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425:へりくつ
しおりを挟む逸れた道から街道に入る。
それなりに賑わっているのだが、
高くないのかな?
お給料が月15万円のものが1万円のものを買うのは結構な負担だが、
100万円だったらということか?
ここの皆さんはみな高給取りなのか?
それはさすがに聞けないな。
「おーい!!そこの!行商兄弟!」
わたし、いや、ぼく達のことか?
正面から守衛さんが手を振ってる。
「結構ゆっくりしてるんだな?
良いものは仕入れることはできたのか?紅茶、良かっただろ?」
「俺たちには高すぎたよ。」
「え?あ!す、すまない!!
1番街で見たんだな?俺が行ったのは4番街の2番目だ。」
1番城から5番城。
4番城から5番城の間が4番街。
そりゃダメだわ。
「1番街は外客向けなんだよ。
ここの人間はみな4番街か5番街で買う。
ほかの国からやって来た旅行者は1番街か2番街だ。
で、引き返すんだ。
砂漠まで行くっていうからてっきり4番まで行くと思い込んだよ。
ああ、5番街では紅茶屋はないから。」
西側東側と競争しているのは事実。
しかし、ひょうたん屋さんが言うように両方に店を出しているから
あまり関係がない。
高級志向か薄利多売か。
「ものは一緒なんだけどな。」
1番街で安く売ると5番街まで買うものはいない。
この街道を端まで通ってもらう方法らしい。
「悪かったな、あまり、このことを声高には言えないから。」
「いや、謝ることはないさ。あの時点で引き返さなくてよかったよ。
では、4番街の2番目だな?そこで買おう。」
「案内するよ!今は西側贔屓なんだ。」
店を持たない人たちは
毎年贔屓側を作るそうだ。それも楽しいか。
守衛さんは引き返してくれる。
少し行ったところで駱駝馬を借りて、港まで行くそうだ。
砂漠ギリギリを走り抜ける。
高速道路のようなものらしい。
3番街だけの商売だ。
あるじゃん、いい仕事が。
「ケリー、客だよ?他国の行商だ。」
「あら、グリクが案内してきたの?」
「そうなんだよ。2番目の紅茶屋っていったら1番街で見たらしい。
で、ここだって案内したんだ。」
ご贔屓というのは看板娘をってことだな。
この人と一緒に歩いていたので、
3番街ではお姉さん関係はなかった。
案内が終わると手を振って、もちろん店の人にだが、
仕事に戻った。
「いらっしゃい。1番街は高かったでしょ?
ここはいいものは高いけど、お手頃もたくさんあるのよ?」
ほんとだ。
種類も多い。
お高いものも少しだけ。
後はニバーセルの王都で買ったお茶葉も。
こっちの方が安い。
20リング分買った。
「行商なのね?なにかないの?売るものは?」
「兄さん?」
「そうだな、コットワッツで仕入れたタオルはどうだ?
あとはフレシアの布でつくった、首巻。」
「スカーフだよ。」
「ああ、そうだった。そのすかあふと、あとは?」
「それぐらいだよ?お姉さん見てくれる?」
「ええ、いいわよ。街道で店は出さなかったの?」
「うん。見るだけで。あれは勝手に出していいの?
お金はいらないって聞いたけど。」
「1番城主の許可をもらえればいいわ。
ここもそうよ。4番城主の許可をもらえばいい。もう少し行くと出してるわよ?
そこで出す?」
「いえ。今は遅いし。出すなら早いほうがいいでしょ?」
「そうね。円陣の場所もくじ引きだからね。
途中からは無理か。」
タオル8銀貨、スカーフ2銀貨。
タオル高いね。
次からは6銀貨ぐらいにしよう。
染もできてるのだろうか?今は生成りだけだから。
肌触りは抜群なのだ。
「これはいいね。」
「お風呂、湯あみの最後とかに体を拭いたり、汗を拭いたり。」
「ああ、そういう使い方なのね。こっちは?絹をこんな細長くして。
もったいないわ。」
「首に巻くんですよ。
砂埃除けとか。でも、色の組み合わせでおしゃれ?らしいです?」
タオル2枚とスカーフは2色買ってくれた。
青色は人気だ。
今の時間なら月が昇る前にタトートに入れるそうだ。
泊るならタトートの方がおすすめと教えてくれた。
4番、5番は庶民の街で、宿も安いがそれなりだということだ。
ではそうしましょうと進んでいく。
トウミギも並んでいるが、今はいらない。
カメリの実も並んでいる。
あのオイルが無くなったら、ここで実を買って絞ってみようか。
タトートとの国境は遊園地のゲートみたいだった。
砂漠を超えていくのだ。
デルサトールを抜け、何もない砂漠を歩く。
砂漠をこんな大人数で歩くのは初めてだ。
駱駝馬も下りて進む。
月が昇っている間は通行禁止だ。
2時間ぐらい歩くのだろうか?
