いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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462:悪徳3兄弟

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「に、お兄ちゃん?チビは?」

壁にもたれて、何かを書き始めている。
愛しい人のその顔は好きだな。
考えていることが彼女にとって楽しいことだとわかるから
そっとしておこう。


「ん?なにか思いついたんだろ?
食べよう。ここの酒はうまいな。追加するか?」
「樹石のことで?わ、俺も少し考えておきたい。」
「そうか。では、予定より早いが引きあがようか?
おい!樹石をバケツ2つくれ。
全部でいくらだ?」

「そうだな、んっと、1リングだ。」
「じゃ、これな。で、店主は?炭を持ってきているんだが。」
「あー、いまはいらないとおもうよ?裏に廻って見な。
仕込みやってるから。」

紙になにかを書き込む彼女がこけないように
誘導して裏に回る。

「店主だな?炭があるんだが買わないか?」
「あ?いまは一杯なんだ。また、なくなる頃に来てくれたらいいけど?」
「やはりか。守衛にもいわれたよ。一足遅かったな。
その炭は?ピクト?」
「ブラスはピクトだろ?」
「うちのはコットワッツなんだ。タオルと、ブラスで組んだ笊がある。
店でも使ってただろ?」
「それも大量に入った。」
「そうか。それは残念だな。」
「タオルは?それは買うよ!もっと安いのがあればいいんだが。」
「そうか!いい時に来た。1枚5銅貨のがある。
50枚注文でこの場で絵入れができる。
そうだな、店の名前と、炭焼き台の絵とか。
こんな感じでどうだ?」
「へー。50枚か。2.5リング?負からんか?」
「悪いな。これは金額が決まってるんだ。」


ハロースはそれで、しぶしぶ承諾した。
ハロースの父親、レルギーもやってきて、
絵柄をのぞき込んでいる。
ハロースの店じゃないと息子と喧嘩していた。

結局ハロースの店となる。
ハロースは出来たら持ってきてくれと、仕込みに戻った。

「宿はやめたのか?」
「今はな。煙が上がってくるから、誰も泊まらない。
外れの宿が繁盛しているよ。
こっちは炭焼きでそれ以上に儲かっているがな。」
「それは良かったな。」
「・・・炭を持ってきたんだな?見せてくれるか?」
「ん?ジロ!だめだ、あいつも考えこんでるな。」


壁にもたれて、2人とも考え込んでる。
会話はしているのか?聞こえてくるがよくわからんな。


3つの背負子に分けて入ってるように見せかけている炭を取り出す。
「今あるのはこれだけだ。炭も笊もコットワッツ産だ。
これから、また移動するんだ。ああ、野宿だ。
買ってくれれば、荷が軽くなるから助かるんだが。」
「・・・・良し、買おうか。これはコットワッツでこれから買えるのか?」
「そうだな、なんでも、ピクトから広がったブラスの森、ああ、林を
ニバーセルが買ったらしい。それの販売をコットワッツが引き受けたと聞いたが?
俺たちはコットワッツをまわって来たんだ。」
「そうか。これからも買えるんだったらいいな。いくらだ?」
「いいのか?売れたらこっちはいいんだが、息子の話じゃ今たくさんあるって。」
「いいんだよ。あいつはまだまだダメだ。焼き台も勝手にうっぱらうしな。
代わりが出来たからいいようなものの。結局、皆が真似をした。
お前、なんでうちの店に入った?」
「ん?なんでと言われても。」
「うちの店だけ並んでただろ?並んでる店はうまいか、安いから流行るんだ。」
「ああ、そうだな。」
「それと、うちは煙が少ない。」
「ああ、そうだな。言われて気付いたよ。」
「ふん。炭が違うんだ。あと、脂身をすくなくしている。今使ってる炭はもうじきなくなる。
ピクトから買った炭だとほかの店のように煙で充満するな。温度も低い。
高温でさっと薄肉を焼くからうまいんだよ。」
「なるほど!切り方!勉強になるな!」
「ん?そうか。ま、それ、この炭と笊も、ああ、いいな。しっかりしてる。いくらだ?」
「5リングだ。笊は全てで1リング。」
「ピクトからの炭はその量で3リングだ。高いが価値はある。6リングだ。
それと、レルギーの宿でタオルを作ってくれ。
俺は別で店を出すことにするよ。」
「繁盛してるな!あ、勉強のためにピクトの炭と笊を少し売ってくれ。」
「勉強な。もちろん。金は要らんよ、持って帰ればいい。」

レルギーは笊に炭をのせて渡してくれた。

「「シャーーー!!」」

「素晴らしい!笑いがこみ上げてきますね!」
「そうだろ?そこはほれ、悪徳3兄弟だからな!」
「「ぶはははははは!!!」」


2人で盛り上がっている。


「ジロ!チビ!こっちに来い!!」

私だけ働かしてなにを喜んでいるんだ?


