初めて見るお菓子を見ると、やっと座ってくれた。
「お茶、緑だけど、ジットカーフ、コムのお茶葉と一緒だから。
わたしが作ってみたんだけどね、うまく発酵できなくて。
これはこれでいいだろ?
このお菓子はおかき。米をつぶして油で揚げたものだ。
樹脂蜜を絡めている。ん?うまいか?ふふ。」
彼女たちは成人前。
砂漠石拾いには2か月前から参加している。
子供でもいいということになったそうだ。
それで、大人たちと同じように、
1日目は下調べ、2日目でなくなりそうなもの。
3日目で、安くなったものを買うという。
成人前で月10リング稼ぐというのはどうなんだろ?
あのお醤油少年が知ったら卒倒しそうだ。
「そうなんだ。値引き前提なんだね。
でも、1日しか出さない店もあるだろ?え?それはないの?
そうなんだ。わたしたち初めてでね。
今日しか出さないんだよ。で、まったく売れない。
みんな見に来てくれるんだよ?
遠くから。値段もさ、わかるようにしてね。
だから逆に買わないんだね。
大失敗の巻きだよ?ティス君。」
「まき?失敗は失敗だな。」
がっかりだね。明日も出すか?いや、なんかもうめんどい。
いかんな。
「あの、今日だけ?」
「そうなんよ。いろいろあってね。
どうだい?買っていかないか?最初のお客さんだ。
選び放題だよ?人気の青もある。」
「あれは?ドレスではないの?」
「あれは布だけだ。でもさ、
あんな風にひだを付けるだけで豪華になるだろ?
本場フレシアの絹だよ?自分で作るのが一番いいよ。
だって自分の体にピッタリなものができるからね!
ほら、肩からあててごらん。
なにも青が流行りだからって青にすることはないんだ。
青いドレスのなかにこの真っ赤があれば目立つだろ?
でもね、一番いいのは自分に似合う色だ。
さ、いまは誰もいない。買うも買わぬも、かまわないよ。
自分で確かめてごらん?
水鏡も置いてるよ?よく見えるはずだ。
さ、見ておいで。」
浅い桶の内部に黒く塗って、水を張っている。
この黒の塗料が分からなくて、炭と膠を混ぜたのだ。
「うわー!これわたし?」
「そうだよ?ほら、お揃いの髪飾りもあるよ?
だけど、ドレスって着るの?まだ、ちょっと早いんじゃないかな?
いま、その体にあったのを作っても、そのおっぱい。
おっと、声が大きいか?まだまだ大きくなるよ。」
ぼいんと、胸の前でふくらみをジェスチャーする。
「「キャーーー!!」」
「・・・愛しい人!」
あ、ダメなんだ。
「ごめんごめん。でもそうだろ?
それより、今から着ることのできるこのコートがおすすめだ。
3リングだよ?上のコートは10リング。
2つ買ってくれるなら12リングだ。
ん?ちょっと予算が足らないかな?」
「・・・取ってくる!あの、これ、置いてて!売らないで!」
「ほんとかい?いいよ、どの色?
このモモ色?お嬢ちゃんも?赤?いいね。わかったよ!
上のは白と茶だね。わかった。よく考えて戻っておいで。」
それから、月が沈んで半分。あと3時間で月が昇る。
休みなしの3日間のようだが、月が昇れば終わりにしよう。
「どうして?」
「え?値引き前提というのがね。
それを見越して高い値をつけてるんだろうけどね。
そこまでの駆け引きは苦手なのよ。
それに最初に買ってくれたお客さんに悪いでしょ?」
まだ、誰も買ってくれないが。
勝った翌日の値下げ札。
あのがっかり感は許せん。
それがすぐに売り切れるのなら、ああ、早く買ってよかったと、
自分を慰めれるが、セール最終日になっても売れ残っていたら悲しい。
しかし、その慰め方も知っている。
これを着こなすのはわたしだけだったのだと。
・・・うん、むなしいね。
しかし、呼び込みをしないとほんと売れないね。
お嬢さん2人が戻ってきた。
なにやらシュンとしている。ん?親御さんか?
それぞれの親なんだろうか?
ものすごく嫌な顔つきだ。
怒られたのかな?ありうるねー。
「お帰り!どうしたんだい?やっぱりやめとくかい?」
「あの・・・」
「ん?」
「ちょっと!あんたかい?初日に高いものを買わそうって奴は!!」
「どうしたの?」
「ちょっと!聞いてるのかい!!」
聞こえてるけど、聞いてないよ?
「母さん・・。」
「ん?わたしはお嬢ちゃんに聞いてるよ?
やっぱり高い買い物だ。やめとくかい?
それをわざわざ言いに来てくれたんだね。ありがとう。
そのままほっぽててもいいのに。えらいね。」
「なんだい!客を無視するのかい!!」
買ってくれるん客だが、
文句だけ言うのなら客以前の問題だ。
「ティス!撤収だ。」
「イエス!マム!」
これをしないと生活できないというものがないから
根性がないんだな、わたしには。
「え?本当に?」
「そうだよ?」
片付けは簡単。
荷車に乗せるだけだから。
茫然と見る2組の親子ににっこり愛想笑いだけして、店をたたんだ。
ちょうど客の流れがすくなったところで、
はい、ごめんなさいよと、荷車を押していく。
途中、砂漠石を売っている店の前で、
どこの産地だ?とマティスが聞いてくれた。
「ん?なんでそんなことを聞く?」
「いや、コットワッツは出ないだろ?
マトグラーサも爆裂石は出ないと聞いた。
ここの砂漠も小さすぎてダメだろ?
となるとどこだって話になったな。」
「へー、くわしいな。買ってくれるならいいぜ?」
「選んでもいい?」
色がついてるものが混じっているのだ。
「へ?どれも一緒だぞ?好きにどうぞ?」
色がついてる物をいくつか選ぶ。
ないのも少し。
いくらくらいだろう?
「これで。」
「なんだ、大きいのを選んだじゃないのか?
くずには変わらないけどな。」
・・・くずっていうな。
「全部。全部でいくら?」
ああ、自分がイラついてるのが分かる。
「へ?全部?これ?100だよ、100リングだ。」
男はニヤリと笑う。
「ティス?」
「かまわないよ?で?どこの産地なんだ?」
マティスがすごむ。
「ちゅ、中央だ。」
「中央のどっち?西?東?」
「西だよ!なんだよ!おい!買えよ!100で!」
50ずついれた袋、2つを台の上に出す。
袋をやることもない。
その袋にすべて入るぐらい。
「行こうか。」
「うん。おなかすいたね。何食べようか?」
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「うん!」
マティスがやさしい顔で笑ってくれる。
ふふふ。無駄遣いしちゃったね。
それを許してくれるいい旦那様だ。
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