頻繁な行き来があるが、問答も名乗りもない。
みながだべりながら歩いている。
油断した。
タトートの検問に入ると両脇に守衛さんが立っている。
その間を通るだけ。
ん?と思った時は、大乱闘となっていた。
わたしが前を、マティスが後ろについて検問を通っていたのだ。
横からわたしの腕を取ろうとする男をマティスが殴り飛ばし、
マティスを捕えようとする男をわたしが蹴り上げる。
殺気はない。
だからこちらも、鍛錬ということにして、
殺さず、複数戦。
連携も取れたと思う。
たのしくて笑いながらの拳術で応酬。
笑拳である。
お昼寝会場となった検問所。
周りの人も、遠巻きに見ている。
いかんな。
「に、兄さん!!怖かったよー!!」
「お前は怖かったら笑うのか?」
マティスに抱き付き、グリグリ頭をこするつける。
マティスはご満悦で、頭を撫でながらも突っ込みを入れた。
新喜劇だ。
誰かが、プっと噴き出した。
そこから大爆笑だ。
他の人がけがをしないように気を使ったもの。
わたしたちも同じように笑う。
「あははははは!なんだ。こういうお遊びなんだ!
びっくりしたよ!!」
「そうだろう?お前相手にこのざまでは恥ずかしくて表を歩けないぞ?」
「え?ぼく強くなったよ?ほら?」
ヘナチョコパンチだ。
そこでまた笑いが起きる。
「恥ずかしい!兄さん!離れよう!!」
これで逃げれるか?
無理か。
「待て!お前たち話がある。わかるな?」
2人揃って首をかしげてみた。
えらいさんが出張ってきたようだ。
わかるなってわかるかいな。
このシーンを写真で撮ってほしい。
写真はないんよね。原理も知らんし。
音の再生はできたから、映像の記憶はどうだろうか?
砂漠石先生に聞いてみよう。
「ん?弟よ?なにか楽しいことを思いついたな?
殺るのか?」
「兄さん?極悪兄弟として名前が広がるよ?
ちい兄ちゃんと一緒に旅するとき困るでしょ?」
「・・・あれか。そうか。
ん?兄さんより兄ちゃんがいいな。」
「え?いまさら?・・・兄ちゃん?お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんだ!!」
「・・・はいはい。」
この返事に承諾したと思ったのだろう。
見学者は解散、お昼寝会場出席者は運び出され、
わたしたちは?
片隅に置いといた背負子を背負って、
その人が行く道とは別の道を進んでいった。
まさに、コントだ。
「待て!!」
今度は剣で囲まれる。
5人だ。
「強い?」
「広い場所なら問題ないが、廻りに気を使うと、
一呼吸遅れるな。」
「んー、それはダメだな。」
「お前たち!!ついてこいといっただろうが!!」
「言ってない。わかるな?って言っただけだ。
誰になにを言ってるのかわからなかったが?」
「!!!」
へりくつ兄弟と言われそうだ。
「・・・お前たち2人に話がある。私に付いてきてほしい。」
「知らない人について行っちゃダメだって言われてます。」
「!!!」
「私はタトート警備隊隊長、ニコルだ。
話がある。付いてきてくれ。」
「俺たちにはない。」
「お前たちに捕縛令が出ている。」
「お兄ちゃん!!なにやったの!!ちい兄ちゃんが泣くよ!!」
「何もしていない!弟よ?お前ではないのか?」
「え?ぼく?なんだろ?食べすぎ違反?それはつらい。」
「大丈夫だ。金は払ってるぞ?」
「だよね?心当たりはないので。だから行かないです。」
「!!!捕らえろ!!」
「ぎゃー!怖い!!」
マティスにしがみついて、
その状態で捕縛されました。
(いいのか?)
(いつでも移動できるし、なんでか知っときたいからね)
(珍しい)
(おなかすいた。どっかに入れられたら、ご飯にしよう)
(バラバラにされたら?)
(んじゃ、ドロンだ)
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