「え?あ!お兄ちゃん!!聞いて!聞いて!
ちい兄ちゃん!すごいんだ!」
「お兄ちゃん!チビのすごいこと!!もう大絶賛なんだ!!」

2人が満面の笑みで駆けてくる。
うむ。かわいいな。

「客人がいるぞ!ハロースはタオルを。
レルギーはタオルと炭と笊を買ってくれた。別で店を出すそうだ。」

「あ!そうなんだ。おんなじことをやってたらダメだもんね。
炭も!お買い上げありがとうございます!!」
「コットワッツの炭は燃焼時間が高温で長いそうだ。
勉強の為、ピクトの炭と笊も分けてくれたぞ?」
「勉強!さすがお兄ちゃん!
燃焼時間ね。炭でも、そういうのあるんね。
新しい店か。これは聞いた話。
煙がかなり出るでしょ?ここはほかの店よりすくないのかな?
でもさ、煙は出る。匂いも出る。で、女性客がいない。
だって、服と髪につくもん。ちょっとね。
だからね、こうね、上に煙を吸い上げるんだ。
で、管を通して、外に出す。
これは砂漠石で風を起こせばいい。
初めの願い言葉でいい、流れるもの風の姿?だっけ?
その後に言葉を繋げればいい。」

『流れるもの、それは風の姿。
留まることはなく、遠き彼方に。』

彼女が小さな砂漠石をもって、初めの願い言葉を言う。
言霊ではない。

石から風が吹いていく。そよ風程度だ。

「これで、煙は流れていく。どれぐらい持つかな?」
「これぐらいなら、相当持ちますよ?風はめったに使わないんですが。」
「ふーん。ま、これをね。管の内側に付ければ、いい。
向きは調整してね。
そしたら、煙くない炭火焼き屋さん!女性客も来るよ!
飲食はなんといっても女性客に受けるか受けないか!これだね!
あとは、ちょっと健康志向と高級路線。
野菜を多めとか、ちょっと高くてもいいものはいい。
椅子とかテーブルとかきれいにね。
個室もいいよ?
その路線で売れまくった店の話を聞いたことがある。」

故郷の店の話のようだ。

「あははははは!!いいな!それはいい!!
ちょっと待ってろ!!」

「ん?あれ?晩御飯は終わったの?あれ?食べた?」
「・・・樹石の値段を聞いて、チビ、お前が考え込んだからな。
ジローも一緒に。
ここで、ひ、と、り、で!
タオルを2種作り、定着させ、炭と笊を売った。」
「「おお!!さっすが!お兄ちゃん!!」」
「ふん、どう素晴らしい悪徳商人なのか教えてくれ。
今日は?岩壁の家だろ?行こうか?そこで、いまチビが言った方法で
もう少し食べてもいいだろう。」
「やった!!」
「岩壁?すごい名前ですね!」


「これな、俺が切った肉だ。
さっきの話の礼だ。
持って帰って食べてくれ。野宿するんだろ?
なにが違うか勉強すればいい。」


大皿に肉の薄切りがきれいに乗っている。
なるほど。

3人で礼を。

「「「アザーーーッス!!!!」」」

アザスとはありがとうございますという意味らしい。


ほくほくで、人気のないところまで。
なるほど、他所の店は煙で中が見えない。
女もいないな。

移動する前に、匂いだけは取っておこう。
あの家にこの匂いは持ち込めない。
かつらを外してみるが、かなり匂う。

「あ、ほんとだね。こっちは?」
「ん?少し?」
「うわ!お風呂入ろう!」
「わたしは、館で入ってきますよ。兄さん、そのほうがいいでしょ?」
「さすがだな。準備出来たら呼ぶ。」
「はい。お願いします。」

さすが、我が弟だ。ゆっくり風呂に入れる。2人で。


「もう!でも、あのお風呂に3人は入れないからね。
水着きて、ゆっくり3人ではいろう。」
「ああ、それならいいだろう。」

かつらをとってそのまま歩く。
服は砂漠の民のものだ。
この姿を誰かが見たのだろう。
遠くで、人が集まているのが分かる。


「よかったな。行商の夫婦はかなり狙われているな。」
「ダカルナだもんね。どうしようか?
夫婦では検問を通ってないって怪しまれるかな?」
「検問はニッケから王都に入るあの門だけだ。
ピクトとから入ったと思うだろう。
ピクト側にも検問があるが、砂漠もある。
通らないで迂回もできるからな。なんとでも。
かなり集まった。そこを曲がって移動するぞ。」

角を曲がり、岩壁の家に
音石を置いてきた。あとで、回収だ。



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

おい!いないぞ?
ここを曲がったんだ
近くにいる。家に入り込んだのかもしれん
お前たちは表に廻って見張れ
出てきたら問答無用で拘束しろ
理由は?
なんでもいい
城に連れていけばいいから
なんでも悪賢い夫婦らしいぞ
王が呼んでいると言えばそれでいい
いけ
ツイン殿?王がお呼びというのは本当ですか?
そのようだ
アガッターとミフェルも探していると
その前におさえないと
われわれの首が飛ぶぞ?
アガッターが掴んだ話は正しかったな
ピクトを抜けて?
そうだろう
いま、ダカルナにいるのは間違いない
港も砂漠もすべておさえろ




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「面白話?」

さっきまで、彼女の体を洗い清め、
少しの間ゆったりと湯に使っていた。
おなかすいた!と、換気装置をつくって
焼肉にしようと彼女が、ごそごそしている。
その間に石を回収。
それを聞いていた。



「そうだな。ダカルナの王が探しているということははっきりと。
あと、あの夫婦はダカルナにいるそうだ。
港と砂漠をすべて押さえるそうだ。」
「おお、それは大変だね。」
「そうだな。ん?できたのか?」
「うん!セサミン呼んで!タレも作ったし!お酒はやっぱりビールよね。」

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


月明かりで海が見える。
その絶景のロケーションから食べる焼肉!うまい!!
サイの肉も切り方を研究したマティスが出してくれた。

「切り方でここまで変わるとは!!」

セサミンを呼んで、絶景に驚き、
いま、お肉を食べている。

うまいのだ。ほんとに。口の中でとろける。
これで、クジラ肉を食べたらどうなるだろうか?

「あ!!」
「どうした?」
「岩塩!岩塩かったでしょ?あれねー、こう、お皿みたいに切って?
厚さはこれぐらい。3枚。それと1枚は大きくて、3枚はちょっと深めに。」
指で1cmほどつくる。

4枚を冷やしておく。
3枚は炭の上に置いて、熱してその上に肉を置く。
ほんのり塩味がついておいしいらしい。
冷やしたものの上にお刺身も。これはテレビでやっていた。
試したいとおもっていたのだ。
アイスクリームをのせてもいいらしい。
冷たさも保って塩味がつく。
これはお風呂でいただこう。


「うまい!肉がうまいだけではないですね!」

かなりの肉を食べているにも関わらず、
どんどん食べてしまう。

「東の砂漠の岩塩だって。
この食べ方はちらって見ただけでしたことなかたんだ。
ほんと、おいしいね。お手入れ法とか、
調べておいてよかったよ。」
「姉さんはほんとうに博識だ。」
「いや、食いしん坊なだけだよ。
でもね、
きっと故郷でやっても、ふーんこんなもんかった思うだけだ。
やっぱり、こういうのはみんなで食べるほうがいいね。
じゃ、お刺身行ってみよう!これはワサビ無しで塩で食べるのもおいしいんだ。
好みでレモン、枸櫞の汁を落としてもいいよ。
さらご飯もある。」


カニとエビ、白身と赤身、サーモンのようなウミヘビ、ホタテも。
刺身の盛り合わせだ。

「いいな。これは。岩塩は全てこの形にするか?」
「そうだね。砕いて、塩としてもいいからね。
それは好みになるな。1/5だけ砕いて塩で、残りはお皿にしようか。
みんなに振舞うんだったらかなりの枚数がいるね。
岩塩も調達しに行こう。」
「東の砂漠は虫がいるぞ?」
「う!そうだった。んー、でもさ、塩があるところは虫は生きていけんよ?
特殊な虫以外。この岩塩には孔とかないから、うん、大丈夫。
ああ、次に行った時でいいよ。」
「そうか。で、その素晴らしい大絶賛の話は?」
「「くふふふふふ。聞いてください!!」」


要は安く樹石が買えるのだ。
こっちが無理に安くする必要はない。
対抗しようというのが間違いなのだ。
協定の話が無くなれば、向こうは値を徐々に上げていくだろう。
内外的にも。
が、国民にたいして値を上げることはできない。
結局は協定通りの金額になる。
樹石を安いから買った諸外国は、便利さを知れば、
イリアスの樹石を買うだろう。
イリアスは貧しい国ではなくなる。
樹石の一大生産国だ。
こっちは樹石をおもな産業にするつもりはさらさらない。
燃料の代わり、砂漠石の代わりだ。
安く手に入るならどこでもいい。
いざってときに燃料が取れるとわかっただけでも安心物件だ。
ただ、樹石の使い方が間違っている。
燃料に使った樹石、軽石を加工するのがいいのだ。

さっそく実験したが、加工性は軽石の方が上を行くし、
耐久性も上だ。

コットワッツでは安く、イリアスから輸入。
使った樹石は、1/100で買い取り。
もちろん素材として加工していく。耐熱材だ。
一定数は湿地に戻す実験も行う。
即、あの湿地は閉鎖だ。

報告はもうでなくなったと言えばいい。
あの2人には事情を話す。
もちろん、正直に。研究はそのまま続けてもらい、
香草が手に入りそうならば、カレーの研究をしてもらうのもいい。

次の会合で王都主体でイリアスの樹石の話が出るだろう。
もうそこにはコットワッツは関係ないのだ。
あれ?湿地かったよね?樹石でるっていってなかった?
となった時に、もうでないんですよ~、
うちもイリアスから買います~、となれば、
徐々に値を上げて来る。協定以上となれば、
また、湿地の開発してみましたーとコットワッツの樹石を売ればいい。
北海油田のように。
たしか、開発に時間とお金がかかるからほっぽってたけど、
オイルそのものが値上がりしたから採算とれるってなったんだよね?あれ?
ま、いいか。


「「だから、なんの支障もない!」」